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第18章 離れ離れが寂しいのは当然ですよ⁉︎
262話 ロータスの人物像
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「アヤコ様、良かったのですか?わざわざ大金を渡さなくとも、吾輩の血気傀儡ならありのままの情報を聞き出せましたが…」
お金を受け取り満足気に立ち去る使用人を見送りながら、コモンは使うつもりだった牙を引っ込める。
「いいえ、その必要はありません。貴方の隷属にしたら、屋敷に戻す訳にはいかなくなりますし、何より彼は依頼を受けていた途中です。確実に、ロータスに怪しまれてしまうでしょう」
使用人から幾つかの情報を買ったアヤコ達は、彼が帰った後は直ぐにその場を離れていた。
というのも、彼が立ち去ったと同時刻に、屋敷を監視していたコモンの分体の蝙蝠が、ロータスと思われる人物が他の使用人達とカピバ車の段取りを始めたのだ。
「早朝に出発かと思っていましたが、夜のうちにカハピウラに立つつもりかもしれませんね」
「我々はどうするのですか?」
「帰るのはテレポートで直ぐです。得た情報が確かなら、私達は何かあった場合の為に動きましょう」
相手は厄災の悪魔。他の悪魔と違い世界を混沌に落とそうとせず、姿を擬装して長年潜んでいた曲者だ。
やれる事は全部しておく必要があると考えたアヤコは、コモンと2人で行動に移るのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
カハピウラの街長宅、その真上に浮遊邸は停泊していた。
「ハウン、どうだい?アヤコさんとは連絡取れた?」
「はい。厄災の悪魔サタンが擬装するロータスという人物の手に入れた情報が幾つか。アヤコ様達は、もうしばらくやる事があるらしいです」
ハウンは、聞いた内容を羊皮紙にスラスラと書き上げている。
ロータス(サタン)
種族 亜人族(獅子人) 年齢 68歳 雄
血縁者
妻 テラ(人獅子) 享年 41歳 雌
養子 ブルータス(獅子人) 20歳 雄
ダリウス (獅子人) 12歳 雄
役職は外務大丞。グルケニア帝国と魔人国家ソードムに太いパイプを持つ。
性格は豪胆で、内政でも信頼が厚い。趣味は他国の工芸品の収集。
出生地は王都郊外の村となっているが、森林火災により村が焼失している。この時、両親は死亡扱いされている。
グルケニア帝国の要請で、第一級囚人を傭兵として送る案を議会で申請中。
過去に数度、屋敷を賊に襲撃される。この時本人不在により、妻であるテラ婦人が死亡。その後、ロータスにより賊は壊滅した。
襲撃に関わっていたとされる反対派の要人達も断罪。
「う~ん…。悪魔というより、普通に政治家やってる?」
「みたいですね。あと、祭りの妨害かは不明ですが、息子の為に祭りに何やら仕込みをする依頼を出していたらしいです」
「悪魔なのに、養子と親子関係も築こうとしてるのか…」
「これを見た限りだと、厄災の悪魔だとは全く分からないわね。人としてなりすましているのが、大きな混沌を招く為に必要なことなのかしら?」
流石のカオリも、理解できないと頭を捻っている。前世界の文献に似たような例がないかを探しているようだ。
「まさかの、平穏な生活がしたいだけだったりして?」
「いやいやいや、それは無いでしょう。平穏を望むのだったら、人が少ない村で大人しく暮らすのが一番だし」
「それもそうか…」
「にいや、それよりも誘惑する手段だけど、これが使えるんじゃない?」
カオリは羊皮紙のある文章を指差す。
「…工芸品の収集?」
「そう。収集家としても知られているなら、他国の工芸品に反応しないわけ無いと思うわ」
「確かに。じゃあ、ラエテマ王国やムシハ連邦の工芸品を作る?」
「いえ、彼が収集している可能性が少しでもあるなら食い付かない。それなら、この世界に無い工芸品を作らなきゃ」
「それもそうだね。でも何があるかなぁ?」
織物や木彫りの彫刻等はこの世界にも普通にあるからね。
「それは私に任せて?」
