【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第16章 昨日の敵は今日の友とはならないよ⁉︎

232話 帰省

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 デピッケルを出たアラヤ達は、次はヤブネカ村へと帰郷する事にした。
 ヤブネカ村を訪れるのは、アラヤ、サナエ、アヤコ以外は初めてになる訳だが、転移後の3人が過ごした場所を見れると、何故か楽しみにしている。
 思い入れはある村だけど、他人から見たら普通の村だとガッカリされそうで嫌だな。

「見えて来たわ!…あ、あれ?」

 監視塔に登り、いち早く村を見つけたサナエが、首を傾げている。

「どうしたの?」

「見てよ2人共、あれ、本当にヤブネカ村?」

 アラヤとアヤコの2人も監視塔に上がり望遠眼で見てみると、二度見して自身の目を疑った。

「うそ、村の敷地めっちゃ増えてない?」

「あれは、ブルパカの牧場ですね。その隣にある大きな建物は…あっ⁉︎サナエさんが言っていたイービルスパイダーの牧場です!」

「そう言えば、魔力粘糸の生産ラインとして作ったって言ってたね…」

「「「……」」」

 その他にも色々と無かった筈の建物とかが見える。3人は、途端に皆に案内する事が不安になった。

「わぁ!これがご主人様達のお世話になっていた村ですか!」

 村の入り口に来たものの、既に門の作りが違っている。前は馬車が一台通る幅と高さの門であったが、今は馬車がすれ違える程に幅広くなっている。

「そこの馬車、止まりなさい」

 アラヤ達の馬車に気付いた麦わら帽の守衛が、村に入る前に止めに来た。よく見ると女性の守衛だ。

「あら?アラヤ君じゃない?」

 馬車を操縦しているのがアラヤだと分かると、女守衛は被っていた麦わら帽を外す。

「え?ひょっとして、ベスさん?」

「そうよ、久しぶりねアラヤ君」

 村人の食堂で働いていた女性で、守衛隊長のライナスと恋仲だった。

「なんで守衛やってるの?」

「その話は後でしましょう?とにかく、今はみんなに顔見せに行ってあげて?」

 馬車2台は、最初に村長であるメリダさん宅に向かう。その道中で見える家々も、以前よりちょっと立派になっているが、村長宅自体は以前のままだった。ただ、工房の方は大きくなっているな。

「村長~」

 アラヤ達3人が村長宅に入ると、奥からバタバタと大きな物音が聞こえて、メリダがボサボサになった赤髪のままで現れた。

「貴方達!」

「ただいま、村長」

 彼女は手に持っていた金槌を放り、3人に飛び込んで抱き寄せる。

「良く帰って来たね!偶には顔を見せる約束を忘れてるかと思ったよ?」

「まぁ、いろいろありまして」

「そうだろうね、随分と成長した様に見えるよ。さぁ、積もる話は皆んなの前でだ。食堂で待ってなさい、皆を集めるから」

 メリダはそう言うと、玄関口の横に掛けてあった角笛を取って外に出る。

 プォーッ‼︎

 彼女はその角笛を力強く吹く。その角笛は以前見なかったし、まさかそれを集合の合図代わりに使用しているとは思わなかった。
 アラヤ達は、馬車を再び動かし食堂へ向かう。
 村長の角笛を聞いた村人達が、ゾロゾロと家や仕事場から出て来ている。

「もしかして、今も食事は村人全員でを続けているのかしら?」

「メリダさんなら、そうだろうね」

 食堂横に馬車を停めて、ハウン達もついて来る様に言う。
 今やアラヤ達も大所帯だから分かるけど、毎回全員で食事するって家族以外だと難しいんだよね。
 食堂に入ると、ここも以前よりも改良されていて、バルグ商品の魔導冷蔵庫や魔導掃除機等が置かれている。

