上 下
262 / 418
第18章 離れ離れが寂しいのは当然ですよ⁉︎

258話 洞窟遺跡

しおりを挟む
 厄災の悪魔の目撃場所から更に北西に、通常の馬車なら半日程進むと、川により削られて出来た渓谷が広がっていた。
 谷の深さは30mくらいで、壁には地層がハッキリと見えている。その層から見ても、かなり古くからこの渓谷はあるようだ。

「この地図、目印が汚すぎてよく見えないな…」

 マンドラゴラ農家の婆さんから受け取った地図は、この渓谷までは分かったのだが、説明書きされた字がミミズが走ったような文字で、言語理解でも飛び飛びにしか理解できない。

「崩れた廃屋、三本木、…絵的には、この位置から見た風景と言えなくもないけど…」

 探し歩いて1時間、渓谷の形と照らし合わせて、それとなく似た場所を見つけた。
 大きな落石により、入り口が目立たないように隠れた洞窟の入り口が確かにあった。

「とりあえず調べてみよう」

 3人は洞窟へとゆっくりと入る。入り口からして、確かに天然洞窟というよりも人工的に掘られた横穴だ。
 ライト玉を先行して飛ばしつつ、緩やかな下り坂を進んでいくと、少し広い場所に着いた。

「行き止まりですか?」

「いや、岩壁で入り口が隠されているみたいだ」

 熱感知に、壁が空洞になっている場所が映る。
 アースクラウドを使用し、壁の土を退かしてみると、案の定、奥に通じている通路が現れた。

「ここからは階段があるね。どうやら、ここが遺跡で間違いないかも」

「では、カオリ様にも連絡を入れます」

 クララは、浮遊邸で待機しているカオリに念話で連絡をしようとしたが、洞窟内だからか上手く繋がらない。

「入り口まで戻って試してみます」

「分かった、ここで待ってるよ」

 クララは入り口まで急ぎ戻ると、再び念話を送る。すると、やはりカオリには繋がらない。代わりに、今度はアヤコへと送るとスムーズに繋がった。

『さっきカオリさんは逝ったばかりなの。彼女が仮死状態デスタイムから起き次第、直ぐに準備して向かう様に言うわ。でも、目覚めを待つより魔導書を見つけて帰ってくる方が早いかもしれない。それにしてもその場所、念話が使えないって事は、技能スキルを阻害する何かがあるのかもしれないわ?』

『ライトと、熱感知は使用できていますので、全てを阻害しているわけでは無さそうですけど…』

『ハウン達を送りましょうか?』

『いえ、持ち帰るなら大丈夫です』

『そう?気をつけてね』

 クララは再びアラヤ達が待つ入り口に戻って、カオリが来られない事を伝える。

「そっか。それなら今回は魔導書回収後は、祭壇破壊して脱出でいいね」

 3人は遺跡へと足を踏み入れる。これといった違和感もなく、罠も低度の罠ばかりで困難無く進める。
 1時間足らずで、何ごともなく宝物庫らしき部屋まで到着できた。

「皆んな、魔導書を片っ端から探そう」

「ご主人様、それなら亜空間収納に全て入れていきましょう。魔導書以外のお宝もあるかもしれませんよ?」

「確かにそうだけど、呪われた宝も入れちゃいそうだな」

「直接見分けるよりは早いから、いいんじゃないですかぁ?」

「う~ん、分かった。じゃあ、入るだけ入れよう」

 室内にある全ての物を収納していくと、金銀財宝よりも、劣化により使用不可の魔道具や食器類などが多く、魔導書類が見当たらない。
 全ての物を収納したが、クララの亜空間にも禁呪魔導書は入っていない。

「これは違う遺跡の可能性もあるか?」

 厄災の悪魔の遺跡以外にも、遺跡があっても当然おかしくはない。
 だが、収納した中にはフレイア神の石像もあった。

「…祭壇への通路はない?」

「回転壁がありました。ですが、通路の奥は崩れていますね」

 確認すると、確かに通路天井が崩落して道を塞いでいる。

「退かして確認しなきゃいけないか…」

「あ、それなら私の契約精霊パートナーに確認を頼みましょうか?」

 ミュウが、闇の微精霊を肩から下ろす。
 エキドナの微精霊時に比べると、下半身の柄が蛇柄になっていて、なんだかミュウの小型版って感じだ。
 
「名前はペポ。闇精霊には珍しい雄型の微精霊なんですよ?」

『ペポ、祭壇の確認をお願いできるかな?』

『…ま、任された』

 オドオドした態度のペポは頷くと、埋まってる通路に向かって姿くらましをして消えた。
 少しの間待つと、再びペポが姿現しで戻ってきた。

『さ、祭壇はあった。でも2つ?に割れてる』

「割れてる⁉︎ひょっとして、既に誰か来たって事か?」

 ヌル教団が来たのなら、祭壇を破壊する必要は無いと思う。だとすると、大罪教団の調査部隊の可能性が高いか?

