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第22章 世界崩壊はわりと身近にあるらしいですよ⁉︎
318話 呼び出し
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ラエテマ王国王都。
王都は今、街の復興と王城の改修工事が行われていた。
国内の商会ギルドと冒険者ギルドが団結し、物資の支援や作業員の確保がスムーズに進んだ事で、かなりの早さで復興できてきていた。
「ギルドマスター!北区の路面舗装は今日で終わるってよ!3班の次の現場は西門側の外壁補修で良いのか?」
ギルド内では、普段は重装備な冒険者も、動き易い軽装な姿や、頭に捩り鉢巻の姿で集まっている。
「待て待て!3班は15日連続休みなしだろうが。明日明後日は休むように伝えろ!代わりに5班が休み明けだ。明日から入れる様にリーダーに現場説明しとけ!」
ギルドは今日も慌ただしく、ギルドマスターのトーマスも、多い人数の割り振りや指揮で机から離れられないでいた。
「冒険者が冒険しないで大工仕事や雑用ばっかさせられてもなぁ~」
「魔物討伐の当番になった奴等の方が活き活きしてるぜ?」
「いくら報酬はあるって言っても、こうも行動を縛られて自由さが無いんじゃ、いい加減鬱憤が溜まるよな」
他領から来た冒険者達等が、最近では不満を周りに聞こえるように言い出して、士気も下がり始めたきた。
別に彼等が悪いわけではないのだが、他領の人数が増えるに連れて喧嘩も多くなったりと、対応することも増える有様だった。
「ギルドマスター、あの、先程からずっとお部屋から通信機の音が鳴っていますが…」
「なぬっ⁉︎もっと早く言ってくれよ⁉︎」
通信機を利用した連絡は、王家からの直接的な話に使われる場合がほとんどだった。
後の段取りを受付に任せて、トーマスは急ぎ部屋に戻った。
「ああ、お待たせしました!トーマスです!」
羅針盤通信機を起動すると、呼び出し音が止み羅針盤に相手側の姿が映し出される。
映し出されたのは、先の一件の活躍でミネルバ王女の近衛兵からラヘル王子の近衛兵へと転属したエドガーだった。
「おお、やっと繋がったか!トーマス殿、ラヘル王子が至急会いたいとの事だ。済まぬが王宮(仮)までご足労願えないか?」
「なんだエドガーか、こっちも忙しいんだ、通信機でのやり取りではダメか?」
「いや、流石に貴殿でも無理なのはご理解いただけるだろう⁉︎」
「冗談だ、でも正直、忙しくて参っているのさ。つまらない要件なら勘弁して欲しいなと思うわけよ」
「それ以上は、庇いきれない(不敬罪)からやめてくれ。要件は、簡略に言えばアラヤ殿関連だ」
「ぬ⁉︎分かった、直ぐに向かおう!」
通信機は一方的に切られ、現金な人だなとエドガーはため息をついた。
しばらくして、職員に引き継ぎを済ませたトーマス王城跡地に到着した。
街の復興を最優先でしている為、王城の半壊した場所はまだ、手をつけられて無い場所もある。
ただ、王宮は1部はある者達により住める環境になっていた事もあり、国王を始めとした王家の者達は居住できていた。
「トーマス様、呼び出しでございますか?」
入って来たトーマスに気付いた侍女長のマーレットは、ミネルバ王女と共に洗濯物を取り込んでいる最中だった。
「おいおい、王女様がする仕事じゃないだろ?」
「トーマス。これは私が自ら申し出てしている事よ?人手不足の今の状況下では、王族といえど身の回りの世話くらい自らするようでなければ」
「すっかり、下街の暮らしに影響されちまってないですか?」
「フフフ、国民の生活を知る事は大事。でも、逞しさではまだまだ民の足元にも及ばないわ」
ミネルバの心意気は素晴らしいと思うが、その横でマーレットが彼女が雑に取り入れた洗濯物をたたみ直している。王女の洗濯物の扱いは、まだまだ手本が必要なようだ。
仕えているマーレット達は、現在の王宮に住み込んでいるわけではない。
王宮に彼女達の分の居住スペースが無いのが原因であるが、ミネルバ以外の王家の者達がやはり、仕える者達と近過ぎる事を良しとしないからでもあった。
その為、近衛兵や侍女達は崩れた王城の雨風凌げる場所で野営をして過ごしているのだ。
「ラヘル王子が用があるとエドガーに呼ばれているのだが、何処で待ち合わせかを聞いて無かったのだ。マーレット、エドガーが居る場所を知らないだろうか?」
「エドガーとラヘル王子でしたら、おそらく建設中の軍議室に居られるかと」
「そうか、ありがとう」
「待って、トーマス。私も同行して良いかしら?」
