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第6章 味方は選べと言われたよ⁈
077話 王城脱出計画?
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「エドガーさん、カオリさんが城内から出る場合に、障害になるものは何ですか?」
アラヤの問いに対し、エドガーはあまり答えたく無い表情だったが、ミネルバ王女が頷いたので渋々答える。
「城門や城壁には、気配感知ができる兵士が交代制で勤務していて、侵入や外出は直ぐに感知される。ネズミ一匹でも見逃さないだろう。もちろん、強行突破は可能だが、罪人として追われる事になるな。日中開かれている城門には、鑑定士も待機している。物に潜んでも見破られるぞ」
「気配感知と鑑定の目から逃げなきゃいけないのか…」
しばらく考えたアラヤは、そこで一つの案を思いついた。
「とりあえず、カオリさんは仮死状態になる必要があるね」
「えっ?どういう事?」
「気配感知を切り抜ける為には、隠密の上級熟練者か、生体反応が無いかだからね。仮死状態になったカオリさんなら、気配感知を擦り抜けられるって事だよ」
この場合、彼女の仮死状態は本当に死んでいる状態なんだけどね。
「でも、どうやって移動するの?」
「もちろん、俺達が運び出すよ。方法も大丈夫だよ。問題は、カオリさんが次の仮死状態になる時間だよ」
移動方法は、亜空間収納に入れるんだよとは流石に言えない。亜空間収納内には、生体反応がある物は収納できない。だが、仮死状態ならば大丈夫なのだ。(以前アヤコさん提案で、アイスで凍らせたホーンラビットを使って実験済み)
「今日は起きてから今で二時間くらいね。だとしたら、後、一、二時間は起きていると思うわよ」
「二時間…流石にそこまで長居はできない。ヘイストで時間は縮まる?」
カオリは首を横に振る。試した事はあるようだ。しかし、そうなると待つしかなくなる。
「とりあえず、一度身を隠してその時が来るまで待っててもらうしか無いね」
「自分が死ぬのを待つなんて最悪だわ。でも分かったわ。その時まで霊廟に隠れてる。時間が来たら、必ず迎えに来てよ?」
カオリは、アラヤを指差して念を押してからバルコニーからさっと姿を消した。
「ミネルバ様、王妃様の反応が近付いて来ております」
マーレットも気配感知持ちらしく、逸早くミネルバに報告する。
「ジャミングを解きますね」
アラヤは扉に掛けていたジャミングを解除した。途端に扉をノックする音が聞こえる。
「ミネルバ王女様、ジョアンヌ王妃様がお越しになられました」
「お通しして」
アラヤ達も席を立ち、壁側へと身を下げてから頭を下げ、王妃が入室するのを待った。
「ミネルバ、御客人を呼ぶ事は構いませんが、素性がしっかりとした者達なのでしょうね?妙な噂の立つ様な者を招き入れてはなりませんよ?」
金髪で長い縦巻きロールの王妃が、ゆっくりとした歩調で入って来た。本当にこんな髪型をする人居るんだね。初めて見たよ。
「はい、お母様。この方達の素性は事前に調べた上で、問題無いと宰相から許可を頂いております」
「そうですか。ならばこれ以上は問いません。しかし、あまり長居をさせてはいけませんよ?」
「はい」
悲しそうに俯いてしまう王女。王妃は小さくため息をつくと、頭を下げているアラヤ達を一瞥する。
「少し、話を聞いてみましょうか。貴女が、彼等にどの様な興味を持ったのか、知りたくなりました」
「お母様?」
「後で中庭に御招待なさい」
そう言うと、王妃は部屋から出て行った。緊張から解放されたアラヤ達が、ミネルバ王女を見ると、王女も同じように緊張していた様だと分かった。
「とにかく、後で中庭に向かわなければなりません。それまでは少し休みましょう」
土産として持参していた高級葡萄水を取り出して、皆で緊張で渇いた喉を潤した。王妃に呼ばれた事により、もうしばらくは城内に待機できる。なるべく時間を稼ぎ、カオリが仮死状態になるのを待たなければ。
「そろそろ参りましょうか」
王宮から中庭へと移動すると、中庭にあるテラスには既に王妃が座っており、その後ろには宰相と護衛の兵達が立っている。
「どうぞ、こちらに」
