上 下
13 / 13

第十三話(完)

しおりを挟む
 ライオネルが意識を取り戻してから二ヶ月が経った。二週間寝たきりの上、腕の骨折もあったため、以前のように体が動かせず、体の機能回復のためリハビリに明け暮れていた。

 そんなある日、領都の屋敷にいるライオネルとエドモンドの元に王都からキースがメルヴィン王からの召喚状を持ってやってきたのだった。

 キースは二人に召喚状を渡し、自分の意見を話す。

「おそらく今回の功績についてだと思う。レオの体調が悪いなら、変更していただくように伝えるが……」

「レオはだいぶ回復しているが、無理をさせたくない」

 エドモンドがライオネルを守るように抱きしめながら言った。キースは嫌そうな顔をして言うのだった。

「おいっ!! 頼むから、いちゃつくのは二人だけの時にしてくれ」

 ふたりは慌てて離れる。

「キース兄、ゴメン」「キース様申し訳ありません」

 ライオネルとエドモンドは息もピッタリに同時に謝るのだった。

 キースはそんな二人が気にならないのか、急いでいるのか、息が合っていることをスルーして、話を続けた。

「で、話の続き。召喚をどうする?」
「キース兄、エドは無理をさせたくないと言うけれど、僕は行こうかと思う」
「大丈夫か?」

 問いかけるキースにライオネルは大丈夫だとアピールするように頷く。

「大丈夫だよ。体調もいいし、陛下には昔ご迷惑をおかけしたので、延期していただくのは申し訳ないから行くよ」

 行くと言うライオネルの返事にキースは心配そうに尋ねた。

「レオ、わかった。二人は馬車で行くか?」
「キース兄ありがとう。そうさせてもらいます」「キース様、ありがとうございます」

 相変わらず、息の合う二人にキースはいじるような言い方で突っ込む。

「仲良すぎだ!!」


 一週間後、三人は領地から王都のデルヴィーニュ公爵家の屋敷へやって来ていた。

 呼び出しの日、三人は王宮へ馬車で向かう。

 王宮へ行くと言う事で、三人は普段のラフな格好ではないキリッとした正装であった。顔に大きな傷痕があるものの、その傷が容姿端麗の顔に男らしさをプラスしてしまっているライオネルはもちろん、迫力のある顔を持つエドモンドも平凡な容姿のキースも貴族特有のオーラのためか、正装が彼らの容姿をさせているのか、王宮の廊下ですれ違う者たちが思わず目を止めるほどであった。

 三人は廊下を進み、ライオネルとエドモンドは謁見の間へ入り、キースは控室で待機することとなった。

 王の側近が王の訪れを知らせる。

 相変わらず美丈夫なメルヴィン国王が王族のオーラを放ちながら謁見の間へ入ってきたので、二人はひざまずき、顔を伏せ、玉座へ座るのを待つのだった。

「顔を上げよ」

 メルヴィン王の言葉に従い、二人は顔を上げる。メルヴィンは二人を見渡す。そして、ライオネルを改めて見たのだった。

「このたびは、ベルンハルト国の侵入を身を持って防いだそうだな。大変大義であった。勲章と褒美をつかわそう。ライオネル、何か望みは?」

 ライオネルは申し訳なさそうに返事をする。

「いえ、ありません。お気持ちだけ、頂戴致します」

 ライオネルの望みがないと言う言葉にメルヴィンは眉間にしわを寄せる。

「ライオネル、それでは、他の者へ示しもつかん」

 ライオネルは首を振る。

「いいえ、陛下には、主催された学園の卒業パーティーを台無しにして、ご迷惑をお掛けしています。今回のことで、少しでも、償いができましたら……」

 メルヴィンはライオネルが言い終わらぬうちに話し出す。

「あの時のことなら、すでに許しておる。あの後のライオネルのことも知っておる。北の砦での任務とこの度のこと、普通の公爵家の嫡男ではなかなか出来ぬこと。これからも西の国境の守りを頼んだぞ」
「はい。そのようなお言葉を頂戴し、ありがたく存じます」

 メルヴィンからかけられた言葉にライオネルは目が潤み始める。メルヴィンはライオネルにニッコリと笑いかける。

「明日の夜、この度の事で戦勝報告を兼ねた夜会を行う。その時に準備出来るよう、今日中に褒美を考えておくように。今夜、解答を聞きに使いを屋敷にやるのでその者に解答せよ」
「承知いたしました」

