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第4章 魔王と呼ばれてるなんて知らなかったよ⁈
044話 ドワーフの喧嘩
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二人の買い物が終わり、次はアラヤの番となったわけだが、アラヤが見てみたいと思うのはやはり装備品だ。ファンタジーで、ドワーフと言ったら屈強な冒険者だが、穴掘り好き(発掘)や鍛治が上手いという側面があるイメージがある。
当然、金貨2枚で買えるとは思えないが、見るだけでもしてみたいと考えたのだ。
武器屋や防具屋といった店並びの通りは、やはりそれ目的な者達ばかりが集まるわけで、アラヤのような子供体型はすれ違う人々に鼻で笑われてしまう。
「姉ちゃんに連れられてお使いか?」
「ガキの来る場所じゃねーよ」
「迷子なんじゃないの?」
「怪我する前に母ちゃんの所に帰るんだな」
「アラヤの実力を知らないからって、何なのあの人達!」
「…痺れさせましょうか」
「まぁまぁ、俺は気にしてないから」
デピッケルは、およそ3万人の人口が居る。その役7割がドワーフで、残りの約3割が人間である。こういった嫌味を言うのは大半が人間で、ドワーフ達は子供だからという点は気にもしない。それは、ドワーフの子供は人間の大人よりも強いからだけど。そういう点で、人間を下等種と見てるドワーフもここには多い。
変な気を起こさないように二人を宥めつつ、最寄りの武器屋に入ってみた。
「…らっしゃい」
武器屋の店主はドワーフで、アラヤを一瞥した後は手に持っていた本を再び読み始めた。有無を言わさずに帰れと言われるかと思ったけど、ゆっくりと見物できそうだ。
壁掛けしてある槍や、立て掛けられている剣や斧。鑑定で見ると、どれも【業物】か【大業物】だった。値段も、【大業物】は白金貨6枚からなり、カットナイフですら大金貨2枚と高値である。【業物】も同様に高く、手が届く物は無い。
「アラヤ、こっちに見切り品みたいな物もあるよ?」
見てみると、「弟子が作った家庭用調理具 1個金貨1枚」と書かれた札がある。武器ですら無いのか…。おそらく、高値過ぎる武器では売れる事が稀で収入が低く、こういった安値の商品を多数売る事で生計を立てているのかもしれない。
中を物色してみると、フライパンや鍋などがある中で、鑑定に反応した厚底鍋があった。
「この鍋とフライパン、【業物】だ。鍋も油鍋にも使えそうだし、この二つを買うよ」
店主に二つの品を持っていくと、彼の眼つきが変わる。
「お前さん、鑑定持ちか?」
「いいえ、違いますよ。見た目が良かったので選んだんですけど、ダメでしたか?」
「…。いや、良い目をしてると思ってな。それで、武器は入り用では無いのか?」
「すみません、今は持ち合わせが足りなくて…。現在愛用の武器をしばらくは使おうと思います」
やんわりと、買えませんという意思を示して、アラヤは金貨2枚を机の上に置き、店を出ようとした。すると、店主に呼び止められる。
「次は愛用の武器も持って来な。安くで研いでやるからよ」
来いよ?という圧のある笑顔で見送られながら、アラヤ達は武器屋を後にした。
その後は、住宅街へと足を運ぶ。繁華街から見上げた時に、展望台らしき建物を住宅街に見つけたのだ。
その建物の前に着くと、見上げるような階段を見つけた。ここに来るまでも、だいぶ坂を登ってきたのだけど、今更登らないという選択肢は無いよね。
「わぁ~凄い景色~!」
「ああ、凄い遠くまで見渡せるね!」
繁華街はもちろんのこと、発掘作業をしている洞窟や、崖の高所足場まで見える。
地平線には森林地帯が広がり、夕焼け色に段々と染まっていく。しばらくの間、その風景に三人は浸っていた。
「そろそろ帰ろう」
三人は宿屋へと帰路に着く。
土竜の帽子亭は5時を過ぎ、一階は居酒屋料亭と変わっていた。
仕事帰りでくたびれた格好の人間やドワーフが、ガハハと笑いながら木製ジョッキで酒を飲み交わしている。
店員としてのメンバーはネネ以外にも居たらしく、人間のウェイトレスが料理を運んでいた。きっと、この時間だけのバイトだろう。
三人はお客の間を避けて通り、二階の自室に戻る。部屋を開けると、既に夕食を食べながら飲んでいるメリダさんが居た。
「おかえり。遅かったね~」
「なんで先に食べてるんですか」
「村じゃないんだから、固い事気にしないの」
「じゃあ俺達は下で食べて来ますね」
「別に下で食べても構わないけど、頼んだら、部屋まで届けてくれるわよ?」
「まぁ、この街の生活気分も体験したいので」
三人は再び下に降り、空いている円卓に座った。アラヤ達に気付いたネネが急いでやって来る。
「食事になさいますか?」
「うん、宿泊客用の日替わりメニューを頼むよ」
「承りました。少々お待ち下さい」
ネネはお辞儀をした後、慣れた動きで客を避けながら厨房へと移動していった。
