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第五章 本多瑞季の場合
四 ◯本多 瑞季【 過去 】
しおりを挟む達ちゃんや根岸さんに現行犯逮捕され、刑を言い渡されたその日の夕方。留置所の牢の中で待機していたところに、警察官…そう、達ちゃんはやって来た。
「本多さん、だったね。君は末端ではあったが、ISMYに属していた。組織の者が口封じのために危害を加える可能性があるし、しばらくの間は俺が君の身の回りを警護するからね」
まあ通常業務もあるから、二十四時間付きっ切りというわけにはいかないけどね、と笑いながら話す彼に対し、私は「よろしくお願いします」と即答し、頭を下げた。
私は分かっていた。彼は私の警護のためというよりも、私から未だ世間に蔓延るISMYの人間の手がかりを掴みたいのだろう。まあ良くあることだろうし、あえて嫌ですと言う意味も、また拒否する権利も私には無かった。
それからと言うもの、衣食住は特に不便なく過ごすことができた。衣服は以前持っていた服を警察から返却してもらい、食住は基本的に(彼の勤務時間以外は)達ちゃんと二人だった。
彼は、本当に私の今後の支援に協力してくれた。私に何か起きた時すぐに向かえるよう、彼の家の近辺で私が住むための場所を探し、契約までしてくれたし、何も無くとも毎日軽い…挨拶程度の連絡を入れてきた。
「警察官はここまで献身的にするのか。大変だな」と、最初は彼の行為を他人事のようにしみじみ感じる程度であったが、数ヶ月も経つと、これは誰に対しても行うことでは無いということが分かった。
「君が何か危険な目に遭ったら、俺は死んでも死に切れないんだ。それだけだよ。あ、あと根岸さんにも怒られちゃうな」
はははと笑う彼を見て、私も笑う。私を守ってくれる、職務としても、職務としなくても。彼のその思いを感じられる頃になってから、私は自然に笑えるようになっていた。
そしてある日、私は彼から呼び出され、指輪を渡された。その日は、私の執行猶予付きの懲役が終わる日。既に達也と会ってから、約二年の歳月が経とうとしていた。
「で、でも。達ちゃんは警察官だよ。私なんかと…犯罪歴のある女なんかと一緒になれば、達ちゃんが恥をかいちゃうよ。…駄目だよ」
動揺しつつも、拒絶する。彼の好意には気付いていたが、私と付き合えば、彼は必ず後悔する時が来る。その時の私の心は、嬉しさと申し訳なさが合わさった、なんとも言えない感情に支配されていた。しかし私のその拒絶も、なんて事なく彼は跳ね除けた。
「犯罪歴があるなんて関係ない。俺は瑞季と一緒にいたいだけなんだ。結婚とまではいかないまでも…まずは、恋人になって欲しい」
その時、意識せずとも目から涙が溢れた。ああ、嬉しくて心から涙したのは、いつぶりだろうか。それ程、私の涙は枯れ果てていたのだ。
そんな枯れたオアシスとも言うべき私の心に、水を与えてくれたのは彼だった。彼がいたから、ちっぽけなものと感じていた私の人生が、たった二年で笑える程、明るいものに生まれ変わることができたのだ。
だからこそ。私は、もうこの男のように腐った目はしていない。あの時のように、生きる意味が無いと考えていた時の私とは、違うのである。
「…とにかく。そういう訳だから、あなたと一緒にはいられないわ。というより、一緒にいたくないのよ」
「へーえ」きちんと一単語ごとに強調して、拒絶の言葉を発する。そんな私を見て、彼はにやにやと笑う。
「昔はなんでも俺の言うとおりだったお前が、そう歯向かってくるとは思わなかったよ。仕方ねえ、お前の家に行くのは諦めてやるよ」
それを聞いてほっと安堵しつつも、彼にしては簡単に引き下がるものだと少々驚いた。昔であれば、そこが公共の場であるとしても、喚き散らす程であったのに。刑務所での暮らしで彼もまた、完全と言うわけではないが、少しは心を入れ替えたのか。
しかし、そのような私の心にわずかに生まれた期待は、数秒後に発した彼の一言で打ち砕かれた。
「じゃあ金だ、金。金をよこせよ」
「お金、ですって?」
「ああ。刑務所出てから、毎日金欠でよお。困っていたんだよ」
