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第4章 魔王と呼ばれてるなんて知らなかったよ⁈
056話 ガプノス樹海
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高い木々による深緑の森の中、苛立ちの咆哮をする獣達の群れが獲物を捕食せんと疾走していた。
その標的となっていたのは、森林を走るにはそぐわない大きさの馬車だ。
「サナエさん、近距離だけを対応して!回収しないから、投擲はダメだからね!」
「分かってる!」
馬車を後方から狙って来るのは、フォレストファングの群れだ。荷台に飛び移ろうとするところを、サナエさんがチャクラムで斬り落としている。その横から、アヤコさんが吹き矢でサポートをしている。
今、馬車にはムーブヘイストを掛けていない。フォレストファングに狙われた事で、走り易かった林道から逸れてしまったからだ。
藪や茂み、地を這う根等でまともに走る事は出来ない。故にアラヤは地盤作りで手が離せなくなってしまった。
馬車の進む先を、先行してアースクラウドで道を作り続けているのだ。
「何処か広い場所で止まれないの⁈中々数が減らないよ⁉︎」
「無理ですよ!このガプノス樹海で、林道の外に広い場所なんてありませんから!」
ソーリンは、魔物に怯えて走る馬の手綱繰りに集中している。気を抜いたら4頭ともバラバラに逃げ出しそうだ。当然、戦闘に参加する間など無い。馬が狙われそうになると、アラヤがエアカッターで撃退してくれている。だけどこのままでは、アラヤの魔力の負担が大きい。
『アラヤ君、少し先に狩場を作れませんか?』
「なるほど!任せて‼︎」
アヤコの意図を理解したアラヤは、道の高さを上げていく。木々の高さよりも高い位置まで登り坂を作ったら、後は狩場となる広場を作るだけだ。
「登り切ったら、馬車を止めて迎え撃つぞ」
馬車を広場の奥に止め、ソーリンも御者台から降りた。
「ここからは、私も戦いますよ!」
「ああ、頼むよ。俺の魔力もそろそろ限界に近かった。馬は俺が守るから、存分に暴れてくれ」
「はい!」
馬車の後を追って登って来たフォレストファングは、迎え撃つソーリンとサナエに蹂躙される事になった。
楽々と一戦を終えた二人は、途中で逃げ出したフォレストファングに不満を漏らしている。
「せっかく、ちゃんと戦える場所に来たってのに、何か消化不良だわ」
「全くですね。せっかくの活躍の場だったんですけど、大して役に立てませんでした」
「まぁまぁ、落ち着けたから良いじゃない。せっかくだから、ここを今日の野営地にしよう?」
「賛成ですね。森の中より断然安全ですし、天気も良さそうなので夜空も期待できそうです」
アラヤが作った即席の狩場は、即席と言ってもしっかりと硬い地盤でできていて、簡単に崩れる心配は無い。その分の魔力を消費をしたからね。久しぶりに魔力切れになるところだったよ。
「それにしても、サナエさんの舞の効果は素晴らしい上に見惚れてしまいますね。彼女だけでなく、アヤコさんのサポートも素晴らしかった。ヘイストとは、接近戦では反則に近い魔法ですね」
「ソーリン君も凄かったですよ」
「ああ、実に豪快な戦い方だったね」
確かに、ソーリンの強さも納得いくものだった。ドラゴンの子供を倒したというのも伊達では無い。その前に、まだドラゴンを見た事無いからピンと来ないけどね。
ソーリン=バルグ
種族 ドワーフ 男 age 10
体力 542/542
戦闘力 302/302
耐久力 321/321
精神力 72/72
魔力 108/108
俊敏 256/256
魅力 53/100
運 62
状態 正常
職種 商人LV1
#技能__スキル_ 交渉術LV 1 身体強化LV 2 脳内マップLV 1 操縦士LV 1
非戦闘職な上に10歳でこのステータスは、流石がドワーフとしか言いようが無い。使用武器はミスリル製のハルバード。刺突用のニードルが付いた槍斧である。
