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第七章 邪神の秘密を追え
第48話 ウルフィー
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古い廃墟で、暖を取り寒さを凌ぐハサン一行をオオカミ型のアヤカシ=ウルフィーが強襲する。
防衛魔法である対物シールドを、たやすく突破し、魔法や剣を受け付けない巨大な体躯。
ハサンが、三鈷剣を構え身構えた矢先、メイが読心魔法により、ウルフィーの思考を探る。
感覚で、飢えによる攻撃ではなく意図的な強襲と読んだのである。
『タ、タスケテ……』。
ウルフィーの心は助けを求めていた。
このアヤカシを操っている『何者か』が周りにいる。
咄嗟に叫ぶメイ。
「ハサン様!このウルフィーは操られています。背後に何者か術者がいる筈です!」
すぐさま、俺は察知したさ。
おー!よくやったなと。
メイに対して頷くと、ジンタンに指示を出す。
「ジンタン、お前は術者を探して捕らえよ!」
ジンタンは言うか言わないかの瞬間にウルフィーを掻い潜り建物を抜け付近捜索の為に消える。
「さあ!オオカミちゃん。今すぐ助けてやるぜ!」
俺は三鈷剣を構えて立ちはだかる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
吹雪は止んでいるとはいえ、街灯もない真っ暗な闇夜。
付近は静寂に包まれている。
通常精神支配の術は被験者の側から離れられないと言う。
離れれば離れるほど、
支配力は薄まるのが定番であるからだ。
目を閉じてジンタンは、耳を澄まし
敵の呼吸音、動作、気配を探る。
サラサラ……。
ヒュー……。
パタン、ギギ……。
風が過ぎる度に色々な音が聞こえてくる。
風の音、風に靡く草原の音。
聞こえない。
特に気配も感じない。
その瞬間、『ザクッ』。
雪を踏みしむ人の足音が聞こえてきた。
「そこだ!」
ジンタンは隠しナイフを音の方へ投げる。
「ギャッ!」
フードを被った初老のダークエルフが倒れる。
見る見る男の衣服から血が流れ、男は息絶えた。
「ハサン様。こちらは片付きました。」
ルンルンで帰るジンタン。
ボロボロのドアを開けようとした瞬間に、
ハサンとドアそのものが衝撃と
爆音と共に吹っ飛んできた。
「う、うわー。」
ちょっと情けない声を上げるジンタン。
「ハ、ハサン様。術者は始末しました。」
ジンタンはハサンに報告するが、
二人は折り重なって地面に倒れている。
分かったけど、どけ!重い!
しかし、ジンタンは倒しましたと言ってるが事態は変わってないぞ?
やばい、中にいるセシアとメイが危ない。
そして瞬間にハサンは気付く。
「ジンタン!術者は一人じゃないかもしれない。付近を継続して探せ!」
やれやれみたいな感じで、とぼとぼと先程までの道程を引き返すジンタン。
相当不服みたいだ。
あーいう態度が駄目だな。
平成生まれかな?
気を取り直してウルフィーの待つ廃屋へ三鈷剣を携えて入っていくハサン。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
ハサンがウルフィーに吹き飛ばされた後、ウルフィーはメイとセシアの方を向いてくる。
メイは、爆炎魔法で応戦し、セシアは緊縛術にてウルフィーを足止めする作戦に出るが術は全く効かない。
この力は魔将軍アスタロットの配下の剛鬼ベーゼンに勝るとも劣らない強さだ。
セシアは、召喚術で魔獣ヒババンゴとレオナルド熊とドテチンを召喚して放つ!
3匹の獣を召喚した時点で、建物は崩れて壁もその存在意義はとうに無くしていた。
魔獣ヒババンゴのキックと、レオナルド熊の豪腕パンチ、ドテチンの体当たりで各々突進していくもウルフィーの硬い毛と素早い動きに翻弄されダメージには至らない。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
考えてみれば分かること。
あの巨大なアヤカシを一人の術者で操られる訳がない。
このジンタンの未熟!
ハサン様に恥ずかしいところを見せてしまった。くそー!
どこだ!
