上 下
4 / 5

第3話 大切な人の死

しおりを挟む
「白人先輩、助けていただいてありがとうございます!」
「気にすることねえよ」
 俺は今雫の家に行こうとこの部屋から出ようとしたのだが…。
「白人先輩、かっこよかったですよ」
 美空に引き止められてしまった。
「美空、悪いが俺行くとこがあるんだ。話はまた今度でいいか?」
「どこにいくんですか?」
「雫の家だ。あいつ、ビビりだからきっと家から出てないと思うんだよ」
「なるほど…」
 ようやく話を聞いてくれたので家を出ようとする。
「白人先輩、私も連れて行ってくれませんか?」
「…え?」
 今から俺は外に行く、つまり危険が多いところにいくのだ。
 だと言うのに着いてくるのか…。
「分かってるのか?今外は危険なんだぞ、おとなしく家にいろよ…」
「嫌です。それに一人でいるとまた襲われるかもしれないじゃないですか」
 それは確かにそうだ、こんな世界になったんだ。何があってもおかしくない。
「着いてくるのはいいけどいざとなったら自分の身を守れよ」
「はい!大丈夫ですよ」。
 ということで美空にも外に出る準備をしてもらう。
 動きやすい服装、少しの飲食物、着替え、そして…。
「一応これも持っとけ」
 台所にある調理用の包丁を持たせる。
「こ、これは一体…?」
 怯えている、だが無理もない。
 もしかしたら自分が誰かをその包丁で傷付けないといけないと思うと怯えるのは仕方の無いことだ。
「…一応な。もし俺が守れない状態になったらこれで威嚇するのもよし、さっきの俺みたいに斬り掛かるのもよしだ」
「………」
 少し考えた後に持っていくことに賛成してくれた。
 そうして家を出る。
 さあ、雫の家に向かおう。
 雫の家までは5分ほどなのですぐに着いた。
 家の扉をノックする。
 反応がない。
 だが良く耳を澄ませてみると、女の子の泣き声が聞こえた。
 俺と美空は慎重に家に入る。
 リビングで雫が泣いている。
 原因は………、すぐ近くにあった。
一斗いちと……」
 一斗、雫の兄で俺は良く一緒にゲームをしていた。
「だ、だれ!」
 どうやら今の声が聞こえてたようだ。
 俺は雫の前に姿を出す。
「雫、俺だよ」
「白人…?」
 何か言おうとしたがそれより先に雫が俺に抱きついてきた。
「白人…白人!一斗兄が私を助けるために…死んじゃった…」
 大粒の涙を零しながら一斗が死んだ事を教えてくれた。
 リビングの横の部屋には、犯人とみられる人間の死体があった。
 何となく察していた。
 もしかしたら血だらけだけど生きてるのではないかという俺の淡い希望はその瞬間に崩れ去ってしまった。
「大丈夫だ、俺もいる。泣くならなけ、傍に居るからさ…」
 そこからしばらく雫は泣き続けた。
 俺も泣きたい気持ちはあるが今の雫に弱い所を見せる訳にはいかない。

 一斗…雫の事は俺が絶対守りきる。天国で安心して見ててくれよな…。

 その後泣き止んだ雫の提案で一斗の身体を玄関前の庭に埋めてあげることにした。
 犯人は俺が少し離れたところに引きずって捨ててきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性癖の館

正妻キドリ
ファンタジー
高校生の姉『美桜』と、小学生の妹『沙羅』は性癖の館へと迷い込んだ。そこは、ありとあらゆる性癖を持った者達が集う、変態達の集会所であった。露出狂、SMの女王様と奴隷、ケモナー、ネクロフィリア、ヴォラレフィリア…。色々な変態達が襲ってくるこの館から、姉妹は無事脱出できるのか!?

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

r18短編集

ノノ
恋愛
R18系の短編集 過激なのもあるので読む際はご注意ください

【R-18】敗北した勇者、メス堕ち調教後の一日

巫羅
ファンタジー
魔王軍に敗北した勇者がメス堕ち調教され、奉仕奴隷となった後の一日の話 本編全4話 終了後不定期にパーティーメンバーの話とかも書きたいところです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...