辺りを見回すと、ドワーフ達にもいろいろなタイプがいることが分かる。
ナチュラルにあご髭を長く伸ばしている者。あご髭を、まるで編み物のように結っている者。あご髭だけじゃなく髪も伸ばして結っている者。まるで、個性を出すファッションだね。
そこへ三人分の料理が運ばれてくる。鑑定をしてみると、ストーンハウンドのステーキと、ヤブネカ村の芋を使用した野菜スープだ。
「「「いただきます」」」
一人に一杯ずつの小さな木製ジョッキが配られ、そこにはお酒が入っていた。この際だから飲んじゃおうと、三人は乾杯をした。味にも慣れてきたね。
先ずはステーキに手を付ける。あの硬いストーンハウンドを、フォークが簡単に刺さる程に柔らかくできるとは…。しかもミディアムレアな焼き方で、肉汁がたっぷりで美味い。
一方、野菜スープはとても優しい味で、濃ゆいステーキの味を中和してくれる。芋の甘さが良い仕事してるね。
食事を堪能していると、端の席で言い争いの喧嘩が始まった。ドワーフ同士で胸ぐらを掴んでいる。
すると、慣れた感じでネネとバイトの娘が、中央に一つの台を運ぶ。
「アームレスリング台⁈」
それは鋼鉄製のアームレスリング台だった。台の登場で客達も盛り上がりを見せる。
「喧嘩なら腕っ節で決めな!」
カカの一声で、喧嘩していた両名は中央台へと移動する。あんな台がある時点で、日常的に喧嘩があるんだろうなぁ。
「それでは準備は宜しいですか?」
「「おう‼︎」」
がしっかりと掴みあう両者。その手を抑えているネネの手が、サッと離される。
「始め‼︎」
「「ぐぬっ‼︎」」
常人の腕なら簡単に折れそうな力がぶつかり合う。観客の熱気も段々と増している。
「凄いね。アラヤならどう?」
「とてもじゃないけど勝てないね。二人共に腕力350超えだよ。俺も身体強化がLV 3に上がってるけど、この差は埋めれないかもね」
「ちょっと見てみたかったですけどね」
いや、マジで勘弁して欲しいね。ガルムさんに拳を潰された思い出がよぎってくる。ガルムさんが、自身をまだ弱い方だと言ってたのが事実だと分かったよ。
「お客様、お皿を下げてもよろしいですか?」
バイトの娘が、アラヤ達の食べ終わった皿を取りに来た。
「君は、帽子亭にバイトで来てるの?」
「はい、カカ叔母さんに頼まれて夜だけ手伝っています」
「えっ?親戚なんですか?」
「母がカカ叔母さんの姉で、私は父が人間なので混血なんです」
道理であんな重い台を、ネネと二人で持てたのか。これは彼女の腕っ節も、意外と侮れないね。
「他種族との結婚もあるんですね」
「はい。どの種族でもあまり子供には恵まれない見たいですけど。私は運が良かったみたいです」
ありがとうと彼女にチップを渡して、三人は部屋に戻る事にした。階段を上っている途中で歓声が上がったので、どうやら決着がついたのだろう。ある意味、平和的な解決方法だね。
当然、金貨2枚で買えるとは思えないが、見るだけでもしてみたいと考えたのだ。
武器屋や防具屋といった店並びの通りは、やはりそれ目的な者達ばかりが集まるわけで、アラヤのような子供体型はすれ違う人々に鼻で笑われてしまう。
「姉ちゃんに連れられてお使いか?」
「ガキの来る場所じゃねーよ」
「迷子なんじゃないの?」
「怪我する前に母ちゃんの所に帰るんだな」
「アラヤの実力を知らないからって、何なのあの人達!」
「…痺れさせましょうか」
「まぁまぁ、俺は気にしてないから」
デピッケルは、およそ3万人の人口が居る。その役7割がドワーフで、残りの約3割が人間である。こういった嫌味を言うのは大半が人間で、ドワーフ達は子供だからという点は気にもしない。それは、ドワーフの子供は人間の大人よりも強いからだけど。そういう点で、人間を下等種と見てるドワーフもここには多い。
変な気を起こさないように二人を宥めつつ、最寄りの武器屋に入ってみた。
「…らっしゃい」
武器屋の店主はドワーフで、アラヤを一瞥した後は手に持っていた本を再び読み始めた。有無を言わさずに帰れと言われるかと思ったけど、ゆっくりと見物できそうだ。
壁掛けしてある槍や、立て掛けられている剣や斧。鑑定で見ると、どれも【業物】か【大業物】だった。値段も、【大業物】は白金貨6枚からなり、カットナイフですら大金貨2枚と高値である。【業物】も同様に高く、手が届く物は無い。
「アラヤ、こっちに見切り品みたいな物もあるよ?」
見てみると、「弟子が作った家庭用調理具 1個金貨1枚」と書かれた札がある。武器ですら無いのか…。おそらく、高値過ぎる武器では売れる事が稀で収入が低く、こういった安値の商品を多数売る事で生計を立てているのかもしれない。
中を物色してみると、フライパンや鍋などがある中で、鑑定に反応した厚底鍋があった。
「この鍋とフライパン、【業物】だ。鍋も油鍋にも使えそうだし、この二つを買うよ」
店主に二つの品を持っていくと、彼の眼つきが変わる。
「お前さん、鑑定持ちか?」
