18 / 24
第二章
第八話
しおりを挟む
なかなか体力のあがらないマチルダは根気よく基礎体力をつけるため、次の日も放課後トレーニング場をランニングする。初めて走った時と比べると格段に体力が付き、一周走るだけで息が切れていたのが、息が切れなくなっていた。
そうして走っている所へ、ダニエル・シェーファーとイグニースがやってきた。珍しくフランク・ベッカーとブラウは一緒ではないようだった。
マチルダは面倒なことに巻き込まれるのが嫌で、咄嗟に目をそらそうとするが、ダニエルがぐいぐい合わせようとしてきて、マチルダとダニエルの目が合うのだった。ダニエルの目にマチルダを蔑む色は見えない。
とはいえ、色々絡まれているマチルダはダニエルの事が苦手だったので、軽く会釈してさっさと通り過ぎようとするとダニエルが声をかけてきた。
「マチルダ……お前はいつも走っているのか?」
「?? はい……そうですが、……何かご用ですか?」
マチルダが露骨に嫌そうに返事をしたことにダニエルはちょっとショックを受けつつ、言葉を返す。
「いや……用と言うほどではないのだが、毎日放課後に走っているようだが……」
「(なんでそのことを知ってるのかしら? ちょっと気持ち悪いわ……)
はい、皆様と比べて体力がありませんので、少しでも追いつこうと……」
「そうか、一生懸命頑張っているのだな。以前はすまなかった。」
そう言って、ダニエルはマチルダに頭を下げた。頭を下げられたマチルダは焦る。
「シェーファー様、頭をお上げください。気にしておりませんので。」
そう言ってマチルダに愛想笑いではあるのだが微笑まれたダニエルは顔を赤くしていた。
耳まで真っ赤にしたダニエルを見たマチルダは不思議そうにダニエルを見た。
「お風邪をお引きになられでいるのですか? 耳まで赤いです。大丈夫ですか?」
ダニエルはあんなに意地の悪いことを言っていたのに体の心配までしてくれるマチルダの顔を見ると心臓の鼓動が体中に響きそうになった。微笑むマチルダの顔を頭の中から離すことができそうになかった。
その様子にリラとイグニースはニヤニヤと笑っている。
『おぬしの主は恋に落ちおったか?』
『リラ様、そのようです。あのようなダニエル様を見るのは初めてです』
『それにしても、マチルダは全く気付いていないようだ』
『そうですよね。主様がちょっと不憫です』
そう言ってイグニースは出ていない涙をふく素振りを見せた。
そうして走っている所へ、ダニエル・シェーファーとイグニースがやってきた。珍しくフランク・ベッカーとブラウは一緒ではないようだった。
マチルダは面倒なことに巻き込まれるのが嫌で、咄嗟に目をそらそうとするが、ダニエルがぐいぐい合わせようとしてきて、マチルダとダニエルの目が合うのだった。ダニエルの目にマチルダを蔑む色は見えない。
とはいえ、色々絡まれているマチルダはダニエルの事が苦手だったので、軽く会釈してさっさと通り過ぎようとするとダニエルが声をかけてきた。
「マチルダ……お前はいつも走っているのか?」
「?? はい……そうですが、……何かご用ですか?」
マチルダが露骨に嫌そうに返事をしたことにダニエルはちょっとショックを受けつつ、言葉を返す。
「いや……用と言うほどではないのだが、毎日放課後に走っているようだが……」
「(なんでそのことを知ってるのかしら? ちょっと気持ち悪いわ……)
はい、皆様と比べて体力がありませんので、少しでも追いつこうと……」
「そうか、一生懸命頑張っているのだな。以前はすまなかった。」
そう言って、ダニエルはマチルダに頭を下げた。頭を下げられたマチルダは焦る。
「シェーファー様、頭をお上げください。気にしておりませんので。」
そう言ってマチルダに愛想笑いではあるのだが微笑まれたダニエルは顔を赤くしていた。
耳まで真っ赤にしたダニエルを見たマチルダは不思議そうにダニエルを見た。
「お風邪をお引きになられでいるのですか? 耳まで赤いです。大丈夫ですか?」
ダニエルはあんなに意地の悪いことを言っていたのに体の心配までしてくれるマチルダの顔を見ると心臓の鼓動が体中に響きそうになった。微笑むマチルダの顔を頭の中から離すことができそうになかった。
その様子にリラとイグニースはニヤニヤと笑っている。
『おぬしの主は恋に落ちおったか?』
『リラ様、そのようです。あのようなダニエル様を見るのは初めてです』
『それにしても、マチルダは全く気付いていないようだ』
『そうですよね。主様がちょっと不憫です』
そう言ってイグニースは出ていない涙をふく素振りを見せた。
16
お気に入りに追加
1,324
あなたにおすすめの小説

