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第七章 邪神の秘密を追え
第45話 エルフの騎士
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かつての都、トッポイ国の首都エギョマ。
亜人の国として栄え、古代都市として貿易も盛んだった。
あの日魔王軍が攻めてくる迄は。
大量のアヤカシが街を蹂躙する。
生きながらに喰われる民衆。
火は放たれ、無惨に殺されていく人々。
女子供、老若男女問わず
人々はアヤカシに惨殺されていく。
亜人の騎士団や、戦士、
魔法使いも立ち向かうが数が圧倒的であった。
追い詰められ、やがて民衆同様の途を辿るのである。
悲劇の街として、今も受け継がれている町の名なのである。
正に地獄の3日間であった。
国主の側近ドーマは王女の娘サマンサを連れて城から逃げる。
あれから既に20年が経過していた。
サマンサは、悔やむ。
私が古代魔法さえ知らなければ、
罪のない人々が死ななくても済んだのではないか。
今も、あの時の悪夢で目が覚める。
当時まだ6歳だった。
けたたましい鐘の音、笛の音が鳴り響く。
夜襲だった。魔王軍は人々が寝静まる夜を狙って襲ってきたのだ……。
次こそは、皆の仇を取る。
自らの愛用刀『虎徹』を握りながら
復讐を誓うサマンサだった。
ハナカサから、エギョマ跡地まで10日もあれば着く。
ハデル一行も、随分回復してきた。
一番若いシマジなんかは狼族だからなのか、若さなのか回復も桁違いに早かった。
「さあ、俺達はもう行くが、ハデル達はどうする?」
ハサンはハデル達に今後の動向を伺う。
「俺達は、あと少し養生したら出るよ。
エギョマで落ち合おう。」
首都跡地エギョマに邪神を討つ手がかりがあるのか?
霞を掴むような、か細い感覚を頼りに取り敢えず一行はエギョマ跡地に向かう。
エギョマに向かうには、スカーレット峡谷を超えなければ行けない。
あそこはエルフの領地だ。
しかも長寿のエルフなら何か手がかりがあるかも知れない。
こちらも漠然とした直感だけを頼りに、
ハサンはスカーレット峡谷へと歩を進める。
周囲は岩山と切り立った崖が続く。
少し開けると、そこには美しい滝が見える。
麓に比べると、気温も寒い。
しかし、狭い山道を歩くので、
足はパンパン、息もあがる。
「あ~疲れたー。ハサンやばいよ。
この峡谷きついよ。」
セシアが嘆く。
それを見たメイが、軽歩の術をかける。
すると、セシアの内腿の筋肉はほぐれていき、なんだか軽やかになる。
息は快活に疲れにくくなる。
「おー!やった!メイ!
いいよ!いい!」
セシアは喜び勇み足でスキップする。
ハサンはメイに耳打ちする。
「軽歩の術なんてないんだろ?
これ、暗示だろ?」
メイはニヤリと笑いながら
こくりと頷く。
二人してニヤニヤ。
セシアは、スキップ。
あまりに快活過ぎて魔法の杖が、
岩に当たり、セシアは腕が痺れて
杖を落とす。
「いっ痛っ~!!」
ギャッハッハと笑う二人。
何笑ってんのよー!とセシア。
ジンタンはそれを見て溜息。
緊迫感ないなーと。
そんなこんな暫く歩いて峡谷の頂上付近に付いた時、
エルフの騎士がハサン一向に立ちはだかる。
「聖騎士一向様。ここは、エルフの王たる主の居城があります。是非お立ち寄りいただきたい。」
エルフの騎士が丁重に近づいてくる。
「これは、これはご丁寧に。
エルフの王に是非お会いしたいと思っていたところで……す?」
ハサンが言いかけたところに、
颯爽とハサンの前に現れるジンタン。
ジンタンは既に鞘に手をかけ、
エルフの騎士に対峙する。
こらこら、失礼じゃないか。
ジンタン君。ん?!ジンタンが、こんな無礼な事をする訳が無い。
ハサンがエルフの騎士に敵意を感じて、剣を手に掛けようとした矢先、既にジンタンが、そのエルフに誰何する。
「貴様!誰か!!」
エルフの騎士はニヤリと邪悪な笑みを浮かべながら剣を構える。
「私は魔将軍ダロムの配下、パサージュ。
聖騎士抹殺を命じられ、馳せ参じました。」
フフフと不敵に笑いながら細身のレイピアを抜く。
「エルフの王に会えというのは嘘か!
