【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第7章 家族は大事と思い知ったよ⁉︎

101話 ファッションショー⁉︎

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「耐魔戦闘服バトルスーツ完成したよ~!」

    朝早く、荷物を抱えたソーリンとナーシャさんがマイホームに訪れた。
    玄関を開けるなり、2人はズカズカとDL(ダイニングリビング)まで進み荷物を机の上に並べる。早く見てほしくて堪らなかったのだ。

「2人共、おはよう。おおっ!流石ナーシャさんだね、見事な仕上がりだよ」

「ふふっ、細いのに弾力があって、僅かに粘着質。だけど、布状に編み上げれば滑らかな肌触りになる。初めて使う糸だったけど、特徴に慣れてしまえば、楽しく編み上げる事ができたわ」

    1人に、夏用(7部袖スウェット、ハーフパンツ)、冬用(チェスターコート、スキニーパンツ)、間着用(パーカー、スリムパンツ)の上着とパンツが3着ずつ用意されている。()内はアラヤの服。
    頼んでからまだ5日というのに、上下合わせて36着の服を完成させていた。

「アラヤさん、私の分まで用意してくれてたんですね!嬉しかったです!」

「もちろんだよ。ソーリンにもお世話になってるからね」

    サナエさんが、ソーリンの分のデザインもちゃんと用意してたのだ。
    今回の分で、溜めておいた魔力粘糸を全て使い切ったらしい。この服は、生産販売用ではないけれど、魔力粘糸の糸はまたストックしておいた方が良いだろう。

「早速皆んなで着てみようか?」

   各自、部屋に戻って間着に着替えた。1番にアラヤが出て来て、ソーリン達とDLの入り口で待つ。
    しばらくして、最初に着替え終わった順に、ファッションショーの様に、廊下を歩いてくる事になった。
    1人目のサナエさんは流石というか、モデルばりのウォーキングを見せてくれる。
    彼女は動き易さ重視でキーネックブラウスとストレートパンツにしたらしい。

「似合ってるよ、サナエさん」

「ありがとう」

    軽く決めポーズを見せた後は、アラヤの後ろに回り次に登場を待つ観客へと変わる。
    次に現れたのはアヤコさんで、おとなしめのVネックブラウスとフレアスカート。

「こういうのは、ちょっと照れますね」

「うん、可愛いよ、アヤコさん」

    褒められると、顔を真っ赤にして、うつむきながらアラヤの後ろに回り、サナエさんのデザインを褒めていた。というか、前世界のファッションだから、シンプルな服が多いこの世界的には、目立ってしまう気がするんだけどね。

「私のイメージって、こうなの?」

    次に登場したのはカオリさんで、エレガントなフレア袖チェニックとワイドクロップドパンツ。眼鏡との相性も良いのか、普段より少し大人びて見える。

「うん、綺麗だよ、カオリさん」

「ウフフ、目に焼き付いたかしら?」

    カオリさんも、少しウォーキングをして決めポーズで眼鏡を外して見せる。
    ちょっとしたドヤ顔をしているけど、彼女の場合、眼鏡があった方が知的な美人に見えるかもしれない。

「最後はクララだね」

    人狼ヒューウル姿のクララの服は、変わり映えの無いメイド服だった。

「あれ?普通の服は?」

「クララが、普段から着るならメイド服が良いって、彼女自身が言ったのよ」

    まぁ、本人が望んでるなら仕方ない。因みにクララの残りの服は、銀狼になった場合にはメイド服は無理なので、サラシにも使えるマフラーだ。

「皆さん、とても似合ってますね」

「そりゃあ、皆んなに合わせてデザインしたんだから当然よ。ソーリン君も着替えれば良いのに」

「わ、分かりました」

    しばらくして現れたソーリンの服は、何とカーゴツナギ服だった。これが以外にも似合っているから、サナエさんの着眼点は素晴らしいと思う。

    全員の発表が終わったところで、アラヤが提案する。

「じゃあ、今から性能テストと行こうか?」

「「「ええ~っ⁉︎」」」

   皆んなから不満の声が出る。いや、だって、これは耐魔戦闘服だよ?

