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7.偉い人に会うらしい

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眩しい光が窓から差し込み、眠い目を擦りながら起き上がる。

ベッドの上で暫くぼーっとしていると、部屋の扉がノックされた。




「セト殿、おはようございます。
クーパー公爵家 騎士団員 ロイド・バウムと申します。
副団長の命により、お迎えに上がりました!」

着替えて、1階に降りると昨日みた、団服と少しデザインの違うものを着た男が迎えに来ていた。

「おはようございます。よろしくお願いしますぅ。」

バウムさんと挨拶を交わし、宿をでる。

「このまま、公爵邸へ向かいますが、よろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。」

バウムさんは馬に乗り、俺は一緒に来ていた馬車に乗り込んだ。

初めて馬車に乗ったが、あんまり乗り心地は良くないなぁ。
クッションが固いんか、スプリングが無いんか知らんけど、ケツが痛いわぁ。

ケツの痛みに耐えながら、馬車に乗ること1時間。

公爵邸へ到着した。
|||結構遠いな、公爵さん家。

馬車から降りると執事?が出迎えてくれた。

「ようこそ。いらっしゃいました。
私は、クーパー公爵家の執事をしております。
ハロルド・レーガンと申します。
以後、お見知りおきを」

「私は、瀬兎です。よろしくお願いします。」

「では、邸内を案内させていただきます。
こちらへどうぞ。」

レーガンさんは、腰を軽く折り、邸の中へ誘導してくれる。
レーガンさんの後について、中に入ると玄関?には沢山のお高そうな壺やら置物が置いてあった。

割ってもうたら事やな。
弁償でけへん金額やろうな

物に当たらないように、身を縮こませて歩いていくと、応接間みたいなとこに案内された。

「こちらで暫くお待ち下さい。」と紅茶とお菓子を貰った。
遠慮なく、紅茶とお菓子を頂く。
紅茶は高いんやろう、ごっつ美味かった。
お菓子も、クッキーを食べたがこれも美味かった。

お菓子を食べながら待っていると、コンコンとノックの音がして、レーガンさんの声がした。

公爵家御一家が挨拶したいと………

|||なんでやねん……

おかしいやん。偉い人は下民に会わんやろ普通。
いや、知らんけど。

「は、はい。」

無言っちゅう訳にもいかず、返事したけど。
マナーとか知らんで?
大丈夫か?

「失礼する。」と入って来たのは、ダンディなおっちゃん。
40歳くらいか?若々しい感じの銀髪イケメン
次いで、入ってきたのがこれまたえらい別嬪さん!
しかも、2人!
姉妹か?ってくらいそっくりや!

最後に入ってきた女の人を見た瞬間、思考が停止して、心撃ち抜かれた声が出た。

恐らく、これが一目惚れ。

アカンーーー!叶わへん恋やんけ!
絶対、ロイヤルファミリーやん!
下民には届かへんお姫様やん!

俺が勝手に一目惚れしてる間に、公爵御一家は前のソファに座った。

「初めまして。
私は公爵家当主 ルークベルト・クーパーだ。
私の隣が妻のリヴィア・クーパー、その隣が娘のシルヴィア・クーパー。
此度は、妻と娘を助けてくれて感謝する。
本当にありがとう。」

公爵さんは、座ったまま頭を下げた。

「あ、いえいえ。たまたま通りかかっただけで。」

「それでも助けてくれたことには変わりない。」

「私からもお礼を言わせて下さい。
あのときは、気が動転していて、お礼も言わずにごめんなさい。
助けていただいて、本当にありがとう存じます。」

「助けて頂いた恩は忘れませんわ。ありがとうございます。」

シルヴィアさん…声まで美しい………

奥さんとシルヴィアさんにお礼を言われ、照れくさくなってきた。

「いえ、お二人ともご無事で良かったです。」

俺たちの様子を見ていた公爵さんは、穏やかに微笑みかけてくれ、望みのものを用意しようと言ってくれた。

ここで、娘さんをください!とか言うたら怒鳴られるかなぁ。

まぁ、ここは当初の目的、金一択やな!

「では、金貨を頂きたいです。
お恥ずかしい話、所持金全て取られてしまって、途方に暮れておりました。」

テヘヘって感じで、頬をかきながら言ってみた。
哀れな男に見えへんかな。

平民の時点でアウトか………

「そうか、それは災難だったな。
よし、分かった。金貨を用意しよう!」

公爵さんは、近くに控えていたレーガンさんに小切手のようなものを手渡し、受け取ったレーガンさんは部屋を後にする。

暫くして、レーガンさんが戻ってくると、袋いっぱいに金貨が入っていた。

「金貨2000枚入ってる。
暫くは、持つだろう。」

「こんなに沢山………」

「それだけの事は、してくれたと私は思っているよ。」

「ありがとうございます。」

こんなに貰ろうてええんか分からんけど、くれるって言うてんねんから貰ろうてええねんやろな。
遠慮せんで!

懐ぬくぬくになりました。
ニヤニヤが止まらん。

なんやかんやでこれが、俺の異世界ロイヤルファミリーとの初顔合わせであった。
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