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第十一章 六道輪廻編
第71話 病魔の村
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ジンタンは斥候として諸国の情報を掴ませる為、先行で旅立たせる。
じゃあ、気を付けるんだぞ。
ジンタンはしっかりして見えるが
まだ10代の若者だ。
きっと大丈夫だと思うが、
何かあったら直ぐに知らせるようにと
念話の指輪を渡す。
ハサンとセシア。
ハサンとハデル。
聖騎士と召喚士、聖騎士同士のような
強力な絆の会話は出来ないが、
念話の指輪は予めサインを決めておけば
モールス信号のような
やり取りが出来るのである。
5回鳴ったらピンチの合図。
ジンタンの髪の毛を布袋と呪符に結ぶ。
こうすると、ジンタンの気を辿り、
一瞬で転移するのである。
「では、行ってきます。」
気を付けてな!
なんとなく、親みたいな気持ちになり、
自然と涙ぐんでしまう。
妖刀ニヒルを携えたジンタンは、
そっとやそっとでピンチにはならないだろう。
しかし、心配しちゃう。
ジンタンが旅立ってから翌日、
今度は俺達が旅立つ。
行き先はサシマ国。
さあ、先ずは歩こう。
前へ進めだ!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ドワーフの里を出て、暫く歩く。
サシマ国へ向けて街道を歩くと、次第に街道は途切れ、道が舗装されなくなってきた。
やがて真っ直ぐ歩き続けると、旅の行商人と出会う。
「あんたら、冒険者かい?
ここから先は病魔に侵された村があるが
近づいたら駄目だ。いいかい?
立ち寄ったら駄目だぜ」
吐き捨てるように行商人は通り過ぎていった。
「病魔に侵された村?」
セシアとメイは顔を見合わせる。
どうする?
見捨てる?
それとも寄ってみる?
「行こう。義を欠いては聖騎士ではない!」
お~っ!とセシアとメイも手を叩く。
緊張感ないな(笑)。
行商人と過ぎ去ってから、しばし道を歩き進めると、
遠目からでも『ズン』と
重い雰囲気が感じられる村が見えた。
春先だから、天気はいい。
しかし、その村近くに進むと明らかに活気が無い。
子供達の遊び声も、生活臭すら感じない。
寂れた村。
村の入口の家々は廃墟となっており、
村を捨てたのか、亡くなったのか、
つい先程までその場にいたかのような家具も衣服も、
そのままの状態で残され、
ただ家主だけがいない状態で取り残されていた。
バタン……キイ……
バタン……キイ……
格子戸やドアが風に動かされ、
バタン、バタンと鳴る。
それがまた一層不気味さを増すのである。
「やばいわね。想像以上ね。」
「誰か生存者はいないんでしょうか?」
メイとセシアはお互いくっちゃべってる。
分かる。声に出さないと不安なんだ。
よっぽどアヤカシより怖い。
未だ昼だよ?
夜はお化け屋敷だぜ。
時折白骨化した遺体も見受けられ、
倶利伽羅剣で浄化していく。
「トホカミエミタメ……」
遺体は金色の粒子に姿を変えてキラキラと
浄化されていく。
その姿を見て、遺体だと思っていた老婆が声を上げる。
「あなたは聖騎士様ですか?」
「ぎゃゃーーーっ!出たーっ!」
生気も無く目も窪んで、座り込んでいた死体だと思っていた老婆が急に話しかけてきたもんだから、セシアとメイは驚いて、とんでもない声を出す。
おぉぉっ、俺もビビったよ。
気を取り直して老婆と話す。
「そうだ。俺は聖騎士ハサン。お婆さん。
先ずは治療だ。私の倶利伽羅剣の加護
を得るが良い」
トホカミエミタメ
トホカミエミタメ
元来『トホカミエミタメ』は祓いの祝詞。
みるみる内に老婆の顔に紅味が差していく。
「今だ、メイ。お婆さんにヒーリングを」
病気の元を祝詞で断ち切った為、
ヒールの呪文が功を奏《そう》す。
幾多の呪術師や祈祷師や魔法使いが、この地で術を駆使しても効果が無かったが、ハサンは誰に教わるでも無く老婆を快方へ導く。
よし!上手くいった!
流石俺!