「そう?ならお願いするよ」
知識やアイデア量は彼女の方が上だ。ここは信頼してカオリに任せることにした。
それならと、空いた時間でアラヤは、マンドラゴラの薬草を調べているファブリカンテの下に向かった。
住居棟の裏側に、陽の当たり難いファブリカンテ専用の調剤室がある。
中に入ると、棚に沢山の薬が並んでいた。薬と言っても、どれもが回復薬ではない。むしろヒールが使える者が多い為に、逆に毒物の方が多いくらいだった。
普段は、アヤコとファブリカンテで様々な効果の薬物がここで作られている。
「どう?マンドラゴラの効果は大体分かった?」
「アラヤさんの仰るとおり、精神安定効果がある事は分かりました。それ以外にも、少量の毒草を混ぜる事で、幻惑や麻酔効果があることが分かりました。液状にしたものを染み込ませて焼いて出た煙にも、同様の効果があります。その効果は従来の…」
活き活きと毒の効果を話すファブリカンテ。彼女もまた、アヤコに毒されてきているな。
「分かった、分かった。じゃあさ、このマンドラゴラが大量に必要な状況って、どんな状況かな?」
「そうですね…。これを治療用として使うのであれば、重度の幻覚、幻聴等を大人数が同時に受けた状況ですかね…」
「となると、祭りに呼ばれるS級魔物は、そういった事が得意な魔物ということだね。ファブリカンテ、念のため治療薬を作ってくれるかい?」
「はい、喜んで!いろいろと追加効果も可能か調べて作っておきます」
間に合わせだから、とりあえずは普通で良いんだけどな。まぁ、本人はやる気出てるから良いけどさ。
「じゃあ、よろしくね」
調剤室を出ると、俯いているディニエルと遭遇した。
「ディニエル、どうしたの?」
「あ、アラヤさん。い、いえ、ちょっと考え事を…」
彼女は、メイド服のエプロンをキュッと掴み下を見ている。
「何か困っているなら話して?」
「その…ちょっとだけ、兄さんの、村が気になって…」
ディニエルの兄ファウンロドは、ムシハ連邦国にあるエルフの村に住んでいる。
「ムシハ連邦国でも、内乱が起きているらしいって聞いたので…」
「うん、確かに一部の国で反乱は起きたみたいだけれど、彼の結界があれば大丈夫だと思うよ?」
彼の張る結界の隠蔽力は、普通の人間には絶対に破れないだろうし。
「はい。そうだとは信じているのですが、…アラヤさんは、サナエさんと離れて寂しくありませんか?」
「あ…」
そうか、ディニエルは寂しかったんだ。ホームシックになってたんだな。
「確かに寂しいけど…、必ずまた会えると信じているからね。それに、その気になったら直ぐに会いに行けるからね」
「う~ん、それはそうなんですけど…」
ディニエルには、少しアラヤとは感覚が違うように思えた。
納得していないと分かったアラヤは、一つ思い付いた。
「君だけじゃなく、イシルウェやアルディスも同じように心配だろうね。ここは1つ、エアリエル様に様子を見てきてもらおうか?」
「ええっ⁉︎」
「ちょっと、伺ってみるよ」
アラヤは監視塔まで急ぎ、部屋の扉を開けた。すると、鏡を前にドレスでポーズをしている風の大精霊エアリエルが、驚いた顔で固まっていた。
『ば、馬鹿者!ノックをせんか!』
「す、すみません!すみません?」
『そ、それで、慌ててどうした?』
エアリエルは、コホンと軽く咳払いして椅子へと腰掛ける。
アラヤは、エルフの村の今を知りたいと話をする。
『つまり、私に様子を見て来いと?』
「別に浮遊邸で向かっても良いんですけど、最速でも片道5日は掛かります。それだと、祭りの参加どころではありません。でも、エアリエル様なら数分で移動できますよね?」
『それは確かにそうだがな…。御主は大精霊をも顎で使うのか…?』
「い、いえ、すみません。ただ、エルフ達は不安みたいで、安心させたかっただけです」
『…。んん、そう言われると我も気になってくるな。分かった。頼まれてやろう』
了承したエアリエルはドレスを脱いだ。彼女の新たな着替えは全て、霊力を抑える魔法陣が織り込まれてある。
大精霊の存在を隠す為の服だが、力まで抑えられてしまう為に脱ぐ必要があるのだ。
『直ぐに戻る』
