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第16章 昨日の敵は今日の友とはならないよ⁉︎
231話 お別れ
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浮遊邸は今、役目を終えたナーシャ達をデピッケルへと送る為にゆっくりと進んでいる。
今は、昼食に皆が集まり席に座っているのだが、気不味い雰囲気が漂っている。
「何も、私が仮死状態の時に出発する事ないじゃない。おかげで、ミネルバ様にお別れを言えなかったわ」
「ごめんよ、カオリさん。でも、長居するわけにはいかなかったんだよ。勇者達も謁見に向けて準備しだせば、街中でバッタリも有り得る。それに、ミネルバ様には了承は得たから、王宮にはいつでもテレポートで飛べるでしょう?」
「飛べれば良いって問題じゃないのよ。今は王宮がめちゃくちゃになってるから効果無いだけで、通常は魔力感知、魔力防壁の結界が張ってあるのよ?着いた途端に、不法侵入者だって追われるわよ」
「それなら、飛んで直ぐにミネルバ様を浮遊邸に招待すれば良いんじゃない?」
「そんな事したら、王族を誘拐したと見做されるわよ!もう、にいやの馬鹿!」
カオリは、怒って食堂を出て行ってしまった。後を追おうとしたら、ハウンが席を立ち私が行きますと彼女を追って行った。
「…なんかごめんね?」
「そこまで気にしなくていいわよ、長居できない事は、始めからカオリさんも分かっていると思うし。何より、面と向かって別れができないでしょうから」
サナエは大丈夫よと皿を持ち、アラヤに料理を装って渡す。
確かに、王都に居た2日間は、起きている時間は常にミネルバ王女の側に居たからね。起きている時に別れるとなったら泣いて嫌がっていたかも。
『それでアラヤよ、禁呪の解読と悪魔の復活は完全に止める事ができたのか?』
些細な問題よりも、本来の目的を達成したのかと、エアリエルが念話を飛ばしてきた。会話を聞いていたらしい。
『禁呪の解読はカオリさんが出来たらしいです。それにより、闇の禁呪に限り魔導反転は可能です。後、悪魔アスモデウスの祭壇は、王妃と王女に破壊して頂く様に、国王に進言する事は約束して頂きました。なので、まだ確定ではありませんが、供物となるのが魔王の体の一部らしいので、そう簡単には復活できないかと』
他の魔王が狙われる可能性もあるけど、奴等も馬鹿じゃないだろう。癪だが、簡単にやられたりしないで欲しいな。
『そうか。ならば次はどうするのだ?禁呪を止める手段は手に入れたが1つでは足りず、悪魔を召喚した者は逃げたのだろう?』
『そうですね。ですので、暫くはその者が次に狙う場所の情報収集が中心になると思います』
『うむ、闇雲に追うべきでは無いな。ならばこの間に、暫し体を休めるが良かろう』
体力的には問題無いけど、確かに最近動いてばっかりだったな。気持ちを解す意味でも、少しばかり遊ぶのも良いかもしれないね。
2日でデピッケルへと着いたアラヤ達は、着いて直ぐソーリンの計らいでバルグ邸に皆が招待された。
カオリさんはというと、ハウンが念話でミネルバ王女と繋げてくれたらしく、ちゃんとした別れをできて機嫌が治っている。
「皆様、ようこそいらっしゃいました」
バスティアノが出迎えてくれて、屋敷内へとゾロゾロと入って行く。
招待されたのは皆だ。そこには、エルフのイシルウェ達も、配下のハウン達も含まれている。
浮遊邸でナーシャが仲良くなった事から、急遽彼女がソーリンに頼んだのだった。
「此の度は、本当にお疲れ様でした!素早い対応により、皆さんの王都の被害もかなり抑えられたと思います。そこで、バルグ商会から心ばかりの料理を用意しました。どうぞお召し上がり下さい」
ソーリンが挨拶を済ませると、長机に料理が運ばれて来る。エルフの皆んなには、事前に聞いていたのか、野菜中心の料理が多い。
