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プロローグ
しおりを挟む小学校からの幼なじみの女の子が好きだった。
優しくて泣き虫で少し世間ずれした彼女を守るのが私の役目だと思った。
だからこそ、この気持ちは隠さなくてはいけない。
そう決めたのに、誰よりも人の心に敏感な彼女にあっさりとバレてしまったのは高校卒業を間近に控えた時だった。
彼女に言わせると、
「もっと前から知ってたよ?」
とのことで、長い付き合いというのも考えものだ。
そんなこんなで晴れてお付き合いに至った。
私達の関係を知るのはごくわずかな人だけだったが、それでも幸せだった。
その幸せが長く続かない事を私は知っていたはずなのに、私は見て見ぬふりをしていた。
幸せの終わりは彼女の30歳の誕生日に来てしまった。
「飛鳥ちゃん……お父さんに、お見合いしないかって言われて…。どうしよう…。」
嫌だ、と泣く彼女に私はかける言葉がなかった。
私のせいだ。
決して祝福されないと知っていながら、彼女を縛りつけた。
ただただ現実という絶望に打ちひしがれる私達。
「日菜さんさぁ…そんなにお見合い嫌なら俺と結婚する?」
場違いで空気の読めない男の台詞は、その時の私達にとっては大げさではなく神のお告げのようだった。
「その代わり、姉貴は柚流と結婚してよ。」
たまたま彼女の誕生日パーティーに呼んでいた私の弟は、自分のプロポーズどころか、恋人である柚流のプロポーズまで代弁して不適に笑っていた。
「は?」
「私と翼くんが?え、でも、柚流くんが…え?」
わかりやすく混乱する私と日菜に、翼は何故か満足そうに笑う。
「姉貴と日菜さん、俺と柚流。それぞれがそれぞれの恋人と結婚する。交換結婚…っていうのはどう?」
「翼、あんた柚くんの意見も聞かないで何勝手な事…」
「あーちゃん、勝手じゃないよ。つーくんと前に話した事があるんだ。あーちゃんとひーちゃんは俺達の事いっぱい助けてくれて、お返しに何が出来るだろう?って。」
「その時は、それぞれが姉貴と日菜さんと結婚すれば社会的には守れるなーなんて軽いノリみたいなもんだったけど、こんなに泣いてる日菜さん見たらほっとけないしょ。」
「あくまでも表面上の結婚であって、別れてほしいわけじゃないよ?もちろん、2人が嫌だったら無理にとは言わないよ。」
2人の提案はあまりにも突拍子がなくて、馬鹿げている。そんなに上手くいくとも思えない。
頭ではそう思っているのに、
いつもと変わらない柚くんの優しい笑顔が
いつの間にか成長していた翼の真剣な眼差しが
私の手を握る日菜の力強さが
私を夢物語に導いた。
「わかった。2人のプロポーズ、まとめて受けてやる。」
こうして始まった2組の不思議な結婚生活。
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