【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第10章 いつのまにか疑われた様ですよ⁈

134話 亜人調査隊

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 精算所に即席でスペースを設けて、そこに魔力電池を並べていく。コレは、最近は皆が魔法を使えるので、余っていた在庫品だ。

「いやぁ、助かります。魔力電池は買い置きする方が多くて、在庫が直ぐに切れるんですよ」

「主にどういった方々が買われていきますか?」

「冷蔵庫を利用する飲食店の方々が多いですね。後は、魔導コンロを買われた冒険者の方々とか…」

 ガルムさんの生産ラインが追いつかない程に売れ行き好調らしい。魔道電化製品の数々は、全てこの魔力電池が必要だからね。
 アラヤ達は店長とたあいない話を続けた後、買い物を済ませて外に出た。

「監視の目が増えてますね」

 それはこの街に入った時点からある監視なのだが、かなりの距離を取り後を尾けて来るだけだったので放置していたのだ。

「こんな領地だから、余所者の監視はあるのは分かるけど、1人だったのが4人か…。先程の冒険者とのいざこざを見られて、ちょっと警戒されたかな?」

「急に態度を変えるのも変ですし、このまま買い物を続けて大丈夫でしょう」

 それもそうだと、アラヤ達はその後も店を見て回る。監視人達は距離を保ったまま、接触はしてこない。まだ監視だけで良いという判断だろう。
 ただ、目立った行動はできない事も確かだ。

「とりあえず、しばらくは宿屋で大人しくしとこうか」

 買い物は済ませたし、宿屋で食事は取れる。後はハウン達が到着するまで、宿屋で待機しておけば良い。

「誰か居るね」

 魔道感知で、宿屋の借りている部屋に従業員ではない誰かの反応がある。
 反応は3つ。反応の大きさ的にそれなりの魔力の持ち主だ。

「どうしようか?」

「でも、ほっとくわけにもいかないですよね」

「とりあえず、話を聞いてみるかな」

 宿屋に入ると、店主のおばさんが心配そうな顔で駆け寄ってきた。

「ちょっとお客様大変ですよ⁉︎フリッツ様の私兵の方々が来られてます!」

「フリッツ様の?どうしたのですかね?」

 アラヤは分からないフリをしながら、二階の部屋へと向かう。おばさんは話を聞くのが怖い様で、階段で止まりオドオドしている。そのままついて来ない方が助かるよ。
 扉の前に立ったアラヤは、ゆっくりとノブを回して扉を開ける。

「やぁ、失礼ながらお邪魔しているよ」

 部屋の中には、ベッドに腰掛ける兵士、窓際に立つ兵士、扉付近に立つ兵士がアラヤ達の帰りを待っていた。

「あの、フリッツ様の使いの方と御伺いしましたが、どういった御用でしょう?」

 ベッドに座っている兵士が1番ステータスが高い。彼女がリーダーだろうと、アラヤは用件を尋ねる。

「ああ、すまない。こちらから名乗るべきだったね。我々はフリッツ=ピロウズ様の配下で、私が主任のサマンサだ。我々は街中である種の調査を任されている。今回は、ある調査で貴方の名が上がったんだよ。アラヤ=グラコ殿」

「…どのような調査ですか?」

「我々は、この街で知らないを調査している。つい数刻前、我々にある情報が寄せられた。見慣れない3人の女性達を連れた少年が、亜人を連れて繁華街を闊歩しているとね」

「なるほど。では見当違いですね。私が連れているのは、私の従獣のシルバーファング、家族の一員のクララですから。彼女の事はギルドにも登録されています。ギルドに確認して見ては?」