自画自賛は大事。
自分を肯定するには先ずは自分すら肯定し
褒めることである。
「ありがたや~!聖騎士様。
この村はある時から急に呪われたのじゃ」
お婆さんは話してくれた。
ある日、村の一部から体中から黒い斑点が出て、発熱、嘔吐で苦しんで死んでいくという病が出た。
瞬く間に村に広がり、
あっという間に村は死の村へと化した。
先の証言通り、幾多の術者が村に来たが
改善するどころか術者にも病が蔓延して、ついに見捨てられた村となったのだ。
おかしい。元来マーラは魂の世界。
病気なんかある筈無い。
病気を創造した者がいる。
アヤカシだ。
知恵のあるアヤカシがいる。
ハサンの直感が教えてくれる
こいつはヤバイと。
じゃあ、気を付けるんだぞ。
ジンタンはしっかりして見えるが
まだ10代の若者だ。
きっと大丈夫だと思うが、
何かあったら直ぐに知らせるようにと
念話の指輪を渡す。
ハサンとセシア。
ハサンとハデル。
聖騎士と召喚士、聖騎士同士のような
強力な絆の会話は出来ないが、
念話の指輪は予めサインを決めておけば
モールス信号のような
やり取りが出来るのである。
5回鳴ったらピンチの合図。
ジンタンの髪の毛を布袋と呪符に結ぶ。
こうすると、ジンタンの気を辿り、
一瞬で転移するのである。
「では、行ってきます。」
気を付けてな!
なんとなく、親みたいな気持ちになり、
自然と涙ぐんでしまう。
妖刀ニヒルを携えたジンタンは、
そっとやそっとでピンチにはならないだろう。
しかし、心配しちゃう。
ジンタンが旅立ってから翌日、
今度は俺達が旅立つ。
行き先はサシマ国。
さあ、先ずは歩こう。
前へ進めだ!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ドワーフの里を出て、暫く歩く。
サシマ国へ向けて街道を歩くと、次第に街道は途切れ、道が舗装されなくなってきた。
やがて真っ直ぐ歩き続けると、旅の行商人と出会う。
「あんたら、冒険者かい?
ここから先は病魔に侵された村があるが
近づいたら駄目だ。いいかい?
立ち寄ったら駄目だぜ」
吐き捨てるように行商人は通り過ぎていった。
「病魔に侵された村?」
セシアとメイは顔を見合わせる。
どうする?
見捨てる?
それとも寄ってみる?
「行こう。義を欠いては聖騎士ではない!」
お~っ!とセシアとメイも手を叩く。
緊張感ないな(笑)。
行商人と過ぎ去ってから、しばし道を歩き進めると、
遠目からでも『ズン』と
重い雰囲気が感じられる村が見えた。
春先だから、天気はいい。
しかし、その村近くに進むと明らかに活気が無い。
子供達の遊び声も、生活臭すら感じない。
寂れた村。
村の入口の家々は廃墟となっており、
村を捨てたのか、亡くなったのか、
つい先程までその場にいたかのような家具も衣服も、
そのままの状態で残され、
ただ家主だけがいない状態で取り残されていた。
バタン……キイ……
バタン……キイ……
格子戸やドアが風に動かされ、
バタン、バタンと鳴る。
それがまた一層不気味さを増すのである。
「やばいわね。想像以上ね。」
「誰か生存者はいないんでしょうか?」
メイとセシアはお互いくっちゃべってる。
分かる。声に出さないと不安なんだ。
よっぽどアヤカシより怖い。
未だ昼だよ?
夜はお化け屋敷だぜ。
時折白骨化した遺体も見受けられ、
倶利伽羅剣で浄化していく。
「トホカミエミタメ……」
遺体は金色の粒子に姿を変えてキラキラと
浄化されていく。
その姿を見て、遺体だと思っていた老婆が声を上げる。
「あなたは聖騎士様ですか?」
「ぎゃゃーーーっ!出たーっ!」
生気も無く目も窪んで、座り込んでいた死体だと思っていた老婆が急に話しかけてきたもんだから、セシアとメイは驚いて、とんでもない声を出す。
おぉぉっ、俺もビビったよ。
気を取り直して老婆と話す。
「そうだ。俺は聖騎士ハサン。お婆さん。
先ずは治療だ。私の倶利伽羅剣の加護
を得るが良い」
トホカミエミタメ
トホカミエミタメ
元来『トホカミエミタメ』は祓いの祝詞。
みるみる内に老婆の顔に紅味が差していく。
「今だ、メイ。お婆さんにヒーリングを」
病気の元を祝詞で断ち切った為、
ヒールの呪文が功を奏《そう》す。
幾多の呪術師や祈祷師や魔法使いが、この地で術を駆使しても効果が無かったが、ハサンは誰に教わるでも無く老婆を快方へ導く。
よし!上手くいった!
流石俺!
自画自賛は大事。
自分を肯定するには先ずは自分すら肯定し
褒めることである。
「ありがたや~!聖騎士様。
この村はある時から急に呪われたのじゃ」
お婆さんは話してくれた。
ある日、村の一部から体中から黒い斑点が出て、発熱、嘔吐で苦しんで死んでいくという病が出た。
瞬く間に村に広がり、
あっという間に村は死の村へと化した。
先の証言通り、幾多の術者が村に来たが
改善するどころか術者にも病が蔓延して、ついに見捨てられた村となったのだ。
おかしい。元来マーラは魂の世界。
病気なんかある筈無い。
病気を創造した者がいる。
アヤカシだ。
知恵のあるアヤカシがいる。
ハサンの直感が教えてくれる
こいつはヤバイと。
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