そう言って、直ぐに監視塔を飛び出して行った。
後に残されたドレスを見ると、丁寧に畳まれている。
エアリエル様は、どうやらお洒落に目覚めたようだね。
これだけファッションに興味があるなら、霊力を抑えないタイプの服も、彼女に用意してあげた方が良いかもね。
お金を受け取り満足気に立ち去る使用人を見送りながら、コモンは使うつもりだった牙を引っ込める。
「いいえ、その必要はありません。貴方の隷属にしたら、屋敷に戻す訳にはいかなくなりますし、何より彼は依頼を受けていた途中です。確実に、ロータスに怪しまれてしまうでしょう」
使用人から幾つかの情報を買ったアヤコ達は、彼が帰った後は直ぐにその場を離れていた。
というのも、彼が立ち去ったと同時刻に、屋敷を監視していたコモンの分体の蝙蝠が、ロータスと思われる人物が他の使用人達とカピバ車の段取りを始めたのだ。
「早朝に出発かと思っていましたが、夜のうちにカハピウラに立つつもりかもしれませんね」
「我々はどうするのですか?」
「帰るのはテレポートで直ぐです。得た情報が確かなら、私達は何かあった場合の為に動きましょう」
相手は厄災の悪魔。他の悪魔と違い世界を混沌に落とそうとせず、姿を擬装して長年潜んでいた曲者だ。
やれる事は全部しておく必要があると考えたアヤコは、コモンと2人で行動に移るのだった。
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「ハウン、どうだい?アヤコさんとは連絡取れた?」
「はい。厄災の悪魔サタンが擬装するロータスという人物の手に入れた情報が幾つか。アヤコ様達は、もうしばらくやる事があるらしいです」
ハウンは、聞いた内容を羊皮紙にスラスラと書き上げている。
ロータス(サタン)
種族 亜人族(獅子人) 年齢 68歳 雄
血縁者
妻 テラ(人獅子) 享年 41歳 雌
養子 ブルータス(獅子人) 20歳 雄
ダリウス (獅子人) 12歳 雄
役職は外務大丞。グルケニア帝国と魔人国家ソードムに太いパイプを持つ。
性格は豪胆で、内政でも信頼が厚い。趣味は他国の工芸品の収集。
出生地は王都郊外の村となっているが、森林火災により村が焼失している。この時、両親は死亡扱いされている。
グルケニア帝国の要請で、第一級囚人を傭兵として送る案を議会で申請中。
過去に数度、屋敷を賊に襲撃される。この時本人不在により、妻であるテラ婦人が死亡。その後、ロータスにより賊は壊滅した。
襲撃に関わっていたとされる反対派の要人達も断罪。
「う~ん…。悪魔というより、普通に政治家やってる?」
「みたいですね。あと、祭りの妨害かは不明ですが、息子の為に祭りに何やら仕込みをする依頼を出していたらしいです」
「悪魔なのに、養子と親子関係も築こうとしてるのか…」
「これを見た限りだと、厄災の悪魔だとは全く分からないわね。人としてなりすましているのが、大きな混沌を招く為に必要なことなのかしら?」
流石のカオリも、理解できないと頭を捻っている。前世界の文献に似たような例がないかを探しているようだ。
「まさかの、平穏な生活がしたいだけだったりして?」
「いやいやいや、それは無いでしょう。平穏を望むのだったら、人が少ない村で大人しく暮らすのが一番だし」
「それもそうか…」
「にいや、それよりも誘惑する手段だけど、これが使えるんじゃない?」
カオリは羊皮紙のある文章を指差す。
「…工芸品の収集?」
「そう。収集家としても知られているなら、他国の工芸品に反応しないわけ無いと思うわ」
「確かに。じゃあ、ラエテマ王国やムシハ連邦の工芸品を作る?」
「いえ、彼が収集している可能性が少しでもあるなら食い付かない。それなら、この世界に無い工芸品を作らなきゃ」
「それもそうだね。でも何があるかなぁ?」
織物や木彫りの彫刻等はこの世界にも普通にあるからね。
「それは私に任せて?」
「そう?ならお願いするよ」
知識やアイデア量は彼女の方が上だ。ここは信頼してカオリに任せることにした。
それならと、空いた時間でアラヤは、マンドラゴラの薬草を調べているファブリカンテの下に向かった。
