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第25章 喰う、それは生きる為ですよ⁉︎

368話 ジオストーム

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 超過重グラビティと時間停止の共通する弱点として、範囲攻撃魔法が有効なのは分かった。
 つまり、移動範囲を狭めることと、グラビティが届く中距離ではなるべく戦わないことだ。
 だがそれは自分達にも難しいと分かった。

「アスピダ!」

 ダクネラが、闇属性、無属性、土属性魔法に関してだけは魔力反転を使用できたからだ。

 アースクラウドの応用魔法グランドスピアの反転を受けたアスピダは、左肩の内部から土槍が飛び出し骨が露出する大怪我となった。
 直ぐにアー君とアフティがサポートへと入る。

『無詠唱できない魔法の使用はダメよ!』

 範囲魔法はカオリ、ニイヤ、主様、クララが行い、近接戦闘にはバンドウゴーレムとアラヤゴーレムを向かわせる。

「…嘘だろ?」

 範囲魔法は相殺される事も多く、回避までなかなか追い込めない。
 しかも、2体の接近戦にも対応してみせたのだ。
 オリジナルよりステータスは劣るとはいえ、バンドウの格闘技能に対応できるとは思わなかった。
 超過重グラビティを片方が受けると、片方が解除するわけだが、ゴーレムのボディがいつまで持つかが心配になってきた。

「あの体力と反応速度、とても高齢者とは思えないな」

『我ガ加護ノ効果ハ、逆行又ハ反発スルダ』

 アスピダの回復をしていたアー君の側に、無の大精霊ケイオスが近付いてきた。

「それはつまり、不老長寿とは少し違う衰えない肉体ってことですか?」

『ソウダ。不老ハ単ニ老イナイダケ。使ワナイ肉体ハ衰エル。我ガ契約者タルダクネラハ、永久ニ衰エナイ』

 風の加護は、成長が止まり寿命が延びる不老長寿。
 それに比べて無の加護は、疲れを知らない衰えない常活性の不老だ。確かにこれは違う形の不老長寿だな。
 確かにその加護なら、現状で一向に疲れを見せないダクネラに納得がいく。

「どうする?先程から時間停止を使わせてない上に、このままだとスタミナ負けしそうだぞ?」

 ニイヤ達が新たな手を考えつく前に、防戦一方だったダクネラが行動に出た。

「こちらからも行かせてもらう!」

 ダクネラは、やや黒砂混じりのトルネードを3つ起こした。

『ダメ、普通のトルネードじゃないわ。魔導反転できない!おそらく合成魔法よ!』

 一瞬出た魔法陣も、全てをカメラアイに捕らえる事ができなかった。

『効果が分からないから直撃は避けて!』

 しかし、近過ぎる位置にいたバンドウゴーレム達は砂塵に巻き込まれる。
 離れていたみんなは、風・水・土の壁を立ち上げ防いだ。
 威力は通常のトルネードと大差なく、風・水の二層の壁で受け止めることはできた。

『クソッ、気持ち悪い!砂がベッタリだ!』

 直撃を受けたバンドウゴーレムとアラヤゴーレムのボディに、黒い砂塵が貼り付いている。

「さぁ、踊れ!」

 グンっと弾かれる様に、2人は突然ダクネラからふっ飛んだ。

『うわっ⁉︎』

 咄嗟にアラヤゴーレムはクララが受け止め、バンドウゴーレムはアスピダが受け止めた。

「あっ⁉︎離れない⁉︎」

 クララもアスピダも、彼等に触れた部分がくっ付き離れなくなった。

『この黒い砂、ベタベタする上にくっ付くぞ⁉︎』

 ジタバタと体を離そうと暴れる度に、余計に密着してしまっている。

「また来たぞ!」

 今回も同様に3つのトルネードを作り出し、ニイヤ達へと放って来た。
 また同様の壁を作り出して防ぐが、背後から前回の受け流した砂混じりの水が飛んできた。

「なっ⁉︎」

 ニイヤと主様の足にも、黒砂が付いてしまった。

「無駄だよ。この砂は、一度付けば強力な力で繋がり離れない。更にこんな事もできる」

 ダクネラが杖を振る動きと同じくして、ニイヤ達は壁へと飛ばされた。
 壁に叩きつけられる前に、バブルショットをクッションにしてダメージにはならなかった。
 黒砂が付いた6人が、空中に投げ出される様に何度も礼拝堂内を飛ばされる。

技能スキルの念動力ではないぞ?これは無の力が持つ見えぬ特性の1つだ」

 ダクネラは、壁や地面では防がれると判断し、6人同士での衝突を狙った。

『緊急脱皮だ‼︎』

 ニイヤの判断で、ニイヤ・主様・クララの3人は外装備と皮膚を捨てて脱出する。
 アスピダは、打つかる直前でアラヤゴーレムとバンドウゴーレムを【生命の檻】へ収納した。

ドドドッ!