掌を大きく開き、こちらに向ける彼の顔を見て、私は素っ頓狂な声を上げた。
「ど、どうしてあんたなんかに」
「いや、だってさあ。口止め料よ」
にっこりと、大きな笑顔を見せつつ、彼は先を続ける。
「お前。あの警官と付き合っていること、周囲に話してねえんだろ」
まるで銃で撃たれたかのように、心臓に大きな衝撃を感じた。驚愕の表情をした私を見て、当たったか?と大和は下卑た笑いを浮かべる。
「な、なんで」
そう震えながら聞くと、大和は自分の頭を指差した。
「勘だよ、ただの。やっぱり、俺の勘って当たるんだよなあ」
そうにこにこと笑う彼を見て、私は額から汗が流れ出た。彼の言うとおりであった。
「交際関係を秘密にすること」。これが、私と達ちゃんとが交際するにあたって、最初に決めた約束だった。まあ、実際は互いに…というより、私が一方的に決めたのだが。
達ちゃんから告白された時。警察官が前科のある者と交際、婚姻関係になるのは、昇級への道を閉ざしてしまう可能性がある、何かでそう聞いたことを思い出した。
それが真か偽りか判断はつかないが、念には念を入れておくべきである。彼は納得いかないようであったが、最後には首を縦に振ってくれたのだった。
故に私たちの関係はあくまで秘密、早々口に出す事はない。が、その中でも知っている者といえば、コモレビの檜山さん(以前、達ちゃんとの交際が始まったばかりの頃。嬉しさのあまり口を滑らせてしまったのだ。それが常識人である檜山さんだったから良かったものの、それ以来神経質と呼べる程に気を遣っている)ぐらいで、他には誰もいない。
しまった…と心の中で舌打ちをした。どうして、この男に易々と、達ちゃんとの関係を話してしまったのか。
おそらく私は彼に訴えたかったのだ。お前の思いどおりになどならないぞ、と。そう本人に対し主張することで、今の自分が昔と違う存在なのだと、自分自身無意識に再確認をしたかったのかもしれない。
(いや。それにしたって、わざわざ交際のことを言う必要は無かったでしょうに…)
後悔先に立たず。そんな簡単な言葉で片付けることはできない、そんな状況に自らを投げうってしまったのである。
「話してねえってことは、このことがバレたら何か都合が悪いってことだよな?」
「う…」
「それなら話が早いな。さあ…」
「いくら欲しいのよ」
「あ?」
「だから、いくら渡せば黙っていてくれるのって言ってんの!」
半ば叫ぶようにそう言うと、大和はひゅうという、馬鹿にしたように口笛を吹いた。
「そうだな」
仕方がない。少々財布のダメージが大きいが、数万円程度なら仕方ない。無理やりにでも必要経費と考えるしかない。腹を括った私に彼が提示した金額は、驚き過ぎて目の玉が落ちてしまいそうな額だった。
「五十万円。とりあえず出せよ」
「五十万!?そ、そんな、大金…」
「嫌なら良いぜ。あの警官の同僚に、お前との関係を話してやるだけだ」
「く、う…」
足もとを見る、というものか。私から、絞れるだけ絞り取るつもりなのだ。
「ご、五十万円なんて大金…私は持っていないわ。残念ね」
それは本音だった。達ちゃんと交際し始めてから、私は少々堅実的な考えを持つようになった。それまで稼いでいた貯金は全て彼との共通口座に入れこんでおり、出そうとも必ず彼にバレてしまう。生活費は使い込み過ぎないよう、必要最低限しか持ち歩いていないし、とてもじゃないが、すぐに五十万円もの大金を用意することはできなかった。
「あ?」
大和は私の胸ぐらを掴んできた。軽く首が締まり、苦しい。
「てめえ…」
「本当よ!嘘と思われるかもしれないけど、本当のことなの!」
とりあえず、財布の中にある全財産…五万円を取り出す。
「今すぐに渡せるのはこれくらい。ね、お願いだからこれで勘弁して、ね?」
(お願い…お願いだから、これ以上私の幸せを壊さないで)
そう懇願するが、悲しいことに彼には伝わらなかったようだ。彼は腕を組み、そうだなあと呟く。
「…それなら。借りてこい」
「え?」
「ほら、この辺りには街金なんてザラにいるだろう。どこでも良いから、近日中に五十万円を借りて、俺のところに持ってこい。そうすれば、お前らにはもう近づかねえよ」
