殺人計画者

夜暇

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第三章 新出ちづると柳瀬川和彦の場合1

五 ◯柳瀬川 和彦【 ― 】

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 俺の名前は柳瀬川和彦。歳は三十。既婚。二十五の時、法人専門の警備・セキュリティ会社である株式会社「パートナーガード」に就職。以来、今年で五年となる。
 現在はスカイタワーシティホテルの警備主任補佐として働いている。「主任補佐」と重々しい肩書きではあるが、業務としてはホテル内を巡回し、各フロアをカメラで監視し、月末に報告書としてまとめる。簡単に言えばそんな仕事であった。
 端的に言えば、俺は現職が好きでは無かった。正直、アルバイトの学生でもできる、毎日変わらない単調な業務。人によっては羨む者も多いだろう。しかし、やり甲斐を感じない、誰でもできる仕事というものは、得てしてその職場で働く意味が分からなくなるものである。
 生活できる程度の金を貰えるのは良いが、その仕事に携わる上で特別な意味は無い。胸を張って「これが俺の仕事だよ」と話すことなど、恥ずかしくてできる訳がなかった。
 そのため、俺自身この職場はあくまで仮の宿であり、いつかはここを辞め、自他共に相応しいと認める…認められるような場所に移る。そんな野心を秘めているのであった。
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