スワップマリッジ

ふくちろ

文字の大きさ
上 下
1 / 8

プロローグ

しおりを挟む



小学校からの幼なじみの女の子が好きだった。
優しくて泣き虫で少し世間ずれした彼女を守るのが私の役目だと思った。

だからこそ、この気持ちは隠さなくてはいけない。
そう決めたのに、誰よりも人の心に敏感な彼女にあっさりとバレてしまったのは高校卒業を間近に控えた時だった。
彼女に言わせると、
「もっと前から知ってたよ?」
とのことで、長い付き合いというのも考えものだ。
そんなこんなで晴れてお付き合いに至った。
私達の関係を知るのはごくわずかな人だけだったが、それでも幸せだった。

その幸せが長く続かない事を私は知っていたはずなのに、私は見て見ぬふりをしていた。


幸せの終わりは彼女の30歳の誕生日に来てしまった。


「飛鳥ちゃん……お父さんに、お見合いしないかって言われて…。どうしよう…。」


嫌だ、と泣く彼女に私はかける言葉がなかった。

私のせいだ。
決して祝福されないと知っていながら、彼女を縛りつけた。



ただただ現実という絶望に打ちひしがれる私達。




「日菜さんさぁ…そんなにお見合い嫌なら俺と結婚する?」


場違いで空気の読めない男の台詞は、その時の私達にとっては大げさではなく神のお告げのようだった。


「その代わり、姉貴は柚流と結婚してよ。」


たまたま彼女の誕生日パーティーに呼んでいた私の弟は、自分のプロポーズどころか、恋人である柚流のプロポーズまで代弁して不適に笑っていた。

「は?」

「私と翼くんが?え、でも、柚流くんが…え?」


わかりやすく混乱する私と日菜に、翼は何故か満足そうに笑う。


「姉貴と日菜さん、俺と柚流。それぞれがそれぞれの恋人と結婚する。交換結婚…っていうのはどう?」

「翼、あんた柚くんの意見も聞かないで何勝手な事…」

「あーちゃん、勝手じゃないよ。つーくんと前に話した事があるんだ。あーちゃんとひーちゃんは俺達の事いっぱい助けてくれて、お返しに何が出来るだろう?って。」

「その時は、それぞれが姉貴と日菜さんと結婚すれば社会的には守れるなーなんて軽いノリみたいなもんだったけど、こんなに泣いてる日菜さん見たらほっとけないしょ。」

「あくまでも表面上の結婚であって、別れてほしいわけじゃないよ?もちろん、2人が嫌だったら無理にとは言わないよ。」


2人の提案はあまりにも突拍子がなくて、馬鹿げている。そんなに上手くいくとも思えない。
頭ではそう思っているのに、

いつもと変わらない柚くんの優しい笑顔が

いつの間にか成長していた翼の真剣な眼差しが

私の手を握る日菜の力強さが

私を夢物語に導いた。


「わかった。2人のプロポーズ、まとめて受けてやる。」


こうして始まった2組の不思議な結婚生活。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今夜妻が隣の男とヤるらしい

ヘロディア
恋愛
妻の浮気を確信した主人公。 今夜、なんと隣の家の男性と妻がヤるというので、妻を尾行する。 ひたすら喘ぎ声を聞いた後、ふらふらと出てきた妻に問い詰めるが…

おチンポ冷凍室

野田C菜
大衆娯楽
究極のオカマの物語 ~配下のラッキースケベ生活~

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

処理中です...