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第9章 止めろと言うのは振りらしいですよ⁈
118話 ウィリアム=ジャッジ
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グスタフ邸を出ると、アラヤ達は早速、商業ギルドに向かい事後報告を済ませた。
商業に関する取引以外の、討伐依頼や救援活動は個人の自由なので報告義務は無いらしい。
その後は、オモカツタの街にあるバルグ商会の店に来ていた。復興で販売規制があるものの、アラヤ達は優先的に許可が降りている。
目当ては、カレー作りに必要な香辛料や調味料である。
カオリとサナエで、いつもの様にカオリの記憶にあるレシピ本を頼りに、前世界と現世界の共通する素材を調べて選んでいる。
「アラヤ、少し種類多めに買いたいんだけど、良いかな?」
「もちろん良いよ。美味しい料理ができるなら、揃えてて損はないよ。それに、臨時収入もあったからね」
アラヤは、食に関しては一切出し惜しみする気は無い。物事にまだまだ消極的なアラヤで唯一の、昔から積極的だと言える感情だろう。
アヤコも、クララと一緒に少なくなっている消耗品の補充を行なっている。
アラヤは1人、受付の店員と話をしていたら、他の来店者が現れた。
「あ、ここに居たのか」
来店者は、何と分別の勇者ウィリアム=ジャッジと魔術士のサラだった。口振りからすると、アラヤ達を探していた様だが、買い物の途中なのでアラヤ達は逃げれそうに無い。大体、彼等は出入り口で笑顔で待っている。仕方ないので、買い物を終えて話を聞く事にした。
「君達を探していたんだ。ちょっと時間をもらえないかな?」
「構いませんけど、場所を変えませんか?此処だと、他の人の迷惑になりそうなので」
「ああ。それなら、スイーツが美味しい店があるんだ。そこでどうだろう?」
「行きます」
スイーツと聞いて、アラヤは迷わず即決する。すると、後ろにいるアヤコから念話で注意が入る。
『アラヤ君、スイーツなんて言葉、この世界ではありませんので注意して下さい!』
「わ、私も、丁度勇者さんと話がしたかったんですよね。それで、そのスイーツとはどんな料理なんですか?」
アラヤは、苦し紛れの言葉を足して、何とか誤魔化す。
「スイーツってのは、甘いデザート…つまりはお菓子だね。俺の故郷のお菓子を作ってもらったら、それが流行ってね。今はそれ目当てにお客さんが並ぶ位に人気なんだよ」
どうやら上手く誤魔化せた様だ。得意気に説明をしながら店まで案内してくれた。
そこはオープンテラスがあるパン屋で、店内には、パン以外にスコーンやカップケーキなどの焼き菓子があった。
「フェアリーケーキっていうんだけど、子供の頃に良く食べてたんだよ」
「確かに甘そうですね」
「幾つか見繕ってくるから、先にテーブルに着いていてくれ」
サラに案内されて、店奥にある長テーブルに座る。彼女は、テーブル横に座るクララをジッと見ている。まさか、不衛生だと言いたいのだろうか?
