歌を唄う死神の話

ちぇしゃ

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願い事は雪の列車と共に…。

5話

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カーテンの隙間から漏れる光が眩しくてか
変な夢にうなされてか、ボクは目が覚めた。

据え置きの目覚まし時計に視線を移すと、どうやらアラームよりも早く目が覚めたらしい。


「おはよう」
「あぁ、おはよう。しんや。」
リビングへ来て、自分の席へ腰を落ち着けると
いつものように、すでに自分の食器が用意されていた。
隣は妹の席だが、食器が片付けられているのを見ると、なるほど今日はもう
出掛けて行ったのか、珍しいこともあるもんだと関心した。


信号待ちをしていると勇者ごっこだとはしゃぐ小学生の一群が横を通り過ぎて行った。
そんな光景を見て、やよいもよく外であんな風に遊んでいたんだろうなぁ、なんて思って
なんだか謎に寂しく感じた。
ボクは家の中の人間だったから、よくわからないけど外で遊ぶ子ってみんなあんな感じなんだろうか
ひょっとしたらボクも、あんな風に友達と遊んでいたのだろうか?なんて思った。








「あいつなにやってんだ…」
教室の中は、明日からやってくるであろう冬休みに心躍らせて
溢れだす賑わいを見せていた。クリスマスに誰と過ごすのかとか、
お年玉で何を買うだとか、宿題の話だとか、まったく関係ない話だとか、
だけどボクにはそんな内容の話を交わすような相手は居ないので、いつだって蚊帳の外だし
彼ら彼女らの物語には一切関りがないんだ。
そんな事よりも、そんな内容の話に耳を貸す程にボクは余裕はない。
教室にくると、おそらくはボクより先に家を出たはずの妹が、まだ席についていないのだ。
そろそろ担任が現われ体育館へ生徒たちを連れていくだろう時間になっていた。
ひょっとして、家を出て迷子にでも…はないとして、
事故にでもあったか?いやいや、あいつが車にひかれたとして、多分それでも走って登校してきそうだ。
「やばいんだけど!?私さっき車に轢かれたんだけど!すごくない!?」と轢かれた事を皆に報告して回るだろう。
しかし、それでも心配になってしまうのは、腐ってもボクはあいつのお兄ちゃんだからなのかもしれないな。

ポケットからスマホを取り出し、電話帳を開きボクは呆れながら
妹の名前を呼び出そうとした。
「………あれ?」
なかったのである。
妹の名前である『笹川やよい』の名前が果たして存在していなかった。
寝ぼけて削除でもしてしまったのだろうか?
終業式を終えて、クラスでは先程の賑わいを沸騰させていた。
そんな煩い教室から抜け出してボクは母親に電話を掛けた。
しかし、母さんは言うのだ。




「やよい?って誰?」


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