「どう?見違えたでしょ?」

 入って来た入り口に、身なりを整えてきたメリダが立っていた。

「ええ、随分と村が豊かになったみたいですね?」

「…そっちじゃないんだけど。ま、いいわ。貴方達…と、新しい家族かな?さぁ、奥から座って頂戴」

 エルフが居る事に気付いたが、新しい家族と一括りにして判断する辺り、いかにも村長らしい。
 アラヤ達が席に座ると、次々と村人達が食堂にやって来た。

「村長、まだ昼食には早くないですか~?あっ⁉︎」

「「「あっ?」」」

 入って来る人、入って来る人が、アラヤ達に気付いて驚きと笑顔になる。

「あ~っ、アヤコ先生だぁ~っ!」

 ペトラを始めとした子供達も入って来ると、教師役をしていたアヤコを見つけて駆け寄ってくる。

「あ、アラヤじゃ~ん」

「本当だ、身長伸びてないまんまだ~」

「う、うるさいなダン。ケティも早く年上に対しての敬語を教えてもらいなさい」

「え~っ、家族に敬語は必要無いんだよ~?ね、先生?」

「そうですね」

 アヤコさん、親しき仲にも礼儀ありって事も教えてあげて?
 まぁ、今でも家族として見られている事には、ありがたいし嬉しいな。
 皆の前に木のジョッキと飲み物が配られて行く。全員に行き渡るのを確認すると、メリダがジョッキを片手に立ち上がった。

「さぁ~て、みんなはもう気付いただろう。我が村の住民たるアラヤ、サナエ、アヤコの3名が帰省した。しかも、新たな家族を引き連れてだ。よって、今日は1日休日とする!存分に語らい、楽しませてやれ、乾杯!」

「「「乾杯」」」

 乾杯の音頭が終わるや否や、アラヤ達の回りに集まる村人達。
 アラヤの回りには、棟梁のゲーンさんやモドコ店長、太ったライナス等が集まる。
 サナエには食堂のおばちゃんや、以前惚れていた面々が集まり、どうせなら今から昼食を作るわよと厨房へと駆り出された。
 アヤコの回りには、教え子の子供達とその親が集まり、子供達のその後の成長と注意して欲しい事を聞かされている。

「貴女達とは、ナーシャの結婚式でお会いしたわね?」

 ナーシャの母であるナーベは、人狼ヒューウル姿のクララとカオリの前に座り、娘がヤブネカ村にいろいろと生産ラインを増やしている話を聞かされた。

「それで?貴女達はアラヤ達とどんな関係なのか、詳しく教えてもらいましょうか?」

 やはり、村人達の1番の注目は、一際目につくエルフ達であろう。メリダは、ハウン達を介して会話を試みようとしていた。


「いやぁ~、ちょっと疲れたね…」

 質問攻めは昼食後まで続き、アラヤ達は休憩を兼ねて村の自宅に来ていた。偶に掃除をしていてくれたらしく、以前のままの状態だった。

「ここが、アラヤ様達の初めての住居ですか…。なんとも…今の住居とは比べようも無いですね」

「まぁ、3人で住むには丁度良い感じだったかな」

「元は痛んだ空き家でね。アラヤが補修と、トイレとかを作ってくれたのよね」

「懐かしいですね」

 村を出てからもうすぐで1年が経つ。思えば、とても濃厚な1年だったな。まぁ、まだまだ続いて行くから、ここで落ち着く気は無いけどね。

「そう言えば、村がバルグ商会の生産ラインで裕福になったみたいだけど、ポスカーナ領主のマジドナ男爵には、税収額は変わらない額で渡しているらしいわよ?」

「まぁ、あの領主は地方の村に興味無いからね。街よりも豊かになってるって知ったら、慌てて抗議に来るかもね」

 他にも、いろいろな話を聞いた。
 ライナスは守衛隊長の座をザックスに譲って、イービルスパイダーの管理主任になった。恋人だったベスからは、彼がいつまでも結婚に踏み切らない事で別れたらしく、今はザックスと付き合っているらしい。
 ザックスの方は指輪の手配など済ませているらしく、結婚も秒読みらしい。

「村に自分達の商品が普及しているの見ると、嬉しいよね」

「うん、私もそう思ったわ。冷蔵庫も調子良いみたいだしね。あ、レミーラ、村の調理器具がもう古いから、新しいのが欲しいらしいのよ。浮遊邸の新古品を渡すから、帰ったら新しいのをお願いできる?」

「良いですよ~。どうせだから、包丁とかも新調しましょう」

 イシルウェ達はどう感じたかを聞くと、3人の為人ひととなりがこの村でできたと分かったと言う。確かに、前世界の生活からガラリと変わり、この村で自分達の性格や生活が新たに生まれたとも言えるね。

「さぁ、午後からは村を見て回ろうか?」

「チャコはブルパカさんやクモさんを見た~い」

「私共は、守衛の実力や防衛対策を見て回りたいですね」

「もちろん、全部見て回ろう」

 アラヤ達は、久しぶりの村を皆で堪能するのだった。

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