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【外伝】13歳の狼獣人族シマジは聖騎士の従者になりたい!
露天の誓い
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聖騎士ハサンの死の噂が、
ここヒガネ近隣にも届く。
冬の木枯らし吹き荒む、外界の気温以上に、
シマジの背中に冷たい物を感じる。
「聖騎士ハサン様が亡くなったようだ。
それでもお前は行くのか?」
日課の修行を終え、
囲炉裏に当たりながら、考える。
目的を失った。
まさか聖騎士が召喚早々に死んでしまうとは。
敵将の名前は『魔将軍ザン』だと云う。
老師プロットはシマジに云う。
「温泉でも、入りに行くか。」
ヤマゲータ地方は古くから
温泉が湧くことで知られている。
少しばかり行くと、村の共同浴場がある。
その先に秘湯と呼ばれる露天風呂がある。
プロットは、雪がしんしんと降り積もる
脇道を歩きながら秘湯に向かう。
秘湯には、マシカや猿や、ドテチンも
お風呂に入っていた。
人間の姿を見ると、
アヤカシも獣も一瞬ビクッとはしたものの、
あまりに温いのか、温泉から出たくないのか、襲っては来なかった。
雪は静かに、静かに降り続ける。
プロットは「あ、あぁ…」
と肩まで浸かりながら手拭いで顔を擦る。
シマジも、師匠に習って「う、ぁ……」と
思わず声を出す。
聖騎士は死んだ。
しかし、今更引き返すことは出来ない。
プロットは昔、シマジの父親タクトと
ここに来たのを思い出していた。
タクトも師匠と風呂に入った時に
一大決心をしていた。
「師匠、俺結婚します。」
当時のタクトが、母ローラと結婚するとプロットに報告したのも、この露天だった。
当時も、こんな雪がチラチラ舞い散る
冬の日だった。
「お前はどうするんだ?
聖騎士はもうおらんぞ。」
プロットはシマジの決意を探るように尋ねる。
本当にどうする?
いや、聖騎士がいないなら、
俺がポックントン拳で魔王スマターを倒してやる!
「師匠、俺はやります。
ポックントン拳を極めます」
思わず、ドテチンも二度見するくらい
大きな声でプロットに宣言する。
「ふーむ。修行は厳しいぞ。
では上がるぞ。」
プロットは風呂から立ち上がり背中で、魅せる。付いてこいと。
⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃
それから二ヶ月。
毎日死ぬ思いで、模擬戦、くるみ割り、
水瓶特訓、型の習得。
飯炊きから洗濯、師匠のマッサージまで
ありとあらゆる修行を行う。
そして免許皆伝の試合の日が来た。
「今からお前は目隠しをして、
迫りくる敵を排除しなければならない。
よいな。その者を倒せば主は免許皆伝だ」
プロットは諭す。
静か。サラサラと、竹林が風になびく音
が聞こえる。ヒュー……。
風の音も静かである。
・・・!殺気!
シマジは空を舞い拳を振るう。
「ぐわっ!!」
よし!手応えあった。やったぞ!
目隠しを外すと、
胸を突かれたお師さんの姿が。
致命傷だ。
確かに心の臓を的確に突いていた。
お師さんの胸から出血が止まらない。
「な!何故。」
シマジは狼狽える。
馬鹿な!敵とは、お師さんが?
「ポックントン拳は一子相伝。
伝承者は次の伝承者に倒される運命。
生きよ、そして全うせよ、使命……を」
プロットはシマジの手の中で息絶える。
どんどんお師さんは、シマジの腕の中で
冷たくなっていく。
お、お、お、お師さぁぁぁぁぁぁん!
竹林にシマジの声が響きわ語る。
愛深きゆえに苦しむのか!
愛故に!!
次回へ続く
ここヒガネ近隣にも届く。
冬の木枯らし吹き荒む、外界の気温以上に、
シマジの背中に冷たい物を感じる。
「聖騎士ハサン様が亡くなったようだ。
それでもお前は行くのか?」
日課の修行を終え、
囲炉裏に当たりながら、考える。
目的を失った。
まさか聖騎士が召喚早々に死んでしまうとは。
敵将の名前は『魔将軍ザン』だと云う。
老師プロットはシマジに云う。
「温泉でも、入りに行くか。」
ヤマゲータ地方は古くから
温泉が湧くことで知られている。
少しばかり行くと、村の共同浴場がある。
その先に秘湯と呼ばれる露天風呂がある。
プロットは、雪がしんしんと降り積もる
脇道を歩きながら秘湯に向かう。
秘湯には、マシカや猿や、ドテチンも
お風呂に入っていた。
人間の姿を見ると、
アヤカシも獣も一瞬ビクッとはしたものの、
あまりに温いのか、温泉から出たくないのか、襲っては来なかった。
雪は静かに、静かに降り続ける。
プロットは「あ、あぁ…」
と肩まで浸かりながら手拭いで顔を擦る。
シマジも、師匠に習って「う、ぁ……」と
思わず声を出す。
聖騎士は死んだ。
しかし、今更引き返すことは出来ない。
プロットは昔、シマジの父親タクトと
ここに来たのを思い出していた。
タクトも師匠と風呂に入った時に
一大決心をしていた。
「師匠、俺結婚します。」
当時のタクトが、母ローラと結婚するとプロットに報告したのも、この露天だった。
当時も、こんな雪がチラチラ舞い散る
冬の日だった。
「お前はどうするんだ?
聖騎士はもうおらんぞ。」
プロットはシマジの決意を探るように尋ねる。
本当にどうする?
いや、聖騎士がいないなら、
俺がポックントン拳で魔王スマターを倒してやる!
「師匠、俺はやります。
ポックントン拳を極めます」
思わず、ドテチンも二度見するくらい
大きな声でプロットに宣言する。
「ふーむ。修行は厳しいぞ。
では上がるぞ。」
プロットは風呂から立ち上がり背中で、魅せる。付いてこいと。
⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃⊂ロ⊃
それから二ヶ月。
毎日死ぬ思いで、模擬戦、くるみ割り、
水瓶特訓、型の習得。
飯炊きから洗濯、師匠のマッサージまで
ありとあらゆる修行を行う。
そして免許皆伝の試合の日が来た。
「今からお前は目隠しをして、
迫りくる敵を排除しなければならない。
よいな。その者を倒せば主は免許皆伝だ」
プロットは諭す。
静か。サラサラと、竹林が風になびく音
が聞こえる。ヒュー……。
風の音も静かである。
・・・!殺気!
シマジは空を舞い拳を振るう。
「ぐわっ!!」
よし!手応えあった。やったぞ!
目隠しを外すと、
胸を突かれたお師さんの姿が。
致命傷だ。
確かに心の臓を的確に突いていた。
お師さんの胸から出血が止まらない。
「な!何故。」
シマジは狼狽える。
馬鹿な!敵とは、お師さんが?
「ポックントン拳は一子相伝。
伝承者は次の伝承者に倒される運命。
生きよ、そして全うせよ、使命……を」
プロットはシマジの手の中で息絶える。
どんどんお師さんは、シマジの腕の中で
冷たくなっていく。
お、お、お、お師さぁぁぁぁぁぁん!
竹林にシマジの声が響きわ語る。
愛深きゆえに苦しむのか!
愛故に!!
次回へ続く
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