婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル

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第二章

第十二話

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 六人と六匹の竜が更に訓練を重ねたある日の訓練日、担任のハイゼから提案がなされた。

「皆さん、訓練を始めてもうすぐ一年になります。訓練の成果を確認するため、明日から一泊二日で訓練飛行を行いたいと思います。」

 ハイゼからの提案で教室がざわついた。噂には聞いていた者もいるのだろうが、知らなかったマチルダは詳しく話を聞こうと耳を傾ける。

ハイゼは話を続ける。

「行先はラーゼン国の暗黒の森です。名前を聞いたことのあるものもいるかもしれませんが、人の住まない魔物のいる森になります。そこまで強くない魔物しかいないのですが、油断は禁物。気をつけて訓練を行いましょう」

 ユリアンが手を挙げた。

「先生、その森は立ち入り禁止になっていると聞いたごとがあるのですが……」

 マイスナー商会は手広く他所の国とも取引をしているからか森について知っているようで、ユリアンは心配そうに尋ねた。

 ハイゼはその質問に頷きつつ、ユリアンを見た。

「そうです。普通の人であれば立ち入れば命がなくなりますので、立ち入り禁止ですね。でも、君たちはもうすぐ竜騎士として独り立ちします。その程度であれば、油断しなければ大丈夫です。私もついて行きますしね。」

 ハイゼの返答にユリアンはホッとした表情を見せた。


 訓練飛行当日、全員訓練場へ集合した。それぞれ制服に身を包み、剣と水分と携帯食を準備してきていた。

 普段は制服をきていないハイゼも訓練飛行と言う事で竜騎士の制服を着ている。そして、その左胸には竜騎士の証とも言うべき記章が付いていた。訓練生達の胸にはまだついていないものだ。

「では、皆さん、連れ居ている竜を本来のサイズに戻すように指示してくださいね」

 ハイゼの合図とともにそれぞれの竜は学校内のサイズではなく、本来のサイズに戻っていった。そしてそれぞれ騎竜するのだった。

 こうして七人と七匹の竜はラーゼン国の暗黒の森を目指し旅立った。

 隣国のラーゼン国の暗黒の森へは2時間ほどで到着した。空から見ても鬱蒼と広がる広大な深い森で終わりが見えない。その森をつつむ空気は澱んでいた。

 七人と七匹の竜は森の始まるところにある開けた場所に降り立った。

 全員が降り立ったのを確認したハイゼは自分の荷物から六つの笛を取り出した。

「これを一つずつ受け取ってください」

ハイゼにそう言われ、全員が一つづつ笛を受け取った。受け取り終えたのを確認して、ハイゼは話を続ける。

「これから一人づつ森に入ってもらいます。そして、これから24時間この森で過ごしてください。魔物が出た場合は、倒して魔物の核を回収してください。
 そして、24時間経ったらここへ戻ってください。何か困ったことがあればその笛を吹いていただければ、私が駆け付けます。
 私たち人間に聞こえなくても竜達には遠くに居ても聞こえる音が鳴ります。ですので、何か困ったことがあれば、ためらうことなく鳴らしてくださいね」

「「「「「「了解しました!!!!」」」」」」

六人と六匹の竜がそれぞれ了解したとばかりにうなずいた。

「では、出発してください。いってらっしゃい」

 ハイゼの言葉と主に六人と六匹の竜はそれぞれ思い思いの方向へ旅立っていった。

 マチルダはリラと共に来た方向とは真逆に、更に森の奥に歩いて進んでいった。

 初めての暗い森だったが、リラが一緒だからか、不思議と怖さはなく、勇気を持って進んでいった。

 しばらく進むと木々の鬱蒼とした中から何かの声が聞こえてきた。

 まわりに警戒しながら進むとそこでは一匹の大きな犬対多数の顔がトカゲで二足歩行のリザードマンが戦っているようだった。

 マチルダとリラは様子を伺う。

「リラ、どうしたらいいかしら?両方やっつけたらいいのでしょうか?
犬の味方? リザードマンの味方……それは、ないわね……」

 マチルダがどうしていいかわからず、リラに尋ねた。

『そうじゃな……あの犬っころ、知り合いじゃ。助けてやってくれ』

「リラの知り合いなら、助けないといけないですね。行きましょう」

 マチルダは腰に下げていた剣を抜き、犬を助けるため走り出した。それにリラも続く。

 犬の方しか見ていないリザードマンの死角からマチルダは切りつけ、リラは得意の炎を口から放ちたたかった。

 マチルダとリラの姿にその大きな犬は加勢を得たからかリザードマンをなぎ倒し始めた。犬の力強い脚力にリザードマンは押しつぶされていった。
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