 ライオネルは頭を下げた。
 メルヴィンはエドモンドの方に顔を向ける。

「そして、副官のエドモンド・ウィアー!」
「ハッ!!」
「その方もこの度の働きを褒め称え、勲章と褒美を遣わす」
「いえ、私は大した働きをしておりません」

 メルヴィンは謙遜するエドモンドに向かい説得するように話をはじめたのだった。

「ウィアーよ、謙遜も時として嫌みになるぞ。ライオネルとそなたがいたからこそのこの度の勝利。どちらか片方欠けても侵入を阻止出来ぬかもしれなかったのだ。勲章と褒美を受け取ってもらわねば私が困る。受け取ってくれるよな」

 エドモンドはメルヴィンの有無を言わせぬ問いかけにNOと言えず、「はい」と返したのだった。

 そして、話が終わり、ライオネルとエドモンドはメルヴィン王が謁見の間から退出するのを待って、二人はキースの待つ控室へ戻ってきた。ライオネルとエドモンドはキースに謁見の内容を報告する。キースは尋ねるのだった。

「レオとエドモンドは本当に欲しいものが無いのか?」
「キース兄、ないよ」
「私もこれと言ってありません」
「二人は欲が無いなぁ」

 キースはあきれるよう首をすくめるのだった。

「キース様、私はレオと幸せに暮らせたらそれで十分なので」
「僕もエドと一緒ならそれが幸せだから、他に欲しいものなんてないよ」

 そう言ったかと思うと、ライオネルとエドモンドは見つめ合う。キースはイラッとする。

「コホンッ!ここは王宮だ。いちゃつくのは家に帰ってからにしろ」
「ゴメン、キース兄」「キース様、申し訳ありません」
 
 相変わらず、息の合った二人にキースは言葉無くため息をつくのだった。


 王都の屋敷へと戻った三人は二人への褒美について話し合い、情勢が落ち着いたら、検問所の補強と落とした橋の再建としてもらうこととした。

 その解答を聞いたメルヴィン王がそれでもそれぞれ個人に何か贈りたいと言う事でライオネルとエドモンドは勲章と共に領地の無い一代騎士爵をもらったのだった。


◇◇◇◇
 王都から領地へ戻った天気のいい日の夕方、ライオネルとエドモンドはライオネルのリハビリも兼ねて、それぞれ馬を走らせ、領都を見渡せる丘までやって来た。
 二人は眼下に見える夕日に照らされた美しい領都の街並みを見渡す。領都を見渡したライオネルは隣にいるエドモンドを見つめて微笑むのだった。

「エド、僕、大怪我したけれど、この美しい街並みを守れたこと、誇りに思うよ」
「これもレオが命をかけて橋を落としたからだ。レオが守ったんだ」

 レオの頑張りを称えるように言うエドモンド。否定するように首を振るライオネル。

「僕だけじゃあないよ。エドや皆の力があってこそだと思う。剣の腕を上げるために頑張って来たけれど、実際に戦ってみて、一人じゃあ大した事出来ないんだなと思った。こんな風に思えるのもエドと出会ったからだね」
「そんないい風に言ってもらえるなんてな。思いもしなかった」

 それを聞いたライオネルはフフッと笑う。

「エドと出会って、いろんな意味で思いもしない人生を過ごしているよ。上へ上へと上を目指し続ける日々だったけど、エドと一緒に心が穏やかに過ごす日が来るなんて思わなかったよ」

 ライオネルの言葉がうれしいのか、エドモンドは愛しい人を優しく見つめながら優しい声で話し始めた。

「それは俺もだ。俺もレオに声を掛けられるまで、まさか王国の騎士を辞めるなんて思いもしなかった。でも、愛する人と日々を過ごせる幸せを感じている。愛してるよ、レオ」
「僕も愛してるよ、エド」

 二人は心穏やかに互いに見つめ合い、微笑み合ったのだった。

END



*************
完結まで読んでいただいてありがとうございました。何とか、今年中に完結出来ました。
お気に入り登録してくださった方ありがとうございます。嬉しかったです。

この作品、番外編のつもりだったのですが、ライオネルの暴走で、本編より長くなると言う予想外の結果になりましたm(_ _)m

うまく書けない所が続出して、表現が拙い所が多々あると思います。いつか修正できれば……と思います。
読んで頂いてありがとうございましたm(_ _)m

      ↓

リリアのその後について書き始めました。

「私、幽閉されちゃいました~幽閉された元男爵令嬢に明日はあるか?~」 (https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/42331401)