エルフの王はどうした!」
ハサンはパサージュに問う。
パサージュは、またもや笑いながら答える。
「エルフの王というのは魔将軍ダロム様の事だ!我々はダークエルフ。
元から魔王配下の一族よ。
貴様の生首を王に捧げてくれるわ!」
一瞬にして、ハサンの間合いに入るパサージュに、ジンタンの剣が交差する。
バキーーーンッッ!!!
金属音が鳴り響く。
パサージュの背後から、パサージュ配下の蝙蝠の翼の生えた黒いグレムリンが複数現れる。
ハサンは波動を込め、波動スラッシュを軽く三鈷剣から放つ。
意識化における無限の力の使い方を知った為なのか、軽い一振りの波動スラッシュが、以前とは段違いの威力となり、グレムリンは真っ二つに切り裂かれ、血飛沫を上げて浄化されていく。
「ギョギョ!!」
現れて数秒で浄化されてしまうと思わぬグレムリンは怯む。
ハサンは何と空を飛びながら闘う。
「ハーッハッハッハ!
私はもう空をも飛べるのだよ。
くらえ!三鈷剣重力波!」
三鈷剣から重力波が出てグレムリンを圧していく。
重力波から逃げられないグレムリン。
グレムリンは地面の岩肌に圧され、メキッメキッと嫌な音がし潰されていく。
グキッ!メキッ!グチャ!
体中が重力に押しつぶされて目から内蔵から全てを出し切り、グレムリンは浄化される。
ちょっとエグいな。
この技は。さて本丸はどうなった?
ジンタンとパサージュに目をやると
二人の剣技が早すぎて目がついて行かない。
どちらも攻め手に欠いているようだった。
次回へ続く
亜人の国として栄え、古代都市として貿易も盛んだった。
あの日魔王軍が攻めてくる迄は。
大量のアヤカシが街を蹂躙する。
生きながらに喰われる民衆。
火は放たれ、無惨に殺されていく人々。
女子供、老若男女問わず
人々はアヤカシに惨殺されていく。
亜人の騎士団や、戦士、
魔法使いも立ち向かうが数が圧倒的であった。
追い詰められ、やがて民衆同様の途を辿るのである。
悲劇の街として、今も受け継がれている町の名なのである。
正に地獄の3日間であった。
国主の側近ドーマは王女の娘サマンサを連れて城から逃げる。
あれから既に20年が経過していた。
サマンサは、悔やむ。
私が古代魔法さえ知らなければ、
罪のない人々が死ななくても済んだのではないか。
今も、あの時の悪夢で目が覚める。
当時まだ6歳だった。
けたたましい鐘の音、笛の音が鳴り響く。
夜襲だった。魔王軍は人々が寝静まる夜を狙って襲ってきたのだ……。
次こそは、皆の仇を取る。
自らの愛用刀『虎徹』を握りながら
復讐を誓うサマンサだった。
ハナカサから、エギョマ跡地まで10日もあれば着く。
ハデル一行も、随分回復してきた。
一番若いシマジなんかは狼族だからなのか、若さなのか回復も桁違いに早かった。
「さあ、俺達はもう行くが、ハデル達はどうする?」
ハサンはハデル達に今後の動向を伺う。
「俺達は、あと少し養生したら出るよ。
エギョマで落ち合おう。」
首都跡地エギョマに邪神を討つ手がかりがあるのか?
