3 / 119
第一章 異世界マーラへようこそ
第2話 英雄ハサン
しおりを挟む私が幼い頃に見たテレビアニメ、
ヴァン・ダインの世界では、
権力闘争があって、
主人公は召喚されたにも関わらず、
結局敵側に寝返ったような
ストーリーだった筈。
今回の召喚はどういう事なんだ?
目的はなんだ?
どうして私なんだ?
私はセシアに聞いてみる事にした。
セシア神よ。
なんで私が召喚されたんですかい?
いささか変なテンションで私はセシアに問う。
鼻が長いハナナガ族のセシア神曰く
「ここは人の世と、あの世の狭間の世界。
重なり合う世界であるが、
決して触れ合えぬ心の世界とも呼べる。」
つまり、どうやら本当に
私は一度死んだらしい。
だから元の世界には帰れない。
元来、人の魂は天へ帰るのだが、
その途中でセシアが私の魂を
この『マーラ』に召喚したのだという。
スピリチュアルの世界では、
人の世界は3次元と呼んで、
霊界の世界を4次元と呼び、
神の世界を5次元なんて
呼んでいるのを聞いたことがある。
物理学者などに言わせると
全く根拠も論拠も無いらしいんだけど、
私には理解できた。
このマーラという世界は心の世界なのだと。
その心の住人であるセシアが
私を召喚したのは、
「話し相手」が欲しかったからだとのこと。
身勝手!なんて身勝手!
私は小学校の時に流行った
『コックリさん』を思いだした。
あれは低級霊を呼び出す
雑な降霊術にあたるらしいんだけど、
当時休み時間の合間に私の友人が
おかしくなり、担任から
コックリさん停止命令が出たのだ。
あれは狐やら狸やら、コックリさん側の立場を思えば、『なんて人間は身勝手なんだ』
と思うよなーなんて考えるのと同時に
現世に残してきた子供達の事を考えると、
自然に涙が出てくるのだった。
そうか、あの子らにもう会えないんだね。
子供達の事を思い出していた。
生まれてからの事や、様々なイベント……。
「聖騎士様?」
暫く思い出に耽っていると、
セシアは生い立ちについて再度語りだす。
セシア神の家族は敢えて村外れに住んでおり、
炭を作って村の人々に売って暮らす
というのを生業にしていた。
ところが、父神であるセシアのお父さんが
ついにマーラでの人生を終え
5次元の世界に召されたので、
寂しくてセシアは私を召喚したのだと。
普通であれば怒ったり、
嘆いたりするのかもしれないが、
私は全肯定の極意があったので、
この状況をすんなり受け入れたのだった。
三次元=人のステージはここで終わり、
新たなステージに旅立つのだと。
セシアはマーラの人々の説明をした。
まず、この土地はオーサキ村ということ。
そして、ここいら一帯は
ミャーギ地方と呼ぶらしい。
一面の草原と、田畑が広がる
本当に空気の美味しい田舎である。
人々は全て神様であること。
そして聖戦士である私も神様なのだと。
そうか。私は神様になったのか。
うん?死ぬと、仏様になると
我々日本人は考えるのだけれども、
そういう理由かな?
確かに日本では死んで神様になる英傑が
まあまあいるよね。
徳川家康や、菅原道真、
吉田松陰などがそうだ。
ところがセシアはこう述べた。
「元々人間も神様なんですよ」と。
なるほどね。でも神であるのに、
何故人はいがみ合うのかなー、
分かり合えないよねーなどと
考えるのと同時に
私は疑問に思った。
聖戦士という事は戦う者であり、
つまり敵がいるということ。
話し相手で召喚したのならば、
戦士でなくてもよい。
どうしてなのか?
セシアは私にまだ何か隠している。
率直にセシアに聞く。
この時にはセシアの呪術は効力を失い、
私は自由に動けるようになっていた。
「実は聖戦士様にお願いがあるのです。
私と共に旅に出て欲しいのです。こ
のマーラの世界に『アヤカシ』が蔓延っています。
そのアヤカシの王であるスマターを倒して欲しいのです。」
スマター?アヤカシ?
急に中2病設定が入った。
それに、普通はもっと若い人を
召喚すれば良いんじゃない?
なんでオジサンの私を?
セシアはこう言う。
「マーラの世界は心の世界。
人の世界の鏑木凝流はもういません。
あなたはハサンです。
英雄ハサンとしてスマターを倒すのです」
嫌だよ!
なんで?
とまあ思ったけど、
ちょっと面白い展開だなと。
私はハサン!英雄ハサン神だ!
今ここに英雄ハサン神が誕生した。
次回へ続く
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~
ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。
いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。
テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。
そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。
『強制フラグを、立てますか?』
その言葉自体を知らないわけじゃない。
だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ?
聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。
混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。
しかも、ちょっとだけ違うセリフで。
『強制フラグを立てますよ? いいですね?』
その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。
「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」
今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。
結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。
『強制フラグを立てました』
その声と、ほぼ同時に。
高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、
女子高生と禁断の恋愛?
しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。
いやいや。俺、そんなセリフ言わないし!
甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって!
俺のイメージが崩れる一方なんだけど!
……でも、この娘、いい子なんだよな。
っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか?
「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」
このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい?
誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる