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第一章 異世界マーラへようこそ
第2話 英雄ハサン
しおりを挟む私が幼い頃に見たテレビアニメ、
ヴァン・ダインの世界では、
権力闘争があって、
主人公は召喚されたにも関わらず、
結局敵側に寝返ったような
ストーリーだった筈。
今回の召喚はどういう事なんだ?
目的はなんだ?
どうして私なんだ?
私はセシアに聞いてみる事にした。
セシア神よ。
なんで私が召喚されたんですかい?
いささか変なテンションで私はセシアに問う。
鼻が長いハナナガ族のセシア神曰く
「ここは人の世と、あの世の狭間の世界。
重なり合う世界であるが、
決して触れ合えぬ心の世界とも呼べる。」
つまり、どうやら本当に
私は一度死んだらしい。
だから元の世界には帰れない。
元来、人の魂は天へ帰るのだが、
その途中でセシアが私の魂を
この『マーラ』に召喚したのだという。
スピリチュアルの世界では、
人の世界は3次元と呼んで、
霊界の世界を4次元と呼び、
神の世界を5次元なんて
呼んでいるのを聞いたことがある。
物理学者などに言わせると
全く根拠も論拠も無いらしいんだけど、
私には理解できた。
このマーラという世界は心の世界なのだと。
その心の住人であるセシアが
私を召喚したのは、
「話し相手」が欲しかったからだとのこと。
身勝手!なんて身勝手!
私は小学校の時に流行った
『コックリさん』を思いだした。
あれは低級霊を呼び出す
雑な降霊術にあたるらしいんだけど、
当時休み時間の合間に私の友人が
おかしくなり、担任から
コックリさん停止命令が出たのだ。
あれは狐やら狸やら、コックリさん側の立場を思えば、『なんて人間は身勝手なんだ』
と思うよなーなんて考えるのと同時に
現世に残してきた子供達の事を考えると、
自然に涙が出てくるのだった。
そうか、あの子らにもう会えないんだね。
子供達の事を思い出していた。
生まれてからの事や、様々なイベント……。
「聖騎士様?」
暫く思い出に耽っていると、
セシアは生い立ちについて再度語りだす。
セシア神の家族は敢えて村外れに住んでおり、
炭を作って村の人々に売って暮らす
というのを生業にしていた。
ところが、父神であるセシアのお父さんが
ついにマーラでの人生を終え
5次元の世界に召されたので、
寂しくてセシアは私を召喚したのだと。
普通であれば怒ったり、
嘆いたりするのかもしれないが、
私は全肯定の極意があったので、
この状況をすんなり受け入れたのだった。
三次元=人のステージはここで終わり、
新たなステージに旅立つのだと。
セシアはマーラの人々の説明をした。
まず、この土地はオーサキ村ということ。
そして、ここいら一帯は
ミャーギ地方と呼ぶらしい。
一面の草原と、田畑が広がる
本当に空気の美味しい田舎である。
人々は全て神様であること。
そして聖戦士である私も神様なのだと。
そうか。私は神様になったのか。
うん?死ぬと、仏様になると
我々日本人は考えるのだけれども、
そういう理由かな?
確かに日本では死んで神様になる英傑が
まあまあいるよね。
徳川家康や、菅原道真、
吉田松陰などがそうだ。
ところがセシアはこう述べた。
「元々人間も神様なんですよ」と。
なるほどね。でも神であるのに、
何故人はいがみ合うのかなー、
分かり合えないよねーなどと
考えるのと同時に
私は疑問に思った。
聖戦士という事は戦う者であり、
つまり敵がいるということ。
話し相手で召喚したのならば、
戦士でなくてもよい。
どうしてなのか?
セシアは私にまだ何か隠している。
率直にセシアに聞く。
この時にはセシアの呪術は効力を失い、
私は自由に動けるようになっていた。
「実は聖戦士様にお願いがあるのです。
私と共に旅に出て欲しいのです。こ
のマーラの世界に『アヤカシ』が蔓延っています。
そのアヤカシの王であるスマターを倒して欲しいのです。」
スマター?アヤカシ?
急に中2病設定が入った。
それに、普通はもっと若い人を
召喚すれば良いんじゃない?
なんでオジサンの私を?
セシアはこう言う。
「マーラの世界は心の世界。
人の世界の鏑木凝流はもういません。
あなたはハサンです。
英雄ハサンとしてスマターを倒すのです」
嫌だよ!
なんで?
とまあ思ったけど、
ちょっと面白い展開だなと。
私はハサン!英雄ハサン神だ!
今ここに英雄ハサン神が誕生した。
次回へ続く
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