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第19章 選択権は弱者には無いそうですよ⁉︎
276話 分身の危険性
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『何と、技能も同様に使えるのか?』
「はい。但し、分身の大きさでステータスは変わります。例えば半分の大きさに分離した場合は、魔力量も半分持っていかれます」
分離の検証結果、本体から分離した分身は、技能はそのまま使えることが分かった。
ただ、ステータスは体積に比例して低くなり最小で1センチまで小さくなれた。
分離できる数は、今の熟練度レベルでは、大きさ関係無く10体まで可能だ。
ドッペルゲンガーとの違いは、分身したアラヤには、本体と別の考えを持てるということだ。それは、分身別に違う役割を頼むことができるのだ。
いわゆる、俺がもう1人居たらなぁの実現であるが、当然嫌な役回りでは揉める。
「い、嫌だ!俺はやりたくない!」
「でも大事な検証だ。今、知っておかないと、後々対処できない」
最も小さい1センチのアラヤに、最も重要な検証の被験者を頼むが、やはり揉めたのだ。
『何を揉めているのだ?』
「…もしも、分離した分身に被害が出た場合の検証です」
今後のことを考えると、避けてはいけない問題だ。それは、最悪の事態。分身が死んだ場合に、本体に取り込み戻すことが可能なのかの検証だ。
「待て待て、1番小さい俺でやる必要は無いさ。俺の指を斬り落として試そう。それで俺が戻ってみて、本体の背が戻らないなら、失った部分は戻らないって分かるんじゃないかな?」
埒があかないと、40センチのアラヤが我が身を犠牲にしようと提案すると、本体のアラヤが止めた。
「それってさ、戻らない場合、身長が永久に縮んだままってことだよね?」
「「「……」」」
本体から離れた欠損は、ヒールでは戻らない。指を切り離すにもそれなりの覚悟が必要なのだ。その決意が、身長の縮みの検証だと言われると、これには犠牲になる気だったアラヤも考えてしまう。
全員が尻込みして、再び検証が止まってしまった。
『ええぃ、早く決めんか!』
流石に痺れを切らしたエアリエルが怒ると、アラヤ達は慌ててジャンケンで決めることにした。
結果、分離後の本体と同じ50センチのアラヤが左手の指を全て斬ることになった。
「ハァ…嫌過ぎる」
しかし、決まったからにはやるしかない。これ以上エアリエルを怒らせるわけにはいかないからね。
アラヤはナイフを取り出すと一思いに斬り落とした。
「ぐっ!」
出血を直ぐに抑えながら、本体のアラヤと錬成術で戻る。
本体に分離した50センチのアラヤが戻って、身長が足されて伸びる。すると、直ぐにアヤコが巻尺で身長を測る。
「…98センチ。2センチ足りませんね」
「「「うわぁぁぁぁぁっ」」」
体が分離するこの技能は、忍者が使うような分身と違い、文字通りに体積を分けただけということだ。煙になって無かったことにはできないのだ。
「アラヤ君、落ち着いてください。まだ検証は終わっていません。次に、この斬り落とした指とも錬成吸収できるか試してください」
落ち込んでるアラヤ本体に、アヤコは指を渡す。鬼かと思われるかもしれないが、これは彼が大事だと考える身長よりも、とても大事な検証なのだ。
「…分かった。身長、戻ってこい!」
指を握って錬成をすると、しっかりと吸収されて身長に足された。
「やった!戻った⁉︎」
アヤコが再び巻尺で測ると、確かに2センチ足されている。
「つまりは、分離した分身体は、腕や足を切られても本体に吸収されれば戻るってことね?最悪、遺体でもOKって事?」
カオリの言葉に1センチのアラヤがビクッとなる。最初の検証では遺体になる可能性が自分にあったからだ。
(たとえ体が戻っても、魂はどうなのかしら…。体験した記憶や感情も本体に足されるなら、当然、魂も分離しているかもしれません。もし、…もしも分身が遺体になった場合、はたして魂も戻ってくるのでしょうか?)
アヤコが危惧しているのは、魂や人格の消耗だ。分離分身を繰り返し、その度に最悪な事態が少なからずあった場合、彼は果たして無事なのだろうか?