ミネルバは洗濯物籠をマーレットに押し付けると、トーマスの横に並ぶ。
「要件なら察しがついているの。私も聞きたい事があるんです」
「えぇ…、王族2人に挟まれるのは勘弁してほしいんだが…」
トーマスが明らかに面倒だという表情を見せても、ミネルバは諦めるつもりはないらしい。
「ミネルバ様、くれぐれもトーマス様に迷惑をかけませぬよう心掛けて下さい」
「分かっているわ」
マーレットは止めることなく、トーマスとの同行を許可した。
ミネルバ達はトーマスを信頼しているのだろうが、頼られる側としてはあまりにも心配が勝ち過ぎる。
何故なら、ラヘル王子は前王妃の嫡子であり、ミネルバは後妻であるジョアンヌ王妃の娘だからだ。
現国王がミネルバを溺愛するので、ラヘル王子や第一王女と第二王女は彼女を良く思っていないという噂は、王家と繋がりがある者達には常識と認知されている事だった。
「冒険者ギルド長、トーマス様がお見えになりました。ミネルバ第三王女もご一緒でございます」
「ミネルバ王女も?…まぁ良い、通してくれ」
衛兵から連絡を受けたエドガーが2人の入室を許可する。
軍議室内には、ラヘル王子、近衛兵長のエドガー以外に、騎士団長が3名、そして王子の側には宰相と大臣もいた。
「お待たせ致しました、ラヘル王子様」
入って来たトーマスは、一応畏まった態度で頭を下げる。例え騎士団長であろうとも、王族以外の者が着席している前で、膝をついてまで下手にでる気は無かった。
だいたい、此奴等はあの厄災の悪魔の災害時には王都に居なかったからな。
これが仮にも、闘病中の体にも関わらず、あの時残ると言って聞かなかったというラエテマ国王だった場合には、目前まで向かい膝を着いていただろうけど。
「ミネルバも来たのか。ここは遊びの場ではないぞ、退がれ」
「ラヘルお兄様、私は遊びで参った訳ではございません。今回の議題に興味がありまして…お邪魔は致しませんので、どうぞお仕事を続けて下さいませ」
引き下がろうとしないミネルバに軽い舌打ちをして、エドガーを軽く睨む。
議題の内容をミネルバに伝えたのは、十中八九エドガーだと分かっているからだ。
エドガーは睨まれるも、何も気にしないように目を逸らして入り口を見ている。
「トーマス、復興作業で忙しいところを呼び立てて済まないな」
「いえ」
「つい先日、私は父上の代理として、エドガーとある会議に参加した。そこには、グルケニア帝国皇帝、ムシハ連邦国国王、パガヤ王国女王と、各国の長が集まっていた。事の起案者は美徳教団教皇、大罪教団教皇もそれに協力をしていた。つまりは、世界中の権力者が一堂に会する場に我々も招かれた」
「それはまた…凄い危険な状況でしたね」
戦争をした相手の国王達と同席するなど危険極まりない。下手をすれば、全ての国王達が窮地に陥入れられる危険がある状況でもあったわけだから。
「…まぁな。だが、問題はそこではない。その会議が、ある新国家の承認決議の会議だった。そして我々はその会議で承認する側についた。というのも、その新国家、空中公国月の庭の国王が、其方達の知る者、アラヤ=グラコだったからだ」
「まさかの国王に⁉︎」
トーマスはエドガーを見る。エドガーからはアラヤの近況を聞くつもりではいた。
だがそれは、他領での活躍や破天荒な偉業をやっているのだろうという憶測だった。
アラヤ関連と聞いた時、おそらくは前回の功績も加え、農民から成り上がったバルガス騎士団長の様に貴族の称号を授与すると予想していたのだ。
だがその予想の斜め上をいかれた。
「空中?新国王?彼には、余りにも似合わない突拍子な言葉で混乱しております」
「む、そうか。エドガーはあり得ない話ではないと言っていたが、トーマスは私寄りで良かった。あの様な小柄な者が国王などとは、正直ふざけているとしか思えなかった」
「……。(いや、見た目でしか判断できないアンタと一緒にしないでくれ)その後、どうされたのですか?」
トーマスは、アラヤの情報をもっと知りたいと気持ちを切り替える。
「軍事力は、確かに国家レベルだが、産業や資源は我が国の半分にも満たない。だが、それを踏まえても、あの国とは繋がりを持つ必要があると、パガヤの女王も両教団教皇も考えていたのだ」
「ラヘル王子、私からも言わせて頂ければ、その判断は正しいと思います。あの彼は不思議と周りから惹かれる奴なんです。本人は不器用に距離を取ろうとしているみたいなのですが、実は気にかけている優しい奴でして。彼との繋がりを持てるなら、是非とも持つべきだと思います」
(現に俺は逃げられてばかりだからな!)
