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【外伝】アドヴァンとシローヌ
始まりの始まり
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まだアヤカシという魔物が
跋扈していない時代。
魔王が存在していない世界。
マーラ。この世界マーラでの物語。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「おはよう!シローヌ。」
あ、アドヴァン。
幼馴染のアドヴァンだ。
隣の家に住んでいる男の子。
親同士が中が良くて、
物心付いた時から二人で遊んでいる。
「おはよう。アド。今日もいい天気ね」
アドが何かニヤニヤしてる。
ははぁーん。さては何か企んでる。
私はシローヌ。13歳。
アドも同じ。
私達が住む村は、トッポイ国の中でも
首都エギョマに近い港町。
幼い時から魚を採って暮らしてきた。
ホント魚くらいしか産業が無いんだけど、
とても長閑で緩い時間が流れてる。
今日は、学校も休みなので、
アドと街までお出かけしようかなと思ってたのに、
アイツ何かおかしいんだよね~?
「シローヌ。あのさー。
あそこの洞窟探検行かない?!」
えー!今日はお買い物付き合うって言ったじゃんか!!
ヤダよーー!
アドは学校で行くのを禁じられた
村の近くの洞窟を探検しに行こう
と言ってるのだ、このあんぽ柿は。
洞窟は村の海岸から、
少し岩場を越えた先にあるのは知ってる。
私達は小さい頃から泳ぎに慣れてるので岩場を超えるのは問題ないんだけど学校からは、
あの洞窟は昔から探検禁止と言われていた。
でも興味あるよね。
何で行っちゃ駄目なのかな。
よし!行こうかっ。
何気なく言ったこの言葉。
引き返せるなら引き返したい。
私達は幼すぎた。
そして、この行為が世界を変えた。
洞窟に着いた。外はうだるような暑さなのに、
洞窟内はキーンと冷え切っている。
泳いでここに辿り着いたので、
尚更体が冷える。
「ちょっと入口で身体を温めないと。寒いよ。」
「そうだな」
洞窟内に落ちていた漂流物の枯れ木を
適当に折って炎の魔法を使う。
「すげーな。魔法使えんのかよー。」
アドはアホみたいに喜んでいる。
こいつは、ホントバカだなー
と思いながら火に当たる。
幼馴染なんだけど、アドは兄弟のようで
正直恋愛対象ではない。
弟みたいなもんだ。
だから二人っきりになっても
ドキドキなんか……あれ?
ドキドキするな。
やばっ。なんでコイツなんか
意識しちゃうんだろ。
生まれも育ちもこの土地きっての
漁師のアドヴァン。
お父さんはこの村の網元。
アドヴァンは、将来お父さんの意志をついで
立派な漁師になると言っていた。
私は、こんな魚臭い村から早く出て
将来王族に仕えて、
魔法研究の職に就きたいと思っていた。
父は昔、王家に仕えていたらしい。
母も宮廷魔法使いだったと聞いたことがある。
だから炎の魔法なんて、
朝飯前とはこのことなのよねー。
グルルル……。
私じゃないわよ、このお腹の音は。
「ちょっと!お腹空いてんの?」
少しドキドキした自分が恥ずかしくなった。
色気より食い気か。
私は光の矢を作り、海に向かって投げる。
その光の矢は海に刺さると雷光なのか、
『バチッ』と光った。
すると、数匹の魚が浮かんでくる。
「アド。魚持つの嫌だから
あなた取ってきなさい。」
はーいと言いながら魚を取ってきて
器用に漂流した枯木をナイフで削り、
串焼きにして炎で焼く。
あーいい匂い。
香ばしい魚の臭いが鼻孔をくすぐる。
4匹の魚の内、3匹もアドは食べ尽くす。
私は一匹を丁寧に食べていく。
「よし!お腹も満腹!
