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第24章 それは世界の救世主らしいですよ⁉︎

347話 未発見の悪魔

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「創造神、ヌル神の召喚⁉︎」

 管制室に戻ったアラヤは、みんなに仮想未来の体験を話していた。

「まさか、創造神自体を呼び出すなんて、そんなこと可能なの⁉︎」

「創造神側が、召喚者の思いに応えれば来るかもしれないわね…」

「か、神が相手なんですか⁉︎」

「呼ばれた時点で終わりだよ。現れていきなり世界を消したからね。何の躊躇いも無い」

 やはりみんな、予想以上の相手に動揺を隠せない。
 大精霊の力を使ったとしても太刀打ちできない相手なんて、想像すらしていなかったよ。

「…つまり、私達の勝利条件は召喚自体を阻止する事ですね?」

「阻止するって言っても、どんな方法があるの?」

「えっと、召喚魔法は基本、魔導反転はできないわ。だから、1番確実なのは召喚者を止めることね。それができない場合は、魔法陣の術式が完成する前に破壊、又は改変する方法があるわ」

 術式をどうこう話されても、この中じゃカオリしか分からないのが現状だ。

「でも、オモカツタの街とエームールの港町の魔力経路は断たれた筈だから、不完全になるんじゃない?」

 魔力を送れてないから大丈夫じゃない?とサナエが希望有り気に言うが、カオリは首を横に振る。

「確かに供給は断たれたけど、おそらく役目はもう果たした後よ」

「どういう事?」

「召喚魔法陣の場合、陣を描く全てから魔力を送る必要は無いの。おそらく、無気力症による魔力吸収は、地脈に術式の道筋を刻むだけの役割。一度道筋が刻まれたのなら、召喚の際には他の場所からでも魔力は集められる」

「じゃあ、やっぱり魔法陣が完成する前に、隠れているベルフェゴールの本体を倒さなきゃ、無理ってこと?」

「そうなるね。しかも、本体は分身体と入れ替わることができるらしいから、結局は全て倒さなきゃならないみたい。まぁこれには、既に両教団が動いてくれている筈だよ」

 両教団の教皇に説明したら、どちらも直ぐに動くと言ってくれたからね。

「では、私達はどう動くべきでしょう?」

「そりゃあ、ダクネラを叩くの一択だろ?」

 ニイヤが、地図上のソードムを指差す。確かに術者を叩くのが1番だが、そう簡単にはいかないだろう。

「それはそうだけど、ソードムにはアラガキも居るし、逃げられる可能性もあるから簡単じゃないよ?そこでもう一つの掴んだ情報があるんだけど、それが暴食の悪魔の存在なんだ」

「厄災の悪魔?暴食の悪魔となると、未だに未発見の悪魔ね」

 厄災の悪魔で今までに遭遇したのは憤怒・傲慢・強欲・色欲・怠惰・嫉妬の6体。
 その内の1人強欲の悪魔マモンは、仮想未来で遭遇しただけで、封印されていた筈だが現在のところその所在は不明だ。
 そして今回探さねばならないのは、暴食の悪魔。教団史上では未発見の悪魔だ。

。それでも居ることは分かっている悪魔。その詳細は謎なのよねー」

「カオリ様、何故、未発見なのに居ることは分かっているのですか?」

 クララの疑問に、カオリは本を取り出して開き見せた。

「これは、アスモデウスの祭壇があった地下墳墓で見つけたフレイア大罪教の神典なんだけど、ここに書いてあるのよ」



【 紅月神フレイア様は、その欲に溺れ堕ちて破綻する子等に手を差し伸べました。

 すると、神の御手から放たれた光により、人々からは過剰な欲は切り離され、離された欲は集まり塊となり、やがて悪魔を生み出したのです。

 欲望の塊はそれぞれ強欲・傲慢・憤怒・色欲・嫉妬・怠惰・暴食 の7つに分かれ、7つの厄災の悪魔を生み出してしまいました。

 神は、悪魔に翻弄される子等を守る為に、それぞれのを持つ子等を厄災の悪魔と魂を結びつけました。
 すると悪魔達はその力を失ったことで、異界へと隠れました。

 7人の子等は、その厄災を抑える者として厄災の王の名を与えられました。
 その王達もまた、悪魔の力の1部を利用することで幸せになれました。

 ところが、人の子等の欲望の増殖は留まらず、王達の耐性を下げる事に繋がったのです。

 ある時、1人の王が病にて倒れ逝去しました。すると、その兆しを受けた連なる厄災の悪魔が、異界より舞い戻って来たのです。

 世は再び混沌と化しました。その様子を静観していた蒼月神フレイは、紅月神フレイア様に恩を押し付けるべく…   】


 これより先は、やや大罪教の解釈が美德教を非難する語句が増えたので読むのをやめた。

「神典に書かれているって事は、言い伝えがあったのか、神の声が聞こえる技能スキル、神託みたいな技能があったのかも」

「それか、他の厄災の悪魔が知っていて話したとか?」

 まぁ、確かに其れ等の話を照らし合わせ、未発見だけども居るものと解釈されたのだろう。

「しかし、その暴食の悪魔が何の役に立つというの?だって厄災の悪魔だよ?」

「そこは…まだ分からない。仮想未来ではその必要性の意味を調べる時間はなかったんだ。ただ、ヨハネスも、大罪教教皇も探していた。最後の望みみたいに必死にね」

 未発見である暴食の悪魔の力の詳細は分からない筈なのに、何故に両教団はその力が召喚を止めるものだと考えたのだろう?