「あの、あなたは亜人なのですか?」
「⁈」
「あ、ウィルが、喋れる姿を見てそうかもと言っていたもので…もしかして、奴隷制度から逃れる為に従獣になっているんですか?」
「良く分かりましたね?確かに、街中では制度に引っかかるので、彼女には従獣になってもらっています。できれば他言無用でお願いします」
「もちろんです」
まさか喋れるだけで亜人族と判断できるとは思わなかったな。これからは、クララは人前では念話で会話をする必要があるな。
「待たせたね」
ウィリアムと店員が、沢山のカップケーキと紅茶を持ってやって来た。
「頂きます」
一口食べてみると、予想通りにかなり甘い。女性陣達は久しぶりの甘物にかなり喜んでいる。
「お体も、だいぶ回復したみたいですね?」
「ああ、おかげ様でね。教団の仲間に後から聞いて驚いたよ。神々の霊薬の材料を売ってくれたのも、君達だったなんてね。君達には助けられてばかりの様だ。そのお礼が言いたかったんだ。本当にありがとう」
「いえいえ、偶然持ち合わせていたので本当に良かったです。きっと勇者様の運が良かったのですよ」
「ハハハ、君は謙虚だなぁ。それに、かなりの魔術士でもある様だ」
「いえ、私は魔法剣士でして。今回のベヒモス戦では、勇者様みたいに剣では対抗できませんでしたけれど…」
「嘘っ、あれだけの魔法を使えるのに、魔術士じゃないの?」
魔術士であるサラが、信じられないとアラヤに詰め寄る。ちょっと顔が近いです。いろんな意味で危険です。
「私達の仲間で魔術士なのは彼女です。我々が使用した魔鉱石も、彼女に作ってもらっているんですよ」
そう言って、金髪ウィッグ姿のカオリを呼んだ。もちろん、教団にバレない様に姿以外に名前も変えている。
「アロマ=グラコです。夫にも、私が教えているんですよ」
カオリはクイっと眼鏡を上げて、女教師っぽい演技を見せる。
「では、貴女があの見た事の無い魔法を?」
サラが言っているのは合成魔法の事だろうが、カオリはその時に居なかったので知らない。アラヤが念話で説明すると、カオリは得意気に頷いた。
「技能の2属性合成があれば、誰でも可能よ」
「その技能を持ってる人を見た事が無いわ。かなりの希少技能だと思う。それを夫婦で持っているなんて…」
少し、彼女の笑顔が引きつっていた。確かに誰でも可能では無いね。
その後も少し技能の雑談をして、2人とは別れた。最後までウィリアムは感謝を口にしていた。かなり良い人の気がするけど、少し苦手かな。
借りている宿屋に帰ってきたアラヤ達は、アヤコに呼ばれて一室に集まっていた。
「アヤコさん、どうしたの?」
「実は、アラヤ君に折り入ってお願いがあります」
いつもにも増して畏まるアヤコに、アラヤは余程の願いだと思い、固唾を飲む。
「私に、アラヤ君の特殊技能【技能与奪】を貰えないでしょうか?」
「え?どういう事?」
「今回の件で考えたのですが、アラヤ君が気絶した場合の事も想定した場合、私達がアラヤ君を守るには力が足りないと考えました。そこで、今の私の技能熟練度は全てLV1です。これ以上は下がらないので、カオリさんの特殊技能による技能コピーで増えた技能を、皆んなに譲渡したいと考えたんです」
「なるほど。カオリさんが一時的に得た技能を、そのまま渡すんだね?」
「はい。全てを譲渡できるかは分かりませんけど。カオリさんの技能コピーなら、何度奪っても再びコピーすれば、何度でも譲渡可能ですから」
「うん、やってみる価値はあるね」
とは言ったものの、カオリの特殊技能の条件の為にその分の回数が必要になるんだけどね。
先ずはアヤコに特殊技能の【技能与奪】が譲渡可能か試してみる。すると、何の制限も無く渡す事が出来た。
次は、カオリが皆んなと軽い性欲行為(ディープキス。コピー効果は約1時間)を行い、技能をコピーする。