淡々とリリアの日常を書いていく予定なので、盛り上がり(鞭とか鎖とか牢獄とか?)を期待されている方には申し訳ないですが、(たぶん)盛り上がりません。

良かったら読んでみてくださいませm(_ _)m
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

なぁ恋
2020.10.05 なぁ恋
ネタバレ含む
ヒンメル
2020.10.05 ヒンメル

実はキースの話も考えてたのですが、更に話が長くなりそうな上に忙しくて文章がなかなか書けなかったのために、低い文章力が退化しまして、うまく書けませんでした(T0T) 申し訳ないですm(_ _)m


解除
みながみはるか

更新ありがとうございます(* ̄∇ ̄)ノ
いやぁ、もうライオネルとエドとキースの三人で3ぴ……げふんげふん…す、末永く、仲良くシテクダサイ(* ̄∇ ̄*)
結局、リリアはライオネルとエドのイチャラブの流れ玉を喰らいながらライオネルのお飾り嫁のままなんですかね?
まぁ、過度な贅沢と社交界に表だって出席せずひっそり暮らしていれば、それなりに暮らしていけますけどね。
兎に角、執筆ご苦労様でした!

ヒンメル
2019.12.28 ヒンメル

最後まで読んでいただいてありがとうございましたm(_ _)m

三人は末永く……更なる扉を開いてしまうかも……キースがちょっとオカンに見える時もあるので(~_~;)

リリアはお飾りの妻のままですね。
跡継ぎ以外の恋愛には緩い国なので(ご都合主義ですが)、社交界では噂などからライオネルとエドモンドの関係を知られていて、リリアがやらかしたことも知られていて、社交界に出てこない事も周りは察しているんじゃあないかなぁと思います。
とは言え、実家よりはいい暮らしはできると思うので、やらかさなければ、それなりには暮らしていけると思います。

感想をたくさんいただいてありがとうございます。嬉しかったです。
完結までお付き合いいただいてありがとうございましたm(_ _)m

解除
みゆぶー
2019.12.28 みゆぶー
ネタバレ含む
ヒンメル
2019.12.28 ヒンメル

最後まで読んでいただいてありがとうございましたm(_ _)m

リリアかぁ……この作品はカテゴリーをBLにしていたのと番外編でライオネルに重点を置いていたので、実はそこまで考えてませんでした。
番外編書くかなぁ?書けるかなぁ?

実は、前作で生まれて初めて文章を書いてみたのですが、書き初めて、約半年、今ちょっと燃え尽きてます(°_°)
(思った以上にボキャブラリーが無いからか文章を書くのが難しかったです。毎日更新してる方、「神!!」って思います。)

年が明けて、思いついて書けそうなら、書いてみます。

書けなかった時のためにリリアのその後ですが、キースがリリアの管理をしていると思います。
キースはライオネル第一なので、ライオネルが気にしたらいけないので(ライオネルが気にするのか分かりませんが……)、ライオネルのためにソフトな方法を取りそうな気がします。軟禁?幽閉?取り合えず、暗殺は無いなぁと思います。


解除

あなたにおすすめの小説

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

魔術師の卵は憧れの騎士に告白したい

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
魔術学院に通うクーノは小さい頃助けてくれた騎士ザイハムに恋をしている。毎年バレンタインの日にチョコを渡しているものの、ザイハムは「いまだにお礼なんて律儀な子だな」としか思っていない。ザイハムの弟で重度のブラコンでもあるファルスの邪魔を躱しながら、今年は別の想いも胸にチョコを渡そうと考えるクーノだが……。 [名家の騎士×魔術師の卵 / BL]

俺がイケメン皇子に溺愛されるまでの物語 ~ただし勘違い中~

空兎
BL
大国の第一皇子と結婚する予定だった姉ちゃんが失踪したせいで俺が身代わりに嫁ぐ羽目になった。ええええっ、俺自国でハーレム作るつもりだったのに何でこんな目に!?しかもなんかよくわからんが皇子にめっちゃ嫌われているんですけど!?このままだと自国の存続が危なそうなので仕方なしにチートスキル使いながらラザール帝国で自分の有用性アピールして人間関係を築いているんだけどその度に皇子が不機嫌になります。なにこれめんどい。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

Ωだったけどイケメンに愛されて幸せです

空兎
BL
男女以外にα、β、Ωの3つの性がある世界で俺はオメガだった。え、マジで?まあなってしまったものは仕方ないし全力でこの性を楽しむぞ!という感じのポジティブビッチのお話。異世界トリップもします。 ※オメガバースの設定をお借りしてます。

尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話

天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。 レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。 ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。 リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。