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第八章 魔城の決戦
第54話 魔城の攻防②
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魔将軍ダロムと配下のパティーンとの
決戦の火蓋は切って落とされた。
その緊迫の場面の最中、ハサンは思い出した。
ある日の電車での出来事。
横浜まで遠出しようとした矢先、
未だ5歳の長男と私鉄に乗っている最中に
その事件は起きた。
長男が眠いというので優先席で寝かせて
私は隣に座る。
私の左隣りに長男、右隣りは化粧が
派手な20代前半位のギャルだった。
数分電車に揺られていると、付き添いの人を連れた杖をついたお爺さんが乗ってきて私の前に立った。
座りたかったのだろう。
当初は女の人に向かってわざと聞こえるように、
「今時の若い者は席を譲らんなー。」
とチラチラとギャルを見ながらボヤいていた。
私とて本来ならば老人に喜んで
席を譲るタイプの人間である。
しかし、状況が状況。
子供は寝てるし、寄りかかられたら大変だし私は「すいません」と会釈するに留めた。
老人は優しく「いいんですよ。
お子さん大変だよね」と仰ってくれた。
ギャルは関係ないと白を切り通し
スマホをずっと見ている。
「あー、足が痛い。
か弱い老人に席を譲らんのか。
あー足が痛い。座りたい。」
爺は子供のように、且つイライラしながらボヤく。しかも段々とアルデンテで。
ギャルは、ひたすら無視を決め込む。
終いには私に向かってイライラをぶつけ始めた。
「子供を載せて電車に乗るな」
「子供なんて立たせとけ」
「お前が譲れ」
付き添いの人が「まあまあお爺ちゃん」
と宥《なだ》めるがヒートアップする爺。
最終的に斜向いに座っていた中年女性が
「どうぞ」と席を譲ってくれて事無きを得た(笑)
当時はなんて理不尽なんだ!
老人は幼児化するなんてホントだな!
最初は優しかったのに、あれは嘘か!
なーんて思ってたんだけど、これも又私の世界であり、私であると後になって気付いたんだよね。
その老人を見ている時、私は老人になる。
この世界は私=全てであるということ。
そして全ては必然で起きていると知ったのだった。
老人が乗ってくるタイミングや、右隣にギャルが座っていた事も、子供が寝入ってしまう事も、
老人がキレる事も。
私が席を譲ることも出来たし、
途中で子供を連れて電車から降りる選択も出来た。
でもその後も恐らく決まっている。
そして、その事象に対して自分がどう感じるのかも、
これもまた意味付けをどう取るのかも自由なんだよね。
そんな訳で、今私が聖騎士として
魔将軍ダロムと立ち合うのも必然という訳。
「思いっきりやるぜ。恨みっこ無しだ」
ハサンは三鈷剣を構える。
「抜かせ、こちらは魔王軍の威信にかけてお前を止める。覚悟するんだな」
魔剣エリザベートを抜刀して青眼に構える
魔将軍ダロム。
一瞬の隙をついてダロムは強引に突っ込んできた。
魔剣と霊剣が交差する!
ガッキィィィィィィン!!
金属音が城内に木霊する。
金剛夜叉明王へ化身した
ハサンのパワーに押し負けない強さ。
「我が魔剣エリザベートの力を思う存分見せてくれよう。」
剣先が、幾重にも重なって見える。
その剣先一つが蛇に変わる。
う、うおっ。危ない。
しかも、蛇のような切っ先は、
ただ真っすぐではなく、鞭のように撓る。
ガキッッッッッ!
三鈷剣と魔剣の交差で火花が散る。
痛ッ!重い。受けるだけでもキツイ。
「遊びはこれまで。我が剣の真髄をとくと見よ!
魔将軍ダロムの秘奥義
『ダークネスファイブゥゥゥゥゥゥ!!』」
魔剣から放出される大きな巨大蛇の瘴気が
5体ハサンに向かって放出されるのが分かる。
駄目だ、避けられない。
三鈷剣で受けるしかない。
ガギッ…………!
ピキッ…………!
パキンッ!!
三鈷剣は折れた。
無敵の霊剣三鈷剣は折れた。
「ぐはっ!」
そればかりか、ハサンはダークネスファイブをモロに受けて城壁に吹っ飛ばされる。
壁に大きな音を立て突っ込むハサン。
爆音が鳴り響き、壁の石煙が
モウモウと辺り一面に広がる。
き、効いた。今ので化身の術は解けた。
しかも、歴代ハサンが使ってきた
霊剣三鈷剣が折れた。
ここまで強いのか。
俺は何も出来ないのか。
悔しい。力が欲しい。
魔将軍ダロムに勝つ力が。
負けたくない。
ここで終われない。
俺はやるだけの事を、まだやりきってない。
負けるな。負けるな。負けるな。
俺は立てる。まだやれる。
燃やせ!心の小宇宙を。
内在神を力に変えよ。
ハサンから、少しずつユラユラと
赤白いソウルパワーが宿る。
それは段々と大きくなり、やがて真言を唱えずして不動明王への姿へ化身する。
折れた三鈷剣も又、ユラユラと光を放ち始め、
やがてソウルパワーは、
三鈷剣の全身を覆っていく。
お、おお……。
ハサンも驚いた。
三鈷剣のソウルパワーは
全身を覆い形を変えていく。
こ、これは。
倶利伽羅剣《くりからけん》!