執事に案内されて、用意されていた椅子に座る。王女達女性陣は王妃側に座り、アラヤとガルムは離された。
「今から女子だけで会話をする故、アラヤという其方は、盗賊を退治したという実力を、私の護衛兵達に教えてやってくれまいか?」
うん。来てる護衛兵、皆んな目がギラギラしてたから、嫌な予感はしてたんだよね。
「…承知致しました」
どうせ断れないのだから、素直に受けるしかない。せっかくだから、なるべく時間をかけて相手をしよう。
「ま…参りました!」
8人目の護衛兵の腕を決めて、挑んできた全ての護衛を倒した事になる。時間も大分稼げた。そろそろ迎えに行っても良いだろう。
「驚いたわ。私達の護衛が全く敵わないなんてね。ミネルバと年の差が無いような見た目ですのに、その実は歴戦の猛者の様でしたよ」
そう評価してくれるのも、バルガスさんに剣の指導を受けたおかげかもしれないな。しっかりと心の余裕もあったし、相手の動きも読みやすかった。
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
「ミネルバが止めなければ、是非とも王宮に仕えて欲しかったわ。でも仕方ないですわね。楽しませて頂いた御礼に、何か差し上げましょう。何か望む物がありますか?」
「誠に僭越ながら、許可して頂きたき事が。それは、ミネルバ王女との文通の許可を得とうございます」
「文通?これは何とも可愛らしい願いですわね。良いでしょう、貴方からのミネルバへの便箋には、審査を受けずとも通す様に許可しましょう。ミネルバの良き友となって下さいね」
「はっ、有難き幸せでございます」
アラヤは、王女にカオリの様子を伝える連絡手段として必要だと考えたのだ。
「それでは、ミネルバ様。そろそろ、お暇させて頂きますね?」
ミネルバ王女に、それとなく時間が経った事を伝える。王女も、マーレットにアイコンタクトを送ると、彼女は辺りに見つからないようにその場から離れた。
「お母様、皆様を見送りして参ります」
ミネルバ王女も立ち、アラヤ達と共に席を離れる。護衛兵のリッセンはしっかりと付いて来ている。どうにかして、この場から霊廟に向かいたい。
すると、先回りしていたマーレットが、通路の隅で待機していた。表情からして、彼女は無事仮死状態だったと見える。無事という表現はおかしいかもしれないが。
彼女のすぐ横には木箱が三つ並べてあり、おそらく中にカオリが仮死状態で入っているに違いない。
「ガルム様、こちらは王家の廃棄する予定の衣類等でございます。ミネルバ様が不要なので、もし宜しければ差し上げますとの事です」
「なっ⁈まさかミネルバ王女のっ⁈」
リッセンが異様な反応をして、箱を触ろうとする。その手をマーレットが素早く叩いた。まぁ、当然の反応だよね。
「リッセン、其方は何を考えているの?私からの贈答品に手を触れようなどとするとは…」
「あ、いえ、決して取ろうなどと考え…」
リッセンが王女に言い訳している隙に、アラヤは木箱に近付き、中身だけを亜空間収納へと飛ばす。亜空間収納リストに、女性の遺体が明記された。直ぐに代わりの衣類を木箱に入れた。
「有難く頂きます」
「私は彼等を城外まで送ります」
案の定、リッセンは付いてくるようだ。ガルムとアラヤは、木箱を担いで馬車へと乗せる。
そして城門入り口に向かうと、予想通り鑑定士の姿に気付いた。荷物の蓋を開けて、一つ一つ鑑定していく。いわゆる荷物検査みたいなものだ。鑑定士の後ろでリッセンが鼻息荒く木箱を確認している。
蓋が開けられ、中身が王女の服じゃないと知ると、どうやら安心したようだ。
彼は満足した様子でアラヤ達の出発を許可した。
「上手くいったな!」
城門を無事通過して、アラヤ達は王都の宿舎へと辿り着いた。
そこで亜空間収納から彼女を取り出す。
予定通り、彼女は死んでいるわけだが、再び生き返るまでは全く安心できない。亜空間内では時間が経過していないので、今から5時間は目を覚まさないのだ。
「本当に目覚めるんですよね?」
皆の不安は当然だった。ただ待つだけの時間が続き、5時間が経過した。
「う、うーん…」
段々と肌の血色が戻り、彼女はただ眠りから覚めたように生き返った。
「良かった!本当に起きるのか凄い不安になったよ」