さあ、探検開始と行きますか!」
アドは張り切ってる。
単純だなー。なんて思いながら
アドの後ろを着いていく。
奥へ奥へと進むと、岩戸が見えた。
古代文字?見たこともない文字で
扉が閉まっている。
「なんだよ。行き止まりかよ」
アドは溜息をついて答えてる。
まって。お母さんから聞いたことがある。
古代文字の封印。
決して開けてはならない封印。
お伽噺《ときばなし》かと思ってた。
小さい頃に聞かせてもらったお伽噺。
天界で神々の争いがあった。
阿修羅天神と帝釈天の争いである。
破れた阿修羅神は、
邪神として封印されたと。
神でありながら邪神に貶される。
阿修羅は一族の名誉、
威神のために戦ったが敗れた。
その無念さ、悔しさ、
恨みはマイナスのソウルパワーとして膨張し、
その魂ごと封印されたと言う。
まさか、これが?
この扉の先に阿修羅神が?
私は無意識に口を衝いていた。
母から教えて貰った言葉。
封印を解く呪文。
「ワタシノナマエハノンタロウドウシテコンナニイーオトコ、ドウシテコンナニイーオトコ。」
岩戸が開く。
ガ、ガガ…………。
「何でお前知ってるの?!」
アドヴァンは私に聞いてくる。
ほ、ホントに開くなんて思わなかった。
ん?何か見える。
奥に祭壇がある。
あ!なんか光ってる。
「行ってみようぜ!」
アドはさっさと先に進んでいく。
お前はバカか。
何か罠とかあったらどうすんの?
「アド!ちょっと待って!」
私も慌てて着いていく。
岩戸の先には、怪しい宝箱がある。
宝飾されて紫色に光っている。
「開けちゃおうぜ!」
アドヴァンは私の制止を振り切って
宝箱を開ける。
特大な瘴気が周囲を襲う。
箱の中身は何も無かった。
『童よ。礼を言うぞ。
妾をよくぞ開放した。』
地の底から震える恐ろしい声が
洞窟内に木霊する。
ヤバい。私達はヤバいのを
封印から解いてしまった!
アド!!
アドヴァンは立ち尽くしている。
「アドヴァン!帰ろう。ここは危な……」
アドヴァンの手を引いて逃げようとした矢先、
アドヴァンの口からは
アドヴァンではない何者かの声を放つ。
「この者を依り代に使わせて貰うぞ。
私はこの世界の覇者となる」
アドヴァンの目が赤く光る。
阿修羅神と思われる黒い影が
アドヴァンの背後に映る。
一瞬アドヴァンの目が、
あの優しいアドの目に戻る。
「逃げ……ろ。シロー……ヌ」。
最後の力なのかアドヴァンの目から涙がこぼれ落ちる。
アドヴァン。アドヴァン!
戻ってきて!
私は必死に呼びかける。
アドヴァンは阿修羅神の力を最後に抑え込み、私を圧縮した衝撃波を放ち、
その衝撃で海岸まで押し戻す。
ギ、ギギ…ガガガガ……。
岩戸は閉まる。
最後に見たアドヴァンは笑っていた。
それから、世界の理が変わった。
世界に阿修羅の負のソウルパワーである魔物=アヤカシが跋扈した。
アヤカシに襲われ殺された者はアヤカシとなる。
アヤカシは見境なく人々を襲う。
そしてアヤカシの数はどんどん増えていくのであった。
あの後私は、大人達を連れて
岩戸の洞窟へ戻った。
しかし、もうアドヴァンは
既に洞窟にはいなかった。
最後に私を逃してくれた優しいアドヴァン。
必ず助け出す。何としてでも。
アドヴァンの消息は
依然掴めなかった。
それから数年魔法学を勉強しまくった。
もしかしたら邪神開放の術が、
方法があるかもしれないと思ったから。
でも、そんな都合の良い魔法は
見当たらなかった。
私は古代の魔法と現代魔法を研究し、
王都に宮廷魔術師として、職に就いた。
その頃魔王誕生の報が
情報として飛び込んできた。
ケンジと名乗る魔王が現れたのである。
私には分かった。
アドヴァンが魔王となるべき人間を異世界から召喚したのだと。
あの時、アドヴァンに触れた時に邪神の繋がりを感じてしまった。
阿修羅の魂と触れ合った時に邪神の一部の力が私に溶けた。
私は邪神に対抗する、魔王に対抗する唯一の方法『聖騎士召喚』を身に着けた。
それは魔王召喚と同じ手法。
繋がりがある私だから修得出来た異能なのだ。
最初に召喚したのは、冠城亘《かぶらぎ わたる》という名の若者だった。
彼は召喚の三要素である
①自己破産している