「流石はドラゴンを倒すだけの事あるね。もしかして、ドワーフの女性もドラゴンを?」
「いえいえ、ドラゴン退治なんて儀式めいた事、一般のドワーフはしませんよ。大体、女性のドワーフの儀式なんて、レニナオ山脈の火口まで岩石運びですよ。地味な上に危険なので誰もやりません。私が成人式で儀式をしたのは、パフォーマンスに似たものです。それに、私が倒したのはストーンドラゴンの赤ん坊です。大人のドラゴンには、ドワーフの大人でも到底敵いませんよ」
それは、男女問わずに遠慮したい儀式だな。まぁ、ソーリンもかなりの戦力になる事が分かったし、野営も楽になりそうだ。
「肉はフォレストファングのおかげで大量にあるから、今日は焼肉だね」
「アラヤは、本当に肉が好きだなぁ」
アラヤは上機嫌で、焚き火の上に焼肉用の網を乗せて、トングや取り皿を用意する。
もちろん、肉は大好きだけど、上機嫌なのはそれだけではない。新たな魔物の肉は、新たな技能を得る可能性もある。つまり、あの旨味が味わえる可能性があるのだ。アヤコとサナエも、感覚共有でその旨味を体験できるので、もちろん焼肉は大歓迎である。
(この人達は、本当に美味しそうに食べるなぁ。まるで酔っているかのようだ)
肉を貪るように食べるアラヤはもちろん、アヤコやサナエまでもが深い悦楽に浸っているような表情を見せている。
『筋肉捕食によるデータ量が100%に達しました。咆哮LV 1、集団引率術LV 1、暗視眼LV 1を習得しました。咆哮は威圧(上位互換)に吸収されました。威圧はレベル3に昇華しました。集団引率術はレベル2に昇華しました。暗視眼は夜目(下位互換)を吸収しました。暗視眼はLV 2に昇華しました』
アラヤの脳内には、いつものように声が聞こえる。暗視眼か、暗い森林の中に住むフォレストファングならではの技能だな。だとすると、フォレストファングの夜襲も有り得ると思っていた方が良さそうだね。
まぁ来たところで、侵入路は登り坂のみだし、見張りはソーリンとアラヤの交代で充分だけどね。
「このまま、森の上を道を作って走るのも有りかな?」
「いや、流石にそれは俺の魔力が持たないよ。この森を抜けるには、後2日は掛かりそうだし」
「ここは一度、走り易い林道へと降りるべきでしょうね」
「そうですね。林道に出て、なるべくアラヤさんの魔力を温存して、野営や、休憩の時に再びこれと同じような広場を作ってもらうのが、一番無難ではないでしょうか」
確かに、この人数で森の中に野営するには、四方から狙われる為に安息する間が無いだろう。この状況では最善の策かもしれない。満場一致で、森を抜けるまでの方針が決まった。
「見て、星が綺麗に見えるよ?」
森の地平線に陽が沈み、辺りが闇に包まれてくると、空に輝く星々の輝きが空一面と広がって見える。前世界でキャンプをよくする人達も、こういう夜景を楽しみにしていたのだろうか?それなら今、少しだけそれが分かる気がする。
深夜、一度だけフォレストファングが夜襲をしようと登って来たが、夜目が利くようになったアラヤがエアカッターで撃退したら、それからは朝まで二度と現れなかった。
翌朝から、作戦通りの進み方で丸2日。ようやくガプノス樹海を抜ける事が出来た。途中、フォレストファング以外にフォレストベアとも遭遇したが、難無く倒して肉と毛皮は亜空間収納へと保管してある。収納した時点から、肉の劣化は止まっているので安心だからね。
「ああ、ここまで来たら潮の香りが分かるね」
森を抜けて直ぐ、前世界と同様の潮の香りに、海が近い事を実感する。視界にもやがて水平線が見えてきた。
「もう少ししたら港町のカポリがある筈です」
ソーリンの言う通り、それらしい町が道の先に見えてきた。それなりに大きい町のようだ。
馬車は速度を下げ、ゆっくりと町の入り口へと向かう。古びた看板があり「ようこそ、最南端の港町カポリへ」と書かれている。この町はスニス大陸の最南端にあたるらしい。
