86 / 129
第五章 拠点
5-3 結果の配分
しおりを挟む
セインは、ゼフパーティのメンバーという扱いになっていたので、ギルドマスターとの正式な話は、翌日ということになった。すでにゼフから説明を聞いていたらしく、体調が回復したセインがギルドへ赴くと、すぐにパーティへの報酬配分が行われた。
「まずは、これだ。ゼフパーティが受けた捜索クエストの成功報酬、四人分だ」
サキは飽くまでゲスト扱いなので、この等分に組み込まれてない。もともと奴隷には報酬の配分はないし、あるとしてもそれは主人への上乗せとなる。
それぞれに渡されたものは、たっぷりと重みのありそうな皮袋だ。
「これは飽くまで規定通りの報酬だ。利便性を考えて、中身は銀貨を大目にしてある」
セインは手伝っただけだと恐縮したが、ゼフのパーティの一員としてきちんと登録されているのだから、普通に等分されて当然だと諭された。隠し通路までは、ほぼ付いて歩いていただけなので、ちょっとぼったくりのような気分だった。
「それと、これは別途の特別報酬だ」
そう言って、ギルバートは五枚のギルドカードと、小さな皮袋を四つテーブルに置いた。ギルドカードは、事前に受付に預けていたものである。
自分の名前が書かれているカードを見て、セインはちょっと首を傾げる。銅褐色のカードの右上に、なぜか銀色の帯が付いているのだ。
ゼフのカードは銀色、二人の仲間のカードは金色、サキのカードは白である。ちなみにビギナーカードは色なし、すなわちカード素材そのものでベージュのような色である。
全員昇格しているが、ゼフはあえて銀ランクに据え置きだった。中間あたりのランクの方が、ゼフにとってはいろいろと都合がいいのだ。そして今回、後衛として同行していた若いハンター二人は、この昇格をもってゼフの元を去る。二人はもちろん離別を惜しんだが、ゼフ曰く、卒業だということだ。
「そのカードは、準銀カードだ。まあ、いわゆる便宜上の臨時カードだな」
セインのカードについては、ギルバートが補足説明した。
通常、銀ランクに上がるには、特別な試練クエストがある。普通は銅ランクとしてある程度の依頼書をこなし、ポイントや貢献度が上がってくると、適当な時期に課題を出して昇格試験をするのだ。
ゼフパーティの金ランクに上がった二人にとっては、今回の捜索クエストがそれだった。
捜索クエストは、その性質上かなりの危険を伴い、判断を誤ると二次遭難の危険もある。なおかつクエスト成功判定が厳しく、苦労した割には何の収穫もないことも少なくない。金ランクへの壁としては、ちょうどいいクエストだったのだ。
セインの場合、今回の予想外の成功によって、ポイントと貢献度が有り得ないほど加算され、銅ランクをすっ飛ばして銀ランクのラインまで突き抜けてしまった。
一方で、銅ランクとしての経験値がゼロだったために、昇格基準を満たさなかったわけだ。
「いくつか銅ランクの依頼をこなせば、試練クエストなしで銀ランクに昇格可能となるし、前に気にしていた期限切れまでの期間も、一年たっぷりとある。ビギナーランクと違って、資格の喪失にもならないので、その点も心配いらない」
小さな皮袋には、驚いたことに白金貨一枚と、金貨が二枚入っていた。
ゼフはもちろん、メンバー二人も目を丸くするほどの大金である。白金貨一枚あれば、ちょっと田舎なら畑付きの家が建つほどだ。
ヌシ討伐に、最奥ルートのマップ、各鉱石分布調査など、これは鉱山主からの報酬だ。
ヌシを討伐したことで、新ルートのマップの価値は下がったが、鉱山主への貢献度というなら、逆にうなぎのぼりだった。不特定多数のハンター相手ではない分、結果的にはおそらく割安となったが、それでもかなりの成果といえよう。
なによりセイン、すなわちツクによる鉱石、地質の調査に、高値が付いた。
「セインは気おくれしてるようだが、正直なところ、遠慮すべきは俺たちなんだよな」
昇格した金カードを握りしめ、ゼフパーティの二人もしきりに頷いている。
彼らの言うように、確かに新ルートを見つけてから先は、セインの独壇場だったと言っても過言ではない。
