殺人計画者

夜暇

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第四章 新出ちづると柳瀬川和彦の場合2

二 ◯本多 瑞季【 1月10日 午後5時15分 】

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 ちづるが一人自分を納得させている時、カオルこと本多瑞季は、ひたすら考えを巡らせていた。
 一月十日になった。今日までに彼女は、様々なことに困惑させられていた。はらはらと、気持ちが落ち着かない。勤務時間は午後九時までとなっているが、こんな気分で終業時まで仕事を全うできるはずが無い。
 一度自宅に帰り心を落ち着かせよう。それが良い。出勤したばかりで開店もしていない状態だったが、挨拶が終わった後すぐ、早退したい旨を玲子さんに話した。彼女はあまり良い表情はしていなかったのだが、接客に向いていないと思える程、私の顔色が悪かったのだろう。それなら仕方ないということで、早退を許された。

 およそ八畳程度の更衣室に入る。既に、開店時刻である午後五時を過ぎている。店内の皆は表に出ているため、室内には誰もいない。ゆっくりと自分のロッカーまで向かい、鞄を持ち、室内に設置されている長椅子に腰を下ろした。更衣室の端に置かれたウォーターサーバーの蛇口を捻り、紙コップに水を入れた。それをそのまま、口内に流し込む。冷たい。口内だけでなく、全身冷え込む。
「っはあ」
 一気に飲んでしまった。やはり、落ち着かない時は冷たい飲料を飲むに限る。少しは気分が落ち着いた。
とにかく、今日だ。これからどんな風に話が進もうとも、それは私が望んだことである。もはや、逃れ得ない運命なのだ。私は大きく息を吐いて立ち上がった。
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