霞を掴むような、か細い感覚を頼りに取り敢えず一行はエギョマ跡地に向かう。
エギョマに向かうには、スカーレット峡谷を超えなければ行けない。
あそこはエルフの領地だ。
しかも長寿のエルフなら何か手がかりがあるかも知れない。
こちらも漠然とした直感だけを頼りに、
ハサンはスカーレット峡谷へと歩を進める。
周囲は岩山と切り立った崖が続く。
少し開けると、そこには美しい滝が見える。
麓に比べると、気温も寒い。
しかし、狭い山道を歩くので、
足はパンパン、息もあがる。
「あ~疲れたー。ハサンやばいよ。
この峡谷きついよ。」
セシアが嘆く。
それを見たメイが、軽歩の術をかける。
すると、セシアの内腿の筋肉はほぐれていき、なんだか軽やかになる。
息は快活に疲れにくくなる。
「おー!やった!メイ!
いいよ!いい!」
セシアは喜び勇み足でスキップする。
ハサンはメイに耳打ちする。
「軽歩の術なんてないんだろ?
これ、暗示だろ?」
メイはニヤリと笑いながら
こくりと頷く。
二人してニヤニヤ。
セシアは、スキップ。
あまりに快活過ぎて魔法の杖が、
岩に当たり、セシアは腕が痺れて
杖を落とす。
「いっ痛っ~!!」
ギャッハッハと笑う二人。
何笑ってんのよー!とセシア。
ジンタンはそれを見て溜息。
緊迫感ないなーと。
そんなこんな暫く歩いて峡谷の頂上付近に付いた時、
エルフの騎士がハサン一向に立ちはだかる。
「聖騎士一向様。ここは、エルフの王たる主の居城があります。是非お立ち寄りいただきたい。」
エルフの騎士が丁重に近づいてくる。
「これは、これはご丁寧に。
エルフの王に是非お会いしたいと思っていたところで……す?」
ハサンが言いかけたところに、
颯爽とハサンの前に現れるジンタン。
ジンタンは既に鞘に手をかけ、
エルフの騎士に対峙する。
こらこら、失礼じゃないか。
ジンタン君。ん?!ジンタンが、こんな無礼な事をする訳が無い。
ハサンがエルフの騎士に敵意を感じて、剣を手に掛けようとした矢先、既にジンタンが、そのエルフに誰何する。
「貴様!誰か!!」
エルフの騎士はニヤリと邪悪な笑みを浮かべながら剣を構える。
「私は魔将軍ダロムの配下、パサージュ。
聖騎士抹殺を命じられ、馳せ参じました。」
フフフと不敵に笑いながら細身のレイピアを抜く。
「エルフの王に会えというのは嘘か!
エルフの王はどうした!」
ハサンはパサージュに問う。
パサージュは、またもや笑いながら答える。
「エルフの王というのは魔将軍ダロム様の事だ!我々はダークエルフ。
元から魔王配下の一族よ。
貴様の生首を王に捧げてくれるわ!」
一瞬にして、ハサンの間合いに入るパサージュに、ジンタンの剣が交差する。
バキーーーンッッ!!!
金属音が鳴り響く。
パサージュの背後から、パサージュ配下の蝙蝠の翼の生えた黒いグレムリンが複数現れる。
ハサンは波動を込め、波動スラッシュを軽く三鈷剣から放つ。
意識化における無限の力の使い方を知った為なのか、軽い一振りの波動スラッシュが、以前とは段違いの威力となり、グレムリンは真っ二つに切り裂かれ、血飛沫を上げて浄化されていく。
「ギョギョ!!」
現れて数秒で浄化されてしまうと思わぬグレムリンは怯む。
ハサンは何と空を飛びながら闘う。
「ハーッハッハッハ!
私はもう空をも飛べるのだよ。
くらえ!三鈷剣重力波!」
三鈷剣から重力波が出てグレムリンを圧していく。
重力波から逃げられないグレムリン。
グレムリンは地面の岩肌に圧され、メキッメキッと嫌な音がし潰されていく。
グキッ!メキッ!グチャ!
体中が重力に押しつぶされて目から内蔵から全てを出し切り、グレムリンは浄化される。
ちょっとエグいな。
この技は。さて本丸はどうなった?
ジンタンとパサージュに目をやると
二人の剣技が早すぎて目がついて行かない。
どちらも攻め手に欠いているようだった。
次回へ続く
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