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銀色の夢を
4話
しおりを挟む気が付くと私達四人は、半壊したお城の屋根の上に立っていた。
周りには壊れたカラスの石造が等間隔に飾られていて、しかもそれらから不気味な視線を感じるものだから
気持ち悪いと思った。
「ブルーって高所恐怖症だっけ?大丈夫か?」とレッドに心配される。
「違うよ。」
「俺は好きだぞ。」
「だろうね。」
これは皮肉だ。
けど、レッドは私のその皮肉に気づかず胸を張っている。
なんて、バカな事をしていると、足元からズズズッという重い地響きが聞こえてきた。
そして、もう何度も何度も繰り返し聞き、鼓膜に刻み込まれたであろう
叫び声が鉛色の空から引き裂いて降ってきた。
遅れて全身を真っ赤な鱗で覆われたドラゴンが私達のもとへ飛び込んできた。
ズガンッ!
「あひゃッ!?」
後ろへ飛びのくことで私達はなんとかいきなり全滅になる。なんて恥ずかしい事にならずに済んだ。
私一人だけ、なんか恥ずかしい叫び声を出してしまった事は、目を瞑ってもらいたい。
「やったな!先手必勝だぁ!!」
「いや、むしろ諸突猛進!!」
武器を大剣に持ち替えたレッドは怒号のような叫び声をあげて、ドラゴンの目の前へ突っ込んでいく。
叫び声でイエローのツッコミは掻き消された。「しょうがないな。」と肩を竦めて彼も短剣を持つ手に力を込めて飛び掛かる。
と、あたふたしているところへ、ドラゴンが口から真っ赤な爆炎を吐きだし
二人を薙ぎ払った。
花火が暴発したようなエフェクトと共に、二人ともあちこちに弾き飛ばされる。
そんな光景に驚いている間もなく、目の前のドラゴンは二発目を吐き出した。
3回くらい前もそんな最後だった。
だから私は顔を覆い、迫りくる衝撃に身構えた。
「…………」
眼を開くと、ウタさんが大鎌でその炎を防いでくれていた。
「ブルーさん、援護をお願いできますか?」
「ぇ、うん、。」
そう確認をとり、「じゃ、お願いします。」とまるで扇風機にあたっているみたいに涼しい顔で言っていた。
よいしょっと。と腰を上げるみたいにドラゴンの炎を吹き飛ばし、彼女は大鎌を両手で握りしめた。
迫りくるウタさんへ、ドラゴン自身も焦ったのか何度も炎攻撃を繰り出す。
しかし、それをまるでスキップするように避けていく。
まるで、踊るように。
まるで跳ね回るように。
殴り掛かる大きな前足を、握る得物で流す。
鎌首を持ち上げ、予備動作から先程と同じような、強い炎攻撃を繰り出そうとする。
「ウタさん!」危険に気付き注意を促そうとする。
左手に大鎌を持ち替え、空になった右手を相手の顔面に向ける。
<炎よ!>
字面的には違うかもしれないが、なんだか爽快だった。
彼女がそう呟くと、地面から彼岸花を思わせるような紅い火柱がドラゴンを突き上げた。
巨大な体躯が逆さまになり、転倒してジタバタもがいていた。
「さて、いいですか?」
ウタさんは私に問いかける。私はレッドとイエローを叩き起こして、「もちろん。」と親指を立てて見せた。
「じゃぁ、ゲームセットです。」
それは私達に向けてか、転んだ亀のように暴れるドラゴンに向けてか、ゲームへ向けてか、彼女は言った。
全員、武器を持つ手に力をこめなおし、襲い掛かる。
まるでバーゲンセールの戦争のように、
まるでガキ大将と眼鏡の短パン少年の喧嘩のように、
煙が巻き上がるような勢いでの反撃物語で、ついに私達の白星で戦いに幕を下ろす事ができた。
―――…
「お疲れ様。」
感極まって大はしゃぎしているレッドや、それを落ち着かせようとしているイエローに向け
ウタさんは微笑ましく労う。
「明らかにウタさんの独壇場だったように思えたけど。」
「そうですかね。」
「そうですよ。」
とぼけた口調でウタさんはそう言う。なんだか少し可愛く見えた。
「ところで、例のドロップ品は?なんか宝箱とかさ。」
独りではしゃいで喜んでいるレッドの事を置いてきぼりにしてイエローはあたりを模索していた。
「この勝利こそが報酬…じゃ、嫌だよね。」しかめっ面を浮かべるイエローは、「ボクはレッドみたいに単純じゃない。」とか言いたげだ。
しばらくそれらしいものを探してみたが、なかなか見当たらずダンジョンから強制的に弾き出されてしまい、
レッド以外は消化不良のような状態だった。
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