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第14章 面会は穏便にお願いしますよ⁉︎
197話 連れて行く?
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無事従える事となった暴風竜エンリルだが、浮遊邸に彼が寝るスペースは無く、置いていこうという話になって揉めていた。
『我は置いていくに1票。どうせ呼べば直ぐに飛んで来る訳だからな』
エアリエルの発言に、土精霊達もウンウンと頷く。置いていくに賛成派は、精霊達だけでなく、馬や飛竜達も怖がっていると、イシルウェ達も置いていくべきと考えている。
『エアリエル様ぁぁぁっ、ようやく会えたのに僕をまた置いてくのぉ⁉︎』
『ええぃ、鬱陶しい、離れよ!』
ハグをしようとして煙が上がるのは既に3度目で、アラヤ達も懲りないなと溜め息をつく。
「エアリエル様、発言よろしいですか?」
反対派の代表としてアヤコが手を上げる。因みに反対派は、嫁達、ハウン達教団員とレミーラだ。レミーラの意見は、単に竜の素材(牙・鱗等)欲しさで言ってると見る目で分かるけどね。
『畏る必要は無い。難なく申せ』
「置いていく場合、この竜は何処に身を隠すのでしょう?夜中とはいえ、あれだけ叫んだのです。近隣の街や村には咆哮が行き届き、大騒ぎになっていたとしてもおかしくないです」
声だけでは無い。此処に来るまでに姿も見られているかもしれない。この大きな姿は目立ち過ぎる。
「エアリエル様に呼ばれる前は何処に居たの?」
『貴様に教える義理は無い!』
エンリルのアラヤに対する態度だけは未だ険悪で、不敬で体に電流が流れようとも改めるつもりは無い様だ。
『もう良い、言わぬのなら置いて行こう』
『エアリエル様が以前居た、世界樹の根下の洞窟ですよ!』
エアリエルには直ぐに答える。反対派がフォローの為に聞いているのに、この竜は自分が置かれている立場を理解して無いらしい。
「世界樹という事は、ムシハ連邦国の最北端ですね。この地からは、かなりの距離があります」
『愚か者め、我が全力で飛べば小一時間で着くわ』
エアリエル様程では無いけれど、流石は風の大精霊エアリエルの眷族の翼竜だ。飛竜とは比べ物にならない程、かなりの速さで飛ぶ事ができる様だ。
「我々の1番の懸念は、人間達の対応です。ドラゴン種は通常、人間達からすれば脅威の存在で、冒険者や軍隊による討伐対象なのですよ?つい先日も、デピッケルの最奥に棲んでいた古竜が勇者達に討たれたみたいですし…」
『何⁉︎リンドヴルの奴、人間如きに敗れたのか⁉︎火の大精霊の眷族竜の癖にだらしないな』
どうやら知った存在の様だが、勇者チームに長期戦で挑まれたらしいから無理もないと思う。エンリルの様に飛べるタイプの竜じゃなかったらしいから、逃げる事も出来なかったのだろう。
「そうなると、火の大精霊様は大丈夫なのかな?」
『ムルキベルには何ら影響はないだろう。我が面会に行った時にも、奴は火の海から出る様な奴じゃないからな。人が近付ける場には出て来ない。眷族竜も問題無かろう。新たな候補は勝手に決まるからな』
エアリエルは、エンリル程大して気にしていない様で、心配するだけ無駄だと言う。もちろん、エンリルに対しても、だと。
「確かに、あの速さで飛ぶなら大丈夫だよね。冒険者達も捕まえられない」
『無論だ!』
「じゃあ仕方ないね。置いて行こう」
『え?』
「そうですね。確かに同乗するとなると、敷地の拡大や食料不足の解決が問題になりますからね。食費が2倍になると破産しかねません」
『えっ?えっ?』
「「「じゃあ、そういう事で!」」」
多数決を取るまでも無く、置いていく事に決まった。世間や教団の反応を心配するハウン達も、アラヤ達の決定に異を唱える事は無い。
『うむ、我が呼ぶまでは、前の棲家で控えておれ』
エアリエルがニヤリと笑顔を見せると、ようやく決まった内容を理解したエンリルは頭を抱えた。
『そ、そんなぁぁぁぁぁっ⁉︎』
『吠えるな馬鹿者‼︎』
プシュウと煙を上げて、涙を流すエンリルは項垂れた。もはや竜の風格など微塵も感じないなぁ。
アラヤ達は、エンリルを残して浮遊邸に乗り込むと、再びグラーニュ領に向けて出発する。
「エアリエル様、一応、いずれは受け入れる準備もしておきますね?」
『うむ。すまんな』
今回は同乗を拒否したが、エアリエルがアラヤ達に気を遣っているのは分かっていた。
まぁ、エンリルを受け入れる為に、浮遊邸の敷地を、家畜等を取り入れて自給自足に切り替える為に、村並みに広げなきゃいけない。それには時間と労力がいる。だから、いずれなのだけど。
「ハウン、教団で何か新情報があった?」
カポリに寄った際に、ハウンには教団に寄ってもらっていた。もちろん、教団から課せられた彼女達の義務でもあるからね。
「はい、新情報は1件です。今日正午、帝国がグルケニア帝国が、ラエテマ王国に対し宣戦布告しました。通達から僅か2時間足らずで戦況は帝国が優勢との事です」
「アルローズ領のピロウズ辺境伯が押されてるの?」
辺境伯は今まで無敗じゃなかったっけ?