「では試します」
アヤコが、カオリから特殊技能以外の技能を奪ってみる。すると、カメラアイ以外の技能は入手できる事が分かった。
「どうやら、職種の固有技能は奪えないようですね。コピーも、アラヤ君の捕食吸収と特殊技能はコピー出来てないみたいですし。おそらく、【弱肉強食】や【技能与奪】で特殊技能は奪えても、サナエちゃんの舞の様な固有技能は奪えないのかもしれません」
サナエは、ホッと胸を撫で下ろす。舞の技能は、彼女にとっては自分の個性だと思っているのだ。
「という事は、俺が今手に入れている技能には、固有技能は無いって事だね。それにしても、カオリさんの固有技能って、カメラアイだったんだね。あ、だとしたら、ゴウダはまだ固有技能を持っているんじゃ?」
「その可能性はありますね。ただ、本人は鑑定できないから気付かないかもしれませんけど」
「でも、これで皆んなが強くなることには変わりないね!じゃあ、人数分頑張ろうか」
キスのし過ぎで、カオリが変な気分になっているが、無事に全員が多数の技能保持者となる事が出来た。真のチートファミリーの出来上がり、いや、始まりである。
商業に関する取引以外の、討伐依頼や救援活動は個人の自由なので報告義務は無いらしい。
その後は、オモカツタの街にあるバルグ商会の店に来ていた。復興で販売規制があるものの、アラヤ達は優先的に許可が降りている。
目当ては、カレー作りに必要な香辛料や調味料である。
カオリとサナエで、いつもの様にカオリの記憶にあるレシピ本を頼りに、前世界と現世界の共通する素材を調べて選んでいる。
「アラヤ、少し種類多めに買いたいんだけど、良いかな?」
「もちろん良いよ。美味しい料理ができるなら、揃えてて損はないよ。それに、臨時収入もあったからね」
アラヤは、食に関しては一切出し惜しみする気は無い。物事にまだまだ消極的なアラヤで唯一の、昔から積極的だと言える感情だろう。
アヤコも、クララと一緒に少なくなっている消耗品の補充を行なっている。
アラヤは1人、受付の店員と話をしていたら、他の来店者が現れた。
「あ、ここに居たのか」
来店者は、何と分別の勇者ウィリアム=ジャッジと魔術士のサラだった。口振りからすると、アラヤ達を探していた様だが、買い物の途中なのでアラヤ達は逃げれそうに無い。大体、彼等は出入り口で笑顔で待っている。仕方ないので、買い物を終えて話を聞く事にした。
「君達を探していたんだ。ちょっと時間をもらえないかな?」
「構いませんけど、場所を変えませんか?此処だと、他の人の迷惑になりそうなので」
「ああ。それなら、スイーツが美味しい店があるんだ。そこでどうだろう?」
「行きます」
スイーツと聞いて、アラヤは迷わず即決する。すると、後ろにいるアヤコから念話で注意が入る。
『アラヤ君、スイーツなんて言葉、この世界ではありませんので注意して下さい!』
「わ、私も、丁度勇者さんと話がしたかったんですよね。それで、そのスイーツとはどんな料理なんですか?」
アラヤは、苦し紛れの言葉を足して、何とか誤魔化す。
「スイーツってのは、甘いデザート…つまりはお菓子だね。俺の故郷のお菓子を作ってもらったら、それが流行ってね。今はそれ目当てにお客さんが並ぶ位に人気なんだよ」
どうやら上手く誤魔化せた様だ。得意気に説明をしながら店まで案内してくれた。
そこはオープンテラスがあるパン屋で、店内には、パン以外にスコーンやカップケーキなどの焼き菓子があった。
「フェアリーケーキっていうんだけど、子供の頃に良く食べてたんだよ」
「確かに甘そうですね」
「幾つか見繕ってくるから、先にテーブルに着いていてくれ」
サラに案内されて、店奥にある長テーブルに座る。彼女は、テーブル横に座るクララをジッと見ている。まさか、不衛生だと言いたいのだろうか?
