【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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最終章 スキルが美味しいって教わったよ⁉︎

411話 絆の修復

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 大会が終わり、セシリア女王により最終日まで残った者達は、部屋を用意され集められていた。

「簡単ではありますが、労いの席を用意しました。此度の試合での出会いも縁です。これを、面識と親睦を深める良い機会にして下さい」

 早速、アシヤや勇者達は囲まれて、いろいろと話を聞かれている。
 集まるのは参加者ばかりではなく、貴族や商会の者達も居て、雇用契約を持ち掛けている者達も多い。
 アシヤはもちろんだが、レオンが人気が高かった。
 やはり狼人ライカンスロープな上に、両親が月の庭モーントガルテンのクララと主様なことが理由だろう。
 レオンは大人達のその対処に困り、アグリの背中へと避難している。

「アラヤ大公、風の大精霊エアリエル様、此度のアシヤ殿の提案ですが、ラエテマ王国との仲介の件、どうかよろしくお願いします」

「ええ、お任せ下さい。ラエテマ王国とは同盟関係も良好ですから、渡航許可はすんなり受け入れていただけると思います。後は、一部の貴族の教育が必要でしょうが、ラエテマ国王ならば、我々がすれば、その辺りも早めに対処して頂けるでしょう」

 ラエテマ王国とすれば、遠方のパガヤ王国よりも、空中公国を敵に回したくは無いだろう。
 やや、圧力っぽくあるが、世界中の人種が弊害無く自由に旅行できるならば、モーントガルテンは嫌な監視役でも良いと思うんだよね。

「ああ、話してるところ悪いんだが、ちょっと良いかな?」

「ちょっとクリス!相手は王族なのよ⁉︎」

「そ、そうだよ、いくら勇者でも不敬罪になるよ⁉︎」

 アラヤ達の前に、勤勉の勇者クリスチャート純潔の勇者フローラ分別の勇者ウィリアムがやって来た。

「そこで止まれ」

 セシリア女王の守護者ガーディアンたるバンドウが、クリスチャートの進路を塞いだ。
 無論、参加者の武器の持ち込みは禁止されているので、バンドウ以外は丸腰だ。
 クリスチャートも、バンドウが只者じゃない事は理解しているだろう。
 唯一の武器持ちのバンドウに食ってかかる程、馬鹿じゃない筈だ。

「俺が話したいのは女王様じゃない。そこの魔王だ」

「そうか、なら良い。やれ」

「いや、良いのかよ⁉︎俺だって国賓だよ⁉︎」

 思わずバンドウにツッコミを入れてしまった。こいつ、女王以外は全く気にしていないな?

「…まぁいいけど。それで、何の話?」

「なぁ、もう一度でいいから、俺と勝負してくれないか?」

 この脳筋の頭には戦いしかないのか?

「俺が、全力で戦う訳にはいかないのを分かった上で言ってる?それも、今回の試合みたく、魔法禁止のハンデ有りでの戦いかな?」

「いや、出来れば全力が良い」

 何の迷いなく言い切るクリスチャートに、土の大精霊ゲーブが大笑いした。

『此奴は面白い‼︎是非とも見てみたいぞ!一瞬で終わるだろうがな?』

 ゲーブは勇者達には見えていないので、いくら賛同していようが関係ない。

「ダメだね。今の俺の全力で戦える場所が無いし、今の君じゃ力不足だよ。どうせやるなら、俺も楽しみたい。だから、まだまだレベルを上げてからにしてくれ」

「むぅ、しかし修行をするにも、お前の身内やアシヤにも断られた。だから、大量の経験値を得る相手が居ない」

 まぁ、みんな暇じゃないからね。
 ただ、クリスチャートが焦る気持ちも分かる。
 勇者達は今までなら大精霊達から加護を受けて長寿となっていたらしいけど、現在もヨハネス以外は誰も精霊から加護を受けていないから老化する。
 彼なりに、年齢的に今がピークだと感じているのだろう。

「それなら、良い修行場所を教えるよ。陛下、白銀アルジェント家のツァンナに、彼を紹介して頂けませんか?」

「…なるほど。分かりました、話を通しておきましょう」

 アラヤの意図を理解したセシリアは、人を呼び指示を出している。
 アラヤが考えた修行場所とは、ツァンナが管理する【蒼月神フレイの祠】、別名勇者の資質を知る祠だ。
 フレイ様ならば、嬉々として修行をつけるだろう。
 ある意味、彼はヤバい相手に育つかもしれない。

「クリスチャートの話は分かったけど、2人も話しがあるの?」

 クリスチャートは、亜人の執事に白銀家の場所を説明すると呼ばれて行ったが、2人の勇者が帰ろうとしない。

「は、初めましてで良いのかな?」

「うん、大丈夫だよ」

「私は、例の記憶喪失事件で、君との記憶を失ったと聞いた。だけど、ベルフェル司教やヨハネスから、記憶喪失になる前は、私は君と友達だったと聞いたんだ」

「…うん、そうだね。少なからず、一緒にお菓子を食べたり、強敵と戦った仲だったよ」

「そこで、どうだろう?良ければ、また私と友達になってもらえないだろうか?」

 少し恥ずかしそうに、ウィリアムは頭を下げて手を差し出した。
 側から見れば、女子に告白しているかの様だ。

「うん、もちろんだよ。ウィル」

 アラヤも彼の手を取り握手を交わす。こうやって絆を修復するのも、嬉しいものだね。

「ね、ねぇ?それなら、彼をモーントガルテンに招待したらどう?」

 待ってましたと言わんばかりに、一緒になって喜ぶフローラが言い寄ってきた。

「それは構わないけど、…何で君が言うのさ?」

「それは、私も友達として同伴したいからじゃ、…ダメかしら?」

「ウィルの同伴ならサラだろう?それに、君はクリスチャートのお目付役だ。離れちゃダメだろ?」

「えぇーっ、もう解放されたいよぉ~っ」

 彼女も脳筋に苦労しているのは分かっているが、2人は以前、帰れと言うのにモーントガルテンに長期滞在したからお断りなのだ。

「サラも良いのかい?」

「ああ、明日にでも迎えに行こうか。新婚旅行にすれば良いよ?」

「ありがとう。彼女もきっと喜ぶよ」

 だいぶ前に2人が結婚した事は知ったのだが、ウィリアムが多忙で、2人での旅行はしていないと思っていたのだ。

 1人は上機嫌、1人はドボドボと自席へ帰って行った。
 入れ替わるようにして、今度はアシヤが来て挨拶をした。
 エアリエルが少し、申し訳なさそうな表情を見せる。

「お久しぶりです、エアリエル様、ゲーブ様、セシリア陛下」

『うむ、久しいな。此度の戦い、無駄が無く見事だったぞ』

 内情を知らないゲーブは、アシヤの肩をバシバシと叩いて讃えている。

「アラヤ大公、彼の此度の成果に、大会とは別にモーントガルテンからも褒美を与えたらどうでしょう?」

 試合中に内情を聞いたセシリアは、アシヤの帰国禁止令を少しでも軽くしたいと考えたのだろう。

「陛下、それには及びません。私は今、自由を楽しんでいますので。ただ、をもう少し楽しみたいですけどね?」

 アシヤは笑顔でそう言い切った。まぁ、彼が活き活きしているのは毎日見てるから、それは本心だと思う。

「じゃあ、こうしよう。今後、の視聴は8時までにする。あと、モーントガルテンの品々の使用を許可する」

「それは助かる。オリジナル葡萄酒ワインもだけど、GOGO1等のカレーを作ったんだろ?ずっと買いたくて、堪らなかったんだよ」

 アシヤは本気で喜んでいる。
 やっぱり、俺の分身体なだけあって、食事に関する楽しみだけは我慢し辛いよね。
 2人の間にあったも今は感じられない。
 エアリエルもそれが分かり、釣られて笑顔になっていた。
 アシヤとの絆も、無事に修復したと言えるだろう。

「大公様、僕からもお願い良いですか?」

 いつのまにか、アグリ、ソルテ、レオンも来ていて、アラヤの足にレオンがしがみつく。
 そのレオンの上目遣いに、アラヤはデレデレしてしまう。

「お願いって何だい?レオンも頑張ったから、できるお願いなら叶えてあげるよ?」

「じ、じゃあ、僕もアシヤおじちゃんと冒険がしたい!」

「えぇっ⁉︎」

 これにはアラヤとアシヤ、2人共に驚き固まる。

「ちょ、ちょ、ちょっと、待ってね?その話は主様とクララの許可もいるからさ?」

「そ、そうだぞ、レオン。お前はまだ11歳だし、言語の勉強が残ってるだろう?」

「アシヤおじちゃんだって、帝国語はまだ下手なのに旅はできているよ?」

「ぐっ⁉︎お、俺の言葉はちゃんと伝わってるぞ⁉︎」

 言語理解の技能が無くなったアシヤは、勉強で多国語を習得しているが、癖があると家族からも言われていた。

『ウフフ、そのお願いは無視できないわね。アラヤ、この話は一度持ち帰るしかないのではないかしら?』

『いいじゃないか。儂は亜人達にも昔から、可愛い子には旅をさせるものだと教えていたぞ?』

 大精霊達は賛成派の様だ。
 アラヤとアシヤは目が合うと、この後に反対するであろう家族達(仲間達)に説明しなければならないことに、ハァ~と不安のため息を吐くのだった。
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