 結果としてアスピダに3人の脱皮と戦闘服が打ちつけられた。

「驚いたな。まさか皮を脱げるとは。しかし、その姿…成る程、元は1人の分身体というわけか。それで契約者となる訳か」

 ニイヤも主様も、脱皮をした後はジャミングが剥がれて元のアラヤの姿になる。
 直ぐに元に戻すとはいえ、その瞬間を見られてしまった。

「さて、脱皮は無限に可能なのか、試してみるかね?」

 ダクネラは、再び黒砂のトルネードを起こそうとした。
 ところが魔導反転が起こり、ダクネラは嘔吐した。

「ゴホッ…⁉︎…まさか、この2回で理解したというのか⁉︎」

「まぁね!もう使わせないわよ」

 カオリも2回目のカメラアイでようやく全ての術式を解読できていた。
 それと同時ににこの魔法の正体も分かったのだ。

『この魔法は、土属性魔法と無属性魔法の合成魔法で、あの黒砂は強磁性体の砂よ。つまり、見えない力の正体は、強力な磁力ってわけ。差し詰め、魔法名は磁気嵐ジオストームって感じかしらね』

『磁力か。ん?でも、磁力はどうやって防ぐんだ?』

 磁力をそのものを防ぐ事は困難だ。
 本来、磁力自体は森羅万象の全てに存在していて、生命体にも影響を与えている。
 つまりは人間にとっても、使い方によっては薬にも毒にもなり得る。

『この魔法は、磁性体による磁力がメインの魔法。相反する磁気力を作れば反発はするけど、遮断や打ち消しとかになると、規模が大き過ぎて無理よ』

 あの黒砂に触れた部分が、強力な磁性体になっている。
 今はアスピダが、その服が絡まり団子の様に丸まって身動きが取れなくなっている。

「例え魔導反転できようとも、これに触れれば同じ事だ!」

 まるでボールの様になったアスピダが、ニイヤ達に再び黒砂をつけようと飛んで来た。
 攻撃するわけにもいかず、ニイヤ達は回避する。

「油断したな」

 回避したニイヤの背後にダクネラが現れ、超過重グラビティで抑えつけた。

「ぐあっ⁉︎」

 動けなくなったのはニイヤだけでなく、ダクネラもだった。

「な、何をした⁉︎」

 ニイヤの影からサハドが頭を出す。
これは、彼の技能の1つ【影縛り】だ。
 対象の影と自身の影を同じ状態にする技能。ニイヤの影に潜んだサハドが、近付いたダクネラの影と繋いだのだ。

『さ、さぁ、今です!』

 自身も重力を浴びながらも、影縛りの状態の為に動かない。

「ちいっ⁉︎」

 この隙を狙わないわけもなく、アー君やクララが襲い掛かる。

 ニイヤに掛けられていた超過重グラビティは、やはり解除された。
 解除後直ぐに身を起こしたダクネラは、時間停止を使用した。
 案の定、直ぐ真後ろにクララが噛みつこうとしていた。
 その噛みつきを躱すと想定した、アー君の第二の攻撃もある。更にその後に続こうと、皆が動き出していた。

(危なかった。この際、使用回数の節約は諦めるしかないな)

 ダクネラは少し離れた場所に移動し、時間停止時間が終わると同時に、複数の超過重グラビティをお見舞いしてやると杖を構えた。

『予想的中なんだな!』

 時間再生と同時に、ダクネラ自身が無の契約精霊スカルゴにより超過重グラビティを受けた。

「ぐっ、見落としていたか⁉︎」

 クララやアー君達の位置に気が執われ、ニイヤに呼ばれていたスカルゴを見落としたのだ。
 直ぐに、ダクネラの手足に魔力粘糸がぐるぐると巻かれる。

「スカルゴを、中位精霊にもならない下位精霊と侮ったのが敗因だな。彼も過重グラビティは使えるんだよ」

 ニイヤ達は、サハドやスカルゴの活躍により、ようやくダクネラの身柄の確保に成功したのだった。
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