「はい。情報によると、序盤は抜け道からの奇襲にも対応して優勢だったらしいのですが、帝国の新兵器により戦況は一変したらしいです」
「新兵器?」
「なんでも、空飛ぶ船という乗り物が現れ、黒の燃える液体を落として来るとの事。その数も多いらしく、防衛砦は既に帝国側に落ちたらしいです」
「飛行船‼︎そっかぁ、その発想もあったね」
おそらく、アラヤ達の浮遊邸みたくグラビティで浮かせて船を飛ばしているのだろう。発想的に前世界の人間が絡んでるっぽいけどね。ハウン達も、既に浮遊邸に乗っているから別段に驚かなかったみたいだ。
「黒の液体って、石油かな?」
「おそらくそうだと思います。だとすると、消火がかなり大変ですね。ガスや粉末による抑制効果、窒息効果の泡消火など、この世界の人々は知らないでしょうし…。どうします?」
『我としては、不愉快極まりないな。大気が汚れている』
アヤコのそのどうします?は、その情報を与えるかはアラヤの判断に任せるという意味だろう。エアリエルが言いたい事も分かる。
「当てはまるのは、水属性魔法のバブルショットで石油を覆う…かな。アースクラウドで覆うよりは早くて簡単だし。抑制効果の消火方法は…場所次第では難しいかもね。…ハウン、教団に連絡入れても良いよ?」
「よろしいのですか?」
ハウン達からすると、ラエテマ王国に肩入れするんですね?という意味合いが含まれる。大罪教団はどの国にも属さないので、無理に助ける義務も無いという考えだ。
「…そうだね。やはり教団には止めておこう。ラクレーンに居るバナンさんに伝えてくれ。彼なら、マクラシアンを使って消火に当たってくれるかもしれない」
「分かりました。一足先に行ってまいります」
アルローズ領内まではまだ距離はあるけれど、大量の魔力消費など気にせずにテレポートで向かってくれた。
「それにしても、石油があるなら精製して科学製品や燃料が作れるわね」
カオリは喜んでいるけど、この世界で科学を発展させる必要があるかな?そりゃあ、あれば便利な物が沢山作れるけど。その代わりに自然破壊は増すだろう。魔法と違い、デメリットも多いんだよね。
「帝国では既に取り組んでるかもね。まぁ、今の俺達には必要無いよ」
「それもそうね」
そうこうしている内に、グラーニュ領のコルキアの街の上空に着いた。
タオやハルはおそらく領主のミッシェル=ダガマがいる街に行っているだろう。先ずはバルガス農園に行き、バルガスとクレアに会う予定だ。
「アラヤ様!農園の様子がおかしいです!」
クララに言われて管制室から見下ろすと、確かに農園の辺りから黒い煙りが上がっている様に見える。
「行こう!」
アラヤ達は直ぐ様テレポートで農園入り口に飛んだ。
着いて直ぐに気付いたのは、農園の畑に火の手が上がっている事と、屋敷が荒らされ今も尚、部屋からの戦闘音が聞こえている事だ。
クララは狼人に姿を変え、1人先行して駆けて行った。アラヤ達も直ぐに後を追うと、そこでは兵士達と争う亜人達が居た。
亜人達は皆傷付き、それを庇う様にしてクララの母、クレアが鋭い歯を見せて威嚇していたのだった。
『我は置いていくに1票。どうせ呼べば直ぐに飛んで来る訳だからな』
エアリエルの発言に、土精霊達もウンウンと頷く。置いていくに賛成派は、精霊達だけでなく、馬や飛竜達も怖がっていると、イシルウェ達も置いていくべきと考えている。
『エアリエル様ぁぁぁっ、ようやく会えたのに僕をまた置いてくのぉ⁉︎』
『ええぃ、鬱陶しい、離れよ!』
ハグをしようとして煙が上がるのは既に3度目で、アラヤ達も懲りないなと溜め息をつく。
「エアリエル様、発言よろしいですか?」
反対派の代表としてアヤコが手を上げる。因みに反対派は、嫁達、ハウン達教団員とレミーラだ。レミーラの意見は、単に竜の素材(牙・鱗等)欲しさで言ってると見る目で分かるけどね。
『畏る必要は無い。難なく申せ』