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

聖女は祖国に未練を持たない。惜しいのは思い出の詰まった家だけです。
彩柚月
ファンタジー
メラニア・アシュリーは聖女。幼少期に両親に先立たれ、伯父夫婦が後見として家に住み着いている。義妹に婚約者の座を奪われ、聖女の任も譲るように迫られるが、断って国を出る。頼った神聖国でアシュリー家の秘密を知る。新たな出会いで前向きになれたので、家はあなたたちに使わせてあげます。
メラニアの価値に気づいた祖国の人達は戻ってきてほしいと懇願するが、お断りします。あ、家も返してください。
※この作品はフィクションです。作者の創造力が足りないため、現実に似た名称等出てきますが、実在の人物や団体や植物等とは関係ありません。
※実在の植物の名前が出てきますが、全く無関係です。別物です。
※しつこいですが、既視感のある設定が出てきますが、実在の全てのものとは名称以外、関連はありません。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜
影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。
けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。
そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。
ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。
※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

盗んだだけでは、どうにもならない~婚約破棄された私は、新天地で幸せになる~
キョウキョウ
恋愛
ハルトマイヤー公爵家のフェリクスが、スターム侯爵家の令嬢であり婚約者のベリンダを呼び出し、婚約を破棄すると一方的に告げた。
しかもフェリクスは、ベリンダの妹であるペトラを新たな婚約相手として迎えるという。
ペトラは、姉のベリンダが持っているものを欲しがるという悪癖があった。そして遂に、婚約相手まで奪い取ってしまった。
ベリンダが知らない間に話し合いは勝手に進んでいて、既に取り返しがつかない状況だった。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

お願いされて王太子と婚約しましたが、公爵令嬢と結婚するから側室になれと言われました
如月ぐるぐる
ファンタジー
シオンは伯爵令嬢として学園を首席で卒業し、華々しく社交界デビューを果たしました。
その時に王太子に一目惚れされ、一方的に言い寄られてしまいましたが、王太子の言う事を伯爵家が断る事も出来ず、あれよあれよと婚約となりました。
「シオン、君は僕に相応しくないから婚約は破棄する。ザビーネ公爵令嬢と結婚する事にしたから、側室としてなら王宮に残る事を許そう」
今まで王宮で王太子妃としての教育を受け、イヤイヤながらも頑張ってこれたのはひとえに家族のためだったのです。
言い寄ってきた相手から破棄をするというのなら、それに付き合う必要などありません。
「婚約破棄……ですか。今まで努力をしてきましたが、心変わりをされたのなら仕方がありません。私は素直に身を引こうと思います」
「「え?」」
「それではフランツ王太子、ザビーネ様、どうぞお幸せに」
晴れ晴れとした気持ちで王宮を出るシオン。
婚約だけだったため身は清いまま、しかも王宮で王太子妃の仕事を勉強したため、どこへ行っても恥ずかしくない振る舞いも出来るようになっていました。
しかし王太子と公爵令嬢は困惑していました。
能力に優れたシオンに全ての仕事を押し付けて、王太子と公爵令嬢は遊び惚けるつもりだったのですから。
その頃、婚約破棄はシオンの知らない所で大騒ぎになっていました。
優れた能力を持つシオンを、王宮ならばと諦めていた人たちがこぞって獲得に動いたのです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる