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第三話

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 三人の挨拶の後、キースがリリアに向き合った。

「リリア、今日からお前にはここで暮らしてもらう。ここの門から出る事は許さないが、建物と門の中の庭など敷地内は好きに歩いても構わない」

 出る事は許さないと言うキースの言葉にリリアは驚く。

「門から出られないっって……私、ひょっとして一生このまま?」

 腕を組んだキースはうなずくのだった。

「もちろん、そうだ。レオにとってお前は害だからな」

 ぷりぷり怒ったようにリリアはキースに詰め寄った。

「流石にライオネル様がそんなの許さないと思うわ~」

 リリアのバカな発言にキースは鼻で笑う。

「フン。意識のないレオが気が付いた時にはお前は感染性の病気をベルンハルト国の者からうつされて治療中と伝えることにしている。レオはこの別荘で隔離して治療中だと思うさ」

 キースの計画を聞かされたリリアは泣きそうな顔になった。

「そんな……ひ、ひどい~~」

 キースは相変わらず冷たい態度を崩さない。

「どっちがひどいんだか。お前の方がベルンハルト国の手に落ちやがって、どれだけ迷惑かけたと思っているんだ。お前のせいでレオは大怪我をした上に、いまだに意識も戻らないんだ。ご飯も出されて、ちゃんと世話してもらえるだけありがたいと思いやがれ!!」

「じゃあ、ほっとけばいいじゃないの!!」

 リリアは責められたからか逆ギレし始めた。しかし、キースは気にもせず流すのだった。

「レオが気にしたらいけないから、それはできない。取り合えずの世話はさせてもらう。二度とやらかさないようにしてさえもらえば、あれやこれや言うつもりもないからな」
「やらかすって……私何もしてないわ!!」

 呆れたキースが冷たい目をリリアに向ける。

「どの口がそんなこと言いやがるんだか。学園の卒業パーティーやら、修道院から脱走やら、王都のデルヴィーニュ家から逃亡やら、上げたらキリがない」
「だって、ヒロインだから何をしても大丈夫だと思ったんだもん」

 拗ねたような顔をするリリアにキースは言い返す。

「ヒロイン?誰の事だ?俺からしたらお前はヒロインどころかレオに害を与える害虫でしかないわ!!」
「害虫って……ひどい!!」
「レオに害を成す奴にはそれで充分。俺もここでのんびりしてられないから詳しい事は三人に聞いてくれ」
「え~知らない人の中に置いて行かれるの?」

 一人置いて行かれると気付いて焦るリリア。忙しいキースはイラっとする。

「当たり前だろ。それとも、リーランドの西の森の誰もいない所に置いてほしいのか?」
「そ、それはもっと嫌っ!!!!」

 両手をブンブン振って拒絶するリリア。ニヤッと笑ったキースは言い聞かせる。

「じゃあ、ここで暮らせるよな!!」

 リリアへ笑みを浮かべたキースの怖い表情に思わずリリアは引きつった顔で五回くらい首を縦に振り、YESの返事をするのだった。
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