「置いていく場合、この竜は何処に身を隠すのでしょう?夜中とはいえ、あれだけ叫んだのです。近隣の街や村には咆哮が行き届き、大騒ぎになっていたとしてもおかしくないです」
声だけでは無い。此処に来るまでに姿も見られているかもしれない。この大きな姿は目立ち過ぎる。
「エアリエル様に呼ばれる前は何処に居たの?」
『貴様に教える義理は無い!』
エンリルのアラヤに対する態度だけは未だ険悪で、不敬で体に電流が流れようとも改めるつもりは無い様だ。
『もう良い、言わぬのなら置いて行こう』
『エアリエル様が以前居た、世界樹の根下の洞窟ですよ!』
エアリエルには直ぐに答える。反対派がフォローの為に聞いているのに、この竜は自分が置かれている立場を理解して無いらしい。
「世界樹という事は、ムシハ連邦国の最北端ですね。この地からは、かなりの距離があります」
『愚か者め、我が全力で飛べば小一時間で着くわ』
エアリエル様程では無いけれど、流石は風の大精霊エアリエルの眷族の翼竜だ。飛竜とは比べ物にならない程、かなりの速さで飛ぶ事ができる様だ。
「我々の1番の懸念は、人間達の対応です。ドラゴン種は通常、人間達からすれば脅威の存在で、冒険者や軍隊による討伐対象なのですよ?つい先日も、デピッケルの最奥に棲んでいた古竜が勇者達に討たれたみたいですし…」
『何⁉︎リンドヴルの奴、人間如きに敗れたのか⁉︎火の大精霊の眷族竜の癖にだらしないな』
どうやら知った存在の様だが、勇者チームに長期戦で挑まれたらしいから無理もないと思う。エンリルの様に飛べるタイプの竜じゃなかったらしいから、逃げる事も出来なかったのだろう。
「そうなると、火の大精霊様は大丈夫なのかな?」
『ムルキベルには何ら影響はないだろう。我が面会に行った時にも、奴は火の海から出る様な奴じゃないからな。人が近付ける場には出て来ない。眷族竜も問題無かろう。新たな候補は勝手に決まるからな』
エアリエルは、エンリル程大して気にしていない様で、心配するだけ無駄だと言う。もちろん、エンリルに対しても、だと。
「確かに、あの速さで飛ぶなら大丈夫だよね。冒険者達も捕まえられない」
『無論だ!』
「じゃあ仕方ないね。置いて行こう」
『え?』
「そうですね。確かに同乗するとなると、敷地の拡大や食料不足の解決が問題になりますからね。食費が2倍になると破産しかねません」
『えっ?えっ?』
「「「じゃあ、そういう事で!」」」
多数決を取るまでも無く、置いていく事に決まった。世間や教団の反応を心配するハウン達も、アラヤ達の決定に異を唱える事は無い。
『うむ、我が呼ぶまでは、前の棲家で控えておれ』
エアリエルがニヤリと笑顔を見せると、ようやく決まった内容を理解したエンリルは頭を抱えた。
『そ、そんなぁぁぁぁぁっ⁉︎』
『吠えるな馬鹿者‼︎』
プシュウと煙を上げて、涙を流すエンリルは項垂れた。もはや竜の風格など微塵も感じないなぁ。
アラヤ達は、エンリルを残して浮遊邸に乗り込むと、再びグラーニュ領に向けて出発する。
「エアリエル様、一応、いずれは受け入れる準備もしておきますね?」
『うむ。すまんな』
今回は同乗を拒否したが、エアリエルがアラヤ達に気を遣っているのは分かっていた。
まぁ、エンリルを受け入れる為に、浮遊邸の敷地を、家畜等を取り入れて自給自足に切り替える為に、村並みに広げなきゃいけない。それには時間と労力がいる。だから、いずれなのだけど。
「ハウン、教団で何か新情報があった?」
カポリに寄った際に、ハウンには教団に寄ってもらっていた。もちろん、教団から課せられた彼女達の義務でもあるからね。
「はい、新情報は1件です。今日正午、帝国がグルケニア帝国が、ラエテマ王国に対し宣戦布告しました。通達から僅か2時間足らずで戦況は帝国が優勢との事です」
「アルローズ領のピロウズ辺境伯が押されてるの?」
辺境伯は今まで無敗じゃなかったっけ?