「検証結果、分離分身可能なのは本体のみで、数は大きさ関係無しに10体まで。ステータス、最大魔力量は体積に比例するけど、分離分身は本体以外でも使用可能。但し、合計10体は変わらず。欠損、もしくは死亡した場合でも、本体へ錬成可能。とりあえず、判明したのはこんなところでしょうか」
「先ず、密偵とかに向いているわね。その小ささで隠密や魔導制御で気配消したら、誰にも見つからないわよ?」
望遠眼、超聴覚、超嗅覚、擬態等、確かに密偵としての技能は完璧だ。それでいて1センチなら見つかりゃしない。
『ふむ。検証は終わりじゃな?ならば、我に最も小さいアラヤを預けよ。ミフルが話したがっていたからな。エンリルを連れて会いに行くとしよう。きっと驚くだろうな!』
エアリエルはヒョイと、1センチアラヤの分身を肩に乗せる。
「ああ、せめてもう少し大きい分身の方が良くないですか?」
『小さくなり最大魔力量は減ろうとも、ゲーブと我が加護がある限り、魔力は無尽蔵に回復する。ステータスが低くとも、魔法による戦闘力は高いから、そう易々とやられはしまい?』
「それはそうですが…」
「大丈夫だよ、アヤコさん」
アヤコの本当の心配を知らずに、少しだけ低くなるだけで済むのならとアラヤは乗り気だ。
『アラヤよ、良い機会だ。そんなに成長が止まったことで身長が気になるのなら、体積を自在に操れる水の大精霊アーパスに逢いに行くと良い』
「体積を自在に⁉︎それは人体でも可能なんですか⁉︎」
『うむ。我が加護が維持と風化による変質。ゲーブの加護が安定と蓄積による変質。そして、奴の加護は膨張と吸収による変質だ。奴の眷属竜が確か、自在に大きさが変えられた筈だ。居場所はゲーブが知っているだろう。加護が欲しいなら、今こそ分離分身を使い、次の禁呪魔導書を探す班と別れて行動したらどうだ?』
「是非、行ってみます!」
「ちょっと、アラヤ君⁉︎本体が行くのは無しですよ⁉︎」
「…あ、うん。それもそうだね。でも、忙しいゲーブ様が最後まで案内してくれるかな?小さい分身を行かせるなら、せめてあと1人同行してもらわないと…」
それは、最悪な事態に遺体を回収できる人物が必要ということ。アラヤ自身も、その事は考慮しているらしい。
「でしたら、ハウンが適任ですね」
本来なら、アヤコ達(妻達)の誰かが同行したいところだが、サナエ不在の今、カオリは禁呪魔導書の解読には必須だし、クララはステータスが減った本体のアラヤの護衛役に必須。アヤコ自身は、エアリエルとエンリルが不在の期間の浮遊邸の防衛がある。
「そうだね。じゃあ、次の魔導書を探す場所を決めてから別れようか」
「えっと、過去の資料で判明している残りの厄災の悪魔は2体。魔人族国家ソードムのアーリマンとムシハ連邦国のベルフェゴールね。どっちにする?」
「今のソードムの国王、アラガキなんでしょ?正直、行きたくないなぁ。ヌル虚無教に攻められてたとしても、助けたいと思えない」
俺は聖人君子じゃないからねと、アラヤはハッキリと嫌悪感を出す。
アヤコ達もその反応には同意する。
「じゃあ次は、ムシハ連邦国の東にあるハフナルヴィークで、発見及び封印された厄災の悪魔、ベルフェゴールの神殿探しね。確か、イトウ先生が住んでいるのも、ハフナルヴィーク島だったわよね?」
「悪魔の発見箇所は島の近海でしょ?わざわざ会いに行く必要は無いだろうし、先生はのんびりスローライフを送りたいって感じだったよ?」
大体、怠惰魔王に選ばれた人物だ。協力を要請しても断られるのがオチだ。それなら、こちらからの接触は止めておくのが無難だ。
『うむ、決まったようだな。では、それぞれの目的に出発するとしよう』
どうやら、エアリエルもただ光の大精霊ミフルに会いに行くのが目的では無さそうだ。帝国に行って話をするだけなら、エアリエルなら1日も掛からないからね。
「それじゃあ、ハフナルヴィークで待ってます」
こうして、アラヤ達はそれぞれの目的の為に離れ離れとなるのだった。
