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第1章 何でも屋を営む少年

第13話 父と子

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 カケルとダイ、イリスの三人は電磁塔を襲撃した男達と共に警察署へと連行されていた。
 
 「まったくとんだガキ共だ。お前達、あこそがどんな場所か知ってて入り込んだんだろうな!」
 「仕方ないだろ。こいつが捕まってたんだから」
 「もとあと言えばお前が!!」
 「えぇい黙らんか!」

 牛次が拳骨を二人に喰らわし黙らせた。
 やれやれ。と口で言いながらやれやれと腕を組んで席に座り耳を塞ぎたくなるほどの大声で話した。

 「ともかくお前達に関しては、先ほど警察署からの連絡でお前達が仲間を助ける為に入った事はわかった。もう少し詳しく事情聴取を行ってから家に返すから大人しくしておれ!」
 「あ、あの少しいいですか?」
 「なんだ?」
 「おとうさ、荒神宗一郎は今どこに・・・」
 「総理か?総理は今度ある東西の会談の準備で忙しいからな。今回の件は我々で解決することになった」

 それを聞いたイリスは顔を俯かせ、少し悲しそうな顔をしていたがすぐに顔を上げ笑顔で、そうですよね。と返した。
 警察署についてから俺たちは今回の事を詳しく話をすることになった。イリスを狙ったあいつらのこともあり、イリスの素性を隠し通せないと考えた俺たちは素直に話した。
 12司支の三人は、俺たちが話した事がにわかに信じられないといったような表情をした後、少し席を外して三人で何かを話していた。

 「ありゃ信じてねーな」
 「待たせたな。貴様が言った事が真実なのかどうかについては捕えたあの者達からも話を聞いて判断する。もう暫くこの部屋で三人とも待っておれ」

 そう言って、12司支は部屋を後にした。
 部屋に残されたカケルとダイ、イリスの三人は肩の力を抜いてソファでうなだれた。
 廊下では12司支の三人が歩きながら先程の話について話し合っていた。

 「あの話、天辰お前はどう思う?」
 「嘘はついていないだろうな。何よりもあの者の拳からは邪気を感じなかった」
 「ふんっ!そんなもんは判断材料になりはせん!」
 「宇佐美的にはどっちも中々いい男だし信じてもいいかなって思うよん」
 「黙れ!貴様の意見は聞いておらん若者は黙っておれ!ともかく、まずはこの事を総理にわしは報告してくる!お前達は牢にぶち込んだあやつらから情報をしっかり聞き出せ!」
 「りょ~」
 「わかった」

 そう言って牛次は警察署を出て、宗一郎の元へと戻っていった。残された二人は牛次に言われた通り牢へと歩いていった。
 数時間が経った頃、カケル達三人は部屋から出され解放された。

 「んぁぁぁぁ!やっと出れたぜ」
 「たっく、こんな時間かける事じゃねーだろうがクソがよ!」
 「まぁまぁお二人とも出れたのでよかったじゃないですか」

 カケルとダイが愚痴を溢しながら帰ろうとした時、三人の目の前に髪をオールバックにし、メガネをかけた巨漢と牛次が目の前に現れた。

 「誰だあんた?」
 「たわけ!この方は現日本内閣総理大臣の荒神宗一郎様だ!」
 「こいつがか」
 「お、とう、さ・・・」

 イリスは恐る恐る歩き、宗一郎に近づこうとしたが宗一郎はイリスに背を向け痛烈な一言を浴びせた。

 「誰だ?九条君にも言ったが私に娘はいない。名も知らないお前が気安く話しかけるな」

 その言葉を聞いた二人は何も言わずに走り出し、それに気がついて二人を止めようと動いた牛次を同時に殴り飛ばし宗一郎に殴りかかった。

 「それが!」
 「実の娘にっ!」
 「「かける言葉かッ!!!」」

 二人の拳が宗一郎に届こうとした時、宗一郎の後ろから出てきた二人組の影に止められた。

 「九条!?」
 「落ち着けカケル」
 「ちょ、ちょっ待てよ!お前は誰じゃぁぁ!?」
 「総理補佐だ」

 二人の拳を防いだのは宗一郎と共にここへ来ていた九条と12司支の子の役職である総理補佐に就くサンタンパートの男だった。

 「邪魔すんな九条!この親父一発殴ってやんねぇと気がすまねぇ!」
 「そっちのいけすかねぇ野郎もだ!つーかなんで男が俺の方を止めるんだよ!」
 「そこはいいだろ・・・」
 
 二人が足止めを喰らっている間に、宗一郎は総理補佐の男に連れられて、車に乗り込み走り去ろうとしていた。

 「そうは行くかァァァァァ!!」
 「馬鹿!」

 カケルは走り出した車に向かってそこら辺の石ころを拾い上げ投げつけた。
 九条が止めようとするが、石ころは九条でさえ視認する事が不可能な速さで車にぶつかろうとしていた。
 ドガンッ!という大きな物音と共に土煙がまい、車は土煙によって見えなくなってしまった。