「フフッ、待ってろよ、海の幸!」
アラヤは、口元のヨダレを拭きながら、既に昼食のメニューに思いを馳せていた。
その標的となっていたのは、森林を走るにはそぐわない大きさの馬車だ。
「サナエさん、近距離だけを対応して!回収しないから、投擲はダメだからね!」
「分かってる!」
馬車を後方から狙って来るのは、フォレストファングの群れだ。荷台に飛び移ろうとするところを、サナエさんがチャクラムで斬り落としている。その横から、アヤコさんが吹き矢でサポートをしている。
今、馬車にはムーブヘイストを掛けていない。フォレストファングに狙われた事で、走り易かった林道から逸れてしまったからだ。
藪や茂み、地を這う根等でまともに走る事は出来ない。故にアラヤは地盤作りで手が離せなくなってしまった。
馬車の進む先を、先行してアースクラウドで道を作り続けているのだ。
「何処か広い場所で止まれないの⁈中々数が減らないよ⁉︎」
「無理ですよ!このガプノス樹海で、林道の外に広い場所なんてありませんから!」
ソーリンは、魔物に怯えて走る馬の手綱繰りに集中している。気を抜いたら4頭ともバラバラに逃げ出しそうだ。当然、戦闘に参加する間など無い。馬が狙われそうになると、アラヤがエアカッターで撃退してくれている。だけどこのままでは、アラヤの魔力の負担が大きい。
『アラヤ君、少し先に狩場を作れませんか?』
「なるほど!任せて‼︎」
アヤコの意図を理解したアラヤは、道の高さを上げていく。木々の高さよりも高い位置まで登り坂を作ったら、後は狩場となる広場を作るだけだ。
「登り切ったら、馬車を止めて迎え撃つぞ」
馬車を広場の奥に止め、ソーリンも御者台から降りた。
「ここからは、私も戦いますよ!」
「ああ、頼むよ。俺の魔力もそろそろ限界に近かった。馬は俺が守るから、存分に暴れてくれ」
「はい!」
馬車の後を追って登って来たフォレストファングは、迎え撃つソーリンとサナエに蹂躙される事になった。
楽々と一戦を終えた二人は、途中で逃げ出したフォレストファングに不満を漏らしている。
「せっかく、ちゃんと戦える場所に来たってのに、何か消化不良だわ」
「全くですね。せっかくの活躍の場だったんですけど、大して役に立てませんでした」
「まぁまぁ、落ち着けたから良いじゃない。せっかくだから、ここを今日の野営地にしよう?」
「賛成ですね。森の中より断然安全ですし、天気も良さそうなので夜空も期待できそうです」
アラヤが作った即席の狩場は、即席と言ってもしっかりと硬い地盤でできていて、簡単に崩れる心配は無い。その分の魔力を消費をしたからね。久しぶりに魔力切れになるところだったよ。
「それにしても、サナエさんの舞の効果は素晴らしい上に見惚れてしまいますね。彼女だけでなく、アヤコさんのサポートも素晴らしかった。ヘイストとは、接近戦では反則に近い魔法ですね」
「ソーリン君も凄かったですよ」
「ああ、実に豪快な戦い方だったね」
確かに、ソーリンの強さも納得いくものだった。ドラゴンの子供を倒したというのも伊達では無い。その前に、まだドラゴンを見た事無いからピンと来ないけどね。
ソーリン=バルグ
種族 ドワーフ 男 age 10
体力 542/542
戦闘力 302/302
耐久力 321/321
精神力 72/72
魔力 108/108
俊敏 256/256
魅力 53/100
運 62
状態 正常
職種 商人LV1
#技能__スキル_ 交渉術LV 1 身体強化LV 2 脳内マップLV 1 操縦士LV 1
非戦闘職な上に10歳でこのステータスは、流石がドワーフとしか言いようが無い。使用武器はミスリル製のハルバード。刺突用のニードルが付いた槍斧である。
「流石はドラゴンを倒すだけの事あるね。もしかして、ドワーフの女性もドラゴンを?」