「はい。但し、分身の大きさでステータスは変わります。例えば半分の大きさに分離した場合は、魔力量も半分持っていかれます」
分離の検証結果、本体から分離した分身は、技能はそのまま使えることが分かった。
ただ、ステータスは体積に比例して低くなり最小で1センチまで小さくなれた。
分離できる数は、今の熟練度レベルでは、大きさ関係無く10体まで可能だ。
ドッペルゲンガーとの違いは、分身したアラヤには、本体と別の考えを持てるということだ。それは、分身別に違う役割を頼むことができるのだ。
いわゆる、俺がもう1人居たらなぁの実現であるが、当然嫌な役回りでは揉める。
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「でも大事な検証だ。今、知っておかないと、後々対処できない」
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埒があかないと、40センチのアラヤが我が身を犠牲にしようと提案すると、本体のアラヤが止めた。
「それってさ、戻らない場合、身長が永久に縮んだままってことだよね?」
「「「……」」」
本体から離れた欠損は、ヒールでは戻らない。指を切り離すにもそれなりの覚悟が必要なのだ。その決意が、身長の縮みの検証だと言われると、これには犠牲になる気だったアラヤも考えてしまう。
全員が尻込みして、再び検証が止まってしまった。
『ええぃ、早く決めんか!』
流石に痺れを切らしたエアリエルが怒ると、アラヤ達は慌ててジャンケンで決めることにした。
結果、分離後の本体と同じ50センチのアラヤが左手の指を全て斬ることになった。
「ハァ…嫌過ぎる」
しかし、決まったからにはやるしかない。これ以上エアリエルを怒らせるわけにはいかないからね。
アラヤはナイフを取り出すと一思いに斬り落とした。
「ぐっ!」
出血を直ぐに抑えながら、本体のアラヤと錬成術で戻る。
本体に分離した50センチのアラヤが戻って、身長が足されて伸びる。すると、直ぐにアヤコが巻尺で身長を測る。
「…98センチ。2センチ足りませんね」
「「「うわぁぁぁぁぁっ」」」
体が分離するこの技能は、忍者が使うような分身と違い、文字通りに体積を分けただけということだ。煙になって無かったことにはできないのだ。
「アラヤ君、落ち着いてください。まだ検証は終わっていません。次に、この斬り落とした指とも錬成吸収できるか試してください」
落ち込んでるアラヤ本体に、アヤコは指を渡す。鬼かと思われるかもしれないが、これは彼が大事だと考える身長よりも、とても大事な検証なのだ。
「…分かった。身長、戻ってこい!」
指を握って錬成をすると、しっかりと吸収されて身長に足された。
「やった!戻った⁉︎」
アヤコが再び巻尺で測ると、確かに2センチ足されている。
「つまりは、分離した分身体は、腕や足を切られても本体に吸収されれば戻るってことね?最悪、遺体でもOKって事?」
カオリの言葉に1センチのアラヤがビクッとなる。最初の検証では遺体になる可能性が自分にあったからだ。
(たとえ体が戻っても、魂はどうなのかしら…。体験した記憶や感情も本体に足されるなら、当然、魂も分離しているかもしれません。もし、…もしも分身が遺体になった場合、はたして魂も戻ってくるのでしょうか?)
アヤコが危惧しているのは、魂や人格の消耗だ。分離分身を繰り返し、その度に最悪な事態が少なからずあった場合、彼は果たして無事なのだろうか?
「検証結果、分離分身可能なのは本体のみで、数は大きさ関係無しに10体まで。ステータス、最大魔力量は体積に比例するけど、分離分身は本体以外でも使用可能。但し、合計10体は変わらず。欠損、もしくは死亡した場合でも、本体へ錬成可能。とりあえず、判明したのはこんなところでしょうか」
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