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第十章 幻夢

第69話 マーラの普通の人々

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あー、朝だ。
コケコウ(※ニワトリのような鶏)の鳴き声で目が覚める。

コケーコウッッッ!

陽の光が眩しく、
小鳥達の囀りも聞こえてくる。

あー。気持ちいい朝だな。

「あなた。早く起きてご飯だよ」

母ちゃんが、いつも通り起こしてくる。

あー。分かったよ。
うるさいなー。

俺の名はタロサ。45歳のおじさんよ。

ここはカントン国の
山間やまあいにある
シンセイ地方の村、ヤビツ。

小麦を栽培し、時には猟師としてマシカ(※鹿のような魔物)や、ドテチン(※イノシシのような魔物)、熊や鹿や狸、イノシシ等を狩猟して、生計せいけいを立てている。

皮を鞣《なめ》して毛皮にしたり、
肝なんかは薬になるんだぜ?!

知ってた?

これを街の方まで売りに行くんだ。

特に熊や、ドテチンの肝は貴重で滋養強壮じようきょうそうにいいらしい。

これをせんじて飲むと、
立ちどころにビンビンだぜ。

「ヤカンも持てる」んだぜ。
巷じゃあ、引っ張りだこよ。

さあ、朝食だ。

小麦をひいて薄く練ってクレープ状にして丸めたパン。
これを母ちゃんが、いつも焼いてくれる。

うちでは『トグロ』と呼んでる、このパン。

うめーんだよ。

これに、我が家の特性の山羊乳で作ったバターをふんだんに塗って食べる。

山羊のミルクを温かくして、
一緒に流し込むのが一番好きな食べ方。

あー!美味しかった!

さあ、ご飯食べたら仕事だ。
今日は小麦の刈入れの日。
ライ麦と大麦を作ってるんだが、
鎌で地道に刈っていくんだけど、これがとても辛い。

腰が痛くなるんだよね。

母ちゃんは薬作りが上手なので、
ポーションを幾つか持たせてくれるんだけど、まあキツイよね。

その日が終わると、ポーション飲んでも疲れが取れずに、バタンキューさ。

母ちゃんと、ねんごろなんて言う感じにはならないよ。

疲れちゃってね、

農民の生活は、過酷。
朝早くから起きて日没まで働く。

しかし、こんな働いても領主様に
「税金」として大分持って行かれてしまうんだよね。
トホホだよ。

持ち回りで近所の人の小麦畑を手伝うし、
うちの畑も手伝って貰う。

うちはお裾分けで、獣の肉や毛皮や薬を手伝ってくれた近所の人にも与える。

持ちつ持たれつなんだよね。

子供達も小さい。
息子と娘だ。

息子には、大きくなったら
罠の仕掛け方や、皮の鞣し方、
猟銃の打ち方を教えてあげようかな。


さあ、そんな訳でもう昼時だ。

昼は朝持っていったパンと、
ドテチンの肉の燻製さ。
これにチーズをかけて
農場でビールと一緒に一気に流し込む。

これを食べたら腹持ちもするのよ。

食べ終わってちょっと昼寝したら
午後の作業さ。

これを日没まで行う。

家に帰ったら、夕飯時だ。

夜飯は大概食卓に上がるのは
野菜のポタージュと、
パンとエールだ。

エールはビールの仲間でね。
疲れた体に効くんだよね。

我が家は猟師もしてるから、
月に数度はマシカの保存肉や、
ドテチンや熊肉のスープや鍋、
串焼きも食べるのさ。

皮の鞣し作業や、
薬を作ったりするのも 
寝る前が多いかな。

最近アヤカシが、里の付近まで出没してるって
里長が言ってたな。

アヤカシに襲われないように
子供達にも注意するよう
言い聞かせないとな。

風呂?そんなもん入らないよ。

体を、拭いて終わりさ。

さあ、明日も早い。
今日はもう寝よう。

明日はいいことあるかなー?
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