「フフフ、王女やマーレットも毎回、そんな顔をしていたわ」
アラヤ達は、長い不安が終わりやっと本当に安心できたのだった。
アラヤの問いに対し、エドガーはあまり答えたく無い表情だったが、ミネルバ王女が頷いたので渋々答える。
「城門や城壁には、気配感知ができる兵士が交代制で勤務していて、侵入や外出は直ぐに感知される。ネズミ一匹でも見逃さないだろう。もちろん、強行突破は可能だが、罪人として追われる事になるな。日中開かれている城門には、鑑定士も待機している。物に潜んでも見破られるぞ」
「気配感知と鑑定の目から逃げなきゃいけないのか…」
しばらく考えたアラヤは、そこで一つの案を思いついた。
「とりあえず、カオリさんは仮死状態になる必要があるね」
「えっ?どういう事?」
「気配感知を切り抜ける為には、隠密の上級熟練者か、生体反応が無いかだからね。仮死状態になったカオリさんなら、気配感知を擦り抜けられるって事だよ」
この場合、彼女の仮死状態は本当に死んでいる状態なんだけどね。
「でも、どうやって移動するの?」
「もちろん、俺達が運び出すよ。方法も大丈夫だよ。問題は、カオリさんが次の仮死状態になる時間だよ」
移動方法は、亜空間収納に入れるんだよとは流石に言えない。亜空間収納内には、生体反応がある物は収納できない。だが、仮死状態ならば大丈夫なのだ。(以前アヤコさん提案で、アイスで凍らせたホーンラビットを使って実験済み)
「今日は起きてから今で二時間くらいね。だとしたら、後、一、二時間は起きていると思うわよ」
「二時間…流石にそこまで長居はできない。ヘイストで時間は縮まる?」
カオリは首を横に振る。試した事はあるようだ。しかし、そうなると待つしかなくなる。
「とりあえず、一度身を隠してその時が来るまで待っててもらうしか無いね」
「自分が死ぬのを待つなんて最悪だわ。でも分かったわ。その時まで霊廟に隠れてる。時間が来たら、必ず迎えに来てよ?」
カオリは、アラヤを指差して念を押してからバルコニーからさっと姿を消した。
「ミネルバ様、王妃様の反応が近付いて来ております」
マーレットも気配感知持ちらしく、逸早くミネルバに報告する。
「ジャミングを解きますね」
アラヤは扉に掛けていたジャミングを解除した。途端に扉をノックする音が聞こえる。
「ミネルバ王女様、ジョアンヌ王妃様がお越しになられました」
「お通しして」
アラヤ達も席を立ち、壁側へと身を下げてから頭を下げ、王妃が入室するのを待った。
「ミネルバ、御客人を呼ぶ事は構いませんが、素性がしっかりとした者達なのでしょうね?妙な噂の立つ様な者を招き入れてはなりませんよ?」
金髪で長い縦巻きロールの王妃が、ゆっくりとした歩調で入って来た。本当にこんな髪型をする人居るんだね。初めて見たよ。
「はい、お母様。この方達の素性は事前に調べた上で、問題無いと宰相から許可を頂いております」
「そうですか。ならばこれ以上は問いません。しかし、あまり長居をさせてはいけませんよ?」
「はい」
悲しそうに俯いてしまう王女。王妃は小さくため息をつくと、頭を下げているアラヤ達を一瞥する。
「少し、話を聞いてみましょうか。貴女が、彼等にどの様な興味を持ったのか、知りたくなりました」
「お母様?」
「後で中庭に御招待なさい」
そう言うと、王妃は部屋から出て行った。緊張から解放されたアラヤ達が、ミネルバ王女を見ると、王女も同じように緊張していた様だと分かった。
「とにかく、後で中庭に向かわなければなりません。それまでは少し休みましょう」
土産として持参していた高級葡萄水を取り出して、皆で緊張で渇いた喉を潤した。王妃に呼ばれた事により、もうしばらくは城内に待機できる。なるべく時間を稼ぎ、カオリが仮死状態になるのを待たなければ。
「そろそろ参りましょうか」
王宮から中庭へと移動すると、中庭にあるテラスには既に王妃が座っており、その後ろには宰相と護衛の兵達が立っている。
「どうぞ、こちらに」
執事に案内されて、用意されていた椅子に座る。王女達女性陣は王妃側に座り、アラヤとガルムは離された。
「今から女子だけで会話をする故、アラヤという其方は、盗賊を退治したという実力を、私の護衛兵達に教えてやってくれまいか?」