元々トーマスは、毎回アラヤの実力を見れずに逃げられているので、落ち着かせる為にも貴族になれば良いと考えていたのだ。
「まぁ、我々もその判断に至り、同盟を結ぶべきだろうと決まった」
「おお、同盟!」
「それに当たり、トーマスには公国に送る親善大使となる冒険者を見繕ってほしいのだ」
「親善大使?」
親善大使とは名ばかりで、ラヘル王子はアラヤに首輪をつけたいと考えているらしいな。
「失礼ながら申し上げます。彼と対等に親しくなれる者など、ギルドには居ないでしょう。もちろん、抑えることが可能な者など皆無です」
「なんだと?A級や…S級でもか?」
頷くトーマスに、ラヘル王子と宰相達は顔を曇らせる。
本人達も、見栄を張って小国扱いしたものの、月の庭との同盟が必要なことは分かっているのだ。
そんな中、1人の手が挙げられる。
「私がなりましょう。親善大使に」
「「「「…は⁉︎」」」」
あたかも待っていましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべ、ミネルバ王女が名乗りを挙げたのだった。
王都は今、街の復興と王城の改修工事が行われていた。
国内の商会ギルドと冒険者ギルドが団結し、物資の支援や作業員の確保がスムーズに進んだ事で、かなりの早さで復興できてきていた。
「ギルドマスター!北区の路面舗装は今日で終わるってよ!3班の次の現場は西門側の外壁補修で良いのか?」
ギルド内では、普段は重装備な冒険者も、動き易い軽装な姿や、頭に捩り鉢巻の姿で集まっている。
「待て待て!3班は15日連続休みなしだろうが。明日明後日は休むように伝えろ!代わりに5班が休み明けだ。明日から入れる様にリーダーに現場説明しとけ!」
ギルドは今日も慌ただしく、ギルドマスターのトーマスも、多い人数の割り振りや指揮で机から離れられないでいた。
「冒険者が冒険しないで大工仕事や雑用ばっかさせられてもなぁ~」
「魔物討伐の当番になった奴等の方が活き活きしてるぜ?」
「いくら報酬はあるって言っても、こうも行動を縛られて自由さが無いんじゃ、いい加減鬱憤が溜まるよな」
他領から来た冒険者達等が、最近では不満を周りに聞こえるように言い出して、士気も下がり始めたきた。
別に彼等が悪いわけではないのだが、他領の人数が増えるに連れて喧嘩も多くなったりと、対応することも増える有様だった。
「ギルドマスター、あの、先程からずっとお部屋から通信機の音が鳴っていますが…」
「なぬっ⁉︎もっと早く言ってくれよ⁉︎」
通信機を利用した連絡は、王家からの直接的な話に使われる場合がほとんどだった。
後の段取りを受付に任せて、トーマスは急ぎ部屋に戻った。
「ああ、お待たせしました!トーマスです!」
羅針盤通信機を起動すると、呼び出し音が止み羅針盤に相手側の姿が映し出される。
映し出されたのは、先の一件の活躍でミネルバ王女の近衛兵からラヘル王子の近衛兵へと転属したエドガーだった。
「おお、やっと繋がったか!トーマス殿、ラヘル王子が至急会いたいとの事だ。済まぬが王宮(仮)までご足労願えないか?」
「なんだエドガーか、こっちも忙しいんだ、通信機でのやり取りではダメか?」
「いや、流石に貴殿でも無理なのはご理解いただけるだろう⁉︎」
「冗談だ、でも正直、忙しくて参っているのさ。つまらない要件なら勘弁して欲しいなと思うわけよ」
「それ以上は、庇いきれない(不敬罪)からやめてくれ。要件は、簡略に言えばアラヤ殿関連だ」
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通信機は一方的に切られ、現金な人だなとエドガーはため息をついた。
しばらくして、職員に引き継ぎを済ませたトーマス王城跡地に到着した。