 「総理!馬鹿かお前は!仮にも総理大臣が乗っている車に向かって全力投石する奴がいるか!?」
 「ここないんだろうが!よく見ろよボケ」
 「それが理解できないと言ってるんだ!少しは頭を使ったらどうなんだ!?」
 「うるせぇなぁ、別に大丈夫だろ。ほら、よく見ろよ車には傷一つ付いてないぜ?」

 土煙が晴れ見えてきたのは、カケルが全力で投げた石を片手で何事もなく受け止めている総理補佐の男だった。
 ダイと九条はカケルとは昔からの付き合いであり、誰よりもカケルの事は知っていた。だからこそ、今のカケルの投石が怒りに任せた全力投球だった事は理解していた。

 「あれを止めただと?」
 「おいおい、カケちゃんよ~。まさか権力者が怖くて手抜いたとかじゃねーだろうなぁ?」
 「ふざけんな、怖いけど全力で投げたぜ?痛い目見せてやろうと思ってさ」

 だが、あの男は止めた。
 しかしカケル自身はそのことについてさして驚いた様子はなかった。
 九条はその様子を見て、先程の会話の時も今この瞬間もカケルがあの男に対して警戒心を解いていない事に気がついた。

 「・・・そう驚くことでもないだろ。お前が俺に向かって投げてきたんだ取ることだって予想していたんだろ?」
 「いや?そんな事はないぜ?」
 「まぁいい。総理ご無事ですか?」

 総理補佐の男はカケルとの会話を切り上げ、車から出ようとする宗一郎の手助けをした。
 
 「何が起きた」
 「急な突風です。申し訳ございません」
 「まぁいい。そろそろ行かなければ次のスケジュールに間に合わん行くぞ。・・・それとそこの者」
 「???」

 宗一郎は相変わらず背を向けながら誰かに返事を求めた。皆が顔を突き合わせながら首を傾げていると、宗一郎はその人に対して言葉を発した。

 「あまり無茶な真似をして母を困らせるなよ。後は怪我をするなそれだけだ」

 そう言って車に乗り走り去っていった。
 カケルとダイは顔を見合わせ共にイリスの方を見た。イリスは驚いてフリーズしておりそのまま倒れた。
 その日の夕方、カケルと九条は病院の屋上に出て二人で話していた。
 
 「ふぅー、ダイは?」
 「あいつならイリスと一緒だよ」
 「そうか。まぁ許してやれ宗一郎という男はとてつもなく不器用な男でな」
 「なんであそこまで頑なに認めなかったんだ?」
 「娘の為に決まっているだろ?私も馬鹿じゃない色々調べたらそれこそ沢山出てきたさ」

 九条が言うにはこうだった。
 宗一郎は昔ある女性と付き合っていた。二人はとても仲が良く結婚をするまでに至ったらしい。
 しかし、悲劇は第三次世界大戦が始まってから起こった。当時、宗一郎の父親で内閣総理大臣の役職に就いていた長寿郎は二人の仲を引き裂き、自分の内閣としての立場を守る為だけに宗一郎をとある官僚の娘と婚約させたらしい。
 当然、宗一郎は反対し抗議もしたが聞き入れてもらえずそのまま婚姻したらしい。宗一郎も当時の日本の現状を知っていた事からも結婚していた女性と別れ、日本を救う為にそれを受け入れたと言う。
 あそこまで認めなかったのも、今の日本では自分の娘と言うだけで命を狙われる心配があるからだろうと九条は言っていた。

 「その元妻の子がイリスと言うわけか。その女の人、海外の人なのか?」
 「らしいな。現在は祖国に帰って娘と二人で暮らしているらしいぞ。だが何故か娘だけはこの街に来てしまった。何故なのかはイリスに聞かなければわからない事だがな」

 二人はため息をつきながら夕日が沈む空を静かに眺めていた。

 ーー

 数日後、イリスは退院し母親と連絡をとり国へ帰る事になった。
 どうやら母親に何も言わずに日本へ来ていたらしく、電話越しだが物凄くキレていた。
 俺とダイ、そして万が一のために護衛として来た九条の三人で空港までお見送りに来ていた。

 「御三方、今回の件は本当にありがとうございました。黄昏荘の皆さんにもそう伝えてください」
 「あぁ、伝えておくよ」
 「イリスちゃんまた来てね必ずだよ!俺はいつでも君を待ってるぜ?」
 「ふふっ、はい必ずまた会いましょう」

 そうして、俺たちはイリスと別れた。
 その後は九条の車で帰ることになったので乗せてもらって帰ろうとしたが路上駐車していたらしく、警察にお叱りを受け帰るまで五時間も空港で待たされたのでした。

 「あいつ刑事のくせに何してんだよ」
 「あぁ、イリスちゃん君とまた会える日を僕はずっと待っているよ」
 「聞いちゃいねぇよ。ダメだこりゃ」
 「こいつもダメだこりゃ」
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