「はい。情報によると、序盤は抜け道からの奇襲にも対応して優勢だったらしいのですが、帝国の新兵器により戦況は一変したらしいです」
「新兵器?」
「なんでも、空飛ぶ船という乗り物が現れ、黒の燃える液体を落として来るとの事。その数も多いらしく、防衛砦は既に帝国側に落ちたらしいです」
「飛行船‼︎そっかぁ、その発想もあったね」
おそらく、アラヤ達の浮遊邸みたくグラビティで浮かせて船を飛ばしているのだろう。発想的に前世界の人間が絡んでるっぽいけどね。ハウン達も、既に浮遊邸に乗っているから別段に驚かなかったみたいだ。
「黒の液体って、石油かな?」
「おそらくそうだと思います。だとすると、消火がかなり大変ですね。ガスや粉末による抑制効果、窒息効果の泡消火など、この世界の人々は知らないでしょうし…。どうします?」
『我としては、不愉快極まりないな。大気が汚れている』
アヤコのそのどうします?は、その情報を与えるかはアラヤの判断に任せるという意味だろう。エアリエルが言いたい事も分かる。
「当てはまるのは、水属性魔法のバブルショットで石油を覆う…かな。アースクラウドで覆うよりは早くて簡単だし。抑制効果の消火方法は…場所次第では難しいかもね。…ハウン、教団に連絡入れても良いよ?」
「よろしいのですか?」
ハウン達からすると、ラエテマ王国に肩入れするんですね?という意味合いが含まれる。大罪教団はどの国にも属さないので、無理に助ける義務も無いという考えだ。
「…そうだね。やはり教団には止めておこう。ラクレーンに居るバナンさんに伝えてくれ。彼なら、マクラシアンを使って消火に当たってくれるかもしれない」
「分かりました。一足先に行ってまいります」
アルローズ領内まではまだ距離はあるけれど、大量の魔力消費など気にせずにテレポートで向かってくれた。
「それにしても、石油があるなら精製して科学製品や燃料が作れるわね」
カオリは喜んでいるけど、この世界で科学を発展させる必要があるかな?そりゃあ、あれば便利な物が沢山作れるけど。その代わりに自然破壊は増すだろう。魔法と違い、デメリットも多いんだよね。
「帝国では既に取り組んでるかもね。まぁ、今の俺達には必要無いよ」
「それもそうね」
そうこうしている内に、グラーニュ領のコルキアの街の上空に着いた。
タオやハルはおそらく領主のミッシェル=ダガマがいる街に行っているだろう。先ずはバルガス農園に行き、バルガスとクレアに会う予定だ。
「アラヤ様!農園の様子がおかしいです!」
クララに言われて管制室から見下ろすと、確かに農園の辺りから黒い煙りが上がっている様に見える。
「行こう!」
アラヤ達は直ぐ様テレポートで農園入り口に飛んだ。
着いて直ぐに気付いたのは、農園の畑に火の手が上がっている事と、屋敷が荒らされ今も尚、部屋からの戦闘音が聞こえている事だ。
クララは狼人に姿を変え、1人先行して駆けて行った。アラヤ達も直ぐに後を追うと、そこでは兵士達と争う亜人達が居た。
亜人達は皆傷付き、それを庇う様にしてクララの母、クレアが鋭い歯を見せて威嚇していたのだった。
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