82 / 119
第十章 幻夢
第68話 希望の樹
しおりを挟む
もう一人の聖騎士ハデル。
彼は未だ聖騎士としての自覚を持っていない
召喚したメリーは思う。
私は大賢者パティーン最後の弟子。
パティーン様は死ぬ前にこう言っていた。
運命の螺旋を円環を断ち切るのは、
二人目の聖騎士なのだと。
何の陰我か、私が二人目の聖騎士を召喚した。
しかし、ハデルこと冠城武徳は聖騎士の条件を満たしていなかった。
そのイレギュラーなのか?
かつての聖騎士に無い
『貴皇帝』の鎧を召喚出来たのである。
だが、半端な召喚はハデルの心をコントロール出来なかった。
元来、召喚者の命令は絶対なのだが、
ハデルは召喚の呪縛とは無縁だったのである。
それは、ハサンも同じ。
聖騎士の条件から外れた為に、
三鈷剣を倶利伽羅剣へ神化させた。
これは歴代聖騎士が出来なかった行為。
言うなれば師匠であるパティーンもそうだ。原初の聖騎士として、召喚される予定だったと聞いた。
ところが、聖騎士の三要素の一つも当てはまらなかったが故に賢者として聖騎士を召喚する側になったのだ。
いやいや、何を今更。
ハデルの聖騎士の自覚の無さを問いただしてもしょうがない事。
でも、このままだと我がハデルパーティはバラバラ。
よし!ここは。
「ハデル。話がある。」
メリーはハサンに真剣に語りだすことにした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あー!嫌だ!
もう聖騎士なんかやりなくない!
俺は日本に置いてきた家族に会いたい!
まだ死んじゃいないだろう。
クソー。どうしたらいいんだ。
う、うぅぅ……。
大きな大樹の根本で
子供みたいに蹲り声を殺して泣いている俺。
悔しい。悲しい。
何で俺がこんな目に。
「ハデル。話がある。」
メリー?何だよ話しかけんじゃねぇ。
放っておいてくれ!
「お前は、もう元の世界には戻れない。お前の肉体は既に死んでいる」
知ってたよ。マーラは魂の世界。
俺は誰かにそう言って欲しかったんだよな。
もう戻れないあの幸せな過去に、
執着していた……。
ハサンの言葉を借りれば、
「今」に生きて無かった。
身体はマーラの世界にいたが、頭では幸せな日本の生活を常に描いていた。
魂の世界の筈なのに、心はここに無かった。
分かってる。
分かってるさ。
だが俺は一言。
「すまん、一人にしてくれ」
としか言えなかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ハデルは、どうやら泣き止んだみたい。
落ち着いているが、大樹に突っ伏したまま。
あの大樹は希望の樹と呼ばれる
ホーピンウッドだ。
きっとハデルの気持ちも、落ち着くだろう。
サマンサとシマジに声をかけ、
少し離れたところでハデルを見守ろう。
大丈夫。
あいつなら、きっと立ち直れる。
春の風が心地よい。
すると、ハデルは意を決して
立ちがってきた。
ん?何?
花見?
いいかもね。
希望の樹は白い花を咲かせている。
それはハデルから聞いていた
日本のサクラという花に似てるんだとか。
「皆で花見でもしましょう。
お酒を飲んでパーッとね!」
暖かい春の息吹が
涼やかに通り過ぎていった。
彼は未だ聖騎士としての自覚を持っていない
召喚したメリーは思う。
私は大賢者パティーン最後の弟子。
パティーン様は死ぬ前にこう言っていた。
運命の螺旋を円環を断ち切るのは、
二人目の聖騎士なのだと。
何の陰我か、私が二人目の聖騎士を召喚した。
しかし、ハデルこと冠城武徳は聖騎士の条件を満たしていなかった。
そのイレギュラーなのか?
かつての聖騎士に無い
『貴皇帝』の鎧を召喚出来たのである。
だが、半端な召喚はハデルの心をコントロール出来なかった。
元来、召喚者の命令は絶対なのだが、
ハデルは召喚の呪縛とは無縁だったのである。
それは、ハサンも同じ。
聖騎士の条件から外れた為に、
三鈷剣を倶利伽羅剣へ神化させた。
これは歴代聖騎士が出来なかった行為。
言うなれば師匠であるパティーンもそうだ。原初の聖騎士として、召喚される予定だったと聞いた。
ところが、聖騎士の三要素の一つも当てはまらなかったが故に賢者として聖騎士を召喚する側になったのだ。
いやいや、何を今更。
ハデルの聖騎士の自覚の無さを問いただしてもしょうがない事。
でも、このままだと我がハデルパーティはバラバラ。
よし!ここは。
「ハデル。話がある。」
メリーはハサンに真剣に語りだすことにした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あー!嫌だ!
もう聖騎士なんかやりなくない!
俺は日本に置いてきた家族に会いたい!
まだ死んじゃいないだろう。
クソー。どうしたらいいんだ。
う、うぅぅ……。
大きな大樹の根本で
子供みたいに蹲り声を殺して泣いている俺。
悔しい。悲しい。
何で俺がこんな目に。
「ハデル。話がある。」
メリー?何だよ話しかけんじゃねぇ。
放っておいてくれ!
「お前は、もう元の世界には戻れない。お前の肉体は既に死んでいる」
知ってたよ。マーラは魂の世界。
俺は誰かにそう言って欲しかったんだよな。
もう戻れないあの幸せな過去に、
執着していた……。
ハサンの言葉を借りれば、
「今」に生きて無かった。
身体はマーラの世界にいたが、頭では幸せな日本の生活を常に描いていた。
魂の世界の筈なのに、心はここに無かった。
分かってる。
分かってるさ。
だが俺は一言。
「すまん、一人にしてくれ」
としか言えなかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ハデルは、どうやら泣き止んだみたい。
落ち着いているが、大樹に突っ伏したまま。
あの大樹は希望の樹と呼ばれる
ホーピンウッドだ。
きっとハデルの気持ちも、落ち着くだろう。
サマンサとシマジに声をかけ、
少し離れたところでハデルを見守ろう。
大丈夫。
あいつなら、きっと立ち直れる。
春の風が心地よい。
すると、ハデルは意を決して
立ちがってきた。
ん?何?
花見?
いいかもね。
希望の樹は白い花を咲かせている。
それはハデルから聞いていた
日本のサクラという花に似てるんだとか。
「皆で花見でもしましょう。
お酒を飲んでパーッとね!」
暖かい春の息吹が
涼やかに通り過ぎていった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる