【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第2章 魅惑の生活が怖いって思わなかったよ⁈

016話 感謝とやらせ

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「「ありがとう!」」

   昼食後に、無事に二人と仲直り出来た。プレゼントの効果って凄いんだね!
  因みに、プレゼントに選んだ3つの品は、一つ目はアヤコさんが欲しがってた本3冊。これは3部作だったらしくて一つとしてカウントしてくれた。
   二つ目は、サナエさんが欲しがっていた服と絹の反物は無かったので、代わりに麻のフレアブラウスを選んだ。
   三つ目は、琥珀色の水飴だ。これは皆んなで楽しむ用に選んだ。
   サナエさんから貰ったショートソードも、もちろん、ちゃんと大事にするよ!

   荷物を置く為に、自宅へと三人は帰っていた。ショートソードを壁に飾るか悩んだけど、落ち着かなかったので、最終的には収納箱に入れて鍵をした。そこへ、アヤコが貰ったばかりの本を片手に、部屋を訪ねて来た。

「実はこの本、一目見て気になるところが
あったんです」

「何が気になったの?」

「ここを見て下さい」

  彼女が指差したのは、その本の著者の名前だった。
 
    著者    カオリ=イッシキ

「カオリ?イッシキ カオリ?あ、学年トップの才女、一色 香織か!」

「はい。彼女も同じクラスメイトですよ?知っていましたか?」

「も、もちろんだよ。まさか、こういう形で同級生の生存が分かるなんて、びっくりだよね」

    名前は知ってたけど、クラスメイトだったのは忘れていたな。二年に進級した時、確かにそれらしい眼鏡女子が居た気はする。

「彼女は、アヤコさんと一緒の言語理解の技能スキルを持ってるんだろうね。こうやって本の出版まで出来るという事は、匿われた先が、裕福な貴族かもしれない。今日の晩、ガルムさんに呼ばれてるから、その時にそれとなく聞いてみるよ。おっと、そろそろ午後の仕事に向かわないとね」

「アラヤ君!」

   部屋を出ようとするアラヤを、アヤコは引き止める。

「何?」

「私もね、投票は剣に入れたんだよ?」

「うん。サナエさんも言ってたね。でも、どうして二人共、自分の欲しい品を選ばなかったの?」

「そんなの、アラヤ君が欲しいって言ったからに決まってる。自分の欲しい物は二の次だよ。多分、サナエちゃんも同じだと思う。でも、サナエちゃんに運で負けちゃったなぁ」

「ああ、選ばれなかったのは仕方ないよ。でも、ありがとう。気持ちは嬉しいよ」

   そう、あれは仕方ないよ。だって、100%村長のだもん。鑑定持ちが抽選って、当てたい相手を選び放題だよ。
  ただ、村長にアヤコさんじゃなくサナエさんが選ばれたのは、俺の事を弟と言ってたアヤコさんの自業自得だと思うよ?

「じゃ、じゃあ、二人でプレゼントしたって事だね?」

「アヤ、なんでそうなるのよ?」

   出てこない二人に痺れを切らしたサナエさんが、扉の前に立っていた。二人は穏やかに見つめ合ってるのに、何で怒りマークみたいな物が見える気がするんだろう⁈

「アラヤ君は、二人の気持ちは嬉しいって言ってくれたの。それで良いじゃない」

「それは、気を使ってるのさ。アラヤは優しいからね」

「ちょ、ちょっと二人共!そのへんで止めよう⁈こんな事で二人が喧嘩するのは、俺は凄い嫌だよ?ほら、遅くなっちゃうよ。そろそろ仕事に行こう?」

   なだめるようにして、二人を仕事に送り出す。もし、もしもだけど、俺の勘違いじゃなくて二人が俺を好いてくれて揉めてるとしたら、気持ちは嬉しいけど、ギスギスするのは正直なところ勘弁してほしい。
   だけどそれは都合のいい思い過ごしで、きっと二人は俺に助けられた事の恩を、ただ返したいだけなんだと思う。

「えっと、今日の午後の仕事は治療院だっけ?」

   さっきの一件でどっと疲れた気がする。そんな時はトーメさんの針治療に限る。この世界のヒールは、損傷は治せるけど、疲労は治せないみたいだからね。

「トーメさん、こんにち…は?」

   扉を開けてみると、普段は閑古鳥が鳴いている治療院内に、沢山の御年配の患者さんが来ている。
   ベッドに寝ている患者さんに、針を刺すトーメさん。その耳にはキラリと光るイヤリングが…‼︎
   ああ、彼女を見る男性陣は微笑み、女性陣は羨んでいる。この歳になっても、変わらないものってあるんだね。

