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第十一章 六道輪廻編

第76話 女盗賊フィットとの一夜

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「ハデル!ありがとう!」
俺は転移の術で消えゆくあいつに
謝意を伝える。

ジンタンは相当落ち込んでいる。

そりゃそうだ。
妖刀の魔力とはいえ、
味方に切りかかってきたのだから。

「ジンタン。何があったのか教えてくれるか?」

項垂うなだれているジンタンに
ハサンは声をかける。

「ハサン様、実は……」

ジンタンが斥候として諸国へ邪神アドヴァンの動向を探るべく出立して間もない頃、

ハサンに近づいてくる女がいた。

「魔将軍アスタロット?」

首を振りながら、ジンタンは答える。

当時、ジンタンはギルドで情報を得ていた。

ギルドマスターや、冒険者に邪神に繋がる情報を様々な町で情報収集していた。

そんな矢先、トビンの町で会ったのがフィットという女だった。

彼女はシーフであり、冒険者だった。
歳の頃は18歳頃?まだ『あどけない』顔をしていた。

様々な町で依頼をこなしていきながら、時にアヤカシを打倒していく。

ジンタンの剣さばきは、並のアヤカシ等造作もなく斬る。

特に妖刀ニヒルの圧倒的な切れ味。


どうやら、その様子を見られていたようだ。

「あんた強いね?パーティ組まない?」
フィットがパーティの誘いをジンタンにしてくる。

いや。俺は斥候中だから……
面倒だな。断るか。

「すみません。生憎あいにくパーティは募ってないし、私は冒険者じゃないんです」

そう断るも、しつこく食い下がる。

「いいじゃん。女ひとり旅は何かと大変なのよ。頼むよ。報酬は折半でいいから」

まあ、クエストを受注しながら、情報を探るのも良いかとフィットとパーティを組むことにした。

トビンの町でクエストをこなして、宿に帰る。

部屋は別々に取った筈だったのに、
フィットは「一緒の部屋でいいよ」という。

僕もついに童貞卒業かな?
ドキドキ。お風呂入ってこようかな。
いや、この場合一緒に洗いっこしない?
とか言おうかな。

急にドギマギしてたら、
フィットからツッコミを入れてくる。

「バカ!宿代が勿体無いからよ!
覗いたら刺すからネ!
それに、あんた先走りすぎて
テント張ってるよ。
女のコ引くよ、それじゃ」

あ、そうなの。
なーんだ。

勿論その後は何もなく、俺も昼間の疲れが出たのか、
ベッドに入り直ぐに寝入ってしまった。

『ゴトッ』

物音で目が覚める。

何の音?
長い旅路で、些細な音にも反応しちゃう。

ん!あれ?
暗がりに誰かいる。

あ!!
フィットが俺の妖刀ニヒルを持っている。

「バカ!その剣はお前が扱えるもんじゃない!」

既に遅かった。

フィットの目が血走る。

こ、これは妖刀に魅せられている。
咄嗟に剣の柄《つか》を掴み、
フィットを峰打ちし気絶させる。

柄を、触った筈なのに俺の指先から血が滴っている。

妖刀ニヒルは血を吸うかのように、血液を吸収する。

……そっから記憶無いです。

ジンタンは事の顛末を話してくれた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

なるほど。

ちょっとエッチな事考えてたから、その隙を女盗賊と剣に与えたな。

メイは不機嫌そうに頬を膨らましてる。

清いね。まあ、ともかく無事で良かった。

「ところでジンタン。そんな危険な妖刀をこの先も使い続けるのか?」

俺はジンタンに尋ねる。

「ハサン様。お許しください。
妖刀ニヒルを扱いきれなかったのは、私の不覚です。この剣が手元にあるのも、何かしら意味があるのだと思います。」

ジンタンは妖刀ニヒルを手放すつもりはないようである。

「分かった。2度はないぞ。」
「御意」

戒める為に、ジンタンに伝える。
そりゃそうだ。セシアが殺されたら、俺は復活出来ない。

魔王スマターも、邪神アドヴァンも
恐らく聖騎士が一人欠けたら勝てない。

とんでもない爆弾だぞ。

もう疲れた。今日は病魔の村、
いや元病魔の村のズンで休息を取ろう。

明日、又出立だ!

ズンの村長さんから宿屋代わりに
古民家を借り受け宿とする。

さあ、今日の夜ご飯は
なにかな?
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