②アレルギー性鼻炎である
③歯が出ている
が必須である。
①は精霊との反応が強い証拠
②口呼吸のため、ガイアとの息吹をダイレクトに感じること
③自己破産するほど欲求が強く理性が効かないこと
これらが合致しなくてはならない。
ところが、最初の亘は
全て合致しなかった。
その為、他の人々より老化しないという副産物が生まれてしまった。
彼にパティーンという名を与えた。
パティーンに次世代の聖騎士召喚術を施した。
邪神を倒すためには聖騎士が必要だと。
そして、私も邪神の命が潰えぬ限り生き長らえるという呪いが付いてしまった。
正確には死ぬが、また生き返るのだ。
二百年毎に私は生き返る。
とても苦痛な日々。
だが、1つだけ良かった事がある。
召喚した者は召喚した術者が死ななければ何度でも蘇る。
これもまた邪神の呪いなのだが、
私はこの二百年の一時的な死により、召喚したパティーンは天に召される事が出来たのである。
何度目かの聖騎士の召喚があったが、
魔王も邪神も倒せない。
焦りだけ募る。
そんな中、私は囚われた。
貿易都市として発展しているセンダー王国。
その王都カンデンブルグ8世は、
元聖騎士カンデンブルグ1世の子孫である。
私は王国直属の宮廷魔術師として役職に就いていた。
ところが、腹心であるあの男が邪神の欠片だった。
つまり、私と同じように邪神の魂を共有する者がいる。
そう。センダー王国宰相マンダリン。
あいつだ。
私は同じ欠片であるマンダリンに支配されてしまった。
心が支配されている。
もう数百年生きている。
アドヴァン。あなたを助けてあげれない。
涙が留めなく流れてくる。
その時、静かに時は動く。
二人の聖騎士が同時に誕生した。
あってはならないこと。
時の理が明らかに今までとは違う。
終焉へと幕は動く。
アドヴァンとシローヌの心は開放される時が来るのだろうか。
マーラは巡る。
想いを乗せて。遥かなる悠久の時を。
おわり。
跋扈していない時代。
魔王が存在していない世界。
マーラ。この世界マーラでの物語。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「おはよう!シローヌ。」
あ、アドヴァン。
幼馴染のアドヴァンだ。
隣の家に住んでいる男の子。
親同士が中が良くて、
物心付いた時から二人で遊んでいる。
「おはよう。アド。今日もいい天気ね」
アドが何かニヤニヤしてる。
ははぁーん。さては何か企んでる。
私はシローヌ。13歳。
アドも同じ。
私達が住む村は、トッポイ国の中でも
首都エギョマに近い港町。
幼い時から魚を採って暮らしてきた。
ホント魚くらいしか産業が無いんだけど、
とても長閑で緩い時間が流れてる。
今日は、学校も休みなので、
アドと街までお出かけしようかなと思ってたのに、
アイツ何かおかしいんだよね~?
「シローヌ。あのさー。
あそこの洞窟探検行かない?!」
えー!今日はお買い物付き合うって言ったじゃんか!!
ヤダよーー!
アドは学校で行くのを禁じられた
村の近くの洞窟を探検しに行こう
と言ってるのだ、このあんぽ柿は。
洞窟は村の海岸から、
少し岩場を越えた先にあるのは知ってる。
私達は小さい頃から泳ぎに慣れてるので岩場を超えるのは問題ないんだけど学校からは、
あの洞窟は昔から探検禁止と言われていた。
でも興味あるよね。
何で行っちゃ駄目なのかな。
よし!行こうかっ。
何気なく言ったこの言葉。
引き返せるなら引き返したい。
私達は幼すぎた。
そして、この行為が世界を変えた。
洞窟に着いた。外はうだるような暑さなのに、
洞窟内はキーンと冷え切っている。
泳いでここに辿り着いたので、
尚更体が冷える。
「ちょっと入口で身体を温めないと。寒いよ。」
「そうだな」
洞窟内に落ちていた漂流物の枯れ木を
適当に折って炎の魔法を使う。
「すげーな。魔法使えんのかよー。」
アドはアホみたいに喜んでいる。
こいつは、ホントバカだなー
と思いながら火に当たる。
幼馴染なんだけど、アドは兄弟のようで
正直恋愛対象ではない。
弟みたいなもんだ。
だから二人っきりになっても
ドキドキなんか……あれ?