「先客が、祭壇を破壊して魔導書を持ち出したって事か…」

「くたびれ儲けってやつですか?」

 ミュウの言葉にクララが睨む。

「骨が折れるような損も無いし、ガラクタが多いけど宝も手に入れたので良いんです!」

 まぁ確かに、祭壇の破壊は成されている事が分かっただけでも来た意味は充分あるよね。

「目標達成って事で、じゃあ帰還しようか」

 テレポートで帰ろうと3人で手を繋ぐも、術が発動しない。

「あれ?」

 クララも試してみるが、同じ様に発動しない。例の阻害が影響しているのかもしれない。

「しょうがない、来た道を地道に帰るか…」

 3人が宝物庫から帰ろうと通路に出ると、明らかに空気が変わっている。

「何か来た時と違うな…」

 魔導感知と熱感知を発動するも反応は無い。というよりも、発動できていない。

「ご主人様、罠解除も発動できません」

「感知系技能が封じられてる⁉︎」

 念話やテレポートができない事も、遺跡に仕掛けられた罠って事か?

「罠解除が発動しないなら、罠を1つ1つ確認、自力で解除して進むしかないな」

「まぁ、来る時も大した罠も無かったから、楽勝でしょう」

 ミュウの楽観的な予想を嘲笑うかのように、帰る場合にのみに発動する罠が多く用意してあった。

「これはしんどいなぁ…」

 技能が使えないってだけで、こうも時間が掛かるとは…。

「2人共、俺が一気に進むからついて来て」

 面倒になったアラヤは、先行して罠を破壊しながら進む。
 自己再生があるとはいえ、射撃、斬撃、落とし穴、針壁、圧殺、全てを破壊、躱しながらごり押しで進む。

「魔王様は凄いね~」

「本来なら、部下である貴女がやらなきゃいけない役だと思いますよ?」

「私には無理ですよ~。クララ様がやったら良いのでは?」

「言われなくとも、そのつもりです」

 クララはアラヤの先に出て、同じ様に罠を破壊しながら進む。

「2人共、私達より人外って気がするわ」

 ミュウは、やはり私には無理だわと大人しくついていく事にした。

 行きとは違い、入り口に戻るまでに5時間近くかかった。
 外は陽が傾き、昼食の時間が過ぎている事に、アラヤは少し苛立っていた。

「ようやくご帰還か」

 アラヤ達が出てくるのを待っていたのか、鰐人クロコダイルマンの亜人達が3人武装した姿で現れた。

「我々は、パガヤ王国…グェッ⁉︎」

 アラヤの指示を待たず、鰐人の喉元をミュウの尻尾が締め上げていた。

「ミュウ、待て。説明を聞こう」

「分かりました」

 外に出て初めての武装した対人に、彼女なりに緊張していたのだろう。こんな事なら、先に街に出て慣れさせるべきだったかな。
 解放された鰐人は、咳き込みながらも仲間の2人に大丈夫だと静止させる。

「我々も失礼な態度ではあった。改めて、…我々はパガヤ王国の兵士です。貴方方は…以前、プラゼンタの街のコロシアムに参加したニイヤ殿と、キララ殿で間違いありませんか?」

「…ああ、そうだけど?」

「我々はある方の命により、貴方方がこの場所に現れるのを待っていました」

 ここにアラヤ達が来る事を知っていた?

「ある方って?」

「我が王国が誇る4将軍が1人、レイジ=バンドウ様です」

「うげっ、アイツか」

「…アイツ?」

 思わず嫌いな態度が声に出てしまった。

「あ、いや、同じゲーブ様の加護を持つ者同士だからね?知らない顔じゃないんだよ」

「…そうですか。なら話は早いですね!実は、貴方方が現れた際には、レイジ様の下に案内するように命じられております。是非、御同行お願いします!」

 3人が頭を下げて頼むも、アラヤは首を横に振った。

「ごめん、俺達は今からご飯だからさ!」

「「「へ?」」」

 瞬く間にテレポートでアラヤ達は光の柱になって飛んで行った。
 残された鰐人達はポカンと口を開けて、今からご飯?と訳が分からず呆然とするしかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...