ナニカがタリナイ

葉゚二🌙👤

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リンドウは0の手に触れた。

「お前は梢を知ってるから嫌でも俺の名字はわかるだろう。」

「そうだが……」

みんな梢で反応するということはフルネームを知っているからこそ。
梢はここでもしっかりとヒーローとして生きていた。

だから、
0は決めた。

「リンドウ。俺はここを出たい。そして……」

兄貴の墓に行きたい。

「……分かった。が、今は脱獄になる。サルビアに見つかれば最後だ。」

「だろうな……。どうすれば出れる?」

「……それは」

その出れる理由を聞いた時、0は下を向いた。

「じゃあ梢もそうしたのか?……」

黒く染まる。
印を与えられることで選択肢が得られる。
それは
ここに残るか、ここを出るか

それか

争いを起こすか

「梢は印の時に……」

「……残念だが、違う。梢が出た理由は、」


-お前が居たからだ-


その言葉に思わず【は?】っていう顔になる。
じゃあ何故スグリと……

「スグリの印を見たことあるか?」

そう言えば、行為を1度した時、不思議なら聞くはず

「いや、見てない……」

「2人は関係を持っただけで、印はない」

印が無い。
兄はへそ出しの服をいつも着ていた。
それには印も何も無い。

「印は」

「印はみんな見れる。」

普通気になる筈なのに。
何でだろう。
聞いてなかったとかではなく、
絶対にみていない

「あの時の梢はメンバーと争った。……お前の事を馬鹿にした男が居たんだ。それがスグリと関係を持っていて、印を持つ男」

「へぇ、そんな奴が……」

「弟ばかり自慢して何が楽しいんだ。弟が好きなら弟と結婚すれば良い。……スグリは俺のだ」

俺の事を沢山話していた。
梢は本当に俺のことが好きで話していたのだ。

「梢はその男を殺した。自分の棚の中にあるもので。『弟はお前より断然良い家族だ。俺は弟と結婚したって構わない』って」

その頃から梢は狂った。

「『兄弟一緒に死ぬ約束までしたんだ。』まで言った。この時、梢の本性が出たんだ。それからスグリに気にいられ、今に至って、印は現実に出て、付き合ってからつけるつもりだったらしいが、結局チューベローズが奪った」

リンドウは見ていたのかそう言う。
教官であったリンドウは0に言った

「申し訳なかった。梢をこんな目に合わせてしまって。」

リンドウが謝った。
リンドウが何故謝らなくてはいけない?
なんで、
悪いのはスグリとチューベローズじゃないか。
梢はこんなの望んでいない

「謝るな。リンドウは悪くない。」

リンドウは0を抱きしめた。

「それと、俺はお前に印をつけるのが怖い。」

「本名を知ってるからだろ」

「あぁ。梢から聞いてる。」

だが、リンドウは名前を呼ばない。
呼ぶと印を付けなければいけないからだ。
リンドウは何故印がつけるのが怖いのか
分からなかった。

「リンドウは印付けたことあるのか?」

「……ある。」

小さな声でリンドウが言った。
そして、

「俺はもう印で何もかも消えて欲しくない。だから、お前は今のままでいてくれ」

「なんだよ。俺はそもそも付けるつもりもないし、それに周りは嫌いだから拒否する。」




『リンドウさん、もし影に出会ったら、俺みたいに話しかけてあげて。』

梢の言葉を思い出す。

『ここに来たら印は怖いかもしれないけど、大丈夫。影は無くても好きになったらかなり凄いから』

梢は笑っていた。俺は昔から印を恐れている。
梢は確かに印を望むような人ではなく、
【竜山影】という男に出会ったら話しかけてあげて
っていう言葉はどういう事だろうか。

『リンドウさんは優しいリンドウさんで居てね。』

その時はそう思った。



それが今、
本当にこうなっている。
【竜山影】は目の前にいる。
梢に頼まれた男はとても悲しい人間だった。
学園の生徒会長の真面目くんを装っている男。
悪い人間の中には悲しい人間もいる。
その中の一人だった。

俺はそれを守り抜く。
敵がサルビアでもチューベローズでも関係ない

-俺が必ず守ってみせる。-

今度こそ失敗しない。
正しく行く。
周りを苦しめたって良い。

「0、更正員を集めろ。」

「……分かった。」

0は立ち上がる。

「俺は俺として行く。もう梢の真似はしない。制服姿で行く。」

「この姿が梢だったのか?」

「は?知らなかったのか?似てるだろ」

「似ているが、お前はお前だぞ。」

リンドウの言葉に思わず0は笑って見せた。

「やっぱお前面白いな。まあ良いだろ。俺の元の姿がアレなんだから」

「あの髪型か?」

「嫌。髪型じゃなく服装。ピアスは好きでつけてるし、」

「……今でも似合うけどな。」

「……どーも。じゃあこのままで行く」

0はそっぽを向き、その場から離れると

「どっちだよ。学生さん」

「……今のまま。」

そう言うと0は部屋を出る。
傷はもう大丈夫だろう。

「良かった。無事で」

リンドウは安堵した。
1つ助けたものだ。
これで、なんとかなる。
0は0だけは助けたい。
リンドウが部屋を出ようと扉を開けようとした時、
扉が開いた。

「あ、リンドウ!ずっと出てこなかったから心配してたんだよ!ねぇねぇ、さっきの騒ぎなぁに?」

サルビアだった。
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