「そ、そんな…」
「嫌なら、ばらすだけだ。俺の口が風船のように軽いこと、お前は知っているだろう。あ、そうだ」
大和は続ける。
「このこと、恋人の警官に話しても良いぞ。まあ…それをしたら、どうなるか分かっているのならな」
駄目だ…達ちゃんには話せない。それが分かったら、あの人は必ずこの男に会いに来る。そして、その時。この男がどんな手段に出るのか。
放心しかけているそんな私の手から、大和は五万円を奪い取る。
「とりあえず、今日はこの五万円で引き下がってやる。じゃあ、またな。これからも仲良くしようや、昔みたいに」最後に下卑た笑みを浮かべ、大和は去った。
五十万円なんて、すぐに用意することなど不可能だ。しかし達ちゃんの迷惑になるようなことはなるだけ、いや絶対にしたくは無かった。そうなるとやはり、大和の言うとおり。一時的なものと割り切って、金を借りるしか方法は無い。
次の日。私は来店した檜山さんに、金を借りたい旨を伝えた。私のことを思ってか、彼は最初やんわりと否定した。その優しさに一瞬気持ちが揺らいだが、そう容易く「はい分かりました」と諦める訳にはいかない。それに、少額であれば毎月返せない金が無いという訳では無い。何年経っても少しずつ返していけば良い。最後には彼にも納得してもらい、数日後コモレビに赴き、無事に金を受け取ることができた。
そしてその日のうちに大和を呼び出し、その金をそっくりそのまま渡した。
「マジかよ。本当にこんな短時間で五十万円も」
彼は目を輝かせながら、その金を奪い取るように、私からひったくった。
「さあ、これで文句ないでしょ。約束は守ってよね。さよなら」
そう吐き捨て、私は大和に背を向け去ろうとした。しかし彼は、そんな私の肩を力強く掴み引き戻した。
「ちょっと待てよ。まだ話は終わりじゃねえぞ」
「はあ?約束どおりお金を渡したのよ。もう終わりでしょう」
強い語気で彼をねめつける。しかしそんな私の目力に負けることなく、いやいやと首を横に振った。
「その約束は今までの俺としたことだろう。だが未来の、これからの俺がそれを守るとは限らない」
「な、何を言って…」
「だから、さ。また五十万円持ってこい」
この男は一体、何を言っているのだろうか。先程金を渡したばかりだと言うのに、また、それも同額の五十万円を要求してくるなんて。
「そんな…今あなたに渡したお金が全てなのよ!五十万円なんて大金、早々簡単に作り出すことなんてできないわ!」
「できたじゃねえか!」
大和は私以上に大声を上げる。そしてそのまま、大声に萎縮した私の両頬を手で掴む。
「実際、こうやってお前は金を持ってきた。つまり、人間無理と決めつけなけりゃ、大抵のことはできる。お前の場合、これだ」
もう片方の手で、万札をひらひらとはためかす。大和の手を引き剥がし彼を睨みつけるが、私の態度等まるで気にしていないかのように、へらへらと笑っている。
「良いか。必ず用意しろよ。期限はそうだな…再来月末までで良いよ。お前も大変だろうしな。どうだ、昔と違って慈悲深くなったもんだろう。…今貰ったこれがあるのが理由だがな」
ぱらぱらと、私が渡した札束を指で捲りながら大和は言った。
「そう急ぐものではないから、安心するんだな」
そんな彼を見て、やっと思い知った。この男からの脅迫に終わりが無いということを。私の幸せは、瓦解し始めていたことを。
そうは言っても、金を用意しなければ私の、いや達ちゃんの…彼の人生はどうなる。私のせいで彼まで巻き添いを食らうなんて。それは嫌だ。絶対に嫌だ。
しかしどうすれば良い。再来月末までに金を用意することができるのだろうか。そしておそらく、大和はそれ以降も金をせびってくるに違いない。駄目元でも、金額を下げてもらうようお願いするべきか。いや、彼の性格上、それを許してくれる見込は無いだろう。
とにかく、定期的に金を用意することができる何か伝手が無ければ。そういったことを必死に考えていた、その時であった。常日頃から私を指名してくれている柳瀬川から、アフターの誘いがあったのは。
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