次回へ続く
決戦の火蓋は切って落とされた。
その緊迫の場面の最中、ハサンは思い出した。
ある日の電車での出来事。
横浜まで遠出しようとした矢先、
未だ5歳の長男と私鉄に乗っている最中に
その事件は起きた。
長男が眠いというので優先席で寝かせて
私は隣に座る。
私の左隣りに長男、右隣りは化粧が
派手な20代前半位のギャルだった。
数分電車に揺られていると、付き添いの人を連れた杖をついたお爺さんが乗ってきて私の前に立った。
座りたかったのだろう。
当初は女の人に向かってわざと聞こえるように、
「今時の若い者は席を譲らんなー。」
とチラチラとギャルを見ながらボヤいていた。
私とて本来ならば老人に喜んで
席を譲るタイプの人間である。
しかし、状況が状況。
子供は寝てるし、寄りかかられたら大変だし私は「すいません」と会釈するに留めた。
老人は優しく「いいんですよ。
お子さん大変だよね」と仰ってくれた。
ギャルは関係ないと白を切り通し
スマホをずっと見ている。
「あー、足が痛い。
か弱い老人に席を譲らんのか。
あー足が痛い。座りたい。」
爺は子供のように、且つイライラしながらボヤく。しかも段々とアルデンテで。
ギャルは、ひたすら無視を決め込む。
終いには私に向かってイライラをぶつけ始めた。
「子供を載せて電車に乗るな」
「子供なんて立たせとけ」
「お前が譲れ」
付き添いの人が「まあまあお爺ちゃん」
と宥《なだ》めるがヒートアップする爺。
最終的に斜向いに座っていた中年女性が
「どうぞ」と席を譲ってくれて事無きを得た(笑)
当時はなんて理不尽なんだ!
老人は幼児化するなんてホントだな!
最初は優しかったのに、あれは嘘か!
なーんて思ってたんだけど、これも又私の世界であり、私であると後になって気付いたんだよね。
その老人を見ている時、私は老人になる。
この世界は私=全てであるということ。
そして全ては必然で起きていると知ったのだった。
老人が乗ってくるタイミングや、右隣にギャルが座っていた事も、子供が寝入ってしまう事も、
老人がキレる事も。
私が席を譲ることも出来たし、
途中で子供を連れて電車から降りる選択も出来た。
でもその後も恐らく決まっている。
そして、その事象に対して自分がどう感じるのかも、
これもまた意味付けをどう取るのかも自由なんだよね。
そんな訳で、今私が聖騎士として
魔将軍ダロムと立ち合うのも必然という訳。
「思いっきりやるぜ。恨みっこ無しだ」
ハサンは三鈷剣を構える。
「抜かせ、こちらは魔王軍の威信にかけてお前を止める。覚悟するんだな」
魔剣エリザベートを抜刀して青眼に構える
魔将軍ダロム。
一瞬の隙をついてダロムは強引に突っ込んできた。
魔剣と霊剣が交差する!
ガッキィィィィィィン!!
金属音が城内に木霊する。
金剛夜叉明王へ化身した
ハサンのパワーに押し負けない強さ。
「我が魔剣エリザベートの力を思う存分見せてくれよう。」
剣先が、幾重にも重なって見える。
その剣先一つが蛇に変わる。
う、うおっ。危ない。
しかも、蛇のような切っ先は、
ただ真っすぐではなく、鞭のように撓る。
ガキッッッッッ!
三鈷剣と魔剣の交差で火花が散る。
痛ッ!重い。受けるだけでもキツイ。
「遊びはこれまで。我が剣の真髄をとくと見よ!
魔将軍ダロムの秘奥義
『ダークネスファイブゥゥゥゥゥゥ!!』」
魔剣から放出される大きな巨大蛇の瘴気が
5体ハサンに向かって放出されるのが分かる。
駄目だ、避けられない。
三鈷剣で受けるしかない。
ガギッ…………!
ピキッ…………!
パキンッ!!
三鈷剣は折れた。
無敵の霊剣三鈷剣は折れた。
「ぐはっ!」
そればかりか、ハサンはダークネスファイブをモロに受けて城壁に吹っ飛ばされる。
壁に大きな音を立て突っ込むハサン。
爆音が鳴り響き、壁の石煙が
モウモウと辺り一面に広がる。
き、効いた。今ので化身の術は解けた。
しかも、歴代ハサンが使ってきた
霊剣三鈷剣が折れた。
ここまで強いのか。
俺は何も出来ないのか。
悔しい。力が欲しい。
魔将軍ダロムに勝つ力が。
負けたくない。
ここで終われない。
俺はやるだけの事を、まだやりきってない。
負けるな。負けるな。負けるな。
俺は立てる。まだやれる。
燃やせ!心の小宇宙を。
内在神を力に変えよ。
ハサンから、少しずつユラユラと
赤白いソウルパワーが宿る。
それは段々と大きくなり、やがて真言を唱えずして不動明王への姿へ化身する。
折れた三鈷剣も又、ユラユラと光を放ち始め、
やがてソウルパワーは、
三鈷剣の全身を覆っていく。
お、おお……。
ハサンも驚いた。
三鈷剣のソウルパワーは
全身を覆い形を変えていく。
こ、これは。
倶利伽羅剣《くりからけん》!
次回へ続く
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