流石、バルグ家のメイド達はプロ意識が高いな。エルフ達を見ても平静を何とか保っている。
逆に、イシルウェやアルディス達は文化の違うテーブルマナーに緊張している様だ。
「ソーリン、街はどんな様子?」
マナーをあまり気にしないアラヤは、料理を1皿に山盛りにしながら尋ねる。
それが正解かとイシルウェも真似しようとしたら、タオとハルに止められた。タオ達も、この生活に慣れて来てるんだなぁ。
「街には避難民が多く来ましたが、街長が受け入れ体制を整えていたので、大した混乱や問題も無く余り変化は無いですね。商会絡みは忙しくありますが、鉱山の方もだいぶ元通りになりましたし、逆にこの街から王国を助けるんだって活気が起きてますよ」
「前線の戦況とか分かる?」
「まだ確かではありませんが、帝国軍は撤退を始めたらしいと聞きました。本国で何かあったと噂されていますね」
「ちょっと、にいや。情報収集はアヤコさんに任せて、後で久しぶりに皆んなでカジノ行きましょうよ?ミネルバ様とのお詫びとしてね?」
「……」
あれからアヤコは大人しい。というのも、王都での司令担当の不手際と、勇者に無理な情報収集を試みた事での状況悪化の責任として、1週間の執事仕事をしている。
余り今までと差が無いと思えるが、自身から意見を言えない事が、彼女には苦痛となっているので、罰と言えなくもない。
「アヤコ様、クララもお手伝いしますよ?」
「いえ、大丈夫です。クララ奥様。私に構わず、楽しんで来て下さい」
ちょっと可哀想に思えるが、クララ以外の嫁達の反応は、事態が更に悪化した可能性を考えると、これくらいの罰は彼女の為だと言う。
カオリの色欲とは違い、アヤコの強欲の片鱗が現れ出している結果だと考えているらしい。
強欲魔王のレベルを上げるには、多少の事ならカバーするべきだとアラヤは思ってはいる。でも嫁達に口出ししたら怖い気がするからなぁ。
「残念ながら、カジノは今自粛中ですよ?」
「ええっ⁉︎」
避難民もいる事から、街長の命で今は娯楽系は自粛しているらしい。
途端にサナエとカオリがガックリと元気が無くなる。
結構楽しみにしてたんだね。
「今回は仕方がないよ。ソーリン、俺はお風呂借りよかな?自宅のも良いけど、バルグさんところのお風呂も最高だからね」
「ええ、もちろん良いですよ」
「アラヤ殿、それなら私もご一緒しても?」
「もちろんだよ」
イシルウェが一緒に入りたいと言った瞬間、アヤコとカオリが反応した。いや、アルディスも僅かに反応したか。
まぁ、バルグ家のお風呂は男女別なので問題無いけど、念の為に覗き防止と防音対策をして入る事にした。
結局は、オードリーやアスピダ、ソーリンもタオもついて来たけどね。
「タオとはここでお別れかな」
湯船に浸かりながら、アラヤはふとその事を考えて呟いた。
「師匠、僕としては一緒に居たいんですけど…父さんと母さんが、やはり離れ離れは心配だと言うんです」
同い年のドワーフと違い、まだまだ子供の我が子と離れ離れというのは、親としては寂しく心配だろう。
「それは仕方ないよね。仕事でも出張が多かったんだろう?」
「確かに、タオ君は貴族達からの依頼が多いんですよね」
それだけ評価されているという事だろうけど。出来れば、肖像画よりも自分が見た風景画を描きたいらしい。
「アラヤ殿、それならばいっそのこと、タオ君のご家族も浮遊邸に住んでもらうというのはどうだろう?」
イシルウェとしても、チャコと良き友人となった彼には居て欲しいみたいだ。
「う~ん、タオの両親は今はバルグ商会で働いているんだよね?今辞められたら困るでしょ?」
「…正直に言うと、困りますね。特に今はとても忙しい状況ですので」
「だよね。残念だけど…」
「…。一度、ご両親には私から言います。それで、今の状況が落ち着いてからなら、本人達が良ければ辞めても構いません。それでどうでしょう?」
