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第九章 光陰矢の如し

第59話 ゴッドハサン

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邪神アドヴァンは元は、
この世界の住人であった亜人アドヴァン。

そしてアドヴァンの身体を受肉し転生したのが、
阿修羅神であること。  

そして阿修羅神の一部が伝わり、
シローヌは聖騎士伝承の力を得たこと。

聖騎士も元は阿修羅神の欠片であると
ハデルはサリーから聞く。

首都跡地をおおう暗雲ある瘴気は晴れ渡っていく。

邪神を打ちはらうという事は、
即ち俺達聖騎士も、浄化されるという事。

即ちそれは、本当の肉体の死を意味していた。

元来、マーラの世界は魂の世界。
魂は不滅。次のステージに昇華するという意味を持つ。

当然、人間界の日本に残した家族とは、
もう会えない事を意味していた。

なんじゃ!そりゃ!
いきなり召喚されて、ハデルです。
魔王を倒せ、邪神を倒せ、
最終的には元の世界に帰れると思いきや、
邪神の欠片として浄化されろ?

ふざけるな!

ハデルは怒りに震える。

召喚士のメリーも、あたふたするだけで何も出来ない。

剣士サマンサ=サマンサ王女は内心気付いていたようだった。

サリーからの言葉を頷いていた。
恐らく、母である王女から既にそれとなく聞いていたのだろう。

「兎に角、ハサンに合流しましょう」
と声をかけてくるメリー。

「お前が召喚したんだろうが!」
怒りに声まで震える。

しまった。そこまで追い込まなくても。
あちゃー、言い過ぎたな。

でも、感情が抑えきれない。
そんなバカな話あるか?

俺の人生を滅茶苦茶にしやがって。

なんでハサンは平気なんだ?
そうだ。ハサンにも家族がいたはず。

やっぱりアイツに会おう。

「ごめん。メリー」
ハデルは、言い過ぎたねとメリーに謝る。

「私こそ、ハデルの気持ちを考えずにごめんなさい」
メリーは泣きじゃくる。

やば。泣かしちゃった。
ちょっと落ち着くのを待とう。

メリーが落ち着いたので
ハサンのオドを察知し、転移の魔法でハサンの所へ辿り着く。

「話があるんだ、ハサン。」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

お、ハデルだ。
どうやら、有益な情報が聞けたようだな。

「ハサン、実はな里で情報を集めたんだが……」

俺達はハデルからエレンの里で
娘サリーからの話を聞き入る。

そして、あのシローヌこそ
俺達聖騎士と召喚士を呼び寄せた
邪神阿修羅の一部と聞く。

そしてシローヌから呼ばれた
俺達聖騎士も、邪神阿修羅の一部なんだと。

ハデルは詰め寄る。

「納得出来るか!
俺は家族に会いたい。
お前はどうなんだ!ハサン!」

俺は静かに諭すように皆に伝える。

「これは決まっていたこと。
そして俺は聖騎士として使命を全うすると決めた以上、人間界の事には未練は無い。それよりも、この螺旋を断ち切れるなら、
それも俺の役目だと思う。」

聖騎士が同じ時代に二人召喚されたケースは無い。

もしかしたら、今マーラの世界での大きな節目を俺達は担ってるんじゃないのか?

そう、俺は皆へと意見を伝える。

「何故お前は割り切れるんだ!
そんなシナリオ俺は認めない!」
ハデルは怒りに我を忘れて、駆け出していく。

メリーや、サマンサ、シマジもハデルを追っていく。

「すいません」
メリーは俺達にお辞儀し、ハデルの元へ走っていった。

そうだよな。あれが正に普通の感覚。
我ながら達観してるよなと思う。

ハデルこそ主人公の感覚で、俺の立ち回りは老師とか仙人とか、神様みたいな役割の考えだよね、ふと思う。

でも、これもまたハデルにも俺にも気づきや成長の機会なんだと思う。

あいつの成り行きを見守ろう。
さて、どうするか?

「魔王に会いましょう」
今まで黙っていたセシアが話す。

魔王は既に邪神の尖兵に過ぎず、
今更会ってもしょうがなくね?

しかもどこにいんの?
色々思うところもあったけど、
先ずはセシアの意見を聞いてみた。

「何故魔王スマターに会う必要がある?」

セシアは召喚の術を教えてくれたのが
初代ハサンの妻スロリアからの伝承で、
セシアの一族に受け継がれたのだと言う。

魔王スマター=聖騎士マサフミは
命を3つに分けた。

その内の一つが三鈷剣=倶利伽羅剣であり、
後の2つはカブラギに分けられた。

だから、聖騎士として召喚される人間の姓が
「カブラギ」なんだと。

だから、元の命に還る為にスマターに会う必要があるのだと。

そして魔獣ヒババンゴの元聖騎士シオリ含む
全ての聖騎士が合体すれば、
邪神阿修羅=アドヴァンに勝つことができるのだとセシアは話す。

「その最後の合体魔法が『ゴッドハサン』。
ゴッドハサンを唱えれば
全てのになる」

それは、俺が俺で無くなる。
全てに還る技か。

事態は風雲急を告げるのであった。

次回へ続く
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