「せっかく綺麗な状態の服を、いきなり汚したくは無いわ」

「流石に気が引けますね」

「あ~、じゃあクララ、俺に付いて来て」

     この中では唯一断らないクララを連れて、家の外に出た。反対した皆んなも気になってついて来る。何をする気なのと、ナーシャも最後尾から覗き見た。

「よし、クララ、俺にアイスを掛けてくれ」

    アラヤは、念の為に全身を竜鱗防御した状態でクララに命令する。
    奴隷紋により命令に逆らえないクララは、手加減無しのアイスを放った。

「ちょっと、何してんの⁈」

    ナーシャは驚き叫んだが、周りの反応が至って冷静な事に困惑する。

「ナーシャさん、落ち着いて。アラヤさんを見てごらん?」

    ソーリンに言われて、アイスが直撃したそーっとアラヤを覗き見ると、そこには氷の欠片も無い。

「おお、下級魔法なら完全無効化かな?クララは次はエアカッターを。アヤコさん、フレイムをお願いできる?」

「「分かりました」」

   クララが先にエアカッターを放った後、アヤコが間髪入れずにフレイムを放った。

「おおっ、大丈夫だね!連続でも耐えれたよ。ただ、見えてる生身部分には、僅かだけど痛みが入ったね」

    アラヤの腕部分に僅かな切り傷ができていた。まぁ直ぐに回復したので問題は無いけど、皆んなには気をつけてもらわないとね。

「今回の実験で下級攻撃魔法なら無効化する事が分かった。だけど、あくまでも服の部分だけだと思わなきゃね。安心して魔法に飛び込む様な真似はしちゃダメだよ?」

「そんな事するのは、にいやくらいでしょう?」

    えっ?俺はそんな無謀な事してないよ?多分だけど…。

「ま、まぁ、あくまでも魔法を躱せなかった場合とかは、この服なら助かるって感じで良いと思う。これをあてにしてまともに受けないようにね?後は、どこまで耐えられるか、もうちょっと調べなきゃね。ナーシャさん、補修用の布が余ってないかな?」

「あ、あるけど。ちょっとその前に!貴方は平気なの⁈怪我してない⁈」

「うん、大丈夫だよ」

    おかしいわとブツブツ言いながら、小さな補修用の布を全てアラヤに手渡した。

「そ、それで気になったんだけど、この糸ってこの街ならどこで売ってるの?」

「この街にも売ってないよ。この魔力粘糸は俺が手に入れた物だからね」

    まさか、俺が作れるんだよとは言わないけどね。魔物の技能が使えるなんて言えるわけ無いし。

「えっ、じゃあかなりの高価な糸なんじゃない⁈どうやって手に入れるの?」

「この糸は、魔物のイービルスパイダーが出す糸なんだよね。だから、また糸を集めるとしたら、冒険者ギルドに依頼して手に入れるしかないね。多くを手に入れるなら、まぁ、依頼料も高額になるだろうけどね」

    ナーシャは残念そうにしているが、この糸が作れるのはアラヤのみだ。商売用として大量生産する気はまだない。
    後にナーシャがギルドに依頼して、耐魔戦闘服を世に販売したら、きっと高額な服として世に知れ渡るだろう。その時になら、魔力粘糸を生産して販売しても良いかな。それまでは、仲間だけが戦闘服バトルスーツを持っていれば良い。

「じゃあ、耐久性の実験は、カオリさんとアヤコさんでお願いしてもいいかな?」

「ええ、良いわよ。中級魔法をいろいろと試してみるわ」

「耐久回数も調べなきゃですね」

    2人の理解が早くてとても助かる。せっかく出来上がった服で実験するよりも、この補修用布で調べ尽くさなきゃと、やる気を出しているのだ。念の為、ただの魔力粘糸も後で渡しておくか。糸そのものと、編み上げた布との比較も知りたいからね。

「ああ、依頼料って幾らぐらいなのかしら…」

     その後も、ナーシャはしばらく悩んでいたようだ。ソーリンにもバラさないように念を押しとかないとね。
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