街の復興を最優先でしている為、王城の半壊した場所はまだ、手をつけられて無い場所もある。
ただ、王宮は1部はある者達により住める環境になっていた事もあり、国王を始めとした王家の者達は居住できていた。
「トーマス様、呼び出しでございますか?」
入って来たトーマスに気付いた侍女長のマーレットは、ミネルバ王女と共に洗濯物を取り込んでいる最中だった。
「おいおい、王女様がする仕事じゃないだろ?」
「トーマス。これは私が自ら申し出てしている事よ?人手不足の今の状況下では、王族といえど身の回りの世話くらい自らするようでなければ」
「すっかり、下街の暮らしに影響されちまってないですか?」
「フフフ、国民の生活を知る事は大事。でも、逞しさではまだまだ民の足元にも及ばないわ」
ミネルバの心意気は素晴らしいと思うが、その横でマーレットが彼女が雑に取り入れた洗濯物をたたみ直している。王女の洗濯物の扱いは、まだまだ手本が必要なようだ。
仕えているマーレット達は、現在の王宮に住み込んでいるわけではない。
王宮に彼女達の分の居住スペースが無いのが原因であるが、ミネルバ以外の王家の者達がやはり、仕える者達と近過ぎる事を良しとしないからでもあった。
その為、近衛兵や侍女達は崩れた王城の雨風凌げる場所で野営をして過ごしているのだ。
「ラヘル王子が用があるとエドガーに呼ばれているのだが、何処で待ち合わせかを聞いて無かったのだ。マーレット、エドガーが居る場所を知らないだろうか?」
「エドガーとラヘル王子でしたら、おそらく建設中の軍議室に居られるかと」
「そうか、ありがとう」
「待って、トーマス。私も同行して良いかしら?」
ミネルバは洗濯物籠をマーレットに押し付けると、トーマスの横に並ぶ。
「要件なら察しがついているの。私も聞きたい事があるんです」
「えぇ…、王族2人に挟まれるのは勘弁してほしいんだが…」
トーマスが明らかに面倒だという表情を見せても、ミネルバは諦めるつもりはないらしい。
「ミネルバ様、くれぐれもトーマス様に迷惑をかけませぬよう心掛けて下さい」
「分かっているわ」
マーレットは止めることなく、トーマスとの同行を許可した。
ミネルバ達はトーマスを信頼しているのだろうが、頼られる側としてはあまりにも心配が勝ち過ぎる。
何故なら、ラヘル王子は前王妃の嫡子であり、ミネルバは後妻であるジョアンヌ王妃の娘だからだ。
現国王がミネルバを溺愛するので、ラヘル王子や第一王女と第二王女は彼女を良く思っていないという噂は、王家と繋がりがある者達には常識と認知されている事だった。
「冒険者ギルド長、トーマス様がお見えになりました。ミネルバ第三王女もご一緒でございます」
「ミネルバ王女も?…まぁ良い、通してくれ」
衛兵から連絡を受けたエドガーが2人の入室を許可する。
軍議室内には、ラヘル王子、近衛兵長のエドガー以外に、騎士団長が3名、そして王子の側には宰相と大臣もいた。
「お待たせ致しました、ラヘル王子様」
入って来たトーマスは、一応畏まった態度で頭を下げる。例え騎士団長であろうとも、王族以外の者が着席している前で、膝をついてまで下手にでる気は無かった。
だいたい、此奴等はあの厄災の悪魔の災害時には王都に居なかったからな。
これが仮にも、闘病中の体にも関わらず、あの時残ると言って聞かなかったというラエテマ国王だった場合には、目前まで向かい膝を着いていただろうけど。
「ミネルバも来たのか。ここは遊びの場ではないぞ、退がれ」
「ラヘルお兄様、私は遊びで参った訳ではございません。今回の議題に興味がありまして…お邪魔は致しませんので、どうぞお仕事を続けて下さいませ」
引き下がろうとしないミネルバに軽い舌打ちをして、エドガーを軽く睨む。
