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第四章 ハンター
4-24 強制イベント2
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ゼフのパーティには、順次戦闘の準備をしてもらうことにした。無事に敵を無力化したら、ヌシに向うよう確認だけして、セインはサキとともに少しは慣れた場所へ移った。
半信半疑ながらも、他に手がないゼフはそれに従う意を示す。
『セイン様、では参ります』
サキに周囲を警戒してもらって、セインは手を合わせて目を瞑った。前よりもずっとスムーズに、ゆらはセインに憑依した。
セインの方も、記憶が重なる違和感を前ほど感じなかった。
すっと瞼を上げると、そこには灰色の瞳ではなく、透き通った青い瞳が現れる。
サキもこうして見るのは初めてなので、少し驚いた様子だったが、すぐに周囲に注意を戻した。
セインが手のひらを上に向けると、そこには小さな水球のようなものが現れる。
「水神の名に於いて命ずる。我が導く泡沫の彼方へ……等しく彼らに安らぎを与えよ。救急如律令!」
いつものセインの声より、わずかに高く響くその言葉とともに、水滴の落ちるような音がした。細くほどけるように水球が弾け、ふっと息を吹きかけると、あっという間に泡となって、魔獣の集団めがけて吸い込まれていく。
そして魔獣がそれに気が付くより先に、そのシャボン玉はその鼻先で音もなく弾けた。
「……おいおい、なんてこった。あの数を一瞬で?」
ゼフが驚くのも無理はない。五十匹以上いた魔獣たちは、揃いもそろって身体を丸め、無防備にも眠りこんでしまったのだ。
「すぐには起きないけど、寝てるだけなんで気を付けてください」
「了解、とりあえずヌシに集中できるのはありがたい!」
ここへ来て、さすがに周囲の状態に異常を感じ取ったのか、それまで寝そべっていたヌシが起き上がった。
まずは前衛のゼフが駆け出して前に出ると、その後ろから後衛の二人も戦闘態勢に入った。
「さてと、こっちも雑魚の数を減らしたいところだけど。戦力がなあ……いっそのこと、コウキを使えたら話は簡単だったんだけど」
『コウキの攻撃力は確かに高いが、こんな穴ぐらであやつの火炎をぶちまけられたんでは、わしらの方が窒息してしまうのじゃ』
「わかってるよ。うーん、ハクはその気がないみたいだし……戦闘向きじゃないのかもな。まあ、ゆらも攻撃向きじゃないが、相手が魔物なら穢れ払いが効くから、その辺で攻めてみるか」
今のところ、一番の戦力である火炎系攻撃が出来るコウキは、鉱山では危なくて使えないのが難点である。ハクの戦闘力はいまいちわからないが、さっきまでうろちょろと走り回っていたからなのか、ちょっとお疲れ気味のようだ。
「ゆらの穢れ払いなら、半分くらいはほぼ活動停止くらいには追い込めると思うけど。ま、やるしかないか……」
額に人差し指を当ててため息をついたセインだったが、その時、どこからともなく声が聞こえた。
『じゃあさ、ここはオイラの出番ってわけだな!』
半信半疑ながらも、他に手がないゼフはそれに従う意を示す。
『セイン様、では参ります』
サキに周囲を警戒してもらって、セインは手を合わせて目を瞑った。前よりもずっとスムーズに、ゆらはセインに憑依した。
セインの方も、記憶が重なる違和感を前ほど感じなかった。
すっと瞼を上げると、そこには灰色の瞳ではなく、透き通った青い瞳が現れる。
サキもこうして見るのは初めてなので、少し驚いた様子だったが、すぐに周囲に注意を戻した。
セインが手のひらを上に向けると、そこには小さな水球のようなものが現れる。
「水神の名に於いて命ずる。我が導く泡沫の彼方へ……等しく彼らに安らぎを与えよ。救急如律令!」
いつものセインの声より、わずかに高く響くその言葉とともに、水滴の落ちるような音がした。細くほどけるように水球が弾け、ふっと息を吹きかけると、あっという間に泡となって、魔獣の集団めがけて吸い込まれていく。
そして魔獣がそれに気が付くより先に、そのシャボン玉はその鼻先で音もなく弾けた。
「……おいおい、なんてこった。あの数を一瞬で?」
ゼフが驚くのも無理はない。五十匹以上いた魔獣たちは、揃いもそろって身体を丸め、無防備にも眠りこんでしまったのだ。
「すぐには起きないけど、寝てるだけなんで気を付けてください」
「了解、とりあえずヌシに集中できるのはありがたい!」
ここへ来て、さすがに周囲の状態に異常を感じ取ったのか、それまで寝そべっていたヌシが起き上がった。
まずは前衛のゼフが駆け出して前に出ると、その後ろから後衛の二人も戦闘態勢に入った。
「さてと、こっちも雑魚の数を減らしたいところだけど。戦力がなあ……いっそのこと、コウキを使えたら話は簡単だったんだけど」
『コウキの攻撃力は確かに高いが、こんな穴ぐらであやつの火炎をぶちまけられたんでは、わしらの方が窒息してしまうのじゃ』
「わかってるよ。うーん、ハクはその気がないみたいだし……戦闘向きじゃないのかもな。まあ、ゆらも攻撃向きじゃないが、相手が魔物なら穢れ払いが効くから、その辺で攻めてみるか」
今のところ、一番の戦力である火炎系攻撃が出来るコウキは、鉱山では危なくて使えないのが難点である。ハクの戦闘力はいまいちわからないが、さっきまでうろちょろと走り回っていたからなのか、ちょっとお疲れ気味のようだ。
「ゆらの穢れ払いなら、半分くらいはほぼ活動停止くらいには追い込めると思うけど。ま、やるしかないか……」
額に人差し指を当ててため息をついたセインだったが、その時、どこからともなく声が聞こえた。
『じゃあさ、ここはオイラの出番ってわけだな!』
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