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第五章 拠点
5-4 ハクの手土産
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順調に改築工事が進む、旧使用人館改め、セインの館。
もちろんこれは、周りが勝手にそう呼んでるだけで、侯爵家からすれば、別館という扱いである。
ただし、そこで働いているのは基本的にセイン個人の使用人だ。
ゲイルもまた、ロルシー家とは切り離された使用人である。彼の妻フーリエと、娘のレミもセイン個人の奴隷という扱いで、ロルシー家に仕えているわけではない。
ちなみに、彼女たちは一般奴隷なので、館での雑事を担当してもらうつもりだ。まだ暫定的だが、フーリエには調理などの家事全般を、レミにはその手伝いを、館が完成したら、ゲイルには畑仕事を頼むつもりだ。
「天空が耕した畑は、よく作物が育ちそうだ」
――そういえば、名前も付けてやらなくてはいけなかったな。
そして、式と言えばハクである。
セインが宿屋に運び込まれたヌシ討伐の日、翌朝起きると、とんでもない光景がそこにあった。
信じられないほど大きな銀色の塊が、眩しい朝日を燦然と浴びて、古びた出窓に無造作に置かれていたのである。
「……え、なにこれ」
思わずごしごしと目を擦った。しかし、そこには依然として塊はあった。そして、ベットの上には丸い緑色のつるりとした玉が転がっている。まるで卵のように、五つ、固まって置いてあった。
セインは無意識にハクを見た。
くるりと丸まって、セインの横でぬくぬくと呑気に寝ている。
『……主よ、説明が必要か? おそらく思うておる通りじゃと思うがの』
唖然としたまま固まっているセインに、ツクがそう切り出した。
その通りだ。なんとなく、起きた出来事は想像ができた。なぜなら、その片鱗を昨日ばっちり見ているからだ。
「じゃあ、やっぱりハクなんだね。でも、この玉みたいなのは?」
『それは文字通り玉じゃよ。翡翠、しかもとびきり価値のあるモノだけを厳選して取り出しておる。ほれ、その中でも色が違うのがあるじゃろ? これは、さらに特別じゃ』
緑の中に一つだけある、赤。中心は真紅と言っていいほどに赤く、まるで炎が閉じ込められているようだ。
ギルドで報酬を受けた後、これら収集物は鑑定と報告のためにギルドに提出した。
ゼフもギルバートもこれには顎が外れるほど驚いていたが、ハクの能力を知っているゼフが、これらの収集物がすべて拾ったもので、採掘によるものではないと証明してくれた。
「それにしても驚いたな。鑑定によると、このミスリルは不純物がほとんどない純度だということだ。それなのにこの大きさとは……そして、この翡翠」
鉱山の最奥には確かに翡翠が取れるポイントがいくつかあったが、そのほとんどがあまり価値のない物だった。まだこの後、正式な調査が入る予定だが、今のところあの鉱山の判定は、金と、最奥通路に限ってだが稀にミスリルが採掘される金属鉱山であるという。
「戦闘による魔物から採取したものはパーティで山分けとなるが、個人で拾ったものは、基本的に拾った本人のものだ。現に、俺もいくつか拾ったしな」
もちろん鑑定能力がないゼフが拾った鉱石はほとんどクズ石だったようで、そう言いつつも肩を竦めていた。当然これらは山分けだと思っていたセインだったが、そういうわけで返されてしまった。
赤い翡翠だけは、鉱山主に報告がしたいとのことで、ギルバートに預けることになった。
買い取ることになってもいいかと聞かれたので、そこは快く頷いた。もともと棚ぼた的な代物だし、鉱山主には権利があるだろう。
「そんなわけで、資金はわりと潤沢にあるんだよなあ」
館を減築せずに、そのままの大きさで残すことが出来たのもそのおかげだった。
もちろんこれは、周りが勝手にそう呼んでるだけで、侯爵家からすれば、別館という扱いである。
ただし、そこで働いているのは基本的にセイン個人の使用人だ。
ゲイルもまた、ロルシー家とは切り離された使用人である。彼の妻フーリエと、娘のレミもセイン個人の奴隷という扱いで、ロルシー家に仕えているわけではない。
ちなみに、彼女たちは一般奴隷なので、館での雑事を担当してもらうつもりだ。まだ暫定的だが、フーリエには調理などの家事全般を、レミにはその手伝いを、館が完成したら、ゲイルには畑仕事を頼むつもりだ。
「天空が耕した畑は、よく作物が育ちそうだ」
――そういえば、名前も付けてやらなくてはいけなかったな。
そして、式と言えばハクである。
セインが宿屋に運び込まれたヌシ討伐の日、翌朝起きると、とんでもない光景がそこにあった。
信じられないほど大きな銀色の塊が、眩しい朝日を燦然と浴びて、古びた出窓に無造作に置かれていたのである。
「……え、なにこれ」
思わずごしごしと目を擦った。しかし、そこには依然として塊はあった。そして、ベットの上には丸い緑色のつるりとした玉が転がっている。まるで卵のように、五つ、固まって置いてあった。
セインは無意識にハクを見た。
くるりと丸まって、セインの横でぬくぬくと呑気に寝ている。
『……主よ、説明が必要か? おそらく思うておる通りじゃと思うがの』
唖然としたまま固まっているセインに、ツクがそう切り出した。
その通りだ。なんとなく、起きた出来事は想像ができた。なぜなら、その片鱗を昨日ばっちり見ているからだ。
「じゃあ、やっぱりハクなんだね。でも、この玉みたいなのは?」
『それは文字通り玉じゃよ。翡翠、しかもとびきり価値のあるモノだけを厳選して取り出しておる。ほれ、その中でも色が違うのがあるじゃろ? これは、さらに特別じゃ』
緑の中に一つだけある、赤。中心は真紅と言っていいほどに赤く、まるで炎が閉じ込められているようだ。
ギルドで報酬を受けた後、これら収集物は鑑定と報告のためにギルドに提出した。
ゼフもギルバートもこれには顎が外れるほど驚いていたが、ハクの能力を知っているゼフが、これらの収集物がすべて拾ったもので、採掘によるものではないと証明してくれた。
「それにしても驚いたな。鑑定によると、このミスリルは不純物がほとんどない純度だということだ。それなのにこの大きさとは……そして、この翡翠」
鉱山の最奥には確かに翡翠が取れるポイントがいくつかあったが、そのほとんどがあまり価値のない物だった。まだこの後、正式な調査が入る予定だが、今のところあの鉱山の判定は、金と、最奥通路に限ってだが稀にミスリルが採掘される金属鉱山であるという。
「戦闘による魔物から採取したものはパーティで山分けとなるが、個人で拾ったものは、基本的に拾った本人のものだ。現に、俺もいくつか拾ったしな」
もちろん鑑定能力がないゼフが拾った鉱石はほとんどクズ石だったようで、そう言いつつも肩を竦めていた。当然これらは山分けだと思っていたセインだったが、そういうわけで返されてしまった。
赤い翡翠だけは、鉱山主に報告がしたいとのことで、ギルバートに預けることになった。
買い取ることになってもいいかと聞かれたので、そこは快く頷いた。もともと棚ぼた的な代物だし、鉱山主には権利があるだろう。
「そんなわけで、資金はわりと潤沢にあるんだよなあ」
館を減築せずに、そのままの大きさで残すことが出来たのもそのおかげだった。
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