「とにかく、俺はその暴食の悪魔探しも重要だと思うんだ。だから、祭壇探しに俺は向かいたい」

「決定権は大公のアラヤにあるんだから、命令したら良いんじゃない?嫌なら反対するけどね?」

 サナエの相変わらずの対応に、周りのみんなもそうだねと頷く。

「…分かった。それなら、暴食の悪魔探しは俺とエアリエルで行う。みんなは、ソードムのダクネラ=トランスポートの攻略の準備に取り掛かってくれ。アヤコさん、侵攻するに当たってのパガヤ王国とラエテマ王国への根回しをお願い。あと今更だけど、美德教教皇は帝国と不仲になったらしいから、ヌル虚無教団への侵攻理由は大罪教団側からの要請という事にしてね?」

「パガヤ王国はともかく、ラエテマ王国に援軍を出す余裕は無いと思いますよ?」

「両王国からの援軍はいらないよ。王国内に逃亡されないように、関所や港の閉鎖をしてほしいと頼んで?」

「分かりました」

「今回の援軍は、ゴーモラ王国にお願いするとしよう。ベヒモス奪還の貸しを返してもらわなきゃね?」

「じゃあ、私がアカネちゃんには説明しておくわ」

 コウサカとは、すっかり仲良くなったサナエが対応するらしい。

「あまり時間が無いかもしれない。だけど、念入りに準備はしてくれ。俺も、大精霊様達といち早く暴食の悪魔を見つけるから」

「祭壇を見つけたら、召喚するのですか?大精霊様がいれば危険では無いかもですけど…。それに、供物となる魔王の1部もありませんよ?」

「供物は、土の大精霊ゲーブ様からバンドウの1部をもらうつもりだよ」

「「「‼︎」」」

 バンドウゴーレムを秘密にしているアヤコ達は一瞬驚いた。
 バンドウゴーレムはニイヤの【生命の檻】の中にいる。外の会話は聞こえていないから大丈夫だ。
 ただ、以前、自分達がバンドウの遺体の掘り起こしに来た事をゲーブに話されたらと思うと冷や汗が出た。

 ここは先に説明するべきだとみんなの視線が向けられ、アヤコは意を決して前に出る。

「あ、あの、アラヤ君…」

「あ、エアリエル。先ずは水の大精霊アーパス様に協力を頼みたいんだけど、彼女が喜びそうな物とか分かる?」

『先程、別件で話したばかりだというのに、会いに向かうのか?しかも手土産など、別に必要無いと思うが?』

「必要ないとしても、貰うと嬉しいものだよ?」

 アラヤに話しかける前に、室内から出てきたエアリエルへの下へと彼は行ってしまった。

『アヤコさん、どうするの?バンドウだけじゃなく、寛容の勇者の魂までゲットしている事、流石にもう言わないとまずくない?』

『わ、分かっています』

 アヤコが再びアラヤに歩み寄ると、アラヤが振り返った。

「じゃあ、アヤコさん後はよろしくね?」

「は、はい。任せて下さい」

 結局何も言えずに、アヤコはアラヤ達を見送った。

「…どうしよう」

 アヤコは肩を落として落ち込んでいる。

「アヤ、そもそも、アラヤが嫌っているバンドウをゴーレムにした理由って何なの?」

 サナエは、アラヤ同様に魂の保管計画を最近まで知らなかった。だから、何の理由でそんな事をしているのか分からない。

「一つは、イジメの復讐をする機会を与えても良いかなと…」

「それを今でもアラヤが望んでいるかは、分からないわね」

「もう一つは、【弱肉強食】の検証の一環です。魔王が持つ特殊技能ユニークスキルは、魂でも残っていました。しかし、【弱肉強食】は生者のみに効果を発揮する。魂を食べて得られるのは、【捕食吸収】による普通の技能のみ。ならば、魂を入れたゴーレムなら、【弱肉強食】が使えるかもしれないと考えたのです」

「ああ、そういうことね…」

 サナエは納得し頷いた。その上で、アヤコの頭をポンと軽く叩く。

「それなら単に謝れば済む話よ?アラヤの為に行動したんだから、きっと怒らないわよ。バレた時には、むしろサプライズよと言えば良いわ」

「サナエちゃん…」

「そんな小さい事気にする奴じゃないでしょ?背はちっちゃいけどね?」

「それは怒るよ?」

 サナエのボケに、あらや(サナエの夫)がツッコミを入れて笑いが起きる。

「そうですね。バレたらバレたでサプライズです!さぁ、気持ちを入れ替えて戦いの準備に取り掛かりましょうか」

 こうして、来たる戦いに向けての各々の準備が始まったのだった。

 
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