議題の内容をミネルバに伝えたのは、十中八九エドガーだと分かっているからだ。
エドガーは睨まれるも、何も気にしないように目を逸らして入り口を見ている。
「トーマス、復興作業で忙しいところを呼び立てて済まないな」
「いえ」
「つい先日、私は父上の代理として、エドガーとある会議に参加した。そこには、グルケニア帝国皇帝、ムシハ連邦国国王、パガヤ王国女王と、各国の長が集まっていた。事の起案者は美徳教団教皇、大罪教団教皇もそれに協力をしていた。つまりは、世界中の権力者が一堂に会する場に我々も招かれた」
「それはまた…凄い危険な状況でしたね」
戦争をした相手の国王達と同席するなど危険極まりない。下手をすれば、全ての国王達が窮地に陥入れられる危険がある状況でもあったわけだから。
「…まぁな。だが、問題はそこではない。その会議が、ある新国家の承認決議の会議だった。そして我々はその会議で承認する側についた。というのも、その新国家、空中公国月の庭の国王が、其方達の知る者、アラヤ=グラコだったからだ」
「まさかの国王に⁉︎」
トーマスはエドガーを見る。エドガーからはアラヤの近況を聞くつもりではいた。
だがそれは、他領での活躍や破天荒な偉業をやっているのだろうという憶測だった。
アラヤ関連と聞いた時、おそらくは前回の功績も加え、農民から成り上がったバルガス騎士団長の様に貴族の称号を授与すると予想していたのだ。
だがその予想の斜め上をいかれた。
「空中?新国王?彼には、余りにも似合わない突拍子な言葉で混乱しております」
「む、そうか。エドガーはあり得ない話ではないと言っていたが、トーマスは私寄りで良かった。あの様な小柄な者が国王などとは、正直ふざけているとしか思えなかった」
「……。(いや、見た目でしか判断できないアンタと一緒にしないでくれ)その後、どうされたのですか?」
トーマスは、アラヤの情報をもっと知りたいと気持ちを切り替える。
「軍事力は、確かに国家レベルだが、産業や資源は我が国の半分にも満たない。だが、それを踏まえても、あの国とは繋がりを持つ必要があると、パガヤの女王も両教団教皇も考えていたのだ」
「ラヘル王子、私からも言わせて頂ければ、その判断は正しいと思います。あの彼は不思議と周りから惹かれる奴なんです。本人は不器用に距離を取ろうとしているみたいなのですが、実は気にかけている優しい奴でして。彼との繋がりを持てるなら、是非とも持つべきだと思います」
(現に俺は逃げられてばかりだからな!)
元々トーマスは、毎回アラヤの実力を見れずに逃げられているので、落ち着かせる為にも貴族になれば良いと考えていたのだ。
「まぁ、我々もその判断に至り、同盟を結ぶべきだろうと決まった」
「おお、同盟!」
「それに当たり、トーマスには公国に送る親善大使となる冒険者を見繕ってほしいのだ」
「親善大使?」
親善大使とは名ばかりで、ラヘル王子はアラヤに首輪をつけたいと考えているらしいな。
「失礼ながら申し上げます。彼と対等に親しくなれる者など、ギルドには居ないでしょう。もちろん、抑えることが可能な者など皆無です」
「なんだと?A級や…S級でもか?」
頷くトーマスに、ラヘル王子と宰相達は顔を曇らせる。
本人達も、見栄を張って小国扱いしたものの、月の庭との同盟が必要なことは分かっているのだ。
そんな中、1人の手が挙げられる。
「私がなりましょう。親善大使に」
「「「「…は⁉︎」」」」
あたかも待っていましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべ、ミネルバ王女が名乗りを挙げたのだった。
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