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第十二章 大波乱サシマ国
第91話 ブブキ②
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俺はキングオークのブブキ。
ブブキ村の長だ。
元々は人間だった。
名前は……忘れた。
人間の記憶も忘れた。
ブブキ村はマーラの人々、
ゴブリンもオークも、
色んなアヤカシも冒険者も
色んな人種が楽しく暮らしてる。
何で俺がこの村の長になったのか?
……忘れた。
でも一人の婆さんがオレの心を溶かしてくれた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あの頃、俺は憎しみの心で満たされていた。
まだオークキングに成り立ての頃の話だ。
このブブキ村になる前の村を襲ったんだ。
逃げ惑う人々。
でも婆さんは逃げなかった。
「なんて悲しいのか、
何て悲しい魂なのか」と
俺の手を取って一緒に泣いてくれた。
涙は浄化なんて昔誰か言っていたのを思い出した。
嗚咽した。
何だか分からなかったけど、泣いた。
救われた。
オォォ………
ウォォォォン……。
恨みと憎しみは消えてしまった。
あんなに渦巻いていた怒りの炎は、
一人の老婆が救ってくれた。
目の見えない婆さん……。
あれから間もなくだった。
急に「胸が痛い」と苦しみだし、
本当にあっという間だった……。
「こらー!又お前はワシを殺そうとしてるじゃろーがぁ!」
ゴチン!
あ!又杖で殴ったな!
そうなんだよ。婆さんピンピンしてるんだ。この人は目が見えないが心で見てくれる、この世界のお母さんだ。
話を戻そう。
婆さんが、俺をハグして泣いて、
俺も婆さん、婆さんと泣くもんだから、
村の人々も次第に可笑しくなって
「なんで二人で泣いてんだよ!」
なんて受け入れてくれるようになった。
俺は村の力仕事を一気にこなし、
近くの森の木を薪や木材に加工し、
周辺の村や町に売る。
進んでアヤカシ退治もこなし、
冒険者としても名を上げる。
段々亜人や獣人、人間や、エルフ、アヤカシまでもが、この村に住み着くようになったんだ。
いつしか、俺は村のリーダーと後押しされて晴れて村長となった。
アヤカシで村長なんて、
マーラ世界初めての快挙なんじゃない?
ところが、面白く無いと思ったのがサシマの国王様だよ。
アヤカシが統治する村なんて許さん!
……とばかりに、兵を何千人と多数送り込んで来たんだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
バットン(=蝙蝠型のアヤカシ)や、
ガーゴイルの報告により、
大勢の兵士がブブキ村に来ていると教えてくれる。
村の子供達は倉庫の下にある
穀物蔵に隠れるよう指示。
村の男達(アヤカシ含む)は揃って迎撃するよう指示、更に術者達は魔法による防御を指示した。
特に片腕である幽鬼のジョージには
幽鬼愚連隊を編成。
幽鬼には物理攻撃は効かない。
可視化させるか、剣に銀のエンチャントを仕込むなどしないとダメージが通らない。
味方としては、とことん頼りになる。
「皆の者!立ち上がる時が来た!
王国の者共に我が村は決して怪我させはしない!
ブブキ村のお里して、オークキングとして死を賭して王国に立ち向かう!
死を恐れるな!正義は我々にある!」
ウウォォォッッ!!
士気は最高潮。
さあ!来やがれ!王国の兵士共!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「尖兵共が村に来ます!」
見張りの村人が叫ぶ!
「放てぇ!!」
見張り台と高台から火矢を放つ。
ヒュン!ヒュン!
ボォォォォ……!!
ぎゃあああ!!!
虚を突かれて兵士達は燃え上がり
退却する。
「深追いするな。まだ本隊が来る筈だ!」
やがて土煙を上げながら
後陣の騎馬兵が突進してくる。
数は500~1000はいるだろう。
「幽鬼愚連隊よ!
そなた達の力を見せつけよ!」
キェェェ!
詠唱を唱えると、幽鬼グールから編成される幽鬼隊の炎の嵐の大合唱が始まる!
ボゥ!
ボゥ!
ボゥ!
ボゥ!
連なる炎が、
愚連隊による紅蓮の嵐が、
騎馬隊を炎で包み上げる。
文字通り包み上がるのだ。
連なる炎は大きな豪炎となり、
昇り上がり、騎馬隊を大空へ
『焦がしながら舞い上げる』
正に炎の舞なのである。
その中でも王国の屈指の正規兵が
炎の中を突っ切って来る。
「任せろ!皆の者下るが良い!」
俺は練り上げた鋼の斧を大きく振りかぶる。
「我が渾身の大斧を喰らうがよい!
ブブキ流戦斧殺法『巨大竜巻宙威砲!!!!』」
ドドーーンッッッ!!
大きな戦斧からなる巨大竜巻が正規兵達を更なる上空へ押し上げ、やがて馬ごと
ドチャーーッ!
バシャッッッッ!
嫌な音がして皆踏み潰される。
風の昇流に加え、重力で圧する
オークキングとなったブブキの最大必殺技なのである。
「た、退却!!」
生き残った兵士達は皆散り散りに引き上げていくのであった。
「ようし!我々の勝利だ!」
ウォォォォ!!!!