「いえいえ、ドラゴン退治なんて儀式めいた事、一般のドワーフはしませんよ。大体、女性のドワーフの儀式なんて、レニナオ山脈の火口まで岩石運びですよ。地味な上に危険なので誰もやりません。私が成人式で儀式をしたのは、パフォーマンスに似たものです。それに、私が倒したのはストーンドラゴンの赤ん坊です。大人のドラゴンには、ドワーフの大人でも到底敵いませんよ」
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「肉はフォレストファングのおかげで大量にあるから、今日は焼肉だね」
「アラヤは、本当に肉が好きだなぁ」
アラヤは上機嫌で、焚き火の上に焼肉用の網を乗せて、トングや取り皿を用意する。
もちろん、肉は大好きだけど、上機嫌なのはそれだけではない。新たな魔物の肉は、新たな技能を得る可能性もある。つまり、あの旨味が味わえる可能性があるのだ。アヤコとサナエも、感覚共有でその旨味を体験できるので、もちろん焼肉は大歓迎である。
(この人達は、本当に美味しそうに食べるなぁ。まるで酔っているかのようだ)
肉を貪るように食べるアラヤはもちろん、アヤコやサナエまでもが深い悦楽に浸っているような表情を見せている。
『筋肉捕食によるデータ量が100%に達しました。咆哮LV 1、集団引率術LV 1、暗視眼LV 1を習得しました。咆哮は威圧(上位互換)に吸収されました。威圧はレベル3に昇華しました。集団引率術はレベル2に昇華しました。暗視眼は夜目(下位互換)を吸収しました。暗視眼はLV 2に昇華しました』
アラヤの脳内には、いつものように声が聞こえる。暗視眼か、暗い森林の中に住むフォレストファングならではの技能だな。だとすると、フォレストファングの夜襲も有り得ると思っていた方が良さそうだね。
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「このまま、森の上を道を作って走るのも有りかな?」
「いや、流石にそれは俺の魔力が持たないよ。この森を抜けるには、後2日は掛かりそうだし」
「ここは一度、走り易い林道へと降りるべきでしょうね」
「そうですね。林道に出て、なるべくアラヤさんの魔力を温存して、野営や、休憩の時に再びこれと同じような広場を作ってもらうのが、一番無難ではないでしょうか」
確かに、この人数で森の中に野営するには、四方から狙われる為に安息する間が無いだろう。この状況では最善の策かもしれない。満場一致で、森を抜けるまでの方針が決まった。
「見て、星が綺麗に見えるよ?」
森の地平線に陽が沈み、辺りが闇に包まれてくると、空に輝く星々の輝きが空一面と広がって見える。前世界でキャンプをよくする人達も、こういう夜景を楽しみにしていたのだろうか?それなら今、少しだけそれが分かる気がする。
深夜、一度だけフォレストファングが夜襲をしようと登って来たが、夜目が利くようになったアラヤがエアカッターで撃退したら、それからは朝まで二度と現れなかった。
翌朝から、作戦通りの進み方で丸2日。ようやくガプノス樹海を抜ける事が出来た。途中、フォレストファング以外にフォレストベアとも遭遇したが、難無く倒して肉と毛皮は亜空間収納へと保管してある。収納した時点から、肉の劣化は止まっているので安心だからね。
「ああ、ここまで来たら潮の香りが分かるね」
森を抜けて直ぐ、前世界と同様の潮の香りに、海が近い事を実感する。視界にもやがて水平線が見えてきた。
「もう少ししたら港町のカポリがある筈です」
ソーリンの言う通り、それらしい町が道の先に見えてきた。それなりに大きい町のようだ。
馬車は速度を下げ、ゆっくりと町の入り口へと向かう。古びた看板があり「ようこそ、最南端の港町カポリへ」と書かれている。この町はスニス大陸の最南端にあたるらしい。
「フフッ、待ってろよ、海の幸!」
アラヤは、口元のヨダレを拭きながら、既に昼食のメニューに思いを馳せていた。
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