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第2章 爆誕⁉︎召喚されし者達の女神

第25話 候補者

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 掲示板に映る文字列は、どのSNSの掲示板でも、今夜零時にくだんの女神が虚言か真かの話題で持ちきりだった。

 247:わらしべ賢者
「マジモンの女神見れるなら、俺、明日から本気出すw」

 248:ブリーフ推進会委員長
「単に女神と言っても、異世界へ誘う女神と言ったら駄女神っしょ!(定期)」

 249:夢見大福
「≫248 え?一緒にダイブの可能性有り?」

 250:鱈ンポリン
「自分はロリを期待する。ロリなら多少痛い子でも…ハァ、ハァ、ι(´Д`υ)」

 251:タルミン
「≫250 お巡りさんコイツです。」

 252:tomo浪
「チート無双できるなら、老婆神でもok。」

 253:お麩同好会
「てか、選考基準ってどうなの?」

 254:ちっ牌は正義
「やっぱ、善行じゃね?」

 255:タロタロ
「よし、俺今から全財産をタワーのテッペンから撒いてくる」

 256:阿笠地蔵
「≫255 ただの奇行www」

 257:解凍キッド
「転生なら跳ねられなきゃじゃ?」

 258:手心パンダ
「よし、俺トラックを見つけるわ」

 259:もっさり姫♂
「よし、俺がソレで暴走するわ」

 260:サトリ論じる者
「よし、俺はソレを録画するわ」

 261:タルタルポン酢
「≫257 準備はok?」

 262:解凍キッド
「今、カフェを満喫してるんだが?おっと、窓の外から急にライトが…」

 内容はふざけているが、興味がある事には間違いない。
 刻一刻と零時に近付くに連れて、転移先へと話題は変わっていく。

 386:テコ入れ太郎
「オデは、やっぱり魔法有り有りのファンタジーさ!」

 387:もっさり姫♂
「モフモフ居れば全て良し」

 388:照れてるポーズ
「交通手段が徒歩しかないなら断る。俺は転がるしかない」

 389:タルミン
「後20分斬ったな。ワクワク」

 390:手心パンダ
「ヤバ…。秘蔵の処分が間に合わぬ(汗)」

 391:円が超
「自宅警備員である吾輩は、此処を離れる訳には…ワクワク」

 これを見ていたハヤトは、目を閉じて集中しているモブリアに声を掛ける。

「アジア圏にそろそろ繋ぐぞ?」

 モブリアは無言でコクンと頷く。
 ハヤトは【連結】の権能を、モブリアと画面に繋ぐ。

 深夜零時10分前、アジア圏のSNSの画面にノイズが走る。
 僅か1秒程のノイズの後、画面には銀髪の女神が投影された。

『今宵、日を跨ぐ時、勇気ある者は目前の扉を開けよ。我が下へと通ずる道は3路。素質ある者のみが招かれるだろう』

 ニコリと笑顔を見せた後、画面は元に戻った。

 395:お麩同好会
「…マ⁉︎」

 396:タルタルポン酢
「え?今ジャックされたん⁇」

 397:tomo浪
「女神降臨‼︎ウホッ⁉︎」

 398:中中トレin
「扉って⁉︎誰か考察はよ!」

 399:テコ入れ太郎
「3だ、3!3人って事だろ⁉︎」

 400:円が超
「扉は新たに現れるのか、既にある扉を開けるのか分からん。吾輩の前にも1つだけならある。無論、開けるが?」

 401:タルミン
「悪いな、俺は行く」

 402:サトリ論じる者
「すまないな、お先」

 403:阿笠地蔵
「おっと?居間だと扉3つあるんだが⁉︎」

 404:もっさり姫♂
「…マ⁈」

 投影による反響は凄かった。アジア圏のSNSは瞬く間にパンク寸前となった。
 そうこうしている間にも、時は零時へと近付く。

「休む間もないが、次は1人目を此処へ招く」

 日を跨ぐと言っても、日付変更のしっかりと時差はあるので、各圏内で呼ぶのは1人ずつとなる。

「はい。では直ぐに扉に【出会い】と【転移】を」

「俺は、扉に【連結】と【選別】を」

 2人の権能が、部屋の1つの扉へと注がれる。
 扉は今正に、限定的な神具となっていた。

 カチャリ、とノブが回る音がした。

 ゆっくりと開く扉の隙間から、恐る恐る顔を覗かせたのは、眼鏡をかけた女性だった。

「あ、あれぇ…⁉︎」

 扉を半開きで中を覗く彼女は、スッピンでパジャマから下着が少しはみ出している。