「すみません、社長。僕の我儘のせいで…」
「俺はそれで構わないよ。その時はちゃんと迎えに行くから」
「ではそういう事で」
今回はお別れだけど、直ぐにまた迎えに行くと約束した。
お風呂から上がると、女性陣達でもハルの事で同じ様な話題になったらしく、ハルもまた、ここで暫くお別れとなる。
ハルの持つ技能の【傀儡】と【おままごと】にはだいぶ助けられた。
流石にハルの技能はコピーも奪ってもいないから、1型と2型のゴーレムを10体だけは作ってもらった。
当分は大丈夫だろうけど、タオもハルも、アラヤ達には大事な仲間となっているのだった。
今は、昼食に皆が集まり席に座っているのだが、気不味い雰囲気が漂っている。
「何も、私が仮死状態の時に出発する事ないじゃない。おかげで、ミネルバ様にお別れを言えなかったわ」
「ごめんよ、カオリさん。でも、長居するわけにはいかなかったんだよ。勇者達も謁見に向けて準備しだせば、街中でバッタリも有り得る。それに、ミネルバ様には了承は得たから、王宮にはいつでもテレポートで飛べるでしょう?」
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確かに、王都に居た2日間は、起きている時間は常にミネルバ王女の側に居たからね。起きている時に別れるとなったら泣いて嫌がっていたかも。
『それでアラヤよ、禁呪の解読と悪魔の復活は完全に止める事ができたのか?』
些細な問題よりも、本来の目的を達成したのかと、エアリエルが念話を飛ばしてきた。会話を聞いていたらしい。
『禁呪の解読はカオリさんが出来たらしいです。それにより、闇の禁呪に限り魔導反転は可能です。後、悪魔アスモデウスの祭壇は、王妃と王女に破壊して頂く様に、国王に進言する事は約束して頂きました。なので、まだ確定ではありませんが、供物となるのが魔王の体の一部らしいので、そう簡単には復活できないかと』
他の魔王が狙われる可能性もあるけど、奴等も馬鹿じゃないだろう。癪だが、簡単にやられたりしないで欲しいな。
『そうか。ならば次はどうするのだ?禁呪を止める手段は手に入れたが1つでは足りず、悪魔を召喚した者は逃げたのだろう?』
『そうですね。ですので、暫くはその者が次に狙う場所の情報収集が中心になると思います』
『うむ、闇雲に追うべきでは無いな。ならばこの間に、暫し体を休めるが良かろう』
体力的には問題無いけど、確かに最近動いてばっかりだったな。気持ちを解す意味でも、少しばかり遊ぶのも良いかもしれないね。
2日でデピッケルへと着いたアラヤ達は、着いて直ぐソーリンの計らいでバルグ邸に皆が招待された。
カオリさんはというと、ハウンが念話でミネルバ王女と繋げてくれたらしく、ちゃんとした別れをできて機嫌が治っている。
「皆様、ようこそいらっしゃいました」
バスティアノが出迎えてくれて、屋敷内へとゾロゾロと入って行く。
招待されたのは皆だ。そこには、エルフのイシルウェ達も、配下のハウン達も含まれている。
浮遊邸でナーシャが仲良くなった事から、急遽彼女がソーリンに頼んだのだった。
「此の度は、本当にお疲れ様でした!素早い対応により、皆さんの王都の被害もかなり抑えられたと思います。そこで、バルグ商会から心ばかりの料理を用意しました。どうぞお召し上がり下さい」
ソーリンが挨拶を済ませると、長机に料理が運ばれて来る。エルフの皆んなには、事前に聞いていたのか、野菜中心の料理が多い。
流石、バルグ家のメイド達はプロ意識が高いな。エルフ達を見ても平静を何とか保っている。
逆に、イシルウェやアルディス達は文化の違うテーブルマナーに緊張している様だ。
「ソーリン、街はどんな様子?」
マナーをあまり気にしないアラヤは、料理を1皿に山盛りにしながら尋ねる。
それが正解かとイシルウェも真似しようとしたら、タオとハルに止められた。タオ達も、この生活に慣れて来てるんだなぁ。