 クララの背中を摩りながら、銀狼である事を見せる。ギルドから貰った従獣の証も見せる。

「あ~、証は関係ないよ。我々は独自の調査方法で調べるからね」

「独自の調査方法?」

「ええ。その従獣をお借りして、薬による調査、魔力による調査、体内の一部を切開して…」

「ああっ⁈」

 その場の空気が張り詰める。サマンサ以外の兵士は素早く後退し鞘に手を当て構える。その手は小刻みに震えていた。

「落ち着きたまえ」

「…家族に、拷問に似た調査をすると言われて、落ち着けって?」

 アラヤの後ろに居た嫁達も表情が一変して、更に殺伐とした雰囲気になる。
 サマンサは待ってくれと片手を出して、反対の手で腰袋から1つの書状を取り出して、アラヤに受け取るように差し出す。

「我々は領主様より、直直に調査を許されている。我々の調査を妨げる行為は、領主様に歯向かう行為だよ?」

「そんな権利、余所者の俺達には知った事じゃない」

「たかが従獣じゃないか。敵国の密偵と疑われるくらいなら、少々の傷がつくくらいは大した事じゃないさ」

「傷の大小の問題じゃない」

 アラヤの我慢が限界に近い。それを察したアヤコが前に出て、書状を受け取り広げて見る。
 内容は確かに、アルローズ領主たるハーシェル=ピロウズ辺境伯が、亜人調査についてその方法と権利を一任すると書かれている。

「ここには、方法も一任とありますが、調査方法を決めた方はどなたですか?」

「調査方法を決めたのはフリッツ様だが、調査方法に問題は無いぞ?どれも亜人を調べる上で効果的な方法だ」

「そうですか。ならばフリッツ様に直談判するしかありませんね」

「直談判⁈」

「ええ。私達は、メリダ=ピロウズ様と親しい仲でしてね。まさか、この様な待遇を受けるとは思ってもいなかったです」

「メリダ様と親しい仲だと⁈」

「あら?名前を調べている割には、私達の素性までは知らないようね?」

「私達と喧嘩したいなら、いつでも相手になるわよ?」

 アヤコに続いて、カオリやサナエまでアラヤの前に立つ。アラヤは彼女達の行動に、少し冷静さを取り戻す。

「うん、確かに貴方達の素性を知らないな。しかし、素性を知らない相手を街長に合わせる訳にもいかない。何かメリダ様と繋がる証拠になる物は無いかね?」

「証拠になる物?メリダさんに作ってもらった指輪とか?」

「ああ、それで良い。私の技能の鑑定と痕跡視認の兼用で、製作者の正体は分かる」

 痕跡視認にそういう使い方があるとは知らなかったな。アラヤ・サナエ・アヤコの3人は、結婚指輪をサマンサに渡す。

「……。うむ、間違いないな。コレらは確かにメリダ様が作られた物だ。貴方達がメリダ様と村に居たという場面も見えた。メリダ様と親しい仲である事は理解した。だが、フリッツ様との面会の件は、一度持ち帰らせてくれ」

 3人に指輪を返したサマンサは、仲間達に出るぞと合図する。

「直談判したとて、調査は免れないと思うけど、出来る事なら貴方達とは争いたく無いね」

 サマンサ達は大人しく部屋から帰って行った。アラヤはフゥーッと溜め息を吐き、自分の怒りを完全に鎮めた。
 今回は、久々に暴れてやろうかと思ったよ。まぁ、やった場合は密偵に疑われた上に逃亡犯になるんだろうけどね。

「何か、どっと疲れたね」

『ご主人様、クララが居るせいですみません』

「クララは悪く無いさ。この領地に来たのは俺の案だからね。責任は俺にあるよ」

 クララの毛をワシャワシャと掻き乱し、ギュッと抱き締めた。クララも頬を擦り寄せてくる。

「とにかく、フリッツという街長に会って、クララの調査を免除してもらわないとね」

 アラヤ達は頷き、もしもの時を想定した話し合いを始めた。明日、街長のフリッツ=ピロウズに認めさせる案は、大半が力による圧力ばかりな為、アヤコにダメ出しされてしまうものばかりだった。
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