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第二章 聖騎士とアヤカシの謎
第13話 業魔円奇衝
しおりを挟むドテチンの一件により、
幾多のアヤカシと話をするようになった。
そして村の人々には、
必ず挨拶をして一言、
二言声をかけるようにした。
挨拶ってさ、大事だよな!
おはよう~!
こんにちは!
こんばんは!
それだけで、なんか違うよね。
一日の始まりがね!
すると、今度の聖騎士はなんて
気さくなんだろうかと言う噂が回った。
オーサキ村では
『気さくなハサン』と呼ばれた。
人間時代は友人もいなくて、
人と話すのが嫌いな私が、
まさか気さくな男になるなんて。
コミュニケーションは大事だな。
挨拶って大事だなと思いながら、
オーサキ村で過ごしていると、
何だか愛着が湧いてきてしまう。
ここは長閑な小麦畑が広がって、
石畳の街道と小麦を引く風車が
特徴な村なのだ。
時折村の老婆からお使いとか、
風車での小麦引きの手伝いを依頼された。
すると、感謝されてレベルが上がる。
そしてハサンも村の人に感謝をするのだ。
感謝が感謝を呼びハートフルな感じになる。
そうか、これが感謝力なんだ。
いつしかハサンと、
セシアはレベル10になっていた。
ステータスの大幅上昇と、
セシアは新たに召喚術を覚えた。
『ドテチン』の召喚が
出来るようになったのである。
話し合いが通じるなら、
ステータス無意味じゃないか?
そんな事も思ったが、
どうやら話し合いが通じない
アヤカシもいることが分かった。
そして三鈷剣は、切るだけではなく
破邪の効果と浄化の効果もある聖剣
であると知ったのである。
さあ、いよいよレベルは大丈夫。
回復魔法も覚えた。
ついに初の街マヨールに行くぞ。
領主ウェーダーが顔を出せと言う。
どのような人物か見極めてやる。
マヨールまでもう一歩のところで、
ハサンに声をかける魔性の影があった。
「うぬが、聖騎士ハサンか」
魔性はハサンに尋ねる。
「そうだ」
答えるや否やは襲いかかる。
ハサンは、その刃先と衝撃を交わせずに、
もんどり打って倒れた。
桁違いの攻撃。
こんな序盤で、こんな攻撃。
これは得意の交渉術しかない。
「やあ。旦那。元気かい?
こっちは敵意はないでゲス。
ちょっとこの先の街まで用事があるんでゲス。だから今回は見逃してくれないでゲスか?」
手を揉みながら精一杯の卑屈さで、
魔性に声をかける。
魔性は応える。
『貴様は武人ではないのか?
武人であれば剣で応えよ。
わが名は魔王スマター配下
魔将軍三騎将の一人、
魔将軍ザンである!』
やべー。ガチなやつ来た。
魔将軍強そう。
勝てるのか?
話し合い通じねー。
こうなったらやるしかない。
先ずはレベルが上がった
波動スラッシュで攻撃だ!
くらえ!
ドテチン戦の時とは比べ物にならない
波動スラッシュが魔将軍ザンへと切りかかる。
しかし、ザンは交わすまでも無いと
波動スラッシュを受けきった。
「やる!でも、これなら」
セシアは金縛りの術で、ザンを拘束する。
しかし、ザンには金縛りの術も
全く効果が無かった。
セシアはドテチンを召喚させる。
呼び出されたドテチンは、
ドテチン体当たりで突進を試みるが
吹っ飛ばされて伸びてしまった。
「戻って!ドテチン」
こうなったら持てる力の最大限発揮しないと、
こいつには勝てない。
ミステリアンウェーブを使うしかない。
「行くぞ、魔将軍ザン!
聖騎士ハサンの最大必殺技、
ミステリアンウェーェェェブッ!」
三日月の波動スラッシュが三層連なる
聖騎士ハサンの必殺技、
ミステリアンウェーブが
魔将軍ザンに放たれる。
ドッドッドッブルーン。
物凄い衝撃が起こる。
土埃が舞い散る中、なんと立ちはだかる人影。
魔将軍ザンは無傷だった。
「その程度か。聖騎士ハサンよ。
この度の聖騎士恐るるに足らず。
では、こちらからいくぞ。
業魔円奇衝《ごうまえんきしょう》!」
赤黒い瘴気と衝撃波が私を襲った。
そこから意識を失った。
セシアは見た。
ハサンの首と腕と足が吹っ飛ぶのを。
ハサンは爆死した。
「え?え!?」
立ち尽くすセシアに
魔将軍ザンはこう言い放つ。
「皆に広言せよ、
聖騎士ハサンは死んだのだと。
希望は消えたのだと。
グッハッハッ!」
魔将軍ザンは魔影と共に姿を消した。
ハ、ハサーン。
セシアは、ただ泣き叫ぶしかできなかった。
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