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第六章 守り神
6-5 枯れないオアシス
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ボダからさらに詳しい話を聞き出そうとしたが、なにしろ幼い頃のことで、しかも肝心の曾祖父は亡くなっている。そのため、それ以上なにもわからなかった。
もっとも、内容が守護樹が干ばつを救ったという話なので、逆に守護樹を救うという趣旨からは、およそ見当違いの昔話なのかもしれない。とはいえ、こういう口伝される御伽噺には、いくらかの事実が隠されている。
少なくとも守護樹が関わっている以上、無駄骨になるかもしれないが、セインは少し掘り下げて調べてみようと思った。
年配の人を狙って、重点的に聞き込みをすることにした。
オスロたちは長老にも聞いてみるとのことだったので、セインはこのあたりの調査をしたら戻ると伝えて、二人とは別れた。
「……干ばつがあったことを知っている人はそこそこいたね」
ある程度の人数に聞き込みをして、セインはひと段落したように腕を組んだ。
『その頃は子供だったでしょうし、あまり覚えてないようでしたが』
と、ゆら。
『おまけに、どっかのサボテンの汁を撒いただの、宝石がたくさん入った水を撒いただの、でたらめのような情報ばっかだしな』
『……じゃが、適当なことを言っているようで、共通しているのは水のようなものを撒いた、と口をそろえておることじゃろうな』
面倒くさそうなテンに続いて、ツクは飽くまで慎重に彼らの声を吟味した。これ以上の情報は得られないとして、セインは長老の館へ戻った。
すでに長老から話を聞いてくれたらしく、オスロはセインを部屋に招き入れ、さっそく説明を始めた。
「父は当時まだ乳飲み子だったらしく、実際に見たわけではないようでしたが、一応は事情を知っていました」
余談だが、ボダの曽祖父は、当時の長老、すなわち今の長老の祖父、の雑用をする小僧だった。のちに子供や孫たちへの寝かしつけの物語として聞かせていたので、ボダはすぐに干ばつのことを思いついたのだろう。
そして長老の話によると、数十年前に穀倉帯のすべてがダメになるほどの大干ばつが確かにあったという。
あらゆる手を尽くしたが、とてつもない広大な土地に水を供給することは不可能だった。もはや、手の打ちようもなく、次第に頼みの綱である守護樹までもが葉を落とし始めた、ということだった。
そして――。
「……枯れないオアシス?」
聞き返したセインに、オスロは頷いた。
「はい、ここから馬車で一日くらいの場所にあるメニャン砂漠の入り口であり、ロルシー領で唯一のオアシスの町です」
もっとも、内容が守護樹が干ばつを救ったという話なので、逆に守護樹を救うという趣旨からは、およそ見当違いの昔話なのかもしれない。とはいえ、こういう口伝される御伽噺には、いくらかの事実が隠されている。
少なくとも守護樹が関わっている以上、無駄骨になるかもしれないが、セインは少し掘り下げて調べてみようと思った。
年配の人を狙って、重点的に聞き込みをすることにした。
オスロたちは長老にも聞いてみるとのことだったので、セインはこのあたりの調査をしたら戻ると伝えて、二人とは別れた。
「……干ばつがあったことを知っている人はそこそこいたね」
ある程度の人数に聞き込みをして、セインはひと段落したように腕を組んだ。
『その頃は子供だったでしょうし、あまり覚えてないようでしたが』
と、ゆら。
『おまけに、どっかのサボテンの汁を撒いただの、宝石がたくさん入った水を撒いただの、でたらめのような情報ばっかだしな』
『……じゃが、適当なことを言っているようで、共通しているのは水のようなものを撒いた、と口をそろえておることじゃろうな』
面倒くさそうなテンに続いて、ツクは飽くまで慎重に彼らの声を吟味した。これ以上の情報は得られないとして、セインは長老の館へ戻った。
すでに長老から話を聞いてくれたらしく、オスロはセインを部屋に招き入れ、さっそく説明を始めた。
「父は当時まだ乳飲み子だったらしく、実際に見たわけではないようでしたが、一応は事情を知っていました」
余談だが、ボダの曽祖父は、当時の長老、すなわち今の長老の祖父、の雑用をする小僧だった。のちに子供や孫たちへの寝かしつけの物語として聞かせていたので、ボダはすぐに干ばつのことを思いついたのだろう。
そして長老の話によると、数十年前に穀倉帯のすべてがダメになるほどの大干ばつが確かにあったという。
あらゆる手を尽くしたが、とてつもない広大な土地に水を供給することは不可能だった。もはや、手の打ちようもなく、次第に頼みの綱である守護樹までもが葉を落とし始めた、ということだった。
そして――。
「……枯れないオアシス?」
聞き返したセインに、オスロは頷いた。
「はい、ここから馬車で一日くらいの場所にあるメニャン砂漠の入り口であり、ロルシー領で唯一のオアシスの町です」
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