珍しく荒ぶるジンタン。
焦れば焦るほど、そんなジンタンの様子を嘲るかのように、術者は見つからないのだった。
冷静に。冷静に。
呼吸を整えようとするジンタン。
すると、今度は屋根から爆音と共に
ハサンとドテチン、レオナルド、ヒババンゴが吹っ飛ばされるのであった。
次回へ続く
防衛魔法である対物シールドを、たやすく突破し、魔法や剣を受け付けない巨大な体躯。
ハサンが、三鈷剣を構え身構えた矢先、メイが読心魔法により、ウルフィーの思考を探る。
感覚で、飢えによる攻撃ではなく意図的な強襲と読んだのである。
『タ、タスケテ……』。
ウルフィーの心は助けを求めていた。
このアヤカシを操っている『何者か』が周りにいる。
咄嗟に叫ぶメイ。
「ハサン様!このウルフィーは操られています。背後に何者か術者がいる筈です!」
すぐさま、俺は察知したさ。
おー!よくやったなと。
メイに対して頷くと、ジンタンに指示を出す。
「ジンタン、お前は術者を探して捕らえよ!」
ジンタンは言うか言わないかの瞬間にウルフィーを掻い潜り建物を抜け付近捜索の為に消える。
「さあ!オオカミちゃん。今すぐ助けてやるぜ!」
俺は三鈷剣を構えて立ちはだかる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
吹雪は止んでいるとはいえ、街灯もない真っ暗な闇夜。
付近は静寂に包まれている。
通常精神支配の術は被験者の側から離れられないと言う。
離れれば離れるほど、
支配力は薄まるのが定番であるからだ。
目を閉じてジンタンは、耳を澄まし
敵の呼吸音、動作、気配を探る。
サラサラ……。
ヒュー……。
パタン、ギギ……。
風が過ぎる度に色々な音が聞こえてくる。
風の音、風に靡く草原の音。
聞こえない。
特に気配も感じない。
その瞬間、『ザクッ』。
雪を踏みしむ人の足音が聞こえてきた。
「そこだ!」
ジンタンは隠しナイフを音の方へ投げる。
「ギャッ!」
フードを被った初老のダークエルフが倒れる。
見る見る男の衣服から血が流れ、男は息絶えた。
「ハサン様。こちらは片付きました。」
ルンルンで帰るジンタン。
ボロボロのドアを開けようとした瞬間に、
ハサンとドアそのものが衝撃と
爆音と共に吹っ飛んできた。
「う、うわー。」
ちょっと情けない声を上げるジンタン。
「ハ、ハサン様。術者は始末しました。」
ジンタンはハサンに報告するが、
二人は折り重なって地面に倒れている。
分かったけど、どけ!重い!
しかし、ジンタンは倒しましたと言ってるが事態は変わってないぞ?
やばい、中にいるセシアとメイが危ない。
そして瞬間にハサンは気付く。
「ジンタン!術者は一人じゃないかもしれない。付近を継続して探せ!」
やれやれみたいな感じで、とぼとぼと先程までの道程を引き返すジンタン。
相当不服みたいだ。
あーいう態度が駄目だな。
平成生まれかな?
気を取り直してウルフィーの待つ廃屋へ三鈷剣を携えて入っていくハサン。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
ハサンがウルフィーに吹き飛ばされた後、ウルフィーはメイとセシアの方を向いてくる。
メイは、爆炎魔法で応戦し、セシアは緊縛術にてウルフィーを足止めする作戦に出るが術は全く効かない。
この力は魔将軍アスタロットの配下の剛鬼ベーゼンに勝るとも劣らない強さだ。
セシアは、召喚術で魔獣ヒババンゴとレオナルド熊とドテチンを召喚して放つ!
3匹の獣を召喚した時点で、建物は崩れて壁もその存在意義はとうに無くしていた。
魔獣ヒババンゴのキックと、レオナルド熊の豪腕パンチ、ドテチンの体当たりで各々突進していくもウルフィーの硬い毛と素早い動きに翻弄されダメージには至らない。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
考えてみれば分かること。
あの巨大なアヤカシを一人の術者で操られる訳がない。
このジンタンの未熟!
ハサン様に恥ずかしいところを見せてしまった。くそー!
どこだ!
珍しく荒ぶるジンタン。
焦れば焦るほど、そんなジンタンの様子を嘲るかのように、術者は見つからないのだった。
冷静に。冷静に。
呼吸を整えようとするジンタン。
すると、今度は屋根から爆音と共に
ハサンとドテチン、レオナルド、ヒババンゴが吹っ飛ばされるのであった。
次回へ続く
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