歓声が地響きのように湧き上がる。
ブブキ村の長だ。
元々は人間だった。
名前は……忘れた。
人間の記憶も忘れた。
ブブキ村はマーラの人々、
ゴブリンもオークも、
色んなアヤカシも冒険者も
色んな人種が楽しく暮らしてる。
何で俺がこの村の長になったのか?
……忘れた。
でも一人の婆さんがオレの心を溶かしてくれた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あの頃、俺は憎しみの心で満たされていた。
まだオークキングに成り立ての頃の話だ。
このブブキ村になる前の村を襲ったんだ。
逃げ惑う人々。
でも婆さんは逃げなかった。
「なんて悲しいのか、
何て悲しい魂なのか」と
俺の手を取って一緒に泣いてくれた。
涙は浄化なんて昔誰か言っていたのを思い出した。
嗚咽した。
何だか分からなかったけど、泣いた。
救われた。
オォォ………
ウォォォォン……。
恨みと憎しみは消えてしまった。
あんなに渦巻いていた怒りの炎は、
一人の老婆が救ってくれた。
目の見えない婆さん……。
あれから間もなくだった。
急に「胸が痛い」と苦しみだし、
本当にあっという間だった……。
「こらー!又お前はワシを殺そうとしてるじゃろーがぁ!」
ゴチン!
あ!又杖で殴ったな!
そうなんだよ。婆さんピンピンしてるんだ。この人は目が見えないが心で見てくれる、この世界のお母さんだ。
話を戻そう。
婆さんが、俺をハグして泣いて、
俺も婆さん、婆さんと泣くもんだから、
村の人々も次第に可笑しくなって
「なんで二人で泣いてんだよ!」
なんて受け入れてくれるようになった。
俺は村の力仕事を一気にこなし、
近くの森の木を薪や木材に加工し、
周辺の村や町に売る。
進んでアヤカシ退治もこなし、
冒険者としても名を上げる。
段々亜人や獣人、人間や、エルフ、アヤカシまでもが、この村に住み着くようになったんだ。
いつしか、俺は村のリーダーと後押しされて晴れて村長となった。
アヤカシで村長なんて、
マーラ世界初めての快挙なんじゃない?
ところが、面白く無いと思ったのがサシマの国王様だよ。
アヤカシが統治する村なんて許さん!
……とばかりに、兵を何千人と多数送り込んで来たんだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
バットン(=蝙蝠型のアヤカシ)や、
ガーゴイルの報告により、
大勢の兵士がブブキ村に来ていると教えてくれる。
村の子供達は倉庫の下にある
穀物蔵に隠れるよう指示。
村の男達(アヤカシ含む)は揃って迎撃するよう指示、更に術者達は魔法による防御を指示した。
特に片腕である幽鬼のジョージには
幽鬼愚連隊を編成。
幽鬼には物理攻撃は効かない。
可視化させるか、剣に銀のエンチャントを仕込むなどしないとダメージが通らない。
味方としては、とことん頼りになる。
「皆の者!立ち上がる時が来た!
王国の者共に我が村は決して怪我させはしない!
ブブキ村のお里して、オークキングとして死を賭して王国に立ち向かう!
死を恐れるな!正義は我々にある!」
ウウォォォッッ!!
士気は最高潮。
さあ!来やがれ!王国の兵士共!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「尖兵共が村に来ます!」
見張りの村人が叫ぶ!
「放てぇ!!」
見張り台と高台から火矢を放つ。
ヒュン!ヒュン!
ボォォォォ……!!
ぎゃあああ!!!
虚を突かれて兵士達は燃え上がり
退却する。
「深追いするな。まだ本隊が来る筈だ!」
やがて土煙を上げながら
後陣の騎馬兵が突進してくる。
数は500~1000はいるだろう。
「幽鬼愚連隊よ!
そなた達の力を見せつけよ!」
キェェェ!
詠唱を唱えると、幽鬼グールから編成される幽鬼隊の炎の嵐の大合唱が始まる!
ボゥ!
ボゥ!
ボゥ!
ボゥ!
連なる炎が、
愚連隊による紅蓮の嵐が、
騎馬隊を炎で包み上げる。
文字通り包み上がるのだ。
連なる炎は大きな豪炎となり、
昇り上がり、騎馬隊を大空へ
『焦がしながら舞い上げる』
正に炎の舞なのである。
その中でも王国の屈指の正規兵が
炎の中を突っ切って来る。
「任せろ!皆の者下るが良い!」
俺は練り上げた鋼の斧を大きく振りかぶる。
「我が渾身の大斧を喰らうがよい!
ブブキ流戦斧殺法『巨大竜巻宙威砲!!!!』」
ドドーーンッッッ!!
大きな戦斧からなる巨大竜巻が正規兵達を更なる上空へ押し上げ、やがて馬ごと
ドチャーーッ!
バシャッッッッ!
嫌な音がして皆踏み潰される。
風の昇流に加え、重力で圧する
オークキングとなったブブキの最大必殺技なのである。
「た、退却!!」
生き残った兵士達は皆散り散りに引き上げていくのであった。
「ようし!我々の勝利だ!」
ウォォォォ!!!!
歓声が地響きのように湧き上がる。
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