ドキドキするな。
やばっ。なんでコイツなんか
意識しちゃうんだろ。
生まれも育ちもこの土地きっての
漁師のアドヴァン。
お父さんはこの村の網元。
アドヴァンは、将来お父さんの意志をついで
立派な漁師になると言っていた。
私は、こんな魚臭い村から早く出て
将来王族に仕えて、
魔法研究の職に就きたいと思っていた。
父は昔、王家に仕えていたらしい。
母も宮廷魔法使いだったと聞いたことがある。
だから炎の魔法なんて、
朝飯前とはこのことなのよねー。
グルルル……。
私じゃないわよ、このお腹の音は。
「ちょっと!お腹空いてんの?」
少しドキドキした自分が恥ずかしくなった。
色気より食い気か。
私は光の矢を作り、海に向かって投げる。
その光の矢は海に刺さると雷光なのか、
『バチッ』と光った。
すると、数匹の魚が浮かんでくる。
「アド。魚持つの嫌だから
あなた取ってきなさい。」
はーいと言いながら魚を取ってきて
器用に漂流した枯木をナイフで削り、
串焼きにして炎で焼く。
あーいい匂い。
香ばしい魚の臭いが鼻孔をくすぐる。
4匹の魚の内、3匹もアドは食べ尽くす。
私は一匹を丁寧に食べていく。
「よし!お腹も満腹!
さあ、探検開始と行きますか!」
アドは張り切ってる。
単純だなー。なんて思いながら
アドの後ろを着いていく。
奥へ奥へと進むと、岩戸が見えた。
古代文字?見たこともない文字で
扉が閉まっている。
「なんだよ。行き止まりかよ」
アドは溜息をついて答えてる。
まって。お母さんから聞いたことがある。
古代文字の封印。
決して開けてはならない封印。
お伽噺《ときばなし》かと思ってた。
小さい頃に聞かせてもらったお伽噺。
天界で神々の争いがあった。
阿修羅天神と帝釈天の争いである。
破れた阿修羅神は、
邪神として封印されたと。
神でありながら邪神に貶される。
阿修羅は一族の名誉、
威神のために戦ったが敗れた。
その無念さ、悔しさ、
恨みはマイナスのソウルパワーとして膨張し、
その魂ごと封印されたと言う。
まさか、これが?
この扉の先に阿修羅神が?
私は無意識に口を衝いていた。
母から教えて貰った言葉。
封印を解く呪文。
「ワタシノナマエハノンタロウドウシテコンナニイーオトコ、ドウシテコンナニイーオトコ。」
岩戸が開く。
ガ、ガガ…………。
「何でお前知ってるの?!」
アドヴァンは私に聞いてくる。
ほ、ホントに開くなんて思わなかった。
ん?何か見える。
奥に祭壇がある。
あ!なんか光ってる。
「行ってみようぜ!」
アドはさっさと先に進んでいく。
お前はバカか。
何か罠とかあったらどうすんの?
「アド!ちょっと待って!」
私も慌てて着いていく。
岩戸の先には、怪しい宝箱がある。
宝飾されて紫色に光っている。
「開けちゃおうぜ!」
アドヴァンは私の制止を振り切って
宝箱を開ける。
特大な瘴気が周囲を襲う。
箱の中身は何も無かった。
『童よ。礼を言うぞ。
妾をよくぞ開放した。』
地の底から震える恐ろしい声が
洞窟内に木霊する。
ヤバい。私達はヤバいのを
封印から解いてしまった!
アド!!
アドヴァンは立ち尽くしている。
「アドヴァン!帰ろう。ここは危な……」
アドヴァンの手を引いて逃げようとした矢先、
アドヴァンの口からは
アドヴァンではない何者かの声を放つ。
「この者を依り代に使わせて貰うぞ。
私はこの世界の覇者となる」
アドヴァンの目が赤く光る。
阿修羅神と思われる黒い影が
アドヴァンの背後に映る。
一瞬アドヴァンの目が、
あの優しいアドの目に戻る。
「逃げ……ろ。シロー……ヌ」。
最後の力なのかアドヴァンの目から涙がこぼれ落ちる。
アドヴァン。アドヴァン!