もっともそれは、式たちの独壇場だったんだけどね、とセインは内心で苦笑した。
「まずは、これだ。ゼフパーティが受けた捜索クエストの成功報酬、四人分だ」
サキは飽くまでゲスト扱いなので、この等分に組み込まれてない。もともと奴隷には報酬の配分はないし、あるとしてもそれは主人への上乗せとなる。
それぞれに渡されたものは、たっぷりと重みのありそうな皮袋だ。
「これは飽くまで規定通りの報酬だ。利便性を考えて、中身は銀貨を大目にしてある」
セインは手伝っただけだと恐縮したが、ゼフのパーティの一員としてきちんと登録されているのだから、普通に等分されて当然だと諭された。隠し通路までは、ほぼ付いて歩いていただけなので、ちょっとぼったくりのような気分だった。
「それと、これは別途の特別報酬だ」
そう言って、ギルバートは五枚のギルドカードと、小さな皮袋を四つテーブルに置いた。ギルドカードは、事前に受付に預けていたものである。
自分の名前が書かれているカードを見て、セインはちょっと首を傾げる。銅褐色のカードの右上に、なぜか銀色の帯が付いているのだ。
ゼフのカードは銀色、二人の仲間のカードは金色、サキのカードは白である。ちなみにビギナーカードは色なし、すなわちカード素材そのものでベージュのような色である。
全員昇格しているが、ゼフはあえて銀ランクに据え置きだった。中間あたりのランクの方が、ゼフにとってはいろいろと都合がいいのだ。そして今回、後衛として同行していた若いハンター二人は、この昇格をもってゼフの元を去る。二人はもちろん離別を惜しんだが、ゼフ曰く、卒業だということだ。
「そのカードは、準銀カードだ。まあ、いわゆる便宜上の臨時カードだな」
セインのカードについては、ギルバートが補足説明した。
通常、銀ランクに上がるには、特別な試練クエストがある。普通は銅ランクとしてある程度の依頼書をこなし、ポイントや貢献度が上がってくると、適当な時期に課題を出して昇格試験をするのだ。
ゼフパーティの金ランクに上がった二人にとっては、今回の捜索クエストがそれだった。
捜索クエストは、その性質上かなりの危険を伴い、判断を誤ると二次遭難の危険もある。なおかつクエスト成功判定が厳しく、苦労した割には何の収穫もないことも少なくない。金ランクへの壁としては、ちょうどいいクエストだったのだ。
セインの場合、今回の予想外の成功によって、ポイントと貢献度が有り得ないほど加算され、銅ランクをすっ飛ばして銀ランクのラインまで突き抜けてしまった。
一方で、銅ランクとしての経験値がゼロだったために、昇格基準を満たさなかったわけだ。
「いくつか銅ランクの依頼をこなせば、試練クエストなしで銀ランクに昇格可能となるし、前に気にしていた期限切れまでの期間も、一年たっぷりとある。ビギナーランクと違って、資格の喪失にもならないので、その点も心配いらない」
小さな皮袋には、驚いたことに白金貨一枚と、金貨が二枚入っていた。
ゼフはもちろん、メンバー二人も目を丸くするほどの大金である。白金貨一枚あれば、ちょっと田舎なら畑付きの家が建つほどだ。
ヌシ討伐に、最奥ルートのマップ、各鉱石分布調査など、これは鉱山主からの報酬だ。
ヌシを討伐したことで、新ルートのマップの価値は下がったが、鉱山主への貢献度というなら、逆にうなぎのぼりだった。不特定多数のハンター相手ではない分、結果的にはおそらく割安となったが、それでもかなりの成果といえよう。
なによりセイン、すなわちツクによる鉱石、地質の調査に、高値が付いた。
「セインは気おくれしてるようだが、正直なところ、遠慮すべきは俺たちなんだよな」
昇格した金カードを握りしめ、ゼフパーティの二人もしきりに頷いている。
彼らの言うように、確かに新ルートを見つけてから先は、セインの独壇場だったと言っても過言ではない。
もっともそれは、式たちの独壇場だったんだけどね、とセインは内心で苦笑した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる