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第1章「Baby Doll」
第12話
しおりを挟むテレビを見ていたら、あっという間にタイムリミットが来てしまった。
『また来てね』
お決まりの言葉と笑顔。
でも十和はもう二度と来ないだろうな。
万金(マンガネ)払ってセックス無し。
口ですらされない。
こんな最低な店は他にないだろう。
『んじゃ、またね。 今度は2人で飲もっか』
しかし十和は笑顔で返すと、私の頭をポンポンと撫でた。
『え? また来るの?』
「またね」なんて聞けるとは思わなかった。
私達はお互いの連絡先もフルネームも知らない。
会う術は、唯一ここだけ……
『気が向いたらね』
十和は少し意地悪に笑うと、扉を開けて出ていった。
それを見送った後で私はベッドに腰を下ろす。
男は汚い。
野蛮で乱暴で、鬼畜。
女を主食とし、エサを得るために手段を選ばない。
それが私の知ってる、男という生き物だ。
十和みたいな男、他に知らない……
『お疲れー』
部屋を出て待機室に向かう途中。
美香が肩をポンと叩き、話し掛けてきた。
『どうだった? あのイケメンくん』
少し楽しそうにも見える。
『別に、他と変わんないよ』
『もっと他に感想あるでしょ~? 上手いとか下手とか』
上手いも下手もない。
何も無かったのだから……
だけど何も無いなんて言えないし。
誰が何処で聞いているかわかんないから。
ここは、それ目的以外の客を許さない所なのだから……
『アユちゃーん、指名入ったよー!』
待機室の前に着き、扉を手に掛けた途端に、受付けから呼び出しがかかる。
本日、2人目のお客さま。
『アユ、人気者だね?』
美香はそう言って笑うと、私を残し部屋へ入っていった。
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