 ハヤト達が用意した候補者との応接間は、一目で日常的とは違うと分からせる為に、室内の天井や壁の背景に、巨大な満月を映し出していた。

「ま、まま、まさか、ホントに⁉︎」

 あわあわと、下顎を震わせながらも、彼女は部屋へと足を踏み入れる。

『どうぞ此方に…』

 敢えて念話を使い呼び掛けると、彼女は「ヒャウッ⁉︎」と肩を跳ね上がらせた。

「良く来ましたね、【鈴原 朱音スズハラ アカネ】。私の名はモブダリア。転移、転生を司る神です」

「は、はひっ⁉︎」

 名を言い当てられて、アカネは直立不動の姿勢になる。
 因みに、彼女の素性はハヤトが即座に【看破眼】を使用して把握してある。

 モブリアの前に腰掛け椅子が1つあり、アカネは促されるままに恐る恐る座った。

「先ずは、説明をしましょう。貴女は今回、森の惑星アッサムニアに、次の満月時に転移する者のとして選ばれました」

 彼女は目をパチパチと瞬きした後、首を傾げた。

「今直ぐ転移するでもなく、私は候補者ですか?」

「はい。今回、アッサムニアに転移できる枠は1人で、貴女は候補者3名の中の1人です」

 彼女は言われた意味を理解すると、今までオドオドしていたのが嘘の様に落ち着き払っている。

「では、選ばない可能性もあると?」

「はい。選ばれなかった場合、次の転移募集があるまで候補者リストに残るか、今回の記憶を消して日常に戻るかを選択してもらいます。それと、仮に選ばれたとしても断る権利はありますのでご安心ください」

 彼女のピクリと片眉が上がる。

「強制じゃないんですね?それに、選ぶのは女神様じゃないみたいですが、一体誰に決定権が?」

 今まで気配を消していたハヤトは、スッとモブリアの隣に姿を現した。

「わ、わぁっ⁉︎」

「…俺はハヤト。モブダリア神をサポートする者だ。候補者の中から、適した転移者を俺が選別をする」

 見た目日本人だと分かるから、アカネの前には現れたくなかったのだが。
 明らかに、騙されているんじゃないかと警戒心が高まっている。

「勘違いをしないで欲しいのだが、俺達は転移者を求める神々と、転移者達の間を取り持つ神という事だ。今までの様に、強制的な転移や転生を起こらないようにしている」

「あー、じゃあ、今から帰っても?」

 やはり疑っている様だ。

「ああ、構わない。ただ、この部屋での記憶は消させてもらう。まぁ、まだもしていなかったから、消す記憶も大した事無いが…」

 ピクリと再び、彼女の片眉が上がる。

「転移先の情報を、事前に知れるの?」

「もちろんだ。だから、女神は転移を断れると言ったんだ。転移先の情報だけじゃない。少しなら映像も見せる予定だった。まぁ、帰るなら同じ扉で帰れる。直ぐアジア圏から君の代わりの候補者を呼ぶから、もう帰っていいよ?」

「も、もうちょっと、聞いても良いですか?」

 少し気持ちが揺らいだのか、疑い念が薄まり始めている。

「た、例えばですけど、転移者に選ばれたとして、チー…あ、いや、スキルとかは貰えたり?いきなり行ったとしても、環境に馴染める様に、幾つかスキルが貰えたら安心だなぁって…」

 反応を伺うようにして聞いてくる彼女の魂胆は、正に予想通りと言える。

「そうだな。その星を管理する創造神の希望に応えるというのなら、相応のスキルを貰えるもできるように既に取り計らっている」

「や、やった!無双できる予感、出てきたんですけど⁉︎」

 拳を握って喜ぶ彼女に思わず、吹き出しそうになった。

「ん?帰るんじゃなかったか?」

「え?い、いやだなぁ、せっかく候補者枠に入れたのに、話を聞かずに帰るなんてしませんよぉ」

 彼女は慌てて椅子に姿勢良く座り直す。彼女なりの聞く姿勢というやつか。

「では、候補者として残ると判断してよろしいですね?」

「はい。お願いします」

 あれだけ疑っていたのに、チート無双できる可能性があるとなったら、やる気になったな。

「それでは、次の満月で転移する森の惑星アッサムニアについて説明しますね?」

 これでようやく、最初の候補者への説明に取り掛かれる。
 彼女は、初めての客とも言える候補者だ。
 初仕事のスタートラインに立ったモブリアとハヤトは、不思議と笑顔になっているのだった。
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