「いいえ、違いますよ。見た目が良かったので選んだんですけど、ダメでしたか?」
「…。いや、良い目をしてると思ってな。それで、武器は入り用では無いのか?」
「すみません、今は持ち合わせが足りなくて…。現在愛用の武器をしばらくは使おうと思います」
やんわりと、買えませんという意思を示して、アラヤは金貨2枚を机の上に置き、店を出ようとした。すると、店主に呼び止められる。
「次は愛用の武器も持って来な。安くで研いでやるからよ」
来いよ?という圧のある笑顔で見送られながら、アラヤ達は武器屋を後にした。
その後は、住宅街へと足を運ぶ。繁華街から見上げた時に、展望台らしき建物を住宅街に見つけたのだ。
その建物の前に着くと、見上げるような階段を見つけた。ここに来るまでも、だいぶ坂を登ってきたのだけど、今更登らないという選択肢は無いよね。
「わぁ~凄い景色~!」
「ああ、凄い遠くまで見渡せるね!」
繁華街はもちろんのこと、発掘作業をしている洞窟や、崖の高所足場まで見える。
地平線には森林地帯が広がり、夕焼け色に段々と染まっていく。しばらくの間、その風景に三人は浸っていた。
「そろそろ帰ろう」
三人は宿屋へと帰路に着く。
土竜の帽子亭は5時を過ぎ、一階は居酒屋料亭と変わっていた。
仕事帰りでくたびれた格好の人間やドワーフが、ガハハと笑いながら木製ジョッキで酒を飲み交わしている。
店員としてのメンバーはネネ以外にも居たらしく、人間のウェイトレスが料理を運んでいた。きっと、この時間だけのバイトだろう。
三人はお客の間を避けて通り、二階の自室に戻る。部屋を開けると、既に夕食を食べながら飲んでいるメリダさんが居た。
「おかえり。遅かったね~」
「なんで先に食べてるんですか」
「村じゃないんだから、固い事気にしないの」
「じゃあ俺達は下で食べて来ますね」
「別に下で食べても構わないけど、頼んだら、部屋まで届けてくれるわよ?」
「まぁ、この街の生活気分も体験したいので」
三人は再び下に降り、空いている円卓に座った。アラヤ達に気付いたネネが急いでやって来る。
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そこへ三人分の料理が運ばれてくる。鑑定をしてみると、ストーンハウンドのステーキと、ヤブネカ村の芋を使用した野菜スープだ。
「「「いただきます」」」
一人に一杯ずつの小さな木製ジョッキが配られ、そこにはお酒が入っていた。この際だから飲んじゃおうと、三人は乾杯をした。味にも慣れてきたね。
先ずはステーキに手を付ける。あの硬いストーンハウンドを、フォークが簡単に刺さる程に柔らかくできるとは…。しかもミディアムレアな焼き方で、肉汁がたっぷりで美味い。
一方、野菜スープはとても優しい味で、濃ゆいステーキの味を中和してくれる。芋の甘さが良い仕事してるね。
食事を堪能していると、端の席で言い争いの喧嘩が始まった。ドワーフ同士で胸ぐらを掴んでいる。
すると、慣れた感じでネネとバイトの娘が、中央に一つの台を運ぶ。
「アームレスリング台⁈」
それは鋼鉄製のアームレスリング台だった。台の登場で客達も盛り上がりを見せる。
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カカの一声で、喧嘩していた両名は中央台へと移動する。あんな台がある時点で、日常的に喧嘩があるんだろうなぁ。
「それでは準備は宜しいですか?」
「「おう‼︎」」
がしっかりと掴みあう両者。その手を抑えているネネの手が、サッと離される。
「始め‼︎」
「「ぐぬっ‼︎」」
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「ちょっと見てみたかったですけどね」
いや、マジで勘弁して欲しいね。ガルムさんに拳を潰された思い出がよぎってくる。ガルムさんが、自身をまだ弱い方だと言ってたのが事実だと分かったよ。
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バイトの娘が、アラヤ達の食べ終わった皿を取りに来た。
「君は、帽子亭にバイトで来てるの?」
「はい、カカ叔母さんに頼まれて夜だけ手伝っています」
「えっ?親戚なんですか?」
「母がカカ叔母さんの姉で、私は父が人間なので混血なんです」
道理であんな重い台を、ネネと二人で持てたのか。これは彼女の腕っ節も、意外と侮れないね。
「他種族との結婚もあるんですね」
「はい。どの種族でもあまり子供には恵まれない見たいですけど。私は運が良かったみたいです」
ありがとうと彼女にチップを渡して、三人は部屋に戻る事にした。階段を上っている途中で歓声が上がったので、どうやら決着がついたのだろう。ある意味、平和的な解決方法だね。
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