「あの、あなたは亜人なのですか?」
「⁈」
「あ、ウィルが、喋れる姿を見てそうかもと言っていたもので…もしかして、奴隷制度から逃れる為に従獣になっているんですか?」
「良く分かりましたね?確かに、街中では制度に引っかかるので、彼女には従獣になってもらっています。できれば他言無用でお願いします」
「もちろんです」
まさか喋れるだけで亜人族と判断できるとは思わなかったな。これからは、クララは人前では念話で会話をする必要があるな。
「待たせたね」
ウィリアムと店員が、沢山のカップケーキと紅茶を持ってやって来た。
「頂きます」
一口食べてみると、予想通りにかなり甘い。女性陣達は久しぶりの甘物にかなり喜んでいる。
「お体も、だいぶ回復したみたいですね?」
「ああ、おかげ様でね。教団の仲間に後から聞いて驚いたよ。神々の霊薬の材料を売ってくれたのも、君達だったなんてね。君達には助けられてばかりの様だ。そのお礼が言いたかったんだ。本当にありがとう」
「いえいえ、偶然持ち合わせていたので本当に良かったです。きっと勇者様の運が良かったのですよ」
「ハハハ、君は謙虚だなぁ。それに、かなりの魔術士でもある様だ」
「いえ、私は魔法剣士でして。今回のベヒモス戦では、勇者様みたいに剣では対抗できませんでしたけれど…」
「嘘っ、あれだけの魔法を使えるのに、魔術士じゃないの?」
魔術士であるサラが、信じられないとアラヤに詰め寄る。ちょっと顔が近いです。いろんな意味で危険です。
「私達の仲間で魔術士なのは彼女です。我々が使用した魔鉱石も、彼女に作ってもらっているんですよ」
そう言って、金髪ウィッグ姿のカオリを呼んだ。もちろん、教団にバレない様に姿以外に名前も変えている。
「アロマ=グラコです。夫にも、私が教えているんですよ」
カオリはクイっと眼鏡を上げて、女教師っぽい演技を見せる。
「では、貴女があの見た事の無い魔法を?」
サラが言っているのは合成魔法の事だろうが、カオリはその時に居なかったので知らない。アラヤが念話で説明すると、カオリは得意気に頷いた。
「技能の2属性合成があれば、誰でも可能よ」
「その技能を持ってる人を見た事が無いわ。かなりの希少技能だと思う。それを夫婦で持っているなんて…」
少し、彼女の笑顔が引きつっていた。確かに誰でも可能では無いね。
その後も少し技能の雑談をして、2人とは別れた。最後までウィリアムは感謝を口にしていた。かなり良い人の気がするけど、少し苦手かな。
借りている宿屋に帰ってきたアラヤ達は、アヤコに呼ばれて一室に集まっていた。
「アヤコさん、どうしたの?」
「実は、アラヤ君に折り入ってお願いがあります」
いつもにも増して畏まるアヤコに、アラヤは余程の願いだと思い、固唾を飲む。
「私に、アラヤ君の特殊技能【技能与奪】を貰えないでしょうか?」
「え?どういう事?」
「今回の件で考えたのですが、アラヤ君が気絶した場合の事も想定した場合、私達がアラヤ君を守るには力が足りないと考えました。そこで、今の私の技能熟練度は全てLV1です。これ以上は下がらないので、カオリさんの特殊技能による技能コピーで増えた技能を、皆んなに譲渡したいと考えたんです」
「なるほど。カオリさんが一時的に得た技能を、そのまま渡すんだね?」
「はい。全てを譲渡できるかは分かりませんけど。カオリさんの技能コピーなら、何度奪っても再びコピーすれば、何度でも譲渡可能ですから」
「うん、やってみる価値はあるね」
とは言ったものの、カオリの特殊技能の条件の為にその分の回数が必要になるんだけどね。
先ずはアヤコに特殊技能の【技能与奪】が譲渡可能か試してみる。すると、何の制限も無く渡す事が出来た。
次は、カオリが皆んなと軽い性欲行為(ディープキス。コピー効果は約1時間)を行い、技能をコピーする。
「では試します」
アヤコが、カオリから特殊技能以外の技能を奪ってみる。すると、カメラアイ以外の技能は入手できる事が分かった。
「どうやら、職種の固有技能は奪えないようですね。コピーも、アラヤ君の捕食吸収と特殊技能はコピー出来てないみたいですし。おそらく、【弱肉強食】や【技能与奪】で特殊技能は奪えても、サナエちゃんの舞の様な固有技能は奪えないのかもしれません」
サナエは、ホッと胸を撫で下ろす。舞の技能は、彼女にとっては自分の個性だと思っているのだ。
「という事は、俺が今手に入れている技能には、固有技能は無いって事だね。それにしても、カオリさんの固有技能って、カメラアイだったんだね。あ、だとしたら、ゴウダはまだ固有技能を持っているんじゃ?」
「その可能性はありますね。ただ、本人は鑑定できないから気付かないかもしれませんけど」
「でも、これで皆んなが強くなることには変わりないね!じゃあ、人数分頑張ろうか」
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