47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!

のんたろう

文字の大きさ
上 下
67 / 119
第八章 魔城の決戦

第54話 魔城の攻防②

しおりを挟む
魔将軍ダロムと配下のパティーンとの
決戦の火蓋は切って落とされた。

その緊迫の場面の最中、ハサンは思い出した。

ある日の電車での出来事。 
横浜まで遠出しようとした矢先、
未だ5歳の長男と私鉄に乗っている最中に
その事件は起きた。

長男が眠いというので優先席で寝かせて
私は隣に座る。

私の左隣りに長男、右隣りは化粧が
派手な20代前半位のギャルだった。

数分電車に揺られていると、付き添いの人を連れた杖をついたお爺さんが乗ってきて私の前に立った。

座りたかったのだろう。
当初は女の人に向かってわざと聞こえるように、
「今時の若い者は席を譲らんなー。」
とチラチラとギャルを見ながらボヤいていた。

私とて本来ならば老人に喜んで
席を譲るタイプの人間である。

しかし、状況が状況。
子供は寝てるし、寄りかかられたら大変だし私は「すいません」と会釈するに留めた。

老人は優しく「いいんですよ。
お子さん大変だよね」と仰ってくれた。

ギャルは関係ないと白を切り通し
スマホをずっと見ている。

「あー、足が痛い。
か弱い老人に席を譲らんのか。
あー足が痛い。座りたい。」

爺は子供のように、且つイライラしながらボヤく。しかも段々とアルデンテで。

ギャルは、ひたすら無視を決め込む。

終いには私に向かってイライラをぶつけ始めた。

「子供を載せて電車に乗るな」
「子供なんて立たせとけ」
「お前が譲れ」

付き添いの人が「まあまあお爺ちゃん」
と宥《なだ》めるがヒートアップする爺。

最終的に斜向いに座っていた中年女性が
「どうぞ」と席を譲ってくれて事無きを得た(笑)

当時はなんて理不尽なんだ!
老人は幼児化するなんてホントだな!
最初は優しかったのに、あれは嘘か!

なーんて思ってたんだけど、これも又私の世界であり、私であると後になって気付いたんだよね。

その老人を見ている時、私は老人になる。

この世界は私=全てであるということ。
そして全ては必然で起きていると知ったのだった。

老人が乗ってくるタイミングや、右隣にギャルが座っていた事も、子供が寝入ってしまう事も、
老人がキレる事も。

私が席を譲ることも出来たし、
途中で子供を連れて電車から降りる選択も出来た。

でもその後も恐らく決まっている。

そして、その事象に対して自分がどう感じるのかも、
これもまた意味付けをどう取るのかも自由なんだよね。

そんな訳で、今私が聖騎士として
魔将軍ダロムと立ち合うのも必然という訳。

「思いっきりやるぜ。恨みっこ無しだ」
ハサンは三鈷剣を構える。

「抜かせ、こちらは魔王軍の威信にかけてお前を止める。覚悟するんだな」

魔剣エリザベートを抜刀して青眼に構える
魔将軍ダロム。

一瞬の隙をついてダロムは強引に突っ込んできた。

魔剣と霊剣が交差する!

ガッキィィィィィィン!!
金属音が城内に木霊する。

金剛夜叉明王へ化身した
ハサンのパワーに押し負けない強さ。

「我が魔剣エリザベートの力を思う存分見せてくれよう。」

剣先が、幾重にも重なって見える。
その剣先一つが蛇に変わる。

う、うおっ。危ない。

しかも、蛇のような切っ先は、
ただ真っすぐではなく、鞭のように撓る。


ガキッッッッッ!


三鈷剣と魔剣の交差で火花が散る。

痛ッ!重い。受けるだけでもキツイ。

「遊びはこれまで。我が剣の真髄をとくと見よ!
魔将軍ダロムの秘奥義
『ダークネスファイブゥゥゥゥゥゥ!!』」

魔剣から放出される大きな巨大蛇の瘴気が
5体ハサンに向かって放出されるのが分かる。

駄目だ、避けられない。
三鈷剣で受けるしかない。


ガギッ…………!
ピキッ…………!

パキンッ!!

三鈷剣は折れた。
無敵の霊剣三鈷剣は折れた。

「ぐはっ!」

そればかりか、ハサンはダークネスファイブをモロに受けて城壁に吹っ飛ばされる。

壁に大きな音を立て突っ込むハサン。
爆音が鳴り響き、壁の石煙が
モウモウと辺り一面に広がる。

き、効いた。今ので化身の術は解けた。
しかも、歴代ハサンが使ってきた
霊剣三鈷剣が折れた。

ここまで強いのか。
俺は何も出来ないのか。

悔しい。力が欲しい。
魔将軍ダロムに勝つ力が。

負けたくない。
ここで終われない。

俺はやるだけの事を、まだやりきってない。

負けるな。負けるな。負けるな。
俺は立てる。まだやれる。

燃やせ!心の小宇宙を。
内在神を力に変えよ。

ハサンから、少しずつユラユラと
赤白いソウルパワーが宿る。

それは段々と大きくなり、やがて真言を唱えずして不動明王への姿へ化身する。


折れた三鈷剣も又、ユラユラと光を放ち始め、
やがてソウルパワーは、
三鈷剣の全身を覆っていく。


お、おお……。
ハサンも驚いた。

三鈷剣のソウルパワーは
全身を覆い形を変えていく。


こ、これは。
倶利伽羅剣《くりからけん》!

次回へ続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...