「街には避難民が多く来ましたが、街長が受け入れ体制を整えていたので、大した混乱や問題も無く余り変化は無いですね。商会絡みは忙しくありますが、鉱山の方もだいぶ元通りになりましたし、逆にこの街から王国を助けるんだって活気が起きてますよ」
「前線の戦況とか分かる?」
「まだ確かではありませんが、帝国軍は撤退を始めたらしいと聞きました。本国で何かあったと噂されていますね」
「ちょっと、にいや。情報収集はアヤコさんに任せて、後で久しぶりに皆んなでカジノ行きましょうよ?ミネルバ様とのお詫びとしてね?」
「……」
あれからアヤコは大人しい。というのも、王都での司令担当の不手際と、勇者に無理な情報収集を試みた事での状況悪化の責任として、1週間の執事仕事をしている。
余り今までと差が無いと思えるが、自身から意見を言えない事が、彼女には苦痛となっているので、罰と言えなくもない。
「アヤコ様、クララもお手伝いしますよ?」
「いえ、大丈夫です。クララ奥様。私に構わず、楽しんで来て下さい」
ちょっと可哀想に思えるが、クララ以外の嫁達の反応は、事態が更に悪化した可能性を考えると、これくらいの罰は彼女の為だと言う。
カオリの色欲とは違い、アヤコの強欲の片鱗が現れ出している結果だと考えているらしい。
強欲魔王のレベルを上げるには、多少の事ならカバーするべきだとアラヤは思ってはいる。でも嫁達に口出ししたら怖い気がするからなぁ。
「残念ながら、カジノは今自粛中ですよ?」
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避難民もいる事から、街長の命で今は娯楽系は自粛しているらしい。
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「ええ、もちろん良いですよ」
「アラヤ殿、それなら私もご一緒しても?」
「もちろんだよ」
イシルウェが一緒に入りたいと言った瞬間、アヤコとカオリが反応した。いや、アルディスも僅かに反応したか。
まぁ、バルグ家のお風呂は男女別なので問題無いけど、念の為に覗き防止と防音対策をして入る事にした。
結局は、オードリーやアスピダ、ソーリンもタオもついて来たけどね。
「タオとはここでお別れかな」
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同い年のドワーフと違い、まだまだ子供の我が子と離れ離れというのは、親としては寂しく心配だろう。
「それは仕方ないよね。仕事でも出張が多かったんだろう?」
「確かに、タオ君は貴族達からの依頼が多いんですよね」
それだけ評価されているという事だろうけど。出来れば、肖像画よりも自分が見た風景画を描きたいらしい。
「アラヤ殿、それならばいっそのこと、タオ君のご家族も浮遊邸に住んでもらうというのはどうだろう?」
イシルウェとしても、チャコと良き友人となった彼には居て欲しいみたいだ。
「う~ん、タオの両親は今はバルグ商会で働いているんだよね?今辞められたら困るでしょ?」
「…正直に言うと、困りますね。特に今はとても忙しい状況ですので」
「だよね。残念だけど…」
「…。一度、ご両親には私から言います。それで、今の状況が落ち着いてからなら、本人達が良ければ辞めても構いません。それでどうでしょう?」
「すみません、社長。僕の我儘のせいで…」
「俺はそれで構わないよ。その時はちゃんと迎えに行くから」
「ではそういう事で」
今回はお別れだけど、直ぐにまた迎えに行くと約束した。
お風呂から上がると、女性陣達でもハルの事で同じ様な話題になったらしく、ハルもまた、ここで暫くお別れとなる。
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