   仕方ないので、今回は針治療を頼むのは諦めて、待っている皆んなに飲み水を配り話し相手になる。
   その時、扉が開いて守衛のザックスが入って来た。

「アラヤ、治してくれないか…?」

「ごめん、…心の傷は治せないや。でも、俺の記憶だと、そんな時は飲むに限るらしいよ?今日なら、棟梁のゲーンさんのところが良いかもね?夕食後にでも…」

「おうとも!今日はやけ酒だぁ~っ!」

    話を最後まで聞かずに、ザックスは走って行った。まだ夕食前だから怒られると思うけど、愚痴は聞いてもらえるかもね。

   結局、夕食まで針治療の番は回って来なかった。最後の患者さんの治療の途中で、疲れて寝てしまったんだ。10人近くを連続で治療したのだから、そりゃあ、トーメさんの体力が持たないよ。
   だから、その後はベッドに寝かせて、ゆっくりと寝てもらったよ。俺には針治療は難しくて無理だから手伝えない。代わりにマッサージでも練習するべきかな。
   夕食の時間になったので、トーメさんと一緒に食堂へと向かう。
   サナエさんが食卓に忙しそうに料理を運んでいる。その奥で、ライナスとベスさんが手を繋いでイチャイチャしている。いやいや、気持ちは分かるけど、仕事中はダメでしょ。

「サナエさん!忙しそうだね、手伝おうか?」

   わざと大きな声で言ってみる。すると、ビクッとした二人は急いで手を離した。何事も無かったように、ベスさんは直ぐに料理を取りに行き、ライナスは大人しく机に座った。

「あんまりイジメちゃ悪いよ?」

   サナエさんが、料理を持たない手で軽くチョップしてきた。

「イジメじゃないよ?仕事はちゃんとしなきゃ、周りに迷惑かかるでしょ?」

「まぁね。じゃあ、せっかくの申し出だから、手伝ってもらおうかな?」

   ニッと笑顔でそう言って、料理を俺に押し付ける。まぁ、言った事は守らないとね。だから、しっかりと運ぶのを手伝ったよ。


「「「いただきます」」」

  夕食が始まると、俺の隣の席に、メリダ村長が料理を持参して座った。

「ガルムさんに、この後で呼ばれてるんでしょう?」

「はい」

「なら、今のうちに言っておくけど、私の手助けは期待しないでね?」

「どういう事ですか?」

「彼には嘘は通用しないわ。嘘を見抜く力があると言えば分かるかしら?」

  嘘を見抜く?鑑定持ちという事かな。商人なのだから、それは十分に有り得るな。

「彼は、自分に得になる人間には公平なドワーフよ。業突く張りなドワーフには珍しい人ね。彼に気に入られたら、貴方も村も豊かになると思うわ」

「え?責任重大な感じですか⁈」

「いいえ。貴方が嫌われても、村には影響は無いわ。村の商談は私(村長)との契約だからね」

   ミニトマトをフォークで刺して、アラヤの目先に向ける。

「今後の貴方の為には、必ず気に入られなさいって事よ」

   念押し的なセリフを言うと、パクリとトマトを咥えて再び席を離れて行った。今後の俺の為?とにかく、村長は俺を心配して教えに来たんだな。ホント、この村の人達は優しい人ばかりだ。それはきっと、この村長だからかもしれないね。
   夕食が終わり、俺は二人に用事がある事を告げる。

「え?じゃあ、今日は訓練しないの?」

「うん。行商人のガルムさんに呼ばれていてね」

「私は聞いてました」

   キッと睨み合う二人。二人きりにして大丈夫だよね⁈

「だから、今日は自主練しててね?」

「吹き矢の自主練…試し撃ちしたい」

に毒矢は駄目だよ⁈」

   後ろ髪引かれる不安を抱え、アラヤは村長宅へと向かった。
   玄関扉を軽くノックして、部屋へと入って行く。彼は客間でメリダと共に居た。

「やぁ、こんばんわ」

   アラヤは驚愕した。何故、午前中に会った時に確認しなかったのだろう。彼の鑑定はLV3だったのだ。
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