うん。来てる護衛兵、皆んな目がギラギラしてたから、嫌な予感はしてたんだよね。
「…承知致しました」
どうせ断れないのだから、素直に受けるしかない。せっかくだから、なるべく時間をかけて相手をしよう。
「ま…参りました!」
8人目の護衛兵の腕を決めて、挑んできた全ての護衛を倒した事になる。時間も大分稼げた。そろそろ迎えに行っても良いだろう。
「驚いたわ。私達の護衛が全く敵わないなんてね。ミネルバと年の差が無いような見た目ですのに、その実は歴戦の猛者の様でしたよ」
そう評価してくれるのも、バルガスさんに剣の指導を受けたおかげかもしれないな。しっかりと心の余裕もあったし、相手の動きも読みやすかった。
「勿体ないお言葉、ありがとうございます」
「ミネルバが止めなければ、是非とも王宮に仕えて欲しかったわ。でも仕方ないですわね。楽しませて頂いた御礼に、何か差し上げましょう。何か望む物がありますか?」
「誠に僭越ながら、許可して頂きたき事が。それは、ミネルバ王女との文通の許可を得とうございます」
「文通?これは何とも可愛らしい願いですわね。良いでしょう、貴方からのミネルバへの便箋には、審査を受けずとも通す様に許可しましょう。ミネルバの良き友となって下さいね」
「はっ、有難き幸せでございます」
アラヤは、王女にカオリの様子を伝える連絡手段として必要だと考えたのだ。
「それでは、ミネルバ様。そろそろ、お暇させて頂きますね?」
ミネルバ王女に、それとなく時間が経った事を伝える。王女も、マーレットにアイコンタクトを送ると、彼女は辺りに見つからないようにその場から離れた。
「お母様、皆様を見送りして参ります」
ミネルバ王女も立ち、アラヤ達と共に席を離れる。護衛兵のリッセンはしっかりと付いて来ている。どうにかして、この場から霊廟に向かいたい。
すると、先回りしていたマーレットが、通路の隅で待機していた。表情からして、彼女は無事仮死状態だったと見える。無事という表現はおかしいかもしれないが。
彼女のすぐ横には木箱が三つ並べてあり、おそらく中にカオリが仮死状態で入っているに違いない。
「ガルム様、こちらは王家の廃棄する予定の衣類等でございます。ミネルバ様が不要なので、もし宜しければ差し上げますとの事です」
「なっ⁈まさかミネルバ王女のっ⁈」
リッセンが異様な反応をして、箱を触ろうとする。その手をマーレットが素早く叩いた。まぁ、当然の反応だよね。
「リッセン、其方は何を考えているの?私からの贈答品に手を触れようなどとするとは…」
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リッセンが王女に言い訳している隙に、アラヤは木箱に近付き、中身だけを亜空間収納へと飛ばす。亜空間収納リストに、女性の遺体が明記された。直ぐに代わりの衣類を木箱に入れた。
「有難く頂きます」
「私は彼等を城外まで送ります」
案の定、リッセンは付いてくるようだ。ガルムとアラヤは、木箱を担いで馬車へと乗せる。
そして城門入り口に向かうと、予想通り鑑定士の姿に気付いた。荷物の蓋を開けて、一つ一つ鑑定していく。いわゆる荷物検査みたいなものだ。鑑定士の後ろでリッセンが鼻息荒く木箱を確認している。
蓋が開けられ、中身が王女の服じゃないと知ると、どうやら安心したようだ。
彼は満足した様子でアラヤ達の出発を許可した。
「上手くいったな!」
城門を無事通過して、アラヤ達は王都の宿舎へと辿り着いた。
そこで亜空間収納から彼女を取り出す。
予定通り、彼女は死んでいるわけだが、再び生き返るまでは全く安心できない。亜空間内では時間が経過していないので、今から5時間は目を覚まさないのだ。
「本当に目覚めるんですよね?」
皆の不安は当然だった。ただ待つだけの時間が続き、5時間が経過した。
「う、うーん…」
段々と肌の血色が戻り、彼女はただ眠りから覚めたように生き返った。
「良かった!本当に起きるのか凄い不安になったよ」
「フフフ、王女やマーレットも毎回、そんな顔をしていたわ」
アラヤ達は、長い不安が終わりやっと本当に安心できたのだった。
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