住居棟の裏側に、陽の当たり難いファブリカンテ専用の調剤室がある。
中に入ると、棚に沢山の薬が並んでいた。薬と言っても、どれもが回復薬ではない。むしろヒールが使える者が多い為に、逆に毒物の方が多いくらいだった。
普段は、アヤコとファブリカンテで様々な効果の薬物がここで作られている。
「どう?マンドラゴラの効果は大体分かった?」
「アラヤさんの仰るとおり、精神安定効果がある事は分かりました。それ以外にも、少量の毒草を混ぜる事で、幻惑や麻酔効果があることが分かりました。液状にしたものを染み込ませて焼いて出た煙にも、同様の効果があります。その効果は従来の…」
活き活きと毒の効果を話すファブリカンテ。彼女もまた、アヤコに毒されてきているな。
「分かった、分かった。じゃあさ、このマンドラゴラが大量に必要な状況って、どんな状況かな?」
「そうですね…。これを治療用として使うのであれば、重度の幻覚、幻聴等を大人数が同時に受けた状況ですかね…」
「となると、祭りに呼ばれるS級魔物は、そういった事が得意な魔物ということだね。ファブリカンテ、念のため治療薬を作ってくれるかい?」
「はい、喜んで!いろいろと追加効果も可能か調べて作っておきます」
間に合わせだから、とりあえずは普通で良いんだけどな。まぁ、本人はやる気出てるから良いけどさ。
「じゃあ、よろしくね」
調剤室を出ると、俯いているディニエルと遭遇した。
「ディニエル、どうしたの?」
「あ、アラヤさん。い、いえ、ちょっと考え事を…」
彼女は、メイド服のエプロンをキュッと掴み下を見ている。
「何か困っているなら話して?」
「その…ちょっとだけ、兄さんの、村が気になって…」
ディニエルの兄ファウンロドは、ムシハ連邦国にあるエルフの村に住んでいる。
「ムシハ連邦国でも、内乱が起きているらしいって聞いたので…」
「うん、確かに一部の国で反乱は起きたみたいだけれど、彼の結界があれば大丈夫だと思うよ?」
彼の張る結界の隠蔽力は、普通の人間には絶対に破れないだろうし。
「はい。そうだとは信じているのですが、…アラヤさんは、サナエさんと離れて寂しくありませんか?」
「あ…」
そうか、ディニエルは寂しかったんだ。ホームシックになってたんだな。
「確かに寂しいけど…、必ずまた会えると信じているからね。それに、その気になったら直ぐに会いに行けるからね」
「う~ん、それはそうなんですけど…」
ディニエルには、少しアラヤとは感覚が違うように思えた。
納得していないと分かったアラヤは、一つ思い付いた。
「君だけじゃなく、イシルウェやアルディスも同じように心配だろうね。ここは1つ、エアリエル様に様子を見てきてもらおうか?」
「ええっ⁉︎」
「ちょっと、伺ってみるよ」
アラヤは監視塔まで急ぎ、部屋の扉を開けた。すると、鏡を前にドレスでポーズをしている風の大精霊エアリエルが、驚いた顔で固まっていた。
『ば、馬鹿者!ノックをせんか!』
「す、すみません!すみません?」
『そ、それで、慌ててどうした?』
エアリエルは、コホンと軽く咳払いして椅子へと腰掛ける。
アラヤは、エルフの村の今を知りたいと話をする。
『つまり、私に様子を見て来いと?』
「別に浮遊邸で向かっても良いんですけど、最速でも片道5日は掛かります。それだと、祭りの参加どころではありません。でも、エアリエル様なら数分で移動できますよね?」
『それは確かにそうだがな…。御主は大精霊をも顎で使うのか…?』
「い、いえ、すみません。ただ、エルフ達は不安みたいで、安心させたかっただけです」
『…。んん、そう言われると我も気になってくるな。分かった。頼まれてやろう』
了承したエアリエルはドレスを脱いだ。彼女の新たな着替えは全て、霊力を抑える魔法陣が織り込まれてある。
大精霊の存在を隠す為の服だが、力まで抑えられてしまう為に脱ぐ必要があるのだ。
『直ぐに戻る』
そう言って、直ぐに監視塔を飛び出して行った。
後に残されたドレスを見ると、丁寧に畳まれている。
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