戻ってきて!
私は必死に呼びかける。
アドヴァンは阿修羅神の力を最後に抑え込み、私を圧縮した衝撃波を放ち、
その衝撃で海岸まで押し戻す。
ギ、ギギ…ガガガガ……。
岩戸は閉まる。
最後に見たアドヴァンは笑っていた。
それから、世界の理が変わった。
世界に阿修羅の負のソウルパワーである魔物=アヤカシが跋扈した。
アヤカシに襲われ殺された者はアヤカシとなる。
アヤカシは見境なく人々を襲う。
そしてアヤカシの数はどんどん増えていくのであった。
あの後私は、大人達を連れて
岩戸の洞窟へ戻った。
しかし、もうアドヴァンは
既に洞窟にはいなかった。
最後に私を逃してくれた優しいアドヴァン。
必ず助け出す。何としてでも。
アドヴァンの消息は
依然掴めなかった。
それから数年魔法学を勉強しまくった。
もしかしたら邪神開放の術が、
方法があるかもしれないと思ったから。
でも、そんな都合の良い魔法は
見当たらなかった。
私は古代の魔法と現代魔法を研究し、
王都に宮廷魔術師として、職に就いた。
その頃魔王誕生の報が
情報として飛び込んできた。
ケンジと名乗る魔王が現れたのである。
私には分かった。
アドヴァンが魔王となるべき人間を異世界から召喚したのだと。
あの時、アドヴァンに触れた時に邪神の繋がりを感じてしまった。
阿修羅の魂と触れ合った時に邪神の一部の力が私に溶けた。
私は邪神に対抗する、魔王に対抗する唯一の方法『聖騎士召喚』を身に着けた。
それは魔王召喚と同じ手法。
繋がりがある私だから修得出来た異能なのだ。
最初に召喚したのは、冠城亘《かぶらぎ わたる》という名の若者だった。
彼は召喚の三要素である
①自己破産している
②アレルギー性鼻炎である
③歯が出ている
が必須である。
①は精霊との反応が強い証拠
②口呼吸のため、ガイアとの息吹をダイレクトに感じること
③自己破産するほど欲求が強く理性が効かないこと
これらが合致しなくてはならない。
ところが、最初の亘は
全て合致しなかった。
その為、他の人々より老化しないという副産物が生まれてしまった。
彼にパティーンという名を与えた。
パティーンに次世代の聖騎士召喚術を施した。
邪神を倒すためには聖騎士が必要だと。
そして、私も邪神の命が潰えぬ限り生き長らえるという呪いが付いてしまった。
正確には死ぬが、また生き返るのだ。
二百年毎に私は生き返る。
とても苦痛な日々。
だが、1つだけ良かった事がある。
召喚した者は召喚した術者が死ななければ何度でも蘇る。
これもまた邪神の呪いなのだが、
私はこの二百年の一時的な死により、召喚したパティーンは天に召される事が出来たのである。
何度目かの聖騎士の召喚があったが、
魔王も邪神も倒せない。
焦りだけ募る。
そんな中、私は囚われた。
貿易都市として発展しているセンダー王国。
その王都カンデンブルグ8世は、
元聖騎士カンデンブルグ1世の子孫である。
私は王国直属の宮廷魔術師として役職に就いていた。
ところが、腹心であるあの男が邪神の欠片だった。
つまり、私と同じように邪神の魂を共有する者がいる。
そう。センダー王国宰相マンダリン。
あいつだ。
私は同じ欠片であるマンダリンに支配されてしまった。
心が支配されている。
もう数百年生きている。
アドヴァン。あなたを助けてあげれない。
涙が留めなく流れてくる。
その時、静かに時は動く。
二人の聖騎士が同時に誕生した。
あってはならないこと。
時の理が明らかに今までとは違う。
終焉へと幕は動く。
アドヴァンとシローヌの心は開放される時が来るのだろうか。
マーラは巡る